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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成30年度分)

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全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内・国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
大澤英昭、広瀬幸雄、大沼進、大友章司

高レベル放射性廃棄物の管理方策の選択に関する意思決定プロセス -スイスと英国を例として-

スイスと英国を事例に、高レベル放射性廃棄物の管理方策に関する意思決定プロセスを、文献レビューに基づき比較した。その結果は、全体の流れは共通しており、評価基準と方法の決定、HLW管理方策のオプションの評価、オプションの選定の流れで行われていることを示している。管理方策の比較の基準は、安全性、世代間公正性が重要であるとされた。また、世代間公正に関しては、現在の世代ができる限り早急にできることをする責任があるという点を重視する立場「今取り組む」と、将来の世代に自らの選択をさせる自由を与える、すなわち将来世代が責任(選択の権利)を取れるように情報と補償を提供する義務が現世代側にあるとする立場「後まで置いておく」とが共通のトレードオフになっていた。これらトレードオフになっている2つの価値観を考慮して熟議することにより、地層処分を忌避する価値観が緩和され、結果的に回収可能性を考慮した地層処分概念が選択された。

社会安全学研究 第9巻 pp.145-160 2019
大澤英昭、広瀬幸雄、大沼進、大友章司

高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定に関する意思決定プロセス -スイスと英国を例として-

公募方式を採用している英国と安全性を最優先にスクリーニングする方式を採用しているスイスを事例に、高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定に関する意思決定プロセスを、文献レビューにより比較した。その結果、公募方式を採用している英国は、サイト選定の公正さは、自発的参加、撤退権、パートナーシップ、福祉の向上により実現できるという考えに基づいている。一方で、安全性を最優先にスクリーニングする方式を採用しているスイスは、自分の地域の属性を知らない状況で、処分場建設の選定基準として何が重要かについて共通の認識も持つことができれば、もしも自分の地域が候補地に選定されたとしても、その手続きは公正だとあらかじめ合意していたので、その結果を受け入れざるを得ないと判断する、といった無知のヴェールの考えにそったサイト選定方式を考えられる。

社会安全学研究 第9巻 pp.161-176 2019
大沼進、広瀬幸雄、大澤英昭、大友章司、横山実紀

無知のヴェールによる決定方法は社会的受容を高めるか?日本における高レベル放射性廃棄物地層処分候補地選定を題材とした仮想シナリオ調査

高レベル放射性廃棄物地層処分候補地が決まらない理由の一つに、仮に必要性が理解できたとしても自分の居住地が候補地になってほしくないため、候補地名が上がった途端に反発が生じることがあげられる。そこで、誰もが潜在的に当事者となり得る状況(無知のヴェール下)であらかじめ決め方に合意し、その決め方で決まったならば、受容しやすくなるだろうか。日本全国を対象に調査を実施した。その結果、無知のヴェールによる決定方法は現状の政策よりも受容の程度が高く、無知のヴェールによる決め方で自分の居住地が候補地になったとしても現状の政策よりは受容が高かった。さらに、現状の政策は手続き的公正の評価が低いが、無知のヴェールによる決定は肯定的に評価されていた。

第31回日本リスク研究学会年次大会 福島市
日本リスク研究学会第31回年次大会講演論文集 G3-3 pp.135-140
2018

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Makino, T. Semba and M. Shibata

Challenge on development of the JAEA KMS (Knowledge Management System)

JAEAによる先進的なKMSの開発に係る挑戦について、JAEA KMSの開発の背景、開発のアプローチ、開発したプロトタイプの紹介を含めてまとめる。あわせて、JAEA KMSの導入と持続的なメンテナンス等の実施のための挑戦や実務的な課題についてまとめる。

Safety Case Symposium 2018 Rotterdam (Netherlands) 2018
I. G. McKinley, S. Masuda, S. M. L. Hardie, H. Umeki, M. Naito and H. Takase

Public acceptance as a driver for repository design

我が国の放射性廃棄物の地層処分計画において、処分場立地については公募方式を基本としており、とくに非専門家のステークホルダによるパブリックアクセプタンスに重点が置かれる。このことは、地元コミュニティとの協力に基づくプロジェクトとしての処分場デザインの概念構築の必要性を意味しており、そのため、処分場のサイト選定や、その後の施設建設、操業、閉鎖といった計画の各段階での意思決定において、ステークホルダの関心や要望を取り入れ合意を得ていくことが重要となる。しかしながら、これまで処分場デザインの概念構築においては、処分場閉鎖後のセーフティケース構築をいかに行うかについて専門家による視点のみに焦点があてられてきた。本件では、放射性廃棄物地層処分の処分場について、非専門家のステークホルダがどのような点に関心を持ち、何を求めているかのニーズを把握することに加え、操業時や閉鎖後のシステムの安全性に有意な影響を与えることなく、そのニーズを満足することが可能な処分場デザインの見直し方法についての試みを行った。

Journal of Energy Vol. 2018 Article No.7546158 (8pages) 2018

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
高山裕介

ニアフィールド長期力学挙動評価技術の開発

本報告は、日本原子力学会バックエンド部会第34回バックエンド夏期セミナーの講演再録であり、複合現象評価技術開発の必要性と、その技術開発の一環として実施している長期力学挙動評価技術開発の概要およびそれを用いた解析事例を紹介するものである。

原子力バックエンド研究 Vol.25 No.2 pp.103-106 2018
谷口直樹、中山雅

各種環境での電気化学測定 -原子力Ⅱ(地層処分)深部地下環境における炭素鋼の腐食モニタリング-

高レベル放射性廃棄物の地層処分における炭素鋼オーバーパックについて、深部地下環境における腐食挙動のモニタリング手法と測定事例の現状を概説する。交流インピーダンス法を用いた室内試験による腐食モニタリングに関する研究事例より、電極配置などの測定系の代表例を紹介する。また、地下研究施設における工学的スケールでの原位置試験において腐食モニタリングが試みられており、その方法と現状の測定結果について述べる。

材料と環境 Vol.67 No.12 pp.487-494 2018
春名匠、宮瀧裕貴、廣畑洋平、柴田俊夫、谷口直樹、立川博一

酸化剤含有NaOH水溶液中でFeに形成させたFe3O4皮膜中へのD2Oの拡散浸透挙動

本研究では、酸化剤含有沸騰45mass%NaOH水溶液(424K)中においてFeの浸漬試験を行い緻密な皮膜を形成させる浸漬時間の探索を行うこと、ならびに形成した皮膜に対する室温でのD2Oの浸透挙動を明らかにすることを目的とした。その結果、以下の知見が得られた。酸化剤含有沸騰NaOH水溶液中に0.4ks以上浸漬したFe表面にはFe3O4が検出され、21.6ksまでは浸漬時間の増加とともに皮膜厚さが放物線則に従って増加した。酸化剤含有沸騰NaOH水溶液中にFeを1.2ksもしくは3.6ks浸漬して形成したFe3O4皮膜にD2O浸透試験を行った結果、いずれの皮膜に対しても、浸透時間が1000ksまでは、浸透時間の増加とともにD2O浸透量が増加し、それ以上の浸透時間ではD2O浸透量が定常値を示した。また3.6ks浸漬して形成した皮膜に対する定常D2O浸透量の方が大きい値を示した。D2Oの浸透時間と浸透量の関係をFickの拡散方程式に基づいて解析した結果、1.2ksおよび3.6ks浸漬して形成したFe3O4皮膜に対するD2Oの拡散係数がそれぞれ5.1×10-15cm2・s-1および9.9×10-15cm2・s-1と算出されたため、本Fe3O4皮膜に対するD2Oの拡散係数は5.1×10-15~9.9×10-15cm2・s-1の範囲に存在すると推定された。

材料と環境 Vol.67 No.9 pp.375-380 2018

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Sugita, T. Kageyama, H. Makino, H. Shimbo, K. Hane, Y. Kobayashi, Y. Fujisawa, K. Makanae and N. Yabuki

Development of a Design Support System for Geological Disposal of Radioactive Waste Using a CIM Concept

本論文は、原子力機構が開発を進めている、地層処分場の設計を合理的に行う設計支援システム(Integrated System for Repository Engineering: iSRE)の開発状況について国際学会において発表するものである。本システム開発の基本的な考え方として、共通のデータモデルを介してプロジェクトの3次元モデル及び関連データを共有するCIM技術を利用している。本論文では、処分事業期間における設計の繰り返しに代表される工学技術についての情報管理の特徴に適合する設計支援システムとして、"iSRE"の機能の検討・設計とプロトタイプの構築、および処分事業で実際に想定される作業を模擬した試行を通じての機能確認について示した。その結果、工学技術に関する情報管理の基礎となり得ると考え検討・設計・試作したiSREのDB機能について、期待していた機能を発揮できる見通しを得るとともに、実用化に向けた課題を抽出した。

17th International Conference on Computing in Civil and Building Engineering (ICCCBE 2018) Tempere (Finland) Proceedings of ICCCBE2018 (8pages) 2018

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
三ツ井誠一郎、村上隆、上田典男、平林彰、廣田和穂

長野県柳沢遺跡における青銅器のの埋蔵環境と青銅器由来成分の挙動

長野県中野市の柳沢遺跡から出土した弥生時代の銅鐸及び銅戈の埋蔵環境を調査した結果、赤銅鉱が安定に存在しうる、比較的酸素の影響を受けにくい条件であったことが確認できた。また、土壌中の青銅器由来成分の分布を調査した結果、Cu及びPbは、埋納坑から少なくとも2m程度離れた場所まで移動しているのに対し、Snは青銅器近傍に残存する傾向があることが確認できた。これらの挙動の違いは各元素の溶解度の違いによって説明することができる。また、Snの挙動は青銅器の長期腐食状態に影響している可能性がある。

考古学と自然科学 No.77 pp.1-14 2018

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Takahashi and Y. Tachi

3D-microstructure analysis of compacted Na- and Cs-montmorillonites with nanofocus X-ray computed tomography and correlation with macroscopic transport properties

異なる膨潤特性をもつNa型及びCs型モンモリロナイトの微細構造と物質移行特性が、ナノフォーカスX線CTによる3次元微細構造分析と重水の拡散実験とを組み合わせて調査された。X線CT観察により、乾燥状態の圧縮Na型モンモリロナイトが飽和膨潤する過程で、連結性マクロ間隙はゲル相によって埋められ、粘土粒子のサイズは小さくなることが確認された。Cs型モンモリロナイトでは、それとは対照的に飽和過程でのゲル相の生成や粒子・間隙サイズの変化は認められなかった。X線CTによって評価された飽和Cs型モンモリロナイトの連結性マクロ間隙の屈曲度及び収れん度を含む幾何学因子は、重水の拡散試験から評価された値と整合した。Na型モンモリロナイトの場合、X線CTと拡散試験から導出された幾何学因子の差異が確認され、これは静電的相互作用による収れん度とX線CTの解像度では観察できないゲル相や層間間隙の屈曲度に起因するものと考えられた。

Applied Clay Science Vol.168 pp.211-222 2019
J.M. Soler, I. Neretnieks, L. Moreno, L. Liu, S. Meng, U. Svensson, P. Trinchero, A. Iraola, H. Ebrahimi, J. Molinero, P. Vidstrand, G. Deissmann, J. Říha, M. Hokr, A. Vetešník, D. Vopálka, L. Gvoždík, M. Polák, D. Trpkošová, V. Havlová, D.-K. Park, S.-H. Ji, Y. Tachi and T. Ito

Evaluation and modelling report of Task 9A based on comparisons and analyses of predictive modelling results for the REPRO WPDE experiments
Task 9 of SKB Task Force GWFTS - Increasing the realism in solute transport modelling based on the field experiments REPRO and LTDE-SD

SKBタスクフォースは、亀裂性岩石中の地下水流動と物質移行のモデル化に関する国際フォーラムである。WPDE試験はフィンランドのオンカロ地下施設において実施された片麻岩中のマトリクス拡散試験である。複数の非収着性及び収着性のトレーサーを含む模擬地下水が試錐孔の試験区間に沿って注入された。タスク9Aは、WPDE試験で得られたトレーサー破過曲線に対する予測モデリングを行うことを目的とした。複数のチームが本タスクに参加し、異なるモデル化手法を用いた予測解析を行った。この予測解析の重要な結論は、試錐孔の開口部における地下水流動に関連する分散パラメータにモデル化結果が大きく影響されることである。マトリクス拡散及び収着に関連する破過曲線のテール部に着目すると、異なるチーム間の解析結果の差異は相対的に小さい結果となった。モデル化結果は、最終的に実測された破過曲線と比較された。

SKB R-17-10 Evaluation and modelling report of Task 9A based on comparisons and analyses of predictive modelling results for the REPRO WPDE experiments Task 9 of SKB Task Force GWFTS - Increasing the realism in solute transport modelling based on the field experiments REPRO and LTDE-SD pp.1-153 2019
P. B. Matheus Carnevali, F. Schulz, C. J. Castelle, R. S. Kantor, P. M. Shih, I. Sharon, J. M. Santini, M. R. Olm, Y. Amano, B. C. Thomas, K. Anantharaman, D. Burstein, E. D. Becraft, R. Stepanauskas, T. Woyke and J. F. Banfield

Hydrogen-based metabolism as an ancestral trait in lineages sibling to the Cyanobacteria

The metabolic platform in which microbial aerobic respiration evolved is tightly linked to the origins of Cyanobacteria (Oxyphotobacteria). Melainabacteria and Sericytochromatia, close phylogenetic neighbores to Oxyphotobacteria comprise both fermentative and aerobic representatives, or clades that are capablee of both. Here, we predict the metabolisms of Margulisbacteria from two distinct environments and Saganbacteria, and compare them to genomes of organisms from the related lineages. Melainabactena BJ4A obtained from Mizunami site are potentially able to use O2 and other terminal electron acceptors. The type C heme-copper oxygen reductase found in Melainabacteria BJ4A may be adapted to low O2 levels, as expected for microaerophilic or anoxic environments such as the subsurface. Notably, Melainabacteria BJ4A seems to have a branched electron transport chain, with one branch leading to a cytochrome d ubiquinol oxidoreductase and the other one leading to the type C heme-copper oxygen reductase. Both these enzymes have high affinity for O2 , thus are adapted to low O2 levels. These contemporary lineages have representatives with fermentative H2-based metabolism, lineages capable of aerobic or anaerobic respiration, and lineages with both. Our findings support the idea that the ancestor of these lineages was an anaerobe in which fermentation and H2 metabolism were central metabolic features.

Nature Communications (Internet), 10, Article number:463_1 - 463_15 2019
S. Finsterle, B. Lanyon, M. Åkesson, S. Baxter, M. Bergström, N. Bockgård, W. Dershowitz, B. Dessirier, A. Frampton, Å. Fransson, A. Gens, B. Gylling, I. Hančilová, D. Holton, J. Jarsjö, J.-S. Kim, K.-P. Kröhn, D. Malmberg, V.M. Pulkkanen, A. Sawada, A. Sjöland, U. Svensson, P. Vidstrand and H. Viswanathan

Conceptual uncertainties in modelling the interaction between engineered and natural barriers of nuclear waste repositories in crystalline rocks

放射性廃棄物地層処分の信頼性は廃棄体パッケージとその周辺のベントナイトからなる緩衝材で構成される人工バリアと母岩の多重バリアに依存している。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)はベントナイトと岩盤の相互作用の理解促進のためのモデリングタスクフォースを実施した。すなわち、異なる概念化とモデリングツールを採用した11のモデリングチームを活用して、エスポ硬岩研究所で実施された原位置試験の分析のためのモデルエクササイズを実施した。このエクササイズにより、人工バリアと天然バリアの相対的な重要度や、より信頼のあるベントナイト飽和予測に向けた現象理解に必要な視点、などの異なる評価結果を導く概念的な不確実性を抽出した。

Special Publication of the Geological Society of London Vol.482 pp.261-283 2019
T. Ohkubo, T. Okamoto, K. Kawamura, R. Guégan, K. Deguchi, S. Ohki, T. Shimizu, Y. Tachi and Y. Iwadate

New Insights into the Cs Adsorption on Montmorillonite Clay from 133Cs Solid-State NMR and Density Functional Theory Calculations

モンモリロナイトに吸着したCsの吸着構造を核磁気共鳴法(NMR)によって調査した。Cs置換率や含水率の異なるCs型モンモリロナイトのNMRスペクトルを測定するとともに、Cs吸着構造とNMRパラメータの関係を明らかにするために、第一原理計算に基づいてNMRパラメータを評価した。NMR実験と第一原理計算との比較の結果、Cs置換率が低いモンモリロナイトでのCs吸着形態は4面体シートでAl置換されたサイトの近傍に吸着したCsであること、Cs置換率と含水率が高い条件においてもCsの一部は脱水和状態で吸着していることを明らかにした。

The Journal of Physical Chemistry A Vol.122 No.48 pp.9326-9337 2018
Y. Tachi, T. Ito, Y. Akagi, H. Satoh and A. J. Martin

Effects of Fine-Scale Surface Alterations on Tracer Retention in a Fractured Crystalline Rock From the Grimsel Test Site

亀裂性結晶質岩中の放射性核種移行に対する割れ目表面の変質層の影響が、スイスのグリムゼル試験場の単一亀裂を有する花崗閃緑岩試料を用いた室内移行試験、表面分析、モデル化を組み合わせた包括的なアプローチによって調査された。5種類のトレーサーを用いた透過拡散試験、バッチ収着試験、通液試験を含む室内試験によって、移行遅延の程度はHDO, Se, Cs, Ni, Euの順に大きくなること、割れ目表面近傍に拡散に対する抵抗層が存在すること、拡散において陽イオン加速と陰イオン排除の効果が重要であることが確認された。X線CT及びEPMAによる観察から、割れ目周辺の鉱物分布の微視的な不均質性が把握された。これらの知見に基づき、風化したバーミキュライト層、配向した雲母層、マトリクス部から構成される3層モデルを構築し、それぞれの層の間隙率、収着・拡散パラメータを与えることで、通液試験で得られた全てのトレーサーの破過曲線と割れ目近傍のトレーサー濃度分布を良好に解釈することができた。

Water Resources Research Vol.54 No.11 pp.9287-9305 2018
D. Rai, A. Kitamura, M. Altmaier, K. M. Rosso, T. Sasaki and T. Kobayashi

A Thermodynamic Model for ZrO2(am) Solubility at 25℃ in the Ca2+-Na+-H+-Cl--OH--H2O System: A Critical Review

ジルコニウムについて、単核および複核の加水分解種の生成定数および非晶質二酸化ジルコニウム(ZrO2(am))の溶解度積を導出した実験データをレビューした。このレビューを通して、加水分解種(Zr(OH)2 2+、Zr(OH)4 (aq)、Zr(OH)5-、Zr(OH)62-およびCa3Zr(OH)64+)の生成定数やZrO2(am)の溶解度積を新規に決定もしくは改訂した。

Journal of Solution Chemistry Vol.47 No.5 pp.855-891 2018

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
岩月輝希、柴田真仁、村上裕晃、渡辺勇輔、福田健二

地下施設で使用する吹付けコンクリートが地下水水質に与える影響 -地球化学計算コードによる評価方法の提案-

地下施設における吹付けコンクリート支保工が地下水水質に与える影響を明らかにするため、深度500mの花崗岩に掘削した坑道を閉鎖する実規模原位置試験を行った。閉鎖坑道内の水質観察、吹付けコンクリートの分析、それらに基づく水質再現解析の結果、Brucite, Ettringite, Ca(OH)2, Gibbsite, K2CO3, Na2CO3・10H2O, SiO2(a), Calciteの溶解・沈殿反応が水質に影響する主要反応であることが明らかになった。更に、坑道内に施工された吹付けコンクリートはCa(OH)2に飽和した地下水(pH12.4)を約570m3生成する反応量を持つと見積もることができた。これにより坑道閉鎖後の長期的な化学影響の予測解析の確度が向上すると考えられた。

土木学会論文集G(環境) Vol.75 No.1 pp.42-54 (インターネット) 2019
望月陽人、笹本広、女澤徹也、宮川和也

深部地下水における酸化還元電位の不確かさ評価:北海道・幌延地域を事例として

北海道・幌延地域の深部地下水における酸化還元電位の測定値を整理し、その測定および熱力学的解釈における不確かさの評価方法を検討した。地下研究施設の坑道より掘削されたボーリング孔を利用して測定された地下水の酸化還元電位はおおむね-250mVから-100mVの範囲にあり、経時変化を示すものの、坑道掘削による影響は直接的には及んでいないことが示唆された。地下水の酸化還元状態はSO42-/FeS2、SO42-/HS-およびCO2(aq)/CH4(aq)の酸化還元反応に支配されており、その平衡電位との比較から、Eh測定値の不確かさを±50mVと設定することが適切であると考えられた。

地下水学会誌 Vol.61 No.1 pp.3-20 2019
尾上博則

地下水分野におけるデータ同化の活用 -原位置データを用いた水理地質構造の透水不均質性評価-

本研究では原位置データを用いた地下水流動の逆解析手法の適用性確認を目的として、揚水試験データを用いた逆解析を実施した。逆解析においては、特に断層に着目し、断層周辺における透水不均質性の空間分布の推定を試みた。研究対象領域は、日本原子力研究開発機構が地層処分技術に関する研究開発のうち深地層の科学的研究を進めている瑞浪超深地層研究所周辺である。その結果、既往研究の知見と整合的な結果が得られており、水圧応答データを用いた逆解析は、原位置で不足する調査量を補うことができる有効なツールの一つであることが示された。

計算工学 Vol.24 No.1 pp.3851-3854 2019
青柳和平、櫻井彰孝、棚井憲治

幌延深地層研究センターの立坑掘削損傷領域の水理・力学的挙動に関する研究

本研究では、堆積軟岩を対象とする幌延深地層研究センターの深度350m以深の立坑掘削を対象として、掘削時に発達する掘削損傷領域の水理・力学特性について、原位置透水試験、AE測定と水理・力学連成解析の実施結果に基づいて論じた。原位置試験の結果、立坑壁面から約1.5mの範囲でAE震源が分布しており、それを内包する領域における透水係数は、割れ目の発達していない領域に比べて2~4オーダー高かった。一方、解析では、壁面から最大1.5m程度まで破壊が生じる結果となり、原位置試験により推定される幅に概ね整合する結果を得た。また、立坑掘進時に計測された壁面周辺における間隙水圧値の増大は、掘削による応力集中の影響によるものであると推定された。

第46回岩盤力学に関するシンポジウム 盛岡市
講演集 pp.142-147
2019
本島貴之、小池真史、萩原健司、青柳和平

低強度・高地圧地山における大深度立坑支保設計手法の研究

大深度立坑掘削の標準工法であるショートステップ工法は、地山を緩ませずに断面を確保できる優れた工法である。ただし、国内に広く分布する堆積岩中への立坑構築を見据えた場合、特に低岩盤強度、初期地圧の異方性、もしくは高地圧といった不利な条件がある場合には覆工コンクリート応力が過大となることが想定される。本研究では支保への応力低減を目的としてショートステップ工法に二重支保・遅れ覆工の考え方を導入し、同手法の成立性について三次元逐次掘削解析にて検討を行うことで有効性を確認した。検証解析は日本原子力研究開発機構が実施している幌延深地層研究計画での原位置観測データを利用し、深度とともに地圧が増加するのに対し、岩盤強度が横ばいとなる厳しい条件下で実施した。

第46回岩盤力学に関するシンポジウム 盛岡市
講演集 pp.208-213
2019
松井裕哉、見掛信一郎、池田幸喜、筒江純

再冠水試験中の止水壁の状態変化に関する検討

日本原子力研究開発機構は、文部科学省、経済産業省、原子力規制委員会の第3期中長期目標に基づく研究開発を平成27年度から進めている。この一環として、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所の深度500mに掘削した研究坑道終端部において、再冠水試験と称する坑道周辺の地質環境の回復状況を把握・評価するための原位置試験を行った。さらに、この試験のために構築した止水壁の内外に設置した圧力や変位に関する各種計測機器により、冠水前・中・後のそれらの変化をモニタリングした。本報では、それらの計測結果を基に、再冠水試験に伴う止水壁の状態変化を推定した結果を報告する。

第46回岩盤力学に関するシンポジウム 盛岡市
講演集 pp.286-291
2019
望月陽人

地下水の放射性炭素分析における前処理法:従来法の再評価と新規法の開拓

地下水の放射性炭素分析のための前処理法について、近年、従来法(沈殿法、ガス化回収法)により得られた分析値の相互比較評価や新規手法の考案が進められている。本件は、これら研究論文の概要を、日本分析化学会の学会誌「ぶんせき」のトピックス欄に紹介するものである。

ぶんせき 2018年10月号 通巻526号 p.461 2018
奈良禎太、桑谷隆太、河野勝宣、佐藤稔紀、柏谷公希

カルシウムイオン濃度が異なる水中に保存した岩石での鉱物析出

岩盤中のき裂の閉塞を考えることは、放射性廃棄物地層処分を考える上で有意義である。そこで本研究では、カルシウム分を含む水中環境に1ヶ月保存した岩石表面に鉱物が析出するかどうかを調べることとした。特に、カルシウムイオン濃度の異なる環境下に岩石を保存した場合、岩石表面への鉱物析出がどのように異なるかについて調べた。その結果、鉱物の析出が確認でき、その析出量は水中のカルシウムイオン濃度に依存することが分かった。また、花崗岩に比べて砂岩ではより多くの鉱物析出が起こることも示された。本研究の結果より、鉱物の析出による岩石内のき裂修復の可能性が示されたと考えられる。

材料 Vol.67 No.7 pp.730-737 2018
武田匡樹、石井英一、大野宏和、川手訓

ガスが溶存した地下水を含む泥岩中の割れ目を対象とした原位置トレーサー試験条件の設定に関する検討

泥岩中における断層帯および掘削影響領域(EDZ)に発達する割れ目は、主要な水みちとして機能することがあるため、これらの構造における物質移行特性を評価することは、高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価において重要である。しかし、泥岩中の割れ目を対象とした原位置トレーサー試験の適用事例は国内外含めて非常に少ない。そこで、日本原子力研究開発機構では、稚内層と呼ばれる珪質泥岩中の割れ目を対象に、非収着性であるウラニンを用いた原位置トレーサー試験を実施した。トレーサー試験の結果から、注水流量を揚水流量より大きくした場合に脱ガスの影響を低減することができる一方で、同様の条件ではトレーサー回収率が低くなったことから、本稿で報告したトレーサー試験においては、注水流量を揚水流量よりもやや高く設定することが適切な試験条件であることが分かった。ガスが溶存した地下水を含む岩盤を対象に注水および揚水を伴う原位置トレーサー試験を実施する際は、注水と揚水の流量比が(1)脱ガスの発生に与える影響、(2)トレーサー回収率に与える影響の双方を評価することが、脱ガスを抑制しつつトレーサー回収率を高めるための適切な試験条件を見出すことに有効である。

原子力バックエンド研究 Vol.25 No.1 pp.3-14 2018
村上裕晃、芦澤政臣、田中和広

九州北部に分布する結晶質岩内の割れ目の特徴と形成過程について

結晶質岩地域における地下深部の透水性割れ目の特徴および形成と発達を把握することを目的とし、九州北部に分布する花崗閃緑岩からなる岩盤中に建設した地下施設を利用した地質調査を実施した。地下坑道における新鮮な花崗閃緑岩露頭において割れ目を観察し、割れ目の分布間隔、方向、変質、充填鉱物、湧水の有無の調査を行った。割れ目の頻度、方向および充填鉱物の特徴によると、花崗閃緑岩内の割れ目はA~Dおよび低角度(LA)の5つのグループに分類される。全割れ目に高温環境で形成される緑泥石および石英が充填していることから、全ての割れ目は岩体が高温であった冷却初期に形成されたと考えられる。Bグループの割れ目は最も多く湧水が認められ、現在の透水性割れ目として機能している。さらにBグループの割れ目の充填鉱物の組み合わせと産状から考察した結果、Bグループの割れ目は開口と閉塞が交互に生じたと示唆された。また、Bグループの割れ目は熱水の影響を示唆する赤色変質部を多く伴い、トレース長が長く、他のグループの割れ目を切る傾向があることから、割れ目の形成初期から現在までの長期にかけて重要な透水性割れ目として機能していたと考えられる。

応用地質 Vol.59 No.1 pp.2-12 2018
尾上博則

瑞浪超深地層研究所の紹介

本稿は、日本原子力研究開発機構の東濃地科学センターが、岐阜県瑞浪市で進めている超深地層研究所計画で建設した瑞浪超深地層研究所の施設概要や研究環境、最新の研究開発内容を紹介するものである。

計算工学 Vol.23 No.2 pp.3751-3752 2018

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Tsuji, H. Nakashima, A. Saito, M. Okihara and T. Sato

Study on characterization of colloidal silica grout for rock excavation under saline groundwater

活性シリカコロイドの溶液型グラウトは浸透性や耐久性に優れており、放射性廃棄物の地層処分における坑道掘削時の湧水抑制対策技術への適用が期待されている。近年日本においては、処分場が沿岸域に計画される可能性も検討されているため、海水条件下での使用を想定した溶液型グラウトの適用性の確認や特性データの整備を進めている。本報では、海水系地下水ヘグラウトを注水する場合に適する新たな溶液型グラウトについて、配合調整条件を明らかにするとともに、このような海水対応グラウトの基本配合の試験体を作製し、力学的安定性や浸透注水性などの基本的な特性を取得した結果を報告する。

WM 2019 Conference Phoenix, AZ (USA) Proceedings of WM 2019 pp.19332-1~19332-14 (Internet) 2019
K. Aoyagi and E. Ishii

A Method for Estimating the Highest Potential Hydraulic Conductivity in the Excavation Damaged Zone in Mudstone

坑道掘削時には、応力再配分に伴い、割れ目が周辺に発生し、周辺岩盤の透水性が増大する。このような領域は、掘削損傷領域(EDZ)と呼ばれている。高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、EDZが地下施設周辺の放射性核種の移行経路になりうる。そのため、本研究では、幌延深地層研究センターの坑道を対象としてEDZの潜在的な最大透水係数を予測する手法について検討した。原位置試験として、BTV観察、コア観察、透水試験を実施し、EDZの幅と透水係数を予想した。結果として、観測されたEDZの幅は、連成解析により求められたEDZの幅にほぼ一致する結果であった。また、平均有効応力を岩盤の引張応力で除したパラメータである、Mean stress index (MSIモデル)に基づく潜在的な最大透水係数の予測範囲は、原位置試験で求められた透水係数を内包するものであった。幌延深地層研究センターの地下施設のように、岩盤が均質であり、発破損傷等の人工的な損傷が無視しうる環境では、EDZの潜在的な最大透水係数を予測するうえでMSIモデルが適用可能であることが示された。

Rock Mechanics and Rock Engineering Vol.52 No.2 pp.385-401 2019
T. Ishida, W. Fujito, H. Yamashita, M. Naoi, H. Fujii, K. Suzuki and H. Matsui

Crack Expansion and Fracturing Mode of Hydraulic Refracturing from Acoustic Emission Monitoring in a Small-Scale Field Experiment

瑞浪超深地層研究所の深度500mレベル坑道底盤より鉛直下向きにボーリング孔を掘削し水圧破砕を実施した。その際、注入孔から1m離れた4つのボーリング孔内に16個のセンサーを配置し、AEイベントを観測した。最初のブレークダウンは10mL/minの流量で生じ、流量を10mL/minから30mL/minに増加させることにより、最初のブレークダウンよりも大きな2回目のブレークダウン時に再破砕が生じた。AEの震源位置は最初と2回目のブレークダウンとも破壊していない領域のみに生じ、流量が維持された状態で注入されている時はそれ以外の領域には発生しなかった。破壊されていない領域に発生した最初と2回目のブレークダウン時のAEのP波初動の押し引きより推定される破砕メカニズムは、引張型の破壊と推定された。これらの結果は、流量の増加が水圧破砕亀裂の再破砕に効果的であることを示している。加えて、再破砕時のブレークダウンプレッシャーは1回目よりも大きく、引張型の亀裂進展を示しており、これは水圧破砕に関する古典的な弾性理論と調和的な結果である。

Rock Mechanics and Rock Engineering Vol.52 No.2 pp.543-553 2019
T. Yuguchi, S. Sueoka, H. Iwano, Y. Izumino, M. Ishibashi, T. Danhara, E. Sasao, T. Hirata and T. Nishiyama

Position-by-position cooling paths within the Toki granite, central Japan: Constraints and the relation with fracture population in a pluton

本研究は、中部日本に位置する土岐花崗岩体を研究対象とし、熱年代学的な手法で冷却履歴(温度-時間履歴)を取得した。10本のボーリングコアから採取された15試料に対して、ジルコンU-Pb年代、黒雲母K-Ar年代、ジルコンフィッション・トラック(FT)年代、アパタイトFT年代、およびFTデータの逆解析からなる温度-時間履歴を提示した。得られた岩体内部の複数地点の冷却履歴の相違を比較し、その位置的な相違を生む原因について言及した。これは熱進化モデルの構築に資するデータとなる。また花崗岩内における物質移動は、水みちとして機能する割れ目により大きく支配されることから、割れ目の分布特性と得られた温度-時間履歴の関連について検討を行った。

Journal of Asian Earth Sciences Vol.169 pp.47-66 2019
K. Aoyagi, N. Miyara, E. Ishii, M. Nakayama and S. Kimura

Evolution of the excavation damaged zone around a modelled disposal pit: case study at the Horonobe Underground Research Laboratory

本研究では、幌延深地層研究センターの人工バリア性能確認試験孔(ピット)を対象として、ピット周辺の掘削損傷領域の発達過程と、ピット中に設置した緩衝材への注水に伴う掘削損傷領域の経時変化を、弾性波トモグラフィ調査結果に基づき論じた。結果として、ピット周辺の弾性波速度はピット掘削後に顕著に低下するが、緩衝材への注水開始後は、徐々に弾性波速度が回復する傾向が見られた。ピット周辺の掘削損傷領域を対象とした透水試験と間隙水圧結果と比較したところ、掘削後の割れ目の発達と不飽和領域の発達が弾性波速度の低下の原因であると推定された。また、ピットヘの注水に伴う周辺岩盤の間隙水圧の増大が見られたことから、掘削損傷領域内の飽和度の増加が、弾性波速度の回復の原因の一つであると推定された。

13th SEGJ International Symposium Tokyo (Japan)
Proceedings of 13th SEGJ International Symposium (USB Frash Drive) 5pages
2018
Y. Ozaki, M. Ishibashi, T. Matsushita, K. Masumoto, T. Imasato

Transition of near surface resistivity of tunnel wall during drift closure test

瑞浪超深地層研究所では、坑道閉塞後の地質環境変化の把握を目的とした再冠水試験を実施している。再冠水試験において、坑道閉塞前後に2次元比抵抗探査を3度にわたり実施した。1回目は坑道閉塞前に、2回目と3回目は坑道から排水後に探査を実施した。これら探査において、低比抵抗体と高比抵抗体からなる二層構造を検知することが出来た。これら二層は各々吹き付けコンクリートと母岩部に相当する。また、坑道排水後に実施した探査では、母岩部に相当する高比抵抗体の上部の比抵抗の減少が確認された。この比抵抗変化は、母岩部の亀裂部に存在する不飽和層が冠水試験により飽和した過程を捉えたものと考えられる。

13th SEGJ International Symposium Tokyo (Japan)
Proceedings of 13th SEGJ International Symposium (USB Frash Drive) 4pages
2018
Y. Ozaki, M. Ishibashi, H. Onoe and T. Iwatsuki

Hydro-mechanical-chemical (HMC) simulation of Groundwater REcovery Experiment in Tunnel (GREET)

瑞浪超深地層研究所では、地下坑道閉鎖後における擾乱された地質環境回復過程の把握を目的として再冠水試験を実施している。再冠水試験では、坑道掘削から地下水による坑道閉塞、坑道解放に至る過程において、水圧・水質・岩盤変位等のモニタリングを実施している。原位置データの取得と並行して、定量的な回復過程の理解および地質環境の評価技術の開発を目的として、これら連成挙動を考慮したシミュレーション及びモデル構築手法の開発を実施している。本研究では、再冠水試験のうち坑道掘削に伴う、水圧・応力連成解析及び塩素濃度イオンの予測解析を実施した。シミュレーション結果と原位置データを比較したところ、坑内における湧水量は比較的予測精度が高いことを確認した。

ARMS10 10th Asian Rock Mechanics Symposium Suntec (Singapore)
Proceedings of 10th Asian Rock Mechanics Symposium & The ISRM International Symposium for 2018 (USB Flash Drive) 11pages
2018
K. Miyakawa and F. Okumura

Improvements in Drill-Core Headspace Gas Analysis for Samples from Microbially Active Depths

地下深部の炭化水素ガスの濃度組成や同位体組成を調べる事により、炭化水素ガスの起源や長期的な流体移動に関する知見が得られる。地上からのボーリング孔を用いてガス採取を行う場合によく用いられる方法として、ボーリングのカッティングスあるいはコアに吸着したガスをサンプル容器のヘッドスペースに追い出して分析する方法がある。しかしながら、この方法により得られた結果は、しばしば大きなばらつきを示す。本研究では、上述の手法により採取・分析した結果を、地下施設を利用して得られた結果と比較し、ばらつきの原因が試料の採取・保管方法に起因することを明らかにし、正しい値を得るための要点を指摘した。

Geofluids Vol.2018 ID2436814 11pages 2018
M. Jo, M. Ono, M. Nakayama, H. Asano and T. Ishii

A study of methods to prevent piping and erosion in buffer materials intended for a vertical deposition hole at the Horonobe Underground Research Laboratory

The phenomena of "piping and erosion" are serious problems for the integrity of the buffer material as an element of engineered barrier systems in geological disposal for high-level radioactive waste. In this study, the outflow behavior and condition in buffer material has been investigated using a test pit drilled in host rock at Horonobe Underground Research Laboratory to acquire the knowledge to consider countermeasures to contain the outflow of the buffer material. The following are results. (1) The phenomena of "piping and erosion" occurred irrespective of injection flow rate. However, when the rate is small, it is considered that buffer material can be self-repairing and the erosion of buffer material can be suppressed. (2) When injection water contains a lot of electrolyte, the surface of buffer material peels off and precipitates, possibly suppressing waterproof performance. (3)It is considered that bentonite pellets are effective for countermeasures against buffering "piping and erosion".

Geological Society of London Special Publications Vol.482 pp.175-190 2018
M. Kato, Y. Nara, Y. Okazaki, M. Kohno, T. Sato, T. Sato and M. Takahashi

Application of the Transient Pulse Method to Measure Clay Permeability

放射性廃棄物の地層処分においては、岩盤を天然バリアとして使用する。このことから、低透水性の岩盤やき裂を充填している粘土の存在は、より好ましい環境を提供すると考えられる。室内での透水係数の測定方法のうち、トランジェントパルス法は低透水性の材料の透水係数測定に有効であるが、粘土に適用された事例は無く、かつ、そのままの方法・手順では適用が困難である。このため、供試体の下流側の圧力を下げる場合で透水係数を求める方法を提案し、変水位法で得られた値と比較して問題ないことを確認した。

Materials Transactions Vol.59 No.9 pp.1427-1432 2018
K. Nakata, T. Hasegawa, T. Oyama and K. Miyakawa

Evaluation of δ2H and δ18O of water in pores extracted by compression method -effects of closed pores and comparison to direct vapor equilibration and laser spectrometry method

高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価では、地下水シナリオは主要な評価対象の一つである。地下水の酸素・水素同位体比からは、地下水の起源や混合、移動などのプロセスを理解するために重要な知見を得ることができる。地上からのボーリング調査において、地下深部の低透水性の岩盤中の地下水を、掘削水の汚染などの影響を受けずに取得するためには、岩石コアに含まれる間隙水を取得する必要がある。この場合には、圧縮抽出により間隙水を抽出する手法が一般的であるが、段階的な圧縮過程により異なる塩分濃度の地下水が抽出されることがあることから、同位体比にも影響が見られる可能性が考えられる。本研究では、2種の天然の岩石から圧縮抽水し、水の同位体比の圧縮圧力に伴う変化とそのメカニズムについて議論した。さらに、同サンプルに直接蒸気平衡レーザー法(DVE-LS)を適用し、その結果と比較をした。その結果、圧縮抽水では、閉鎖空隙中の水の影響により、水素同位体比が圧力に伴い変化することが分かった。さらに、2種類の圧縮抽水試験を組み合わせることで、開放間隙と閉塞間隙の両方の水の同位体組成を推定可能であることを示した。また、閉鎖間隙の影響を受けない酸素・水素同位体比は、DVE-LSによって得られる値と良く一致した。このため、圧縮抽水とDVE-LSによって得られた水の酸素・水素同位体比の比較により、閉塞間隙と開放間隙の水の酸素・水素同位体比を推定可能であることが示された。

Journal of Hydrology Vol.561 pp.547-556 2018
T. Sato, K. Aoyagi, Y. Matsuzaki, N. Miyara and K. Miyakawa

Status of rock dynamics study in Horonobe Underground Research Laboratory, Japan

岩盤動力学は高レベル放射性廃棄物の処分技術に関する研究開発において重要な事項である。幌延深地層研究所はオフサイトの地下研であり、堆積軟岩中の深度350mまで3本の立坑と3つのレベルにおいて水平坑道が展開されている。岩盤動力学に関する研究としては、地下空洞の耐震設計、地震動の観測、地震に伴う地下水圧の変化の観測、掘削影響試験などが実施されている。本報告では、幌延深地層研究計画の現状と、岩盤動力学に関する研究の成果として、耐震設計に関する検討の結果、地震動の観測結果および2011年に発生した太平洋沖地震による地下水圧の変化について報告する。

3rd International Conference on Rock Dynamics and Applications (RocDyn-3) Trondheim (Norway) Rock Dynamics - Experiments, Theories and Applications pp.575-580 (2018) 2018
E.A. Kalinina, T. Hadgu, Y. Wang, Y. Ozaki and T. Iwatsuki

Development and Validation of a Fracture Model for the Granite Rocks at Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

瑞浪超深地層研究所では、現在、深度500mにおいて坑道閉鎖後の地質環境回復過程の把握等を目的とした再冠水試験を実施している。本研究では、再冠水試験を数値シミュレーションにより再現するため、亀裂分布を考慮 したモデルを構築した。坑道壁面の観察結果やボアホールカメラ等により取得された亀裂分布情報をもとに、亀裂の統計値を設定し、原位置における透水試験や湧水量等の計測結果を考慮することで、原位置における亀裂分布を考慮した亀裂ネットワークモデルを作成した。作成したモデルを別途報告で実施する連成解析に用いることで、本研究で提示したモデル構築手法の妥当性を検証する予定である。

2nd International Discrete Fracture Network Engineering conference (DFNE 2018) Seattle (USA)
Proceedings of 2nd International Discrete Fracture Network Engineering Conference (DFNE 2018) (Internet) DFNE 18-435 7pages
2018
T. Hadgu, E.A. Kalinina, Y. Wang, Y. Ozaki and T. Iwatsuki

Investigations of Fluid Flow in Fractured Crystalline Rocks at the Mizunami Underground Research Laboratory

本研究では、瑞浪超深地層研究所の深度500mにおける冠水坑道掘削時の地下水流動およびそれに伴う物質移動のシミュレーションを実施した。亀裂ネットワークモデルによって坑道周辺岩盤の亀裂分布を再現した上で、均質化法により変換した多孔質媒体モデルを用いてシミュレーションを実施した。シミュレーションを実施するにあたり、亀裂を含む岩盤を多孔質媒体モデルとして適切に取り扱うために、解析領域に対して比較的微細なメッシュを用いた計算を実施した。亀裂を考慮した不均質構造を含むモデルと均質構造を仮定したシミュレーションを実施したところ、亀裂の存在を考慮した不均質構造モデルを用いた解析では、原位置で取得されたデータを再現できることを確認した。

2nd International Discrete Fracture Network Engineering conference (DFNE 2018) Seattle (USA)
Proceedings of 2nd International Discrete Fracture Network Engineering Conference (DFNE 2018) (Internet) DFNE18-593 5pages
2018
S. Kimuro, A. Kirishima, S. Nagao, T. Saito, Y. Amano, K. Miyakawa, D. Akiyama and N. Sato

Characterization and thermodynamic study of humic acid in deep groundwater at Horonobe, Hokkaido, Japan

高レベル放射性廃棄物から溶出した放射性核種が地下水中の天然有機物の一種である腐植物質と錯生成することで、放射性核種の移行が促進される可能性が指摘されており、腐植物質と金属イオンの錯生成を定量的に記述する試みがなされてきた。腐植物質は、組成不均質性を持つ高分子電解質であり、その性質は起源や履歴によって大きく異なる。本研究では、北海道幌延町の深度350m地下水中に溶存している腐植物質を抽出し、幌延腐植物質のプロトン化反応における反応機構を調べ、また、腐植物質の分子量および流体力学径を取得し、単純有機物やIHSSの標準腐植物質のそれらの結果と比較した。その結果、幌延の腐植物質は、表層の腐植物質に見られるような複雑な組成不均質を持たない、より単純な構造を持ち、その反応メカニズムもより単純であることが分かった。本成果は、腐植物質の特性がその起源により大きく異なることを明らかにしたものであり、核種移行を考えるうえで、この点を考慮すべきであることを示唆している。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.55 No.5 pp.503-515 2018
H. Sasamoto, H. Satoh and R. C. Arthur

Characterization of mineralogical controls on ammonium concentrations in deep groundwaters of the Horonobe area, Hokkaido

アンモニウムイオンは、還元条件下における深部地下水において重要な成分である。地層中でのセシウムの収着による遅延は、高レベル放射性廃棄物の長期安全性を確保する上で重要な役割を果たす。しかしながら、セシウムの収着は、地下水中に溶存するアンモニウムイオンの様な陽イオンによる収着競合の影響を受ける可能性がある。本研究では、日本における地下水の一例として、幌延で得られた地下水データを対象に、深部地下水におけるアンモニウムイオンの濃度を支配する反応を推定した。鉱物学的調査、地下水データを用いた熱力学的評価および電子線マイクロアナライザを用いた鉱物表面での窒素(N)分布調査により、地下水中のアンモニウムイオンは、カリウム(K)を含む粘土鉱物であるスメクタイト、イライト、イライト/スメクタイト混合層のカリウムと地下水中のアンモニウムイオンのイオン交換反応により濃度が支配されている可能性が示唆された。また、日本における地下水データセットからスクリーニングされた信頼性の高いデータと比較すると、幌延の地下水中のアンモニウムイオン濃度は、ガス田や油田地域の地下水に類似していることも明らかになった。

Journal of Geochemical Exploration Vol.188 pp.318-325 2018
E. Ishii

Assessment of hydraulic connectivity of fractures in mudstones by single-borehole investigations

地層処分において単孔ボーリング調査により亀裂の水理学的連結性を評価することは重要だが、亀裂の水理学的連結性を評価することは一般には容易ではない。本論文では断層・亀裂の発達する泥岩層(声問層・稚内層:北海道幌延;Palfris層:スイス Wellenberg) の地質・水理・地下水化学・岩盤力学のデータセットを提示し、亀裂の水理学的連結性を評価するための新たな方法論を提案する。

Water Resources Research Vol.54 No.5 pp.3335-3356 2018
T. Tokiwa, K. Tsusaka and K. Aoyagi

Fracture characterization and rock mass damage induced by different excavation methods in the Horonobe URL of Japan

We conducted detailed fracture mapping of the soft sedimentary rocks (uniaxial compressive strength of 10-20 MPa) in shaft walls at the Horonobe Underground Research Laboratory to characterize fractures and to understand the influence of different excavation methods on rock mass damage. The mapping indicates that the fractures are numerous and can be divided into shear fractures and extension fractures. On the basis of orientation and frequency, the shear fractures are inferred to be pre-existing fractures, and the extension fractures are considered to be newly formed fractures (EDZ fractures) induced by the shaft excavation. The frequencies of pre-existing and newly formed fractures have a negative correlation, and we infer that stress relief leads to the formation of excavation damaged zone by the generation of the newly formed fractures in the parts of shaft that have intact rock, and by the reactivation of pre-existing fractures where such fractures are numerous. Although more newly formed fractures are formed by blasting excavation than by mechanical excavation, there is little difference in the comparative excavation rates. These results indicate that rock mass damage is caused by the mode of excavation rather than excavation rate. Therefore, the mechanical excavation is preferred to blasting excavation from the viewpoint of minimizing rock mass damage.

International Journal of Civil Engineering Vol.16 No.4 pp.371-381 2018

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
植木忠正、丹羽正和、岩野英樹、檀原徹、平田岳史

中部日本、鮮新世東海層群中の大田テフラのジルコン
U-Pbおよびフィッション・トラック年代

大田テフラに対比される岐阜県東濃地域の中津川Ⅰ・Ⅱ火山灰層から採取した2試料を用いて、同ージルコン粒子に対するU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代のダブル年代測定を行った。その結果、2試料の加重平均値として、U-Pb年代は3.94±0.07Ma、FT年代は3.97±0.39Maの年代が得られた。本研究の年代測定結果は既存研究のFT年代や古地磁気層序とも整合的であり、中部日本をはじめとする地域の下部鮮新統の広域層序と年代整理において重要な年代指標となると考えられる。

地質学雑誌 Vol.125 No.3 pp.227-236 2019
末岡茂、郁芳随徹、長谷部徳子、田上高広

茂住祐延断層のジルコンFT熱年代解析:熱史モデルによる再検討

上載地層法が適用できない断層の活動性評価手法として、熱年代学の手法による検討が有望だと考えられている。本研究は、跡津川断層帯の茂住祐延断層にジルコンフィッション・トラック(ZFT)熱年代解析を適用した郁芳(2011)のデータの再検討を試みたものである。郁芳(2011)は、茂住祐延断層の2本の破砕帯を貫く調査坑道内において、110-70MaのZFT年代と7-9μmのZFT長を報告し、加熱の原因を約65Maの神岡鉱床の形成に伴う熱水活動だと解釈した。一方、本研究による熱史逆解析の結果によれば、加熱の時期は見掛け年代より新しく、約30-15Maと推定された。この時期は日本海拡大期に当たっており、当時の火成活動が加熱イベントに関連していると考えられる。しかし、加熱メカニズムについては、地表に堆積した火山噴出物からの単純な熱伝導では説明が困難であり、今後の検討課題である。

フィッション・トラックニュースレター No.31 pp.9-12 2018
福田将眞、末岡茂、田上高広

Thermo 2018 @ Quedlinburgの参加報告

第16回熱年代国際会議(Thermo2018)が、2018年 9月16~21日にドイツのQuedlinburgで開催された。本会議には、世界29ヶ国から約250人(+15人の招待講演者)が出席し、口頭69件、ポスター150件の計219件の発表が行われた。これらについて、報告者らの印象に残った講演や雑感などを中心に報告する。

フィッション・トラックニュースレター No.31 pp.26-29 2018
末岡茂

第42回日本フィッション・トラック研究会実施報告

第42回フィッション・トラック研究会が、2018年2月10日から2月12日にかけて、東京都立川市の国立極地研究所にて開催された。本研究会は、ESR応用計測研究会及びルミネッセンス年代測定研究会と合同で行われ、60名の参加者により、33件の発表が行われた。また、2月11日には、第42回フィッション・トラック研究会総会も行われ、今後のフィッション・トラック研究会の体制や運営方法などについて議論された。

フィッション・トラックニュースレター No.31 pp.30-32 2018
末岡茂、島田耕史、石丸恒存、檀原徹、岩野英樹、八木公史

江若花崗岩の形成年代と冷却史

江若花崗岩の敦賀岩体と江若岩体にて、ジルコンU-Pb年代測定、ジルコンフィッション・トラック(FT)解析、アパタイトFT解析を実施した。ジルコンU-Pb年代は、いずれの岩体でも69.2-68.0Maと高い再現性を示し、両岩体がほぼ同時期に形成されたことを示唆した。ジルコンFT年代は59.6-53.0Maとややばらついたが、FT長解析では急冷傾向が推定されること、概して岩体の中心部に向かって若い年代が得られることから、岩体定置後の冷却過程を反映していると考えられる。アパタイトFTは44.8-20.9Maと大きくばらついたが、FT長解析の結果を踏まえると、敦賀岩体は長期間の削剥、江若岩体は漸新世から中新世の火成活動による再加熱を被っている可能性がある。敦賀岩体中の玄武岩岩脈についてもK-Ar年代測定を実施したところ、既報値より約1Ma古い値を示し、同岩脈を形成した火成活動が100万年程度継続した可能性を示唆した。

地学雑誌 Vol.127 No.6 pp.795-803 2018
小松哲也

第8章 統合自然地理学の実践の場となる地層処分技術の研究開発

日本列島における高レベル放射性廃棄物の地下処分、すなわち地層処分では、地下300m以深の地質環境の変化を数万年以上先まで評価・予測する技術の開発が求められる。その技術開発が、統合自然地理学の実践の場になることを幌延地域での研究開発事例から示す。

実践統合自然地理学 pp.105-121 2018

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Shimizu, N. Sano, T. Ueki, T. Komatsu, K. Yasue and M. Niwa

Provenance identification based on EPMA analyses of heavy minerals: Case study of the Toki Sand and Gravel Formation, central Japan

重鉱物には風化に強いものがあり、なかでも固溶体を成す重鉱物は同種の鉱物であっても、化学組成として後背地の岩体の情報を保持していることがある。そのため、重鉱物の種類や存在比に加えて化学組成を知ることは、後背地の岩体と砕屑物を対比する手法として極めて有効である。しかし、偏光顕微鏡を用いた重鉱物の同定では、多量の鉱物粒子を対象とするには非常に手間を要する。本研究では、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて鉱物の化学組成を分析し、同時に鉱物種の同定や存在比の計測も実施できる手法を構築した。さらにこの手法の有用性を確認するため、既に後背地の検討が進められている岐阜県東濃地域の東海層群土岐砂礫層の試料と、その後背地岩体と推定される基盤岩の試料(苗木・上松花崗岩、濃飛流紋岩)の分析を行い、既往研究と整合的な結果が得られることを確認した。このことから、本手法は後背地解析の手法として有効であると考えられる。

Island Arc Vol.28 No.2 pp.e12295_1 - e12295_13 2019
T. Yokoyama, J. Kimura, T. Mitsuguchi, T. Danhara, T. Hirata, S. Sakata, H. Iwano, S. Maruyama, Q. Chang, T. Miyazaki, H. Murakami and Y. Kokubu

U-Pb dating of calcite using LA-ICP-MS: Instrumental setup for non-matrix-matched age dating and determination of analytical areas using elemental imaging

We developed a non-matrix matched U-Pb dating method for calcite by using LA-ICP-MS. The excimer LA was set to generate a low-aspect-ratio crater to minimize downhole U-Pb fractionation. We used He sample ablation gas mixed with Ar carrier gas and additional trace N2 gas to create a robust plasma setup. The use of N2 additional gas allowed for low oxide molecular yield for high-sensitivity interface cones with the ICP shield electrode disconnected. Moreover, this resulted in robust ICP plasma against different matrixes in LA aerosols owing to efficient dissociation-ionization of the aerosols by increased plasma temperature. The above setup helped accomplish accurate U-Pb dating of calcite samples by using SRM 612 glass as the standard. We applied this method to the following calcite samples: (1) recently-proposed reference material named WC-1 with a determined U-Pb age of 254.6 ± 3.2 Ma and (2) a well-preserved fossil specimen of blastoid Pentremites sp. with an estimated age of ~ 339-318 Ma. The resultant U-Pb ages of the WC-1 and Pentremites samples were 260.0 ± 6.7 Ma and 332 ± 12 Ma, respectively, which indicate accurate U-Pb dating by this method. Before this U-Pb dating, quantitative distribution maps of the U, Th, and Pb isotopes of each sample were obtained using the LA-ICP-MS imaging technique to select suitable areas for dating.

Geochemical Journal Vol.52 No.6 pp.531-540 2018
Y. Kokubu, T. Mitsuguchi, T. Watanabe, T. Yamada, R. Asami and Y. Iryu

Preliminary Test of the EA-AGE3 System for 14C Measurements of CaCO3 Samples and Coral-Based Estimation of Marine Reservoir Correction in the Ogasawara Islands, Northwestern Subtropical Pacific

日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターに設置された自動グラファイト化装置AGE3及びペレトロン年代測定装置(JAEA-AMS-TONO)を用いて造礁サンゴ試料の14C測定を実施した。本研究では、まず、沖縄本島南岸で採取した2つの完新世中期化石サンゴについて、AGE3で調製したグラファイトと従来法(リン酸分解)で調製したグラファイトの14C測定値を比較した。その結果、AGE3で調製したグラファイトの方が僅かに14C濃度が高くなる傾向が見られた。この傾向は、AGE3を用いることによって古い試料(例えば10,000BP)の14C年代が過小評価される可能性を示唆するが、現代/近代試料への影響は無視できる。そこで、小笠原諸島・父島で採取した現生サンゴに刻まれている1900年代~1950年代の年輪から2-3年毎に試料を削り出し、これらの年輪試料にAGE3を適用して14C濃度を測定し、この海域におけるリザーバー年代補正の評価を行った。

23rd International Radiocarbon Conference Trondheim (Norway) Radiocarbon Vol.61 No.5
pp.1593-1601 (2019)
2018
H. Takahashi, M. Minami, T. Aramaki, H. Handa, Y. Kokubu, S. Itoh and Y. Kumamoto

A Suitable procedure for preparing of water samples used in radiocarbon intercomparison

水試料の放射性炭素の研究機関ごとの比較プログラムを実施するためには、適切な比較試料を配布することが重要である。そのために、人工的に調製した試料を用いることが必要で、その調製法や均質性についての検討を実施した。さらに、作製した試料を用いて国内の関連機関による相互比較を実施した。

23rd International Radiocarbon Conference Trondheim (Norway) Radiocarbon Vol.61 No.6
pp.1879-1887 (2019)
2018
N. Katsuta, H. Ikeda, K. Shibata, Y. Kokubu, T. Murakami, Y. Tani, M. Takano, T. Nakamura, A. Tanaka, S. Naito, S. Ochiai, K. Shichi, S. Kawakami and T. Kawai

Hydrological and climate changes in southeast Siberia over the last 33 kyr

バイカル湖ブグルジェイカサドルの堆積物中の化学組成を高分解能に分析することにより過去3.3万年以上の内陸シベリアの古環境及び古気候変動を復元した。完新世の気候は、6500年前に温暖、乾燥に変化し、氷期から間氷期の気候システムに遷移したことを示唆する。最終氷期においては、プリモールスキー山脈に起因する砕屑性炭酸塩の堆積がハインリッヒイベント(H3とH1)に伴って生じた。また、ハマル-ダバン山脈の氷河融解水がセレンガ川を通じて供給された。アレレード・ヤンガードリアス時に発生した無酸素底層水は、セレンガ川からの流水の減少とプリモールスキー山脈から供給された有機物の微生物分解で生じたものと考えられる。完新世初期の降水の減少は、8200年前の寒冷イベントに対応する。

Global and Planetary Change Vol.164 pp.11-26 2018

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使用済燃料直接処分に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Atz, A. Salazar, F. Hirano, M. Fratoni and J. Ahn

Assessment of the potential for criticality in the far field of a used nuclear fuel repository

使用済燃料を地層処分する場合を想定して(使用済燃料の直接処分)、処分場の周辺岩盤で燃料成分が蓄積することによって臨界が起こる可能性を評価するための解析的検討を行った。岩盤中で臨界が起こる燃料成分の量の最小値を評価するための中性子輸送モデル(地下水飽和した球形の体系を想定して解析を実施)と、燃料成分の地下水中への溶出と岩盤中での移行を評価するための物質輸送モデルによる解析結果を組み合わせて評価を行った。その結果、燃料成分が岩盤中で蓄積する条件として保守的な条件を想定する場合では、臨界が起こる量が蓄積される状況も想定されるものの、処分場での使用済燃料の配置を工夫することで、こうした状況は起こりにくくなると考えられた。

Annals of Nuclear Energy Vol.124 pp.28-38 2019

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