Englishサイトマップ原子力機構トップページ

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成29年度分)

»投稿論文・雑誌へ

要旨をご覧になりたい場合は研究開発成果検索・閲覧システム(JOPSS)に掲載しておりますので検索下さい。

全項共通(国内・国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内・国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内・国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
亀井玄人

地層処分の文脈のなかでの地下の理解

日本原子力学会が発行するバックエンド部会誌の巻頭言として、地層処分の文脈における地下の理解の重要性が述べられた。

原子力バックエンド研究 Vol.24 No.1 p.1 2017
安楽総太郎

「2016年度バックエンド週末基礎講座」参加報告

バックエンド週末基礎講座は、広範な原子力のバックエンド分野に関する基礎的な知識を身につけるとともに、参加者相互の交流の機会を提供することを主な目的とし、バックエンド部会の主催で2003年から年1回開催されている。2016年10月15日(土)、16日(日)の2日間、岐阜県土岐市のセラトピア土岐(土岐市産業文化振興センター)にて今回で13回目を迎えたバックエンド週末基礎講座が開催された。講座には大学や企業などから参加があり、6件の講義とグループディスカッションが行われた。また、講座に先立って、希望者を対象に、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構東濃地科学センター)にて見学会が併催された。

原子力バックエンド研究 Vol.24 No.1 pp.65-67 2017
平野史生

地層処分の工学技術および性能評価研究

本講演では、地層処分の研究開発分野のうち、地層処分の工学技術および地層処分システムの性能評価についての研究開発の概要と、両研究開発分野において用いられている具体的な評価手法および使用済燃料直接処分に関する最近の研究事例について解説した。

原子力バックエンド研究 Vol.24 No.1 pp.83-86 2017

ページトップへ


人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Hashiba, K. Fukui, Y. Sugita and K. Aoyagi

Mechanical and rheological characteristics of the siliceous mudstone at the Horonobe Underground Research Laboratory site

珪藻質泥岩や珪質泥岩の岩盤の地下に構造物を建設するあるいはその長期安定性を評価するためには、これらの岩石の力学および粘性特性を理解することが重要である。本研究では、珪質泥岩である稚内層の岩石を対象にさまざまな試験(圧縮試験、クリープ試験、応力緩和試験、乾燥収縮試験、スレーキング試験)を行った。試験の結果から、本岩石の力学および粘性特性に対して水分が大きな影響を与えることが分かった。加えて、幌延の地下研の現場での水分計測結果との比較から、坑道の力学的安定性の考察を行った。

The ITA-AITES World Tunnel Congress 2017(WTC 2017) Bergen (Norway)
Proceedings of ITA-AITES World Tunnel Congress 2017 (USB Flash Drive) 8pages
2017

ページトップへ


安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
三ツ井誠一郎

地層処分研究開発における出土遺物の知見の活用

地層処分研究開発の一環として、地層処分で想定される現象に類似した天然現象(ナチュラルアナログ)を対象とする研究、「ナチュラルアナログ研究」が実施され、予測モデルの概念や評価手法の妥当性の検証に利用されている。原子力機構が実施してきた金属製遺物等を対象とした研究を含め、国内外でのナチュラルアナログ研究の成果を通じ、出土遺物から得られる知見を地層処分研究開発にどのように活用されているかを紹介する。

保存科学研究集会「金属製遺物の調査・研究に関する最近の動向」 奈良市
埋蔵文化財ニュース No.171 pp.10-17
2018
舘幸男、陶山忠宏、澁谷早苗

地層処分性能評価のための岩石に対する収着分配係数の設定手法の構築:花崗岩を対象とした適用性評価

性能評価解析において、収着分配係数Kdは、地球化学条件の変動範囲や不確実性を含む具体的な性能評価条件を考慮して設定する必要がある。性能評価のための岩石へのKd設定手法を、i)収着データベースから抽出されるデータ群の直接的利用、ii)データ取得条件と性能評価条件の差異を補正する半定量的条件変換手法、iii)熱力学的収着モデルの3つを組み合わせることにより構築した。この設定手法の適用性を評価するため、これら3つの手法を適用して、花崗岩に対するCs及びAmのKd値と不確実性の導出と比較を行った。その結果、データやモデルについて十分な情報が利用可能な場合、異なる手法間で整合的な設定値を導出可能であることを確認した。この手法間の比較を踏まえ、性能評価対象の25元素を対象に、実測データ群に基づく分配係数と不確実性の設定を試み、最近の海外の性能評価プロジェクトにおけるKdデータセットと比較した。本手法によって、実際のサイト条件への適用を含む段階に応じた分配係数及び不確実性を設定することが可能となる。

原子力バックエンド研究 Vol.24 No.2 pp.109-134 2017
大江俊昭、若杉圭一郎

地層処分人工バリアの設定値に関する考察 (1)ガラス固化体の溶解寿命

地層処分におけるガラス固化体の溶解寿命を再評価した。我が国での地層処分の技術的可能性を論じた報告では、時間と共に処分温度が低下することや表面積が減少することなどを無視しているため、ガラス固化体の溶解寿命は約7万年と過小評価されている。しかし、これらの変化は物理的に確実に起こるものであるので、これらを無視せずに再評価を試みた。表面積の変化を考慮するために亀裂を有するガラス固化体を3つのモデル、すなわち、単一平板、単一粒径の小球群、べき乗粒径分布を持つ小球群、で表現した。すべてのモデルの全体積は円柱状のガラス固化体と同じで、製造時の割れを考慮して全表面積は円柱状のそれの10倍とした。寿命評価の結果、初期量の50%が溶解するまでの時間は、3つのモデルとも7万年を超え、溶解寿命は17〜70万年となった。これから、従来の評価ではガラス固化体が核種を保持する能力が過小評価されていることが判った。

原子力バックエンド研究 Vol.24 No.1 pp.27-32 2017

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Hamamoto, S. Shibutani, K. Ishida, K. Fujisaki, M. Yamada and Y. Tachi

ASSESSMENT OF SORPTION AND DIFFUSION IN THE ROCK MATRIX IN THE NUMO SAFETY CASE

NUMOでは日本における地層処分の成立性と安全性を示すためのジェネリックなセーフティケースを開発している。このセーフティケースにおける安全評価のために、3種類の母岩を対象として分配係数及び実効拡散係数パラメータを設定するとともに、その不確実性や今後の課題について議論した。

EAFORM2017: 6th East Asia Forum on Radwaste Management Conference Osaka (Japan)
Proceedings of 6th East Asia Forum on Radwaste Management Conference (EAFORM 2017) pp.4A-2 (2017/12)
2017
D. Rai and A. Kitamura

Thermodynamic equilibrium constants for important isosaccharinate reactions: A review

イソサッカリン酸はセルロースの分解生成物であり、低レベル放射性廃棄物処分場で発生する。このイソサッカリン酸は、処分場に存在するアクチニド元素など多くの元素と強い錯体を作ることが知られている。われわれは、イソサッカリン酸の解離およびラクトン化定数や、Ca, Fe(Ⅲ), Th, U(Ⅳ), U(Ⅵ), Np(Ⅳ), Pu(Ⅳ)およびAm(Ⅲ)との錯生成定数をレビューした。また、イソサッカリン酸共存下における地層処分場でのアクチニド元素の移行挙動を予測するための錯生成定数について総括し、利用可能なデータが不十分な場合の熱力学データの信頼性を確保するための追加の研究について概説した。

Journal of Chemical Thermodynamics Vol.114 pp.135-143 2017
Y. Amano, T. Iwatsuki and T. Naganuma

Characteristics of Naturally Grown Biofilms in Deep Groundwaters and Their Heavy Metal Sorption Property in a Deep Subsurface Environment

バイオフィルムが重金属元素の移行に及ぼす影響を明らかにするために、東濃地域において掘削されたボーリング孔の嫌気的環境下で形成された、2試料のバイオフィルムを採取した。堆積岩および花崗岩地下水中で形成されたバイオフィルムについて、地球化学的および微生物学的特性調査を行い、それらの重金属収着能力について評価した。バイオフィルム中の微生物群集組成について、クローン解析手法を用いた16S rRNA遺伝子解析の結果から、地下水中の微生物群集とバイオフィルム中の群集組成は全く異なることが示された。さらに、堆積岩と花崗岩環境下で形成されたバイオフィルムも、それぞれ全く異なる群集組成を有し、多様性に欠けていることが明らかになった。バイオフィルム中にはFe, Ni, Cu, Zn, As, Cd, Pb, Th, and Uのような重金属元素が高濃度に濃集されており、その収着特性は元素によって異なることが示された。これらの結果は、バイオフィルムの重金属収着能力に関する重要な知見である。

Geomicrobiology Journal Vol.34 No.9 pp.769-783 2017
D. Rai, A. Kitamura and K. M. Rosso

A thermodynamic model for the solubility of HfO2(am) in the aqueous K+-HCO3--CO32--OH--H2O system

非晶質二酸化ハフニウム(HfO2 (am))の溶解度を、炭酸水素カリウム(KHCO3 )濃度0.001〜0.1mol.kg-1の範囲で測定した。HfO2 (am)の溶解度は、KHCO3濃度の増加とともに劇的に増大し、ハフニウム(IV)が炭酸イオンと強く錯生成することを示した。ハフニウムの炭酸錯体の熱力学的平衡定数を、PitzerおよびSITの両活量補正モデルで導出した。KHCO3濃度の増加に伴う劇的なハフニウム濃度の増大は、 Hf(OH)2(CO3)22-および Hf(CO3)56-の生成を考慮することで最もよく説明することができた。これらの生成反応である[Hf4+ + 2CO32- +2OH- ⇔ Hf(OH)2(CO3)22-]および[Hf4+ + 5CO32- ⇔ Hf(CO3)56-]の平衡定数の対数値は、それぞれ44.53土0.46および41.53土0.46 であった。

Radiochimica Acta Vol.105 No.8 pp.637-647 2017
H. Sakuma, Y. Tachi, K. Yotsuji, S. Suehara, T. Arima, N. Fujii, K. Kawamura and A. Honda

Stability of Montmorillonite Edge Faces Studied using First-principles Calculations

層電荷0.33及び0.5を有する4種類のモンモリロナイト・エッジ表面(110), (010), (100)及び(130)の構造と安定性を評価するため、密度汎関数理論に基づく第一原理計算手法を用いて調べた。特にモンモリロナイト層状体が積層した場合の影響を調べるため、単層モデルと積層モデルを設定して、エッジ表面の安定性を比較した。ほとんどのケースで、層状体間の水素結合により、表面エネルギーは単層モデルよりも積層モデルの方が低くなり安定化する。このことは、エッジ面の表面エネルギーは膨潤状態に依存することを示唆している。エッジ面(010)及び(130)の最も低い表面エネルギーは、エッジ面近傍にMgイオンが露出することにより実現される。これらのエッジ面は、エッジにおける局所的な負電荷によって、カチオンに対する強い吸着サイトを有する。

Clays and Clay Minerals Vol.65 No.4 pp.252-272 2017
A.W. Hernsdorf, Y. Amano, K. Miyakawa, K. Ise, Y. Suzuki, K. Anantharaman, A. Probst, D. Burstein, B.C. Thomas and J.F. Banfield

Potential for microbial H2 and metal transformations associated with novel bacteria and archaea in deep terrestrial subsurface sediments

地層処分システムにおける微生物影響の可能性を評価するために、北海道の幌延深地層研究センター地下施設を利用して、堆積岩地下の生態系における微生物群集構造と代謝機能について調査を行った。全体として、微生物生態系は多様な系統群からなる微生物種で構成されており、その多くはこれまで培養されていない生物門に属していることが示された。大部分の微生物種は、酸化型[NiFe]ヒドロゲナーゼあるいはフェレドキシンをベースとする代謝経路を可能にする電子分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼを介して水素代謝をおこなうことが明らかになった。水素代謝と関連して、多くの微生物が炭素、窒素、鉄および硫黄を代謝することが推定された。特に、ANME-2dというメタン酸化を行う古細菌として知られている未培養微生物が、鉄関連の代謝反応を行う可能性が示唆された。得られた結果から、幌延堆積岩環境における微生物群集の生態学的概念モデルを推定した。

The ISME Journal Vol.11 No.8 pp.1915-1929 2017
D. Rai, M. Yui and A. Kitamura

Thermodynamic Data Development: Solubility Method and Future Research Needs

本報告の目的は、1)溶解度法を説明し、2)読者がどの研究が品質のよいものであるかを理解するために必要な溶解度法に望まれる基準、3)評価基準の使用例、そして4)いくつかの研究の必要性の例(溶解度法が理想的で他の方法が不適なもの)を提示することである。

ACTINIDES 2017 Sendai (Japan)
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet) Vol.5 pp.19-26 (2018/12)
2017
K. Ise, Y. Sasaki, Y. Amano, T. Iwatsuki, I. Nanjo, T. Asano and H. Yoshikawa

The succession of bacterial community structure in groundwater from a -250m gallery in the Horonobe Underground Research Laboratory

幌延深地層研究センターの250m水平坑道に掘られた09-V250-M02 and 09-V250-M03ボアホール中における微生物群集変化について調査を行った。09-V250-M02において、掘削直後に採取したサンプルについてクローンライブラリー解析を行ったところ、ε-Proteobacteriaが最も優占していた。ε-Proteobacteriaは硫化物を硫黄に酸化して増殖する独立栄養細菌であることが知られている。4年経過後の微生物群集は大きく変化し、OP9やChloroflexiなどの深海底において検出されることが多い種が優占していた。これらのことから、掘削直後には空気による酸化の影響が大きく見られたが、時間経過とともに微生物群集は深海底などで検出される微生物群集と似た構造と変化することが示された。

Geomicrobiology Journal Vol.34 No.6 pp.489-499 2017
X. Liu, M. Fratoni, J. Ahn and F. Hirano

Effects of random geometry on post-closure repository criticality safety

The present work aims to study the effect of random geometry on the long-term criticality safety. Preliminary considerations on uranium depositions in randomly fractured rocks have been obtained through an approximated analytical solution to calculate spherical fuel lumps with random locations.With stochastic and heterogeneous conditions applied, the present work examines the conservatives of the neutronic models for repository criticality safety assessment, and provides deeper understandings of the system. The major finding is that, when parameters are chosen to optimized the criticality, effective multiplication factor for systems with the random geometries can be well-bounded by the average case.

International High-Level Radioactive Waste Management (IHLRWM) 2017 Charlotte, NC (USA)
Proceedings of 2017 International High-Level Radioactive Waste Management pp.595-599
2017

ページトップへ


地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
加藤昌治、奈良禎太、岡崎勇樹、河野勝宣、佐藤稔紀、佐藤努、高橋学

粘土の透水係数測定へのトランジェントパルス法の適用

放射性廃棄物の地層処分においては、岩盤を天然バリアとして使用する。このことから、低透水性の岩盤やき裂を充填している粘土の存在は、より好ましい環境を提供すると考えられる。室内での透水係数の測定方法のうち、トランジェントパルス法は低透水性の材料の透水係数測定に有効であるが、粘土に適用された事例は無く、かつ、そのままの方法・手順では適用が困難である。このため、供試体の下流側の圧力を下げる場合で透水係数を求める方法を提案し、変水位法で得られた値と比較して問題ないことを確認した。

材料 Vol.67 No.3 pp.318-323 2018
林田一貴、加藤利弘、久保田満、村上裕晃、天野由記、岩月輝希

坑道閉鎖試験に基づく坑道掘削・閉鎖時の化学環境変化プロセスの考察

坑道の建設・操業により乱された地質環境の坑道閉鎖後の定常化過程の確認を目的として、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所において深度500mの花崗岩中に模擬実験坑道を建設・閉鎖し、地下水の溶存成分や酸化還元電位、pHの経時変化の観測を行った。その結果、坑道建設時には坑道周囲の割れ目を介した地下水流動状態の変化に伴い坑道周囲の地下水水質が変化した。また坑道から坑道周囲の岩盤中への酸素の侵入により、酸化還元電位が上昇することが確認された。坑道閉鎖後は、微生物の還元作用により坑道内の地下水の酸化還元電位が低下するとともに、坑道周囲では岩盤中から還元的な地下水がもたらされることによって酸化還元電位が回復した。一方で、吹付コンクリートなどセメント材料の影響で坑道内の地下水がアルカリ化することが確認された。このアルカリ化に消費されたセメント材料はわずかであることから、その影響はセメント使用量に応じて長期的に続くと考えられた。

地球化学 Vol.52 No.1 pp.55-71 2018
見掛信一郎、池田幸喜、松井裕哉、辻正邦、西垣誠

高圧湧水下におけるプレグラウチングとポストグラウチングを併用した湧水抑制効果の評価

瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削では、湧水抑制対策の観点でプレグラウチングを実施した。深度500m水平坑道の掘削完了後、高圧湧水下(最大4MPa)でプレグラウチングの実施範囲に対してポストグラウチングを併用した。ポストグラウチングの注入範囲はプレグラウチングの外側とし、溶液型材料、複合動的注入工法を適用した。その湧水抑制効果は、グラウチングを実施しない場合に対して湧水量を約100分の1まで低減できた。これらの結果から、プレグラウチングとポストグラウチングを併用した湧水抑制対策は高圧湧水下で適用でき、湧水抑制効果が高いことを提示できた。また、グラウチングによる透水性の低下割合と注入範囲の関係について理論に基づく評価を行い、その手法は簡便であり設計や湧水量予測において有用性が高いことを示した。

土木学会論文集C(地圏工学) Vol.74 No.1 pp.76-91 2018
笹尾英嗣、檀原徹、岩野英樹、平田岳史

岐阜県南東部に分布する中新統瑞浪層群および岩村層群のジルコン U-Pb 年代とジルコン FT年代の再評価

地質学的な変動帯に位置する我が国の地質環境中における核種の保持・移行挙動についての理解を深めるため、東濃ウラン鉱床を事例とした研究を行ってきた。その一環として、東濃ウラン鉱床を胚胎する中新統瑞浪層群と瑞浪層群に隣接して分布する岩村層群に挟在する凝灰岩中のジルコンを用いたフィッション・トラック年代測定を行った。しかし、それ以前に知られていた微化石年代等とは100万年程度の差が生じることが課題として残された。そこで、瑞浪層群および岩村層群に挟在する凝灰岩3試料のジルコンU-Pb年代測定を行った結果、以下のような年代値が得られた:瑞浪層群の本郷層細久手火山礫凝灰岩は18.8±0.3Ma、明世層Ak-12凝灰岩は17.8±0.4Ma、岩村層群遠山層牧部層中部のTy-12凝灰岩は18.4±0.4Ma。この結果は、再評価したジルコンフィッション・トラック年代と誤差範囲内で一致し、既報の微化石および古地磁気層序と整合的となった。この結果から、瑞浪層群と岩村層群の堆積年代を次のように推定した:瑞浪層群の本郷層は19〜18Ma、明世層は約18Ma、岩村層群遠山層牧部層中部は約18Ma。

地質学雑誌 Vol.124 No.2 pp.141-150 2018
亀村勝美、青柳和平、名合牧人、菅原健太郎

周回坑道掘削時に取得された内空変位と切羽観察結果に基づく初期地圧評価手法の開発

大規模な地下施設の建設に当たっては、掘削対象岩盤の力学特性とともに適切な初期地圧を設定することが重要となる。堆積軟岩を対象とする幌延深地層研究センターにおいては、地上からのボーリング孔や地下調査坑道において実施した水圧破砕試験や応力解放法により初期地圧状態の評価を行ってきた。ここでは、設計段階において推定された初期地圧状態の妥当性を検討するため、深度350mの周回坑道掘削時の内空変位と切羽観察記録を活用し、断層を含む数百m四方の範囲の数値解析モデルを構築し、坑道で計測された内空変位挙動を、岩盤の不均質性を考慮して説明できる初期地圧状態を評価した。評価結果は、他の計測結果と整合的であり、地下施設建設段階における初期地圧状態の妥当性の確認手法として適用できる可能性が示された。

第45回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.43-48
2018
丹生屋純夫、畑浩二、鵜山雅夫、青柳和平、若杉圭一郎

大深度地下掘削時のAE計測における波形分析手法に関する研究

日本原子力研究開発機構と大林組は、幌延深地層研究センターの深度350m以深を対象に、長期耐久性を期待して設置した光ファイバー式センサで立坑周辺岩盤の水理・力学的な挙動として、AE(アコースティック・エミッション:Acoustic Emission)、間隙水圧及び温度を長期的に計測している。当該計測データを共振特性を用いて整理した結果、5種類の波形パターンから岩盤AEをさらに精度良く弁別することが課題となっていた。そこで、岩盤AEとそれ以外のAEと言うカテゴリーで弁別することを主眼に「スペクトルピークの半値幅」という定量的な弁別条件を適用し、岩盤AEの抽出精度向上を試みた。その結果、判別が不明瞭な波形特性を呈した岩盤AEも適切に抽出することが可能となった。

第45回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.226-231
2018
升元一彦、松下智昭、竹内竜史

地中レーダによる岩盤割れ目内の塩水浸透モニタリング

岩盤内の坑道周辺に生じる割れ目群は地下水の透水経路として機能することから、放射性廃棄物地層処分の安全評価において、割れ目の水みちとしての特性を把握しておくことが重要である。これに対し、筆者らは地中レーダにより得られるデータから、割れ目の幾何学的な分布情報だけでなく割れ目内の地下水の状態の評価可能性について検討を進めている。今回、地中レーダによる塩水の浸透状態の評価方法の原位置での検証を目的に、瑞浪超深地層研究所の深度500m研究アクセス南坑道において検証試験を実施した。割れ目に塩水を注入し、その過程を複数の地中レーダでモニタリングすることにより、塩水の面的な浸透状態を地中レーダの反射波形や卓越周波数の変化で評価できることを示すことができた。

第45回岩盤力学に関するシンポジウム 東京 2018
下茂道人、竹内真司、竹内竜史、後藤和幸、中野勝志

水中浮遊型プローブを用いた地下水検層技術の開発 —測定概念と実用化に向けた基礎実験—

メモリー式水圧センサーを搭載した水中浮遊型プローブを用いた新しい地下水検層技術を考案した。同プローブは、比重を調整することにより、孔内を上昇・降下し、深度および時間に関連づけられたボーリング沿いの様々な情報を連続的に取得することができる。また、水中浮遊型プローブの移動速度は、自重、浮力、流体抵抗のバランスで決まるため、プローブの速度変化から水みちの深度や孔内流速を連続的に把握できる。同検層技術は、ロッドやケーブルなどの昇降資材や設備を必要とせず無動力での測定が可能なため、検層の効率性を飛躍的に向上させることができると期待される。本論文では、水中浮遊型プローブを用いた基本的な測定概念と測定技術の実用化に向けて実施した基礎実験結果について示す。

第45回岩盤力学に関するシンポジウム 東京 2018
松川瞬、板倉賢一、早野明、鈴木幸司

岩盤における不連続面の自動推定に向けた3次元点群データの可変格子分割法

LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)は、岩盤表面を点群の形式で取得することができる。先行研究では、必要なパラメータを手動で設定して、点群から岩盤の不連続面を取得するアルゴリズムが開発されてきた。DiAna(Discontinuity Analysis)アルゴリズムは、点群を格子状に分割して半自動的に岩盤の面を推定するアルゴリズムである。しかし、適切な格子サイズを決定するには熟達した技術が必要である。そこで本研究では、場所によって適切な格子サイズを自動決定するVBS(Variable-Box Segmentation)アルゴリズムを開発した。VBSアルゴリズムは、小さな格子を結合して適切なサイズの格子を作り、面を推定する。VBSアルゴリズムの性能は、DiAnaアルゴリズムと比較して評価した。その際、手動で岩盤表面を推定して作成した参照面との類似度を用いた。比較結果では、VBSアルゴリズムはDiAnaアルゴリズムよりも参照面に類似した面を推定した。よって、VBSアルゴリズムは場所により自動的に適切な格子サイズを決定し、適切に面を推定した。

Journal of MMIJ Vol.133 No.11 pp.256-263 2017
水野崇、岩月輝希、松崎達二

ボーリング孔を利用した比抵抗検層結果に基づく地下水水質の推定方法に関する検討

本研究では、北海道幌延地域に分布する新第三系堆積岩を対象に、ボーリング孔において実施される比抵抗検層結果から間隙水の水質を定量的に把握するための手法について検討を行った。比抵抗検層結果からの水質の推定については、Archieの式等を用いて等価NaCl濃度を算出した。この等価NaCl濃度と、ボーリングコアから抽出した間隙水中のNaCl濃度の分析値をt検定により比較した結果、対象としたボーリング孔11孔のうち7孔において有意差(有意水準5%)がないと判断できた。分析値と計算値が一致しなかったボーリング孔については、塩分濃度が低いためにArchieの式が適用できないことや、ボーリング孔掘削時の掘削水が孔壁から混入したことによる水質の変化が原因と考えられた。これらを踏まえ、一定の条件を満たせば比抵抗検層結果から間隙水のNaCl濃度が定量的に推定可能であることを示すとともに、実際の調査現場において必要となる手順を整理した。

応用地質 Vol.58 No.3 pp.178-187 2017
青柳和平、名合牧人

幌延深地層研究センターにおける坑道掘削の情報化施工支援技術の開発

本報告では、幌延深地層研究センターの地下施設建設時の情報化施工支援技術の開発、および坑道周辺の岩盤のモニタリング結果について記載した。情報化施工支援技術開発では、事前設計、実施設計を含む予測解析データ・施工データ・地質データ・坑内計測データ等から得られる情報を三次元で一元管理できるシステムを構築し、適宜データを更新しながら適切な支保設計を行うことができた。また、岩盤のモニタリング結果から、坑道掘削直後に、壁面から約1mの範囲で割れ目が発達し、それに伴う透水係数の増大が確認されたが、掘削後はその領域は安定していることや、支保工の健全性が保たれていることがわかった。これらの情報を統合することで、施工中および施工後の岩盤の損傷や透水性といった岩盤の状態も考慮した情報化施工や維持管理が可能になると考えられ、今後、地層処分技術開発では、工学的な観点から本報告で記載した技術が重要な役割を果たしていくことが期待される。

地盤工学会誌 Vol.65 No.8 pp.12-15 2017
萩野正貴、大脇英司、白瀬光泰、中山雅

非定常電気泳動とEPMAによるコンクリート中の塩化物イオン拡散係数の迅速測定

塩化物イオンの拡散係数はコンクリートの耐久性を評価する重要な指標であるが、耐久性の高いコンクリートは物質透過抵抗性に優れるため、測定に時間を要する。われわれは非定常の電気泳動操作にEPMAを組み合わせた迅速法について検討した。浸入した塩化物イオンについて、浸入範囲と濃度分布を求め、塩化物イオンの分布から電気泳動が主たる輸送機構ではないと判断される浸入範囲を除外し、Nernst-Planckの式により拡散係数を求めた。この拡散係数は、塩水浸せき試験により得られる値とほぼ同等である。従来の試験と比較し、試験期間を1〜2割程度に短縮できる可能性があることが確認できた。

コンクリート工学年次大会2017 仙台市
コンクリート工学年次論文集(DVD-ROM) Vol.39 No.1 pp.703-708 (2017/7)
2017
石橋正祐紀、湯口貴史

花崗岩類中の鉱物分布および鉱物組合せとその量比(モード組成)の新たな評価手法の構築:走査型X線分析顕微鏡で取得した元素分布図を用いた画像解析

花崗岩類中の鉱物分布やモード組成は、その形成過程の検討、花崗岩類中の割れ目の分布特性や基質中の物質移動を理解する上で有用な情報である。モード解析手法としては、ポイントカウンティング法、電子顕微鏡など用いた画像解析手法などが提案される。しかし、既存手法では観測者の技量や解析可能な領域が狭いなどの課題がある。そこで、本研究は、測定領域が広い走査型X線分析顕微鏡(SXAM)で取得した元素分布図を用いて、鉱物個々の化学組成の不均質性を考慮し、花崗岩類中の二次鉱物も含めた鉱物分布とモード組成を簡易かつ客観的に評価できる新たな手法(MJPD法)を提示する。MJPD法は、各鉱物から出力される元素のX線強度分布を正規分布と仮定し、X線強度のバラつきを考慮して各画素の鉱物種を同定可能とした。土岐花崗岩の肉眼観察で顕著に変質を被る試料と被らない試料を対象としてMJPD法の妥当性を検証した結果、岩石薄片程度であれば、SXAMで約10,000秒測定することで簡易にモード組成が把握でき、かつ鉱物分布図の構築が可能であることを確認した。また、MJPD法は、他の機器で取得した元素分布図にも適用可能であり、今後の適用の拡大が期待できる。

応用地質 Vol.58 No.2 pp.80-93 2017
笹尾英嗣

超深地層研究所計画における研究の歩み

原子力機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業と安全規制の両面を支えるため、地層処分技術に関する研究開発を進めてきた。このうち、東濃地科学センターでは、深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、岐阜県瑞浪市において超深地層研究所計画を進めている。本報告では、本計画を中心に、これまでの経緯および成果、並びに研究開発の現状を紹介する。

原環センター トピックス No.122 pp.4-12 2017
早野明、板倉賢一

三次元レーザスキャナ計測の坑道壁面の割れ目観察への適用性

大規模地下施設建設の坑道掘削時に行われる割れ目観察は、調査員の目視観察とクリノメーターを使用した割れ目方位の簡易計測といった従来からの手法に基づいている。そのため、調査の規模が大きいほどデータ品質の確保と調査員の安全確保が依然として課題である。計測対象物の三次元形状を表す点群を瞬時に取得できる三次元レーザスキャナ計測は、これらの課題解決に有効である。本研究では、レーザ計測の坑道壁面の割れ目観察への適用性を確認するために、坑道壁面の形状を表す点群から割れ目の方位やトレース長などの空間分布に関する情報を取得する方法を検討した。その手法は、坑道壁面形状を表す判読画像を用いた割れ目判読を基本としている。そして、その手法を掘削長50m程度の水平坑道に適用し、点群から取得できる割れ目データがどの程度従来手法に基づく割れ目データを再現しているのか確認した。その結果、調査員が目視観察により抽出した割れ目のうち8割強の割れ目が抽出され、割れ目方位も従来手法と比べて遜色ないことを確認した。点群から抽出できなかった割れ目のほとんどは、透水に寄与しないトレース長が短く密着性の良い割れ目であった。

Journal of MMIJ Vol.133 No.4 pp.76-86 2017

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Nara, M. Kato, R. Niri, M. Kohno, T. Sato, D. Fukuda, T. Sato and M. Takahashi

Permeability of Granite Including Macro-Fracture Naturally Filled with Fine-Grained Minerals

多くの分野で岩石の透水性に関する情報は重要なものである。特に、き裂や間隙が岩石の物理的特性や移行特性に与える影響を把握することは重要である。地下水の浸透により細粒の鉱物がき裂に充填されるが、このような岩石の透水性については十分調査されていない。このため、本研究では、粘土と鉱脈が充填された岩石の透水試験を実施した。その結果、細粒鉱物が充填されたマイクロフラクチャーを含む供試体の透水係数は健岩部のそれと同等の透水係数であった。粘土を含む場合は透水性が高くなるものの、充填物が無いき裂がある供試体よりは透水性が小さかった。

Pure and Applied Geophysics Vol.175 No.3 pp.917-927 2018
S. Tamamura, K. Miyakawa, N. Aramaki, T. Igarashi and K. Kaneko

A Proposed Method to Estimate In Situ Dissolved Gas Concentrations in Gas‐Saturated Groundwater

地下の環境を調査する上で、二酸化炭素やメタン、水素、ヘリウムなどの溶存ガス量を精確に把握することが重要である。幌延のような溶存ガスに飽和している環境では、掘削に伴う圧力の低下により溶存ガスの脱ガスが生じるため、掘削前の原位置の情報を得ることはとても困難である。このことは、地上からのボーリング孔を利用した調査でも避けることができず、また地下施設を利用した場合においても同じである。そこで本研究では、脱ガスした試料の溶存ガス分析結果と、脱ガス前の圧力情報を用いた定量的な解析手法を開発した。本研究では、各ガス種の物理的溶解に対してはヘンリーの法則を考慮し、二酸化炭素に対しては化学的溶解についても考慮することで、脱ガスによる溶存ガス濃度の変化を精度よく計算することが可能になった。このことにより、これまで得ることが困難であった掘削前の原位置の情報をより正確に推定することが可能になった。本結果は、ヘリウムガスを用いた地下水年代測定法や、地下水流動解析における飽和・不飽和の判定などに適用することができ、その波及効果は大きい。

Groundwater Vol.56 No.1 pp.118-130 2018
M. Iino, S. Ohnuma, Y. Hirose, H. Osawa and S. Ohtomo

The framing effects of compensation on acceptance of NIMBY facility: A scenario experiment of High level radioactive waste geological repository

本研究では、高レベル放射性廃棄物地層処分場の受容に対する補償のフレームの影響を調べることを目的としてシナリオ実験を行った。その結果、高レベル放射性廃棄物地層処分場を事例とした場合のシナリオ実験では、補償の枠組みは合意形成には影響を与えないという結果となった。

The Society of Risk Analysis, Asia Conference 2018 Osaka (Japan) 2018
K. Ino, A. W. Hernsdorf, U. Konno, M. Kouduka, K. Yanagawa, S. Kato, M. Sunamura, A. Hirota, Y. S. Togo, K. Ito, A. Fukuda, T. Iwatsuki, T. Mizuno, D. D. Komatsu, U. Tsunogai, T. Ishimura, Y. Amano, B. C. Thomas, J. F. Banfield and Y. Suzuki

Ecological and genomic profiling of anaerobic methane-oxidizing archaea in a deep granitic environment

岐阜県瑞浪市の超深地層研究所において、深度300メートルの地下水を地下坑道から採取し、地下微生物の生態系を調査した。その結果、花崗岩深部でマグマ由来のメタンに依存した微生物生態系が存在することを明らかにした。

The ISME Journal Vol.12 No.1 pp.31-47 2018
K. Nakata, T. Hasegawa, T. Oyama, E. Ishii, K. Miyakawa and H. Sasamoto

An Evaluation of the Long-Term Stagnancy of Porewater in the Neogene Sedimentary Rocks in Northern Japan

高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価におけるシナリオの一つとして、地下水シナリオがある。地下水シナリオに基づく安全評価において、長期間にわたり地下水の移動が遅いことは重要な要因である。本研究では、透水性の低い堆積岩地域の一例として、北海道幌延地域に分布する新第三系の海成堆積岩である声問層と稚内層中の地下水の安定性について、塩素やヘリウムの同位体及び水の安定同位体を用いて調査・考察を行なった。その結果、稚内層の深部地下水は、約100万年前から始まった地層の隆起後も、天水の影響を受けることなく、安定に存在している可能性が示された。一方、声問層や稚内層浅部の地下水は、地層の隆起後、天水の影響を受けており、このことは地下水年代測定の結果からも支持された。本地域の様に、地層の圧密・続成作用を受けた厚い堆積層では、間隙水・結晶水の放出等の影響を受け、地下水の絶対年代を正確に推定することは難しい。しかし、本研究において検討した地下水年代測定の結果と地史との比較は、地下水の流動性に関わる概略的な評価(長期にわたる地下水の安定性の有無)を行う上で有効な手段であると考えられる。

Geofluids Vol.2018 pp.7823195_1 - 7823195_21 2018
E. Ishii

Estimation of the highest potential transmissivity of discrete shear fractures using ductility index

地層・岩盤中の亀裂の最大透水量係数は地層処分におけるサイトの保守的な評価を行う上で重要なパラメータである。しかし、サイト周辺に存在し得る全ての亀裂の透水量係数を把握するのは非現実的で、何らかの空間分布の推定が可能なパラメータと関連付けて推定することが重要となる。先行研究により断層帯中の亀裂の潜在的な最大透水量係数はダクティリティインデックス(DI)を用いて予測可能であることが指摘されている。本研究は、断層帯中の亀裂内の空隙構造の形成・保持のメカニズムが個別せん断亀裂系における亀裂内の空隙構造のそれと同じであることに着目し、DIモデルが個別せん断割れ目の潜在的最大透水量係数の予測にも適用可能かどうかを北海道幌延地域の新第三紀珪藻質泥岩(声問層)中に発達するせん断亀裂系の地質・水理データを用いて検証した。その結果、得られたデータセットは既存のDIモデルのデータセットとよく整合し、DIモデルは断層帯のみならず、より小規模な個別せん断亀裂にも適用可能であることが示唆された。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.100 pp.10-22 2017
K. Hama

Mizunami Underground Research Laboratory Project - Achievement during Phase I/II and Important Issues for Phase III -

日本原子力研究開発機構バックエンド研究開発部門東濃地科学センターでは深地層の科学的研究の一環として、結晶質岩(花崗岩)を主な対象とした超深地層研究所計画を進めている。 超深地層研究所計画は、地表からの調査予測研究段階、研究坑道の掘削を伴う研究段階、研究坑道を利用した研究段階の3段階からなる計画である。超深地層研究所計画では、深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備及び深地層における工学技術の基盤の整備を第1段階から第3段階までを通した全体目標として定め、調査研究を進めている。本稿では、これまでの研究成果の概要を紹介するとともに、研究坑道を利用した研究段階のうち、平成27年度から平成31年度までの深度500mまでの研究坑道を利用して実施する、地下坑道における工学的対策技術の開発、物質移動モデル化技術の開発、坑道埋め戻し技術の開発、の3つの研究開発課題について紹介する。

6th East Asia Forum on Radwaste Management Conference (EAFORM2017) Osaka (Japan)
Proceedings of EAFORM2017 5A-1
2017
M. Tsuji, M. Okihara, H. Nakashima, T. Sato and K. Aoyagi

Latest grouting technologies under sea water in Nordic countries and Japan

地層処分場建設のための工学技術として、坑道掘削時における湧水抑制対策でグラウト技術が用いられる。沿岸部においては地下水が海水条件下にあり、セメント系のグラウト材料については大きな問題になることは指摘されていない。一方、北欧などで検討されている許容湧水量を満足するためには浸透性が高い溶液型のグラウトの適用が必須であるが、海水条件での特性データが十分ではなく、施工方法も未確立である。このため、文献調査や海外の現地視察およびワークショップを実施し、最新の知見を整備した。その結果、日本、スウェーデン、フィンランドとそれぞれ対策から課題となるポイントが配合選定、設計手法、施工手法と大きく区分されると考えられた。最終的には各国の対策を把握して、適切な設計施工を実施するのが望ましいといえる。我が国においては、注入する岩盤の地下水環境や練混ぜ水が淡水から海水条件となる可能性を想定し、ジェネリックな海水条件に対する配合対策を開発する必要があることが明らかになった。

6th East Asia Forum on Radwaste Management Conference (EAFORM2017) Osaka (Japan)
Proceedings of EAFORM2017 5A-3
2017
Y. Ootsuka, T. Ishikawa, K. Tajima, T. Wada, Ö. Aydan, N. Tokashiki, T. Sato and K. Aoyagi

Rock mass property evaluation based on the borehole wall images taken by using an ultrasonic scanner (USS)

幌延地下研究施設の東立坑の底から掘削されたボーリング孔において、光学式ボアホールカメラに及び超音波式ボアホールカメラ(USS)による画像データを取得した。このうちUSSによる反射強度データの解析結果は、コアの針貫入試験の結果とよい一致を得た。また、この反射強度データから求めた反射強度特性値(Ave, Dev)は、岩盤評価を行う上で重要な自然由来のクラックとそれ以外の人工由来のクラックの判別が可能にすることが示された。

11th Asian Regional Conference of IAEG (ARC-11) Kathmandu (Nepal)
Journal of Nepal Geological Society Vol.55 (Sp. Issue) pp.1-6 (2018)
2017
E. Ishii and A. Furusawa

Detection and correlation of tephra-derived smectite-rich shear zones by analyzing glass melt inclusions in mineral grains

幌延深地層研究センターの地下施設に出現した粘土質せん断帯に含まれる粘土物質の顕微鏡観察を行った結果、粘土物質にはメルトインクルージョン(MI)が多く含まれていることが分かり、それらの化学組成を分析すると、全てのMIが同一の組成を持つことが分かった。さらに、センター周辺のボーリングコアに認められる粘土質せん断帯を調べた結果、これと同一の組成を示すMIが他にも複数箇所で検出され、これらの粘土質せん断帯はセンター周辺に分布する既知の火山灰層面とほぼ一定の比高を保ちながら(同火山灰層の350m下方)、数キロメートルにわたって分布することが分かった。これらのことから、このMIを含む粘土物質は火山ガラスが変質したものであり、この粘土物質を多量に含むせん断帯(粘土質せん断帯)は泥岩が破砕・変質して形成されたのではなく、泥岩中に挟在する火山灰層が変質・変形して形成されたものであることが分かった。

Engineering Geology Vol.228 pp.158-166 2017
H. Sasamoto and S. Onda

Preliminary results for natural groundwater colloids in sedimentary rocks of the Horonobe Underground Research Laboratory, Hokkaido,
Japan

コロイド濃度は、コロイドによる移行促進を扱うモデルにおいて重要なパラメータである。本研究の目的は、手法開発の一環として、幌延地下研究施設で採取した地下水中のコロイドを対象に、濃度や安定性に関わる特性を調べることである。幌延地下研究施設で得られた地下水中のコロイドは、数nm~500nm程度の大きさで、コロイドサイズの中央値は、120nm 程度であった。DLVO理論に基づくコロイドの安定性評価によれば、比較的大きなサイズのコロイド(直径100nmよりも大きいもの)は、よリ小さいサイズのコロイドよリも安定であることが示唆された。100nmよリも大きいコロイドの粒子濃度は、2.33×106~1.12×108pt/mLと見積もられ、重量濃度としては、45~1540μg/L程度であると見積もられた。幌延の地下水中のコロイドは、諸外国におけるコロイド調査結果と比較すると、コロイドの安定性は低く、輸送性は中間的であると推定された。コロイドの安定性が低いのは、幌延の地下水のイオン強度がやや高めであること、輸送性が中間的であるのは、地下水中の溶存有機物濃度が他国の地下水と比べても同程度であるためと考えられる。

7th international Conference on Clays in Natural and Engineered Barriers for Radioactive Waste Confinement (Clay Conference 2017) Davos (Switzerland)
Geological Society Special Publications Vol.482
pp.191-203
2017
T. Iwatsuki, T. Munemoto, M. Kubota, K. Hayashida and T. Kato

Characterization of rare earth elements (REEs) associated with suspended particles in deep granitic groundwater and their post-closure behavior from a simulated underground facility

瑞浪超深地層研究所において、地下水及び懸濁態粒子に含まれる希土類元素の挙動について研究を行った。その結果、地下水中の希土類元素の10~60%が懸濁粒子に付着して存在することが確認された。希土類元素が付着する懸濁粒子は主に炭酸塩コロイドであり、一般的な地下水は炭酸塩鉱物に対して飽和平衡状態にあることから、炭酸塩コロイドの起源は炭酸塩鉱物と推察された。また、坑道閉鎖環境においては、地下水中の溶存態及びコロイド態の希土類元素濃度が、周辺の地下水に比べて有意に低下することが確認された。熱力学計算により地下水に溶存する希土類元素は主に炭酸錯体と推測され、坑道壁面のセメント吹付上に炭酸塩コロイドとともに吸着・共沈していると考えられた。以上の事から、地下施設におけるセメント材料の使用は、希土類元素の移動し難い環境を形成すると考えられる。

Applied Geochemistry Vol.82 pp.134-145 2017
M. Nago, T. Motoshima, K. Miyakawa, S. Kanie and S. Sanoki

Three-dimensional visualization of methane concentration distribution in tunnels to increase underground safety

トンネルや地下空洞などの地下構造物を建設する際には、地盤から自然由来のメタンガスが発生し、爆発事故や酸欠事故などの災害が発生する場合がある。このため、安全・法令の両面からメタン等の可燃性ガスを計測管理することは重要である。しかし、従来の固定センサ等による計測では、ガス噴出箇所の面的・立体的分布の把握は難しいという問題があった。そのため、本研究では、レーザー距離計とレーザーメタンセンサを組み合わせ、空間内のメタン濃度分布と空間形状を同時に計測するシステムを開発した。計測したメタン濃度分布を可視化することで、メタンの噴出箇所を特定することができる。開発したシステムを用いて幌延深地層研究センターの地下350m調査坑道においてメタン濃度を計測した結果、従来の固定式センサでは見落とされていた比較的高濃度(数百ppm)のメタン濃度分布が明らかになった。このメタン濃度分布は、主要な断層分布と一致していることから、本研究で開発したシステムの有効性が確認できた。

ITA-AITES World Tunnel Congress 2017 (WTC 2017) Bergen (Norway)
Proceedings of the ITA-AITES World Tunnel Congress 2017 (WTC 2017) (USB Flash Drive: 10pages)
2017
K. Aoyagi, K. Kamemura, M. Nago, K. Sugawara and M. Matsubara

Development of a back analysis method for the estimation of in situ stress based on the measured convergence in the Horonobe Underground Research Laboratory

高レベル放射性廃棄物地層処分場の建設において、地下坑道の設計の高度化に資するために、処分場周辺の初期地圧状態の情報が重要である。これまで、初期地圧計測は、国内外の多くの現場で行われてきたが、評価結果のバラつきは大きいことがしばしばある。そのため、坑道の支保設計への反映が難しいという問題がある。この背景を踏まえ、本研究では、坑道で取得された内空変位計測結果に基づき、広域的な地圧状態を推定するための逆解析手法を構築することを目的とした。解析には、幌延深地層研究センターの深度350mの周回坑道において、様々な方向で計測された内空変位のデータを使用した。また、解析モデルには、周回坑道周辺の断層や不連続面を取り入れ、地質構造の影響も含めて詳細な検討を行った。解析による地圧の推定結果は、地下施設建設前に実施した水圧破砕法による測定結果に概ね整合するものであったため、広域地圧状態の推定における本手法の適用可能性が示された。

ITA-AITES World Tunnel Congress 2017 (WTC 2017) Bergen (Norway)
Proceedings of the ITA-AITES World Tunnel Congress 2017 (WTC 2017) (USB Flash Drive: 10pages)
2017
M. Tsuji, S. Kobayashi, S. Mikake, T. Sato and H. Matsui

Post-grouting experiences for reducing groundwater inflow at 500 m depth of the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

本稿は、瑞浪超深地層研究所の深度500m水平坑道におけるポストグラウチングの施工結果について報告するものである。ポストグラウチングでは、グラウト材料、注入工法、注入範囲についての最適な仕様を確認した。その結果、溶液型材料の使用、複合動的注入工法の適用、プレグラウチングの外側の範囲に対するポストグラウチングの実施、という設定が有効であった。湧水抑制対策としては、プレグラウチングを実施し、その後ポストグラウチングを実施する組み合わせが効率的であり、その際、最適な設計(溶液型グラウト、複合動的注入、プレグラウトの外側範囲に適用)に基づき施工することで、更なる湧水抑制効果が期待できると考えられる。

2017 ISRM European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2017) Ostrava (Czech Republic)
Procedia Engineering Vol.191 pp.543-550
2017
E. Ishii

Preliminary assessment of the highest potential transmissivity of fractures in fault zones by core logging

断層帯に関する既往の水理力学的研究によると、引張性/ハイブリッド性のダメージゾーン亀裂を伴わない断層帯は非常に脆性的な様式での断層運動を経験していない可能性が高く、断層帯中の亀裂の潜在的な最大透水量係数は10-8m2/s以下である可能性が高いことが想定される。本研究はこの想定を検証するために、断層帯中のダメージゾーン亀裂の破壊モード(引張性/ハイブリッド性/せん断性)と断層帯中の亀裂の最大透水量係数の関係を、幌延の珪質泥岩中のボーリング孔データ(コア観察結果と流体電気伝導度検層結果)から検討した。引張性/ハイブリッド性のダメージゾーン亀裂を伴わない断層帯の96%(35/36)は流体電気伝導度検層によって断層帯中に検出されるフローアノマリーの透水量係数は10-8m2/s以下であった。この結果は先述の想定を支持する。

Engineering Geology Vol.221 pp.124-132 2017
T. Yuguchi, S. Sueoka, H. Iwano, T. Danhara, M. Ishibashi, E. Sasao and T. Nishiyama

Spatial distribution of the apatite fission-track ages in the Toki granite, central Japan: Exhumation rate of the Cretaceous pluton emplaced in the East Asian continental margin

本報告では、中部日本の東濃地域、土岐花崗岩体のアパタイトフィッション・トラック(AFT)年代の空間分布を明らかにした。AFT年代の空間分布は低温条件での花崗岩の3次元的な冷却史を解明することに有用である。低温条件の冷却史の解明は、岩体の上昇速度の解明に有用となる。そこで、本報告ではAERs(age-elevation relationships)とHeFTyプログラムによるAFT逆解析に基づいて土岐花崗岩体の上昇速度について考察を行った。

Island Arc Vol.26 No.6 pp.e12219_1-e12219_15 2017

ページトップへ


地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
奥野充、長岡信治、國分陽子、中村俊夫、小林哲夫

加速器質量分析法による九重火山群、黒岳火砕流堆積物の放射性炭素年代

中部九州の九重火山群は、20座以上の溶岩ドームと小型の成層火山からなる複成火山である。黒岳溶岩ドームは、体積約1.6km3と最大であり、黒岳火砕流堆積物(Kj-Kd)と黒岳降下火山灰(Kj-KdA)を伴う。本研究では黒岳溶岩ドームの噴火年代を確認するため、Kj-Kdの炭化樹幹の放射性炭素(14C)年代を日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの加速器質量分析装置を用いて測定した。得られた14C年代は1505士40BP(JAT-8677、13C= -23.8‰)で、暦年較正すると1310-1423cal BP (74.6%)、1430-1442 cal BP (2.4%)、1456-1521 cal BP (23.0%)、その中央値は1391cal BPである。この結果はKj-KdAの下位にある阿蘇N2テフラ(約1.5cal ka BP)との層位関係とも整合的であることから、より信頼できるKj-Kdの噴火年代であると考えられる。

福岡大学理学集報 Vol.48 No.1 pp.1-5 2018
植木忠正、丹羽正和

走査型X線分析顕微鏡と画像処理・解析ソフトウエアを用いたモード測定

従来のポイントカウンティング法によるモード測定は時間がかかり、測定者の鉱物判別の技量や主観によって結果が左右されるという課題がある。本研究では、より容易で測定者の技量や主観によらない新たなモード測定の手法として、走査型X線分析顕微鏡と画像処理・解析ソフトウェアを用いた手法を紹介する。この手法によって薄片または研磨片の測定を行うことで、花崗岩質岩の鉱物分布図とモード組成を迅速かつ効率的に取得することが可能となった。

地質学雑誌 Vol.123 No.12 pp.1061-1066 2017
末岡茂

【巻頭言】FTニュースレター第30号記念号に寄せて

日本フィッション・トラック研究会の会誌であるフィッション・トラックニュースレターが、今号で第30号記念を迎えた。巻頭言として、日本のフィッション・トラック分野における過去の流れを振り返ると共に、近年における業界の動向や、今後の展望などについても概観する。

フィッション・トラックニュースレター No.30 p.1 2017
末岡茂

日本アルプスの形成に関する熱年代学的研究

熱年代等の手法を用いた山地の隆起・削剥史の検討事例として、南アルプス北部地域と北アルプス黒部地域の事例を紹介する。南アルプス北部地域では、フィッション・トラック年代や(U-Th)/He年代が山地東方に向かって系統的に若返る傾向が見られた。Thermo-kinematicモデルで検討したところ、これらの年代パターンは、白州-鳳凰山断層の活動によって再現可能であり、本地域は主にこれらの断層運動によって隆起していることが示唆された。北アルプス黒部地域では、新第三紀から第四紀の若い花崗岩が多数分布するため、従来の熱年代学的手法では隆起・削剥史の復元が困難であった。そのため、国内外の研究者との共同プロジェクトにより、新たに2種類のアプローチを用いて隆起・削剥史の復元を試みた。

フィッション・トラックニュースレター No.30 pp.4-6 2017
福田将眞、末岡茂、長谷部徳子、田村明弘、荒井章司、田上高広

低温領域の熱年代学的手法を用いた東北日本弧における隆起・削剥史の解明

東北日本弧の100万年スケールの地殻変動像把握のために、阿武隈山地、奥羽脊梁山脈、朝日山地にて、アパタイトフィッション・トラック(AFT)解析を実施した。前弧側の阿武隈山地では79.5-66.0Maの古いAFT年代が得られ、熱履歴解析の結果や先行データと合わせて、本地域は白亜紀後期以降は比較的安定な削剥環境だったことが推定された。対照的に、奥羽脊梁山脈では29.8-5.5Ma、背弧側の朝日山地では21.0-17.6Maの若いAFT年代が得られた。熱履歴解析の結果や既報のアパタイト(U-Th)/He年代と合わせると、最近数Maの山地形成に伴う急冷を反映していると解釈できる。脊梁山脈と背弧側の一部では、日本海拡大より古い年代も得られたが、これらの解釈に関しては、今後の追加分析が望まれる。

フィッション・トラックニュースレター No.30 pp.7-10 2017
末岡茂

第41回日本フィッション・トラック研究会実施報告

第41回フィッション・トラック研究会が、2017年3月1日から3月3日にかけて、奈良県明日香村祝戸荘にて開催された。本研究会は、ESR応用計測研究会及びルミネッセンス年代測定研究会と合同で行われ、48名の参加者により、31件の発表が行われた。また、3月2日には、第41回フィッション・トラック研究会総会も行われ、今後のフィッション・トラック研究会の体制や運営方法などについて議論された。

フィッション・トラックニュースレター No.30 pp.30-32 2017

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Watanabe, Y. Kokubu, H. Murakami and T. Iwatsuki

Onsite chelate resin solid-phase extraction of rare earth elements in natural water samples: Its implication for studying past redox changes by inorganic geochemistry

地下環境における酸化還元環境の変遷は長期安定性評価において重要な情報であり、地層処分に関連する技術開発につながることが期待される。地下水や地質試料等に含まれる希土類元素(REEs)を分析することにより、物質の供給源や酸化還元環境の変遷に関する情報を得ることが可能となる。本研究では、REEsの濃縮と妨害元素の除去を目的として、イミノ二酢酸-エチレンジアミン三酢酸型キレート樹脂(PA1)の有用性を検討した。標準試料(SPS-SW1)のキレート濃縮試験では、REEs等で高い回収率を得ることができた。また、妨害元素であるバリウムを除去することができた。天然試料に対する適用性については、比較的REEs濃度の高い試料を用いて試験を行った結果、キレート処理をしない条件で得られたREEsパターンと、採水現場でPA1を用いて回収した試料の分析結果とがよく一致した。また、同地点から採取した複数試料の分析結果もよく一致し、本手法の再現性を確認することができた。本結果は、様々な組成を示す地下水試料の化学分析において、PA1によるREEs濃縮が安定した処理方法であることを示唆する。採水現場でキレート樹脂を使用し固相抽出を行うことにより、地下水中のREEs分析を効率良く実施できる可能性が示された。

Limnology Vol.19 No.1 pp.21-30 2018
A. Matsubara, N. Fujita and K. Ishii

Applications of ion channeling in accelerator mass spectrometry

AMSにおける同重体分別技術の開発が盛んに行われている。本論文では、2つの新しい同重体分離技術を提案する。一つはチャネリングディグレーダーともう一つはコヒーレント共鳴励起(RCE)に基づく同重体分離である。両方とも、イオンが結晶チャネルを通過すると、大きな角度のイオン散乱を大幅に減少させる現象である「イオンチャネリング」に基づいている。チャネリングディグレーダーではイオンの透過性を上げることに成功した。またRCEに基づく同重体分離については結晶内での電離段階を利用した同重体分離を行っている。

14th International AMS Conference (AMS-14) Ottawa (Canada)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B
Vol.437 pp.81-86(2018)
2017
Y. Saito-Kokubu, N. Fujita, M. Miyake, T. Watanabe, C. Ishizaka, N. Okabe, T. Ishimaru, A. Matsubara, A. Nishizawa, T. Nishio, M. Kato, H. Torazawa and N. Isozaki

Current status of JAEA-AMS-TONO in the 20th year

JAEA-AMS-TONOは、日本原子力研究開発機構東濃地科学センターに導入されてから20周年を迎えた。5MVタンデム型加速器質量分析装置を用いて、炭素、ベリリウム、アルミニウムの同位体測定を行っている。また、現在、さらなる利用を広げるため、ヨウ素同位体測定等の整備を進めている。年間の測定試料数はここ5年の平均で、およそ1000個である。そのうち、最も多い測定は炭素であり、主に高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる地質環境の長期安定性に関する研究の一環で地質試料の年代測定に使われている。近年、試料調製のスピードを上げるため、自動グラファイト調整装置の導入及び地下水中の溶存無機炭素のガス化回収装置の構築を行った。また、ベリリウム、アルミニウム測定では地球科学の研究に利用する一方、ベリリウムについては検出限界の低減を図った。最近、ヨウ素の測定に向け、測定条件の検討を行っている。

14th International AMS Conference (AMS-14) Ottawa (Canada)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B
Vol.456 pp.271-275(2019)
2017
M. Shimizu, K. Shibata, K. Suzuki, S. Sueoka and M. Niwa

CHIME monazite dating: Pb analysis on an RR=100mm spectrometer and correction of interferences between Th, U, and Pb with natural monazite

ローランド円半径(RR)100mmの分光器を備えたフィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)を用いて、CHIME(Chemical Th-U-total Pb isochron method)年代測定を行った。RR=100mmの分光器は、従来型のRR=140mmの分光器と比較して感度が高く、短時間での測定が可能である。しかしその反面、X線の干渉の影響が大きいことからRR=140mmの分光器に比べて波長分解能が低く、これまではCHIME年代測定に用いることが困難であった。本研究では、天然のモナザイトを用いてX線の干渉補正係数を求めることによりこの問題を克服し、RR=100mmの分光器を使用したCHIME年代測定を可能にした。

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.112 No.2 pp.88-96 2017

ページトップへ


使用済燃料直接処分に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Atz, X. Liu, M. Fratoni, J. Ahn and F. Hirano

Material Composition Effects on Far-field Deposition Minimum Critical Mass

After nuclear waste is buried in a repository, hydrogeological processes can dissolve, transport, separate, and rearrange radionuclides inside or outside the repository. If fissile material becomes separated from neutron absorbers and precipitates in a far-field geologic formation, a critical mass may be formed. The scope of this study is to assess the impact of the spent fuel composition and host rock type on the risk of criticality in the far field. In particular, this study performs neutronics analysis in order to determine the minimum theoretical mass of fissile material needed to achieve criticality in a water-saturated far-field deposition under conservative conditions. Understanding of the effects of composition of spent fuels and host rock types enable discussion of the likelihood of far field criticality from LWR used fuel. In addition, this work makes recommendations on repository design and LWR fuel cycle management so as to minimize the risk of far-field criticality.

International High-Level Radioactive Waste Management (IHLRWM) 2017 Charlotte, NC (USA) 2017

ページトップへ