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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成27年度分)

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全項共通(国内・国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究( 国内・国外 )/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内・国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
加藤智子

自然被ばく線量

自然界に存在する放射性核種等からの被ばく線量について解説する。

放射化学の事典(朝倉書店) VI-08 pp.204-205 2015

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
平野伸一、長岡亨、伊勢孝太郎、天野由記、松本伯夫

土壌微生物群集によって誘引される炭素鋼腐食とそのメカニズムの解析

本研究では、土壌環境微生物を対象として腐食ポテンシャルおよびそのメカニズムについて知見を得るために、一般的な湖沼底泥を植菌源として炭素鋼とともに培養を行った。その結果、いずれの培養条件でも炭素鋼を腐食、減損する活性が見られ、特に有機物添加・汽水培地において硫酸還元活性、メタン生成活性とともに高い腐食活性が得られた。土壌埋設設備への微生物の腐食影響を適切に評価するためには、硫酸還元菌、メタン生成菌などの相互作用を踏まえた評価が必要と考えられる。

材料と環境 Vol.64 No.12 pp.535-539 2015
石寺孝充

地層処分の工学技術および性能評価研究

本資料は、地層処分の工学技術および性能評価研究について解説したものである。

日本原子力学会バックエンド部会2015年度バックエンド週末基礎講座 仙台市
原子力バックエンド研究 Vol.23 No.1 pp.99-101 (2016/6)
2015
柴田雅博、亀井玄人

放射性廃棄物概論 第7回 地層処分システムの安全評価

連載講座『放射性廃棄物概論』の一環として、地層処分システムの安全評価に関する一般的な手法と、関連する最新の国際動向等について解説する。

日本原子力学会誌 Vol.57 No.4 pp.33-37 2015

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Sawada, H. Saegusa, S. Takeuchi, K. Sakamoto and W.S. Dershowitz

Aspo Task Force on modelling of groundwater flow and transport of solutes
Task 7 - Groundwater flow and transport modelling of fracture system at regional, block, and single-fracture scale flow and transport, Olkiluoto

本報告書は、水理・物質移行モデルに関するエスポタスクフォースで 「タスク7」と呼ばれる、地下水流動と物質移行のモデル化研究の成果をとりまとめたものである。タスク7はフィンランドオルキルオトのサイト特性データセットに基づき構築された水理地質構造モデルの不確実性に注目し、サイト特性調査に基づく情報と性能評価の連携を示すことを目指している。タスク7の目的のひとつは、Posiva Flow Logによる情報が水理地質構造や性能評価に関連する水理挙動のモデルの不確実性の低減にどの程度活用できるかについて検討することにある。また、タスク7はオルキルオト全体を対象とした広域スケールから、母岩中のトンネルスケールまでの小さなスケールまでを対象としている。本タスクは、一連のPosiva Flow Logの情報を使い、水理データがそれぞれのスケールのモデル化で鍵となる水理地質構造モデルの更新や調整の方法とその有効性を示した。

SKB P-13-46 (82 pages) 2015
T. Goto, S. Mitsui, H. Takase, S. Kurosawa, M. Inagaki, M. Shibata and K. Ishiguro

Development of performance assessment models for glass dissolution

原子力発電環境整備機構と原子力機構は、概要調査段階における処分場の設計・性能評価に関連する主要な技術テーマを対象に2011年度から共同研究を進めている。我々は、この共同研究の一環として、鉄オーバーパックの腐食に伴うFeケイ酸塩の生成やオーバーパックの亀裂内の腐食生成物を通じたSiの移行など、様々なプロセスを考慮したガラス溶解モデルを開発している。モデル開発の目的は、ガラス溶解に関連するプロセスの相対的重要度の評価及び説得力のあるセーフティケースの作成に向けた更なる研究開発課題の特定である。感度解析では、1千年から1千万年を超える範囲のガラス固化体寿命が見積もられた。これはFeケイ酸塩の生成やガラス変質層内の物質移行特性など、主要なプロセスに関する現時点での理解に不確かさによるものである。

MRS 2015 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Montpellier (France)
MRS Advances Vol.1 No.63-64 pp.4239-4245 (2016) (online 2017/2)
2015
Y. Tachi, T. Ebina, C. Takeda, T. Saito, H. Takahashi, Y. Ohuchi and A. J. Martin

Matrix diffusion and sorption of Cs+, Na+, I- and HTO in granodiorite : Laboratory-scale results and their extrapolation to the in situ condition

結晶質岩中の核種移行評価においてマトリクス拡散と収着現象の理解は重要である。スイスのグリムゼル原位置試験場から採取した花崗閃緑岩試料を用いて、 Cs+, Na+, I-とHTO(トリチウム水)の拡散・収着挙動が、透過拡散試験とバッチ収着試験により調査された。得られた実効拡散係数(De)は、Cs+, Na+, HTO, I-の順となった。容量因子(α)と分配係数(Kd)も、同様の傾向を示した。Cs+, Na+に対する二重プロファイルは、試料表面部のKdの増加によって解釈され、表面分析によって試料表面部の擾乱を受けた黒雲母鉱物の高い間隙率と収着容量の増加に起因することが確認された。二重プロファイルから得られたKdは、バッチ収着試験で得られた粉砕試料のKdの粒径サイズ依存性と関連付られた。グリムゼル試験場で実施された原位置長期拡散試験で得られた試験結果は、室内実験結果とそれらの原位置条件への外挿によって推定された移行パラメータによって良好に解釈された。

Journal of Contaminant Hydrology Vol.179 pp.10-24 2015
J. M. Soler, J. Landa, V. Havlova, Y. Tachi, T. Ebina, P. Sardini, M. Siitari-Kauppi, J. Eikenberg and A. J. Martin

Comparative modeling of an in situ diffusion experiment in granite at the Grimsel Test Site

マトリクス拡散現象は結晶質岩中の核種移行遅延プロセスとして重要である。スイスのグリムゼル原位置試験場において花崗岩マトリクス中の原位置長期拡散(LTD)試験を行った。試験孔内にHTO, Na+, Cs+を含むトレーサ溶液を循環させ、2年半の間、トレーサ濃度の減衰が観測された。拡散期間終了後に、オーバーコアリングによって、岩石中のトレーサ分布が分析された。岩石中の拡散深さは、HTOで20cm、Na+で10cm、Cs+で1cm程度であった。これらのデータセットに対し、拡散・収着モデルによる解釈が、複数のチームによって、異なるコードを用いて実施され、実効拡散係数(De)と岩石容量因子(α)が導出された。複数のチームによる評価結果は、観測データを概ね再現可能であり、掘削影響による表面部分のDeとαの値が、岩石マトリックス部に比べて大きいことを示唆した。一方で、HTOの結果は実験データと解析結果に大きな乖離が認められ、この点は今後の詳細な検討が必要である。

Journal of Contaminant Hydrology Vol.179 pp.89-101 2015
H. Umeki, I.G. McKinley, A. Honda, K. Wakasugi, H. Takase and S.M.L. Hardie

Robust disposal modules, or compact, highly engineered caverns could offer a more resilient alternative for disposal of spent nuclear fuel

東京電力福島第一原子力発電所事故における深層防護の十分に機能しなかったことを受けて、原子力施設の安全性について国際的な再評価が行われており、特に、低頻度で影響が大きい外的要因に耐えられる性能が着目されている。このような努力は、原子炉施設や他の地表の主要な原子力施設(再処理施設や中間貯蔵施設など)に傾注されているが、地下の地層処分に対しても有用である。閉鎖後の処分場は、超長期の時間スケールにおいて、大部分の外的要因からの影響を受けないと考えられているが、調査–建設–閉鎖まで百年オーダーの期間を要すると予想される操業段階の概念に対して特に重要となりえる論点が存在する。さらに、地層処分施設内に多量の放射性物質が包蔵されていることについて、一般公衆が不安を抱くことに対して、現実的に達成できる範囲で可能な限り安全な設計を考えることを確実なものとすることの価値は大きい。これを達成するために、原子炉施設ではすでに一般的なアプローチとして適用されているレジリエンスを考慮した設計を行うことが、安全を確実なものとするために有効である。本報では、低頻度で影響が大きい外的要因に対する地層処分施設の性能を向上させるためのレジリエンスとその適用について詳述する。特定の高放射性, 高発熱性廃棄物の場合に対してレジリエンス性を向上させる新たな処分概念を示すとともに、そのような設計に必要な研究開発について論ずる。

Nuclear Engineering International 2015
Y. Tachi, T. Suyama, K. Yotsuji, Y. Ishii and H. Takahashi

Clay-based modeling approach to diffusion and sorption in the argillaceous rock from the Horonobe URL: Application to Ni(Ⅱ), Am(Ⅲ) and Se(Ⅳ)

放射性廃棄物地層処分の安全評価において粘土質岩石中の核種の収着・拡散挙動は把握すべき重要なプロセスである。幌延深地層研究所における泥岩試料中のNi(Ⅱ), Am(Ⅲ), Se(Ⅳ)の拡散・収着挙動を、実験とモデルの両面から調査した。透過拡散試験によって得られた実効拡散係数は、先行研究の結果も含めて、Cs+, Ni2+, HTO, I-, Se(SeO42-), Am(Am(CO3)2-)の順に低下する傾向となった。一方で、拡散試験から得られた収着分配係数は、バッチ収着試験によって取得された値との整合的であった。これらの結果は、粘土成分(スメクタイトとイライト)の寄与を仮定した収着モデル、電気二重層理論と単純化された間隙モデルを考慮した拡散モデルとを組み合せた、粘土を主体としたモデル化手法によって解釈された。この粘土を主体としたモデルによって、一連のデータを概ね説明することが可能であり、この手法が多様な核種に対して適用可能と評価された。

EUROCLAY Edinburgh 2015 / Workshop: Filling the gaps - from microscopic pore structures to transport properties in shales Edinburgh (UK)
CMS Workshop Lecture Series Book Vol.21 Chapter 19 pp.241-250 (2016/6)
2015
K. Yotsuji, Y. Tachi and T. Ohkubo

Diffusion model considering multiple pore structures in compacted bentonite

処分環境における圧縮ベントナイト中の核種の拡散係数や収着分配係数等の整合的な推定評価を目指し、原子力機構では統合収着・拡散モデル(ISDモデル)の開発を進めてきた。ISDモデルは、圧縮ベントナイト中の間隙水化学および核種の収着・拡散挙動を整合的に評価するモデルである。特にISDモデルの拡散パートは電気二重層理論と均質間隙モデルに基づいており、カチオンの過剰な実効拡散係数と細孔間隙でのアニオン排除を整合的に説明できる。現状のISDモデルは1価カチオン⁄アニオンの実効拡散係数をある程度定量的に評価できるが、多価カチオンや錯体形状の化学種に対しては実測データの再現性が悪い。モデルを改良するには、溶質・溶媒および粘土鉱物間の相互作用を分子レベルで高度化するとともに、不均質間隙構造を考慮したモデル化を進める必要がある。そこで本研究では、多重間隙構造を考慮して現状ISDモデルの高度化を検討した。多重間隙モデルによる解析の結果、実効拡散係数の塩濃度依存性が、現状の均質間隙モデルより緩和され、拡散モデルが改善されることがわかった。

EUROCLAY Edinburgh 2015 / Workshop: Filling the gaps - from microscopic pore structures to transport properties in shales Edinburgh (UK)
CMS Workshop Lecture Series Book Vol.21 Chapter 20 pp.251-257 (2016/6)
2015
K. Kishida, T. Ishikawa, Y. Higo, A. Sawada and H. Yasuhara

Measurements of fracture aperture in granite core using microfocus X-ray CT and fluid flow simulation

長期にわたる様々な拘束条件と熱条件下における亀裂開口幅の変化を推定するために、マイクロフォーカスX線CTを用いて亀裂開口幅の測定を行った。画像データ処理から、亀裂表面高さと接触点を評価するとともに、亀裂の接触面積率、JRC値、開口幅分布を推定した。一方で、レーザー走査による断面形状センサーによる亀裂面形状測定も行い、幾つかのパラメータ値を推定した。両測定結果の比較から、X線CTデータとそのデータ解析の妥当性について議論する。さらに、マイクロフォーカスX線CTにより得られた亀裂面の高さと開口幅のデータを用いた亀裂内の流体流動解析を行う。

49th US Rock Mechanics/Geomechanics Symposium San Francisco (USA)
Proceedings ARMA 15-0485 (CD-ROM: 6 pages)
2015

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
鶴田忠彦、笹尾英嗣

瑞浪超深地層研究所における研究坑道掘削に伴って実施した壁面地質調査

日本原子力研究開発機構は、地層処分技術に関する研究開発のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、岐阜県瑞浪市において瑞浪超深地層研究所の建設を進めてきた。同研究所における調査研究の一環として、岩盤の地質学的不均質性や、物質の移行経路として重要な地質構造などを把握することを目的として、物理探査、ボーリング調査などからなる地質学的調査を実施している。本報では、特に地下の研究坑道において実施している壁面地質調査の手法の設定の背景と実施内容、並びに取得情報を活用した地質構造のモデル化などに関する研究事例を報告する。

応用地質 Vol.56 No.6 pp.298-307 2016
尾上博則、三枝博光、竹内竜史

超深地層研究所計画の研究坑道の掘削を伴う研究段階における地下水流動のモデル化・解析

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市において地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究の一環として超深地層研究所計画を実施している。本研究では研究坑道の掘削に伴い実施した地下水流動のモデル化・解析に関する研究成果を体系的に整理するとともに、断層などによる水理学的な不均質性が高い結晶質岩地域での地下施設の建設に伴う地下水流動のモデル化・解析に有効となる調査データやモデル化・解析のアプローチについての技術的知見を示した。また、地下水流動のモデル化・解析結果の妥当性を確認するにあたっては、地下施設の建設に伴う地下水水質の変化を用いた比較検討が有効であり、水理学分野と地球化学分野間にわたる評価の重要性を示した。

土木学会論文集C Vol.72 No.1 pp.13-26 2016
亀村勝美、藤田朝雄、青柳和平、名合牧人、白瀬光泰、菅原健太郎

周回坑道掘削時の内空変位計測結果に基づく初期地圧の推定

地下深部岩盤構造物の設計にあたっては、対象岩盤の力学特性や初期地圧の設定が重要である。しかし、その設定に用いるボーリング孔を用いた初期地圧計測は、その方法論、結果の評価法など詳細な議論が行われているものの、得られた結果のばらつきが大きく岩盤としての初期地圧を設定することは難しい。幌延の深地層研究施設では、深度350mの周回坑道の掘削時に多くの内空変位計測を行った。そこで、周回坑道の計測変位を用いて数百m四方の岩盤挙動に対応する初期地圧を推定した。推定結果はこれまでの初期地圧測定結果と整合するものであり、本手法により岩盤の初期地圧推定が可能であることが示された。

第44回岩盤力学に関するシンポジウム 福岡市
講演集 pp.109-114
2016
青柳和平、石井英一、藤田朝雄、本島貴之

幌延深地層研究センターの立坑における掘削損傷領域の進展に関する検討

堆積軟岩を対象とする幌延深地層研究センターの深度350m以深の東立坑周辺に生じた掘削損傷領域の拡がりとその破壊様式を推定することを目的として、透水試験、BTV観察、立坑周辺のボーリング孔内水位の連続モニタリング、立坑壁面の観察を実施した。結果として、立坑壁面から2m以内で、透水係数が約1-3オーダー増大したことが確認された。これは、BTV観察により捉えられた割れ目の分布に整合する結果であった。また、立坑掘削深度がボーリング孔底深度に達した段階で水位の急激な低下が見られたことから、掘削直後に瞬間的に割れ目が発達し、壁面へ連結したことが推定された。さらに、立坑掘削に伴って発生する割れ目は引張のメカニズムで発生しており、壁面を取り囲む形で分布することがわかった。

第44回岩盤力学に関するシンポジウム 福岡市
講演集 pp.313-318
2016
畑浩二、丹生屋純夫、青柳和平、藤田朝雄

マルチ光計測プローブを用いた幌延深地層研究センターの立坑掘削損傷評価

日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターにおいて、深度350m以深の立坑掘削時から掘削後の維持管理段階で掘削影響評価のための長期モニタリングを実施中である。計測ツールには、光式AEセンサ、光式間隙水圧センサおよび光式温度センサを1本のボーリング孔内に設置可能なマルチ光計測プローブを開発し利用した。AE、間隙水圧および温度を測定した結果、立坑壁面に近いほど変化は大きく、掘削の影響が明らかになった。また、AE震源位置標定解析結果から、立坑壁面1.5m未満までが掘削影響領域と評価した。

第44回岩盤力学に関するシンポジウム 福岡市
講演集 pp.319-324
2016
丹生屋純夫、青柳和平、藤田朝雄、白瀬光泰

幌延深地層研究センターにおける原位置岩盤の強度・変形物性の検討

幌延深地層研究センターでは、き裂密度を考慮した岩級区分に基づいた岩盤の強度・変形物性を設定し、これらを地下施設の支保設計や坑道の安定性の評価に採用している。本報告では、調査坑道内で実施した平板載荷試験、ロックせん断試験、室内力学試験結果から、設計時に設定した坑道規模の岩盤における強度・変形物性を評価した。ロックせん断試験により得られた粘着力は、設計時に設定した値と、三軸圧縮試験により得られた残留強度の応力状態から得た値よりも小さく、内部摩擦角は逆に大きい結果となった。また、設計時および室内力学試験の残留応力状態から設定した破壊規準との比較により、ロックせん断試験に基づく破壊規準は施工時において最も保守的な値を与えることが示された。

第44回岩盤力学に関するシンポジウム 福岡市
講演集 pp.336-341
2016
佐藤稔紀、見掛信一郎、三浦律彦、石田知子

深度500m瑞浪超深地層研究坑道に設置する止水壁の設計

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所において、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、深地層の科学的研究を実施している。研究所は2本の立坑と複数の水平坑道群からなる地下施設で、現在、深度500mまで掘削が進んでいる。深度500mの水平坑道における原位置試験のひとつとして、再冠水試験を実施している。再冠水試験は、斜坑でアクセスした延長約40mの坑道の入口に止水壁を設置して、坑道が地下水で冠水される際の周辺岩盤の挙動や地下水の水圧・水質の変化を観測するものである。止水壁には冠水時の遮水・耐圧機能が求められるとともに、将来の当該施設の閉鎖時のプラグの役割を担うことになる。本報告では、国内外の類似事例を参照して、止水壁の形状や材料について検討するとともに、構造解析や熱応力解析の結果及び計測計画を示す。

トンネルと地下 Vol.46 No.12 pp.901-911 2015
竹内竜史、露口耕治、尾上博則、三枝博光、別府伸治

地震に伴う地下水圧の変化が地下水流動特性に与える影響 —東濃地域における事例—

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地層処分システムの長期安定性を評価する上で、累積的・広域的な変化を引き起こす現象について考慮する必要がある。この現象の1つとして、地震に伴う地下水圧の変化が挙げられる。原子力機構が岐阜県東濃地域で実施する地下水圧の長期モニタリングでは、これまでに地震に伴う地下水圧の変化が観測されている。本稿では、地震に伴う地下水圧の変化に関する観測結果を整理するとともに、大局的な地下水流動特性に与える影響について考察を行った。その結果、 地下水圧の変化が観測された地震のうち2003年十勝沖地震、2004年の紀伊半島沖の地震、2009年の駿河湾の地震に伴う地下水流動特性の変化は一時的なものであると推測された。一方で、2011年東北地方太平洋沖地震以降の地下水圧の変化については異なる傾向を示している可能性があり、今後も観測を継続する必要がある。また、地震に伴う地下水流動特性の変化を評価する上では、地下水圧の変化のみならず透水係数や動水勾配の変化にも着目することが重要であることを示した。

原子力バックエンド研究 Vol.22 No.2 pp.37-52 2015
藤田朝雄

幌延における地層処分研究開発

幌延深地層研究センターでは、高レベル放射性廃棄物を安全に地層処分するための基盤的な研究開発として、平成13年3月より、幌延深地層研究計画を進めてきている。ここでは、幌延深地層研究計画の「地下施設での調査研究段階(第3段階)」で実施している地層処分研究開発の現状について報告する。

原子力バックエンド研究 Vol.22 No.2 pp.75-76 2015
村上裕晃、田中和広

島根県津和野地域に分布する高塩濃度地下水の地球化学的特徴と湧出機構

島根県津和野地域では、塩濃度の高い鉱泉水がガスを伴い自噴している。この高塩濃度流体について、湧出箇所と地化学的特徴を調査した。津和野地域の鉱泉水は最大で海水の約半分の塩濃度を示す。自噴するガスは二酸化炭素が主成分である。これらの特徴に加え、鉱泉水の水素・酸素同位体比は天水線から外れる組成を示し、希ガス同位体比からマントル由来のヘリウムの混入が示唆される。これらの地化学的特徴と周辺の地質構造から津和野地域の高塩濃度流体の成因を考察すると、地下深部から供給される流体が含まれていると考えられる。しかし、津和野地域の高塩濃度流体に深部流体が含まれているとしても、その寄与量は最大でも4分の1程度である。また、高塩濃度流体の指標となる塩化物イオンのフラックスが活断層周辺で最も高いことから、高塩濃度流体は活断層を主要な水みちとして移動していると推測される。ただし地表付近において、高塩濃度流体は活断層周辺の亀裂も利用していると考えられる。

地下水学会誌 Vol.57 No.4 pp.415-433 2015
徐招峰、山地宏志、佐藤稔紀、松井裕哉、板倉賢一

Web 3Dと時空間データベースを援用した地下空間開発支援システムの設計とその実装

地下空間開発の過程では、調査・計画・設計・施工の各ステージにおいて膨大な情報が収集される。地下空間の合理的設計・施工を実現するためには、これらの情報を適確に設計施工へとフィードバックすることが重要となる。また、構造物管理の面においてもこれらの情報はその基礎資料となるものである。しかしながら、実際に収集される情報量は余りにも膨大なため、個人の能力でこれらを管理することは不可能に近い。本論文では、WEB3DとRDBMSを援用して4次元仮想現実空間をPC上に構築し、この仮想現実空間内を自由に移動することで、この膨大な情報群を直感的に管理・処理することのできるシステムの基本構造を設計し、その実用性を検証した。

土木学会論文集F3(土木情報学) Vol.71 No.1 pp.43-55 2015
藤田朝雄、青柳和平、名合牧人

情報化施工による大深度立坑掘削の中間評価 —幌延深地層研究計画地下研究施設整備(第Ⅱ期)事業—

日本原子力研究開発機構は、幌延深地層研究計画を実施しており、北海道天塩郡幌延町において、立坑と研究坑道の建設を行っている。本報告では、幌延深地層研究センターの立坑掘削時の情報化施工手法の検討について取りまとめた。特に、換気立坑掘削時の壁面周辺岩盤の崩落の進展により覆工コンクリートにクラックが発生した事象をうけて、立坑掘削時の岩盤の崩落現象とその対策や、崩落の進展に応じた支保選定のフローを構築し、後続の立坑掘削へ反映させた。また、立坑掘削時に問題となる湧水への対策工として実施した断層部へのプレグラウト工の施工について述べ、その効果について論じた。

トンネルと地下 Vol.46 No.7 pp.481-489 2015
山崎雅直、津坂仁和、大谷達彦、進士正人

クラックテンソルによる現場スケールにおける透水係数の評価

本研究は、立坑掘削に伴う坑壁地質観察により得られた割れ目の長さの総和を壁面面積で除した割れ目頻度と、割れ目情報(長さ、方向、開口幅)からステレオロジーの概念を適用して推定した透水係数とは、現地の透水試験結果と高い相関性が得られたことから、坑壁地質観察から地盤の透水係数を簡便に予測する手法を提案する。適用にあたっては高品質の坑壁地質観察記録が重要であり、北海道幌延町において日本原子力研究開発機構が建設中の地下研究施設の立坑掘削時の記録を用い、クラックに関する情報を基に、立坑の3次元クラックテンソルと透水テンソルを推定し、近傍の深層ボーリング孔を用いた透水試験結果と比較した。

土木学会論文集F2(地下空間研究) Vol.71 No.1 pp.1-10 2015

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Suzuki, H. Mukai, T. Ishimura, T. Yokoyama, S. Sakata, T. Hirata, T. Iwatsuki and T. Mizuno

Formation and Geological Sequestration of Uranium Nanoparticles in Deep Granitic Aquifer

微生物による6価ウランの4価ウランへの還元固定法は、汚染水の安価な浄化方法として知られている。その反応は一般的に5ナノメーター以下のウラン粒子で起こる。本研究では、花崗岩中の割れ目を充填する炭酸塩鉱物において、4価のウランからなるコフィナイト粒子の観察を行った。その結果、普遍的な現象として微生物による炭酸塩鉱物の形成時に、炭酸塩鉱物と4価ウランナノ粒子の共沈が起こっている可能性が考えられた。このような現象は、放射性廃棄物の地層処分に関連して汚染水中の放射性核種やウランの長期隔離に寄与すると考えられる。

Nature Scientific Reports 6, Article No.22701 (Internet) 2016
T. Yuguchi, H. Iwano, T. Kato, S. Sakata, K. Hattori, T. Hirata, S. Sueoka, T. Danhara, M. Ishibashi, E. Sasao and T. Nishiyama

Zircon growth in a granitic pluton with specific mechanisms, crystallization temperatures and U-Pb ages: Implication to the "spatiotemporal" formation process of the Toki granite, central Japan

花崗岩体の形成・発達に関する熱進化の解明は、大陸地殻の発達・進化を考える上で、有用な知見をもたらすことができる。本研究ではジルコンに着目し、(1)カソードルミネッセンス像観察に基づくジルコンの内部構造の分類、: LLC (low luminescence core)/ OZ (oscillatory zonation)、(2)Ti-in-zircon温度計より内部構造ごとの結晶化温度の決定、(3)内部構造ごとのU-Pb年代の決定を実施し、ジルコンの成長は2つのイベントを経ることを見出した。

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.111 No.1 pp.9-34 2016
E. Ishii

Far-field stress dependency of the failure mode of damage-zone fractures in fault zones; Results from laboratory tests and field observations of siliceous mudstone

断層のダメージゾーンにおける肉眼スケールの破壊様式(引張性⁄せん断性)は断層の水理特性に影響を与える。ダメージゾーンにおける破壊は断層沿いの応力集中に伴う局所的な差応力の増大あるいは有効垂直応力の低下によって引き起こされるとする想定とグリフィスクーロン理論に基づくと、広域応力場における有効中間応力が岩石の引張強度の2倍以下の場合に引張亀裂が断層から独占的に派生し得ることが示唆される。本研究では人工断層を入れた珪質泥岩供試体を用いて力学試験(非排水三軸試験と一軸試験)を行い、その断層端部に形成されるダメージゾーン亀裂の特徴と供試体に与えた有効中間応力とを比較した。その結果、上記の示唆と整合的な結果が得られた。同珪質泥岩中に発達するダメージゾーン亀裂のボーリングコア観察結果と現在の有効中間応力とを比較すると、同様の結果が得られた。実験室の圧裂引張試験より得られる引張強度は天然の歪速度下における長期的な強度としても用いることが可能であり、多数の引張亀裂を伴うよく連結し合った高透水性断層帯は有効中間応力が引張強度の2倍以下を経験したことのある岩盤領域にのみ発達し得ることが示唆される。

Journal of Geophysical Research : Solid Earth Vol.121 No.1 pp.70-91 2016
T. Munemoto, K. Ohmori and T. Iwatsuki

Rare earth elements (REE) in deep groundwater from granite and fracture-filling calcite in the Tono area, central Japan: Prediction of REE fractionation in paleo- to present-day groundwater

水–鉱物反応は地球表層環境における物質移動特性に影響を及ぼす重要な地球科学プロセスである。特に、希土類元素(YREE: La-Lu, Y)の鉱物中への分配挙動は環境条件の変化にしたがって、YREE存在度パターンとして保存されるため、地球科学プロセスを把握するための指標として利用されてきた。本研究では深部花崗岩中の地下水と二次鉱物を対象に地下水の水質条件の変化に伴うYREEの分配挙動の変化について明らかとし、現在から過去までの地下水中の希土類元素の分配挙動の予測を行った。

Chemical Geology Vol.417 pp.58-67
http://dx.doi.org/10.1016/
j.chemgeo.2015.09.024
2015
Y. Zha, T.-C. J. Yeh, W. A. Illman, T. Tanaka, P. Bruines, H. Onoe and H. Saegusa

What does hydraulic tomography tell us about fractured geological media? A field study and synthetic experiments

Japan Atomic Energy Agency conducted long-term, independent pumping tests in a fractured granite formation at the Mizunami Underground Research Laboratory site. During the tests, drawdowns were monitored at different depths along several deep boreholes. These tests become one of the few hydraulic tomographic survey conducted over thousands of meters in a fractured medium with a fault zone in the world up-to-date. We analyzed the drawdown-time data set associated with each pumping test independently, and then the data sets from all pumping tests jointly to derive the spatial distributions of K and Ss. These estimated distributions revealed some large-scale high K and low K zones. While the low K zones corroborated well with layers and fault based on geological investigations, there were no clear geological features can be related to the high K zones. In order to understand and substantiate these high and low K zones, we simulated a HT survey in a synthetic fractured aquifer, which bears similar geologic features, with exception that the hydraulic properties, fracture and fault distributions were known exactly. We found that the identified high K zones were related to fracture networks connected with pumping and observation locations of each pumping test.

Journal of Hydrology Vol.531 part 1 pp.17-30 2015
E. Sasao, K. Suzuki, N. Yamada and K. Kuboshima

Geological investigations using cosmic ray muons: A Trial to detect fault at the Mizunami Underground Research Laboratory

筆者らは瑞浪超深地層研究所において、宇宙線ミューオンを用いた断層の検出を試みた。同研究所の地質は上位の堆積岩と下位の花崗岩からなり、両者の境界は深度170mに位置する。幅の広い粘土変質帯を伴う断層が花崗岩中に垂直に分布する。本研究では測定装置を深度200mと300mの水平坑道に設置してミューオンを測定した。その結果から、花崗岩、断層、堆積岩の密度は、各々3.38, 2.88, 1.99g/cm3と求められた。この値はこれまでに測定された密度よりも明らかに大きい。その相違の理由は不明であるが、花崗岩の密度を2.6g/cm3として再計算すると、断層及び堆積岩の密度は2.2g/cm3, 1.5g/cm3と求められ、これまでに計測された値に一致した。このことから、宇宙線ミューオンを用いた探査は地質構造の検出に有効であると考えられる。

12th SEGJ International Symposium Tokyo (Japan)
Proceedings of 12th SEGJ International Symposium (USB Flash Drive) 4pages
2015
D. Aosai, D. Saeki, T. Iwatsuki and H. Matsuyama

Concentration and characterization of organic colloids in deep granitic groundwater using nanofiltration membranes for evaluating radionuclide transport

地下水中の有機コロイドの濃縮回収方法を確立するため、逆浸透膜を用いた従来法に加えて、ナノサイズの限外濾過手法について検討を行った。その結果、逆浸透膜法において濃縮に伴う溶存成分の析出が起こる試料に対して、ナノサイズの限外濾過手法を用いて、溶存成分を析出させずに濃縮する手法を構築できた。この手法を用いて、瑞浪超深地層研究所の地下水を濃縮、分析した結果、地下水中の有機コロイドが腐植化の進んだ有機物であることが明らかになった。

Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects Vol.485 pp.55-62 2015
K. Koike, T. Kubo, C. Liu, A. Masoud, K. Amano, A. Kurihara, T. Matsuoka and B. Lanyon

3D geostatistical modeling of fracture system in a granitic massif to characterize hydraulic properties and fracture distribution

岩盤中の割れ目分布と透水性の関連性を把握することを目的に、東濃地域における深層ボーリング調査と立坑の壁面観察データを用いて、地球統計学的手法(GEOFRAC)による3次元割れ目分布モデルを構築するとともに、モデル化された割れ目分布と水理特性の関係について検討を行った。GEOFRACで構築した割れ目分布モデルは、使用した割れ目データの分布とよい一致を示した。また、モデル化された割れ目のうち、連続性のよい割れ目は既知の断層の近傍に分布している傾向にあることを把握した。さらに、GEOFRACで構築した割れ目分布モデルと透水係数分布モデルから、透水性に強い影響を及ぼす割れ目の規模や方向性を確認した。

Tectonophysics Vol.660 pp.1-16 2015
M. Tsuji, S. Kobayashi, T. Sato and S. Mikake

Grouting for reducing groundwater inflow into a gallery at 500m depth of the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

瑞浪超深地層研究所では、掘削工事における地下水の湧水量を低減するために岩盤グラウチングが主要技術として用いられてきた。本稿は、深度500mレベルの延長120mの坑道におけるグラウチング工事の概要について報告するものである。先行ボーリング調査を行い、主に超微粒子セメントによるプレグラウチングを行いつつ本坑道の掘削を完了した後は、坑道全体の湧水量が約200から220L⁄分であり、許容湧水量を満足した。その後、延長16mの区間において新設計(溶液型グラウトの適用、複合動的注入の適用、プレグラウトの外側範囲を改良ゾーンに適用)によるポストグラウト工事を実施した。その結果、これらの新しい設計が効果的であることが確認でき、対象区間の湧水量は35L⁄分から11L⁄分に減少した。今回の実積は、既存のグラウチング技術の高度化に役立つものであり、新しい設計技術がプレグラウトの段階から実施されていれば、更なる湧水抑制が可能であったと考えられる。

2015 ISRM International Symposium on Future Development of Rock Mechanics (EUROCK 2015 & 64th Geomechanics Colloquium) Salzburg (Austria)
Proceedings of EUROCK 2015 & 64th Geomechanics Colloquium pp.35-41
2015
E. Ishii, Y. Hashimoto and D. Inagaki

Washout of clay-rich gouge in a pregrouted fault zone and increase of groundwater inflow during tunnel excavation in Neogene siliceous mudstone (Horonobe, Japan)

本報告は粘土優位なガウジを伴うプレグラウト済の断層帯から生じた坑道掘削中の湧水について述べる。幾つかの観察事実に基づくと、ガウジが坑道掘削中にロックボルトや吹付コンクリートとガウジ部の境界部からトンネル内に洗い流されたことが示唆される。その結果、ガウジ内に生じたパイピングもしくは侵食によってプレグラウト範囲外から坑道内への地下水の流れが促進された。ある壁面の一次吹付を行った後、吹付コンクリートを突き破ってガウジ部に新たに形成された水みちから顕著な湧水が発生した。粘土優位なガウジを伴う断層帯をプレグラウトする際は、ガウジ自身はその低空隙率ゆえにセメントされないので、坑道掘削中のガウジの洗い出しに十分注意する必要がある。

10th Asian Regional Conference of International Association for Engineering Geology and the Environment (IAEG ARS 2015)  Uji (Japan)
Proceedings of IAEG  (USB Flash Drive) Tp3-P02 Pages
2015
E. Sasao, T. Yuguchi, Y. Ito, T. Inoue and M. Ishibashi

Formative mechanism of inhomogeneous distribution of fractures, an example of the Toki Granite, Central Japan

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、割れ目ネットワークの理解は物質移動特性を評価する上で重要な課題である。本報告では、土岐花崗岩を事例として、割れ目の不均一な分布の成因を検討した。土岐花崗岩では、浅部に低角度および高角度傾斜の割れ目の多い部分があるが、深部では割れ目の数は減少し、高角度傾斜割れ目が卓越する。また、高角度傾斜割れ目の密度分布は不均一である。熱年代学および古地磁気学的研究からは花崗岩形成初期には冷却速度が速く、地磁気方位がばらつくことが明らかになった。これらのことから、花崗岩は急速冷却期に不均一に歪が分布し、その結果として脆性領域に達した際に歪分布に基づいて、不均一に割れ目が形成されたと考えられる。このことから、割れ目ネットワークの理解には、花崗岩冷却過程の理解が必要である。

10th Asian Regional Conference of International Association for Engineering Geology and the Environment (IAEG ARS 2015)  Uji (Japan)
Proceedings of IAEG  (USB Flash Drive) 6 Pages
2015
H. Sanada, T. Sato, Y. Horiuchi, S. Mikake, M. Okihara, R. Yahagi and S. Kobayashi

Excavation cycle times recorded during sinking of a deep shaft in crystalline rock - A Case example at Ventilation Shaft of Mizunami URL, Japan

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物地層処分技術に関する研究開発を実施しており、その一環として超深地層研究所計画を実施している。本計画において、換気立坑掘削の際にサイクルタイムのデータを取得して設計段階で設定したデータと比較した。その結果、実際のサイクルタイムは設計時の2から3倍長くかかっていることが明らかになり、工種毎に詳細に分析した。

Tunnelling and Underground Space Technology Vol.50 pp.68-78 2015
T. Iwatsuki, H. Hagiwara, K. Ohmori, T. Munemoto and H. Onoe

Hydrochemical disturbances measured in groundwater during the construction and operation of a large-scale underground facility in deep crystalline rock in Japan

岐阜県瑞浪市の超深地層研究所において、深度500mまでの坑道掘削及び維持管理時の地下水の水理・化学変化の観測を行った。その結果、水位低下や深部地下水の湧昇に伴う地下水の水質変化とそのプロセスを把握することができた。また、観測結果から大規模地下施設を結晶質岩に建設する時の留意点を整理することができた。

Environmental Earth Sciences Vol.74 No.4 pp.3041-3057
DOI 10.1007/s12665-015-4337-3
2015
T. Yuguchi, E. Sasao, M. Ishibashi and T. Nishiyama

Hydrothermal chloritization processes from biotite in the Toki granite, Central Japan: Temporal variations of the compositions of hydrothermal fluids associated with chloritization

花崗岩における地球化学的特徴の将来的な変遷を予測するためには、今日にいたるまでの花崗岩体で生じた現象(たとえば熱水変質や岩石-水反応)の長期的変遷を理解することが、重要な視点の1つとなる。そこで、本論文では中部日本に位置する土岐花崗岩体において黒雲母から緑泥石への熱水変質プロセスの解明を行った。花崗岩体の熱水変質の中で、黒雲母の緑泥石化は広い温度条件で生ずることが報告されており、かつ花崗岩体を通して普遍的に観察される。このため、変質に伴う鉱物と熱水流体間の物質移動に着目することで、花崗岩体内の熱水流体の化学的特徴の長期的な変遷を明らかにした。土岐花崗岩体中における緑泥石化に伴って生じる鉱物の組み合わせの違いは、熱水から流入する成分の相違に支配されることが明らかとなった。このことは、熱水に含有する化学成分の不均質性を示す。また、緑泥石化が進行するにつれ、熱水流体中のケイ素とカリウム、塩素が増大し、金属成分とカルシウムが減少する化学的特徴の経時的な変化を明らかにした。

American Mineralogist Vol.100 No.5-6 pp.1134-1152 2015
S. Tanaka, H. Yokota, H. Ohno, M. Nakayama, T. Fujita, H. Takiya, N. Watanabe and T. Kozaki

DIPOLE TRACER MIGRATION AND DIFFUSION TESTS IN FRACTURED SEDIMENTARY ROCK AT HORONOBE URL

In-situ dipole tracer migration tests were conducted at the G.L.-250 m gallery of the Horonobe URL. Laboratory experiments were also conducted to determine the apparent diffusivity (Da) and sorption coefficients (Kd) of cesium and water (HTO) in the rock taken at the gallery to evaluate the performance of Wakkanai formation as natural barrier. The breakthrough curves of non-sorbing tracer (Uranine) obtained at the in-situ dipole tracer migration tests were well described by a dual-channel model in which one-dimensional advection dispersion was taken in account. This suggests that the tracers migrate through at least two different pathways in the fracture. The breakthrough curves also indicated that the peak concentration of the sorbing tracer (cesium) was much smaller than that of the non-sorbing tracer (Uranine), suggesting that the Wakkanai Formation has a high sorptive and low diffusive properties for cesium. The Da value obtained for cesium was about 3E-12 m2⁄s, which is significantly smaller than that of water (3E-10 m2⁄s), and the Kd value of cesium was determined to be about 5E-2 ml⁄g.

23rd International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-23) Chiba (Japan)
Proceedings of ICONE23-1860 (DVD-ROM), 6 Pages
2015
E. Ishii

Predictions of the highest potential transmissivity of fractures in fault zones from rock rheology: Preliminary results

様々な条件下の6つのサイトデータを用いて、ボーリング孔で検出された断層帯の透水量係数とその母岩部の平均有効応力をその引張強度で除したものが明瞭な負のべき乗関係を示すことを明らかにした。得られた経験則は、地殻浅部に存在しえる透水断層帯沿いの透水量係数の時空間的な予測を可能とするものであり、断層帯の透水性に関連する様々な地球科学的・地球工学的課題に対して一つの有用な指標を提供するものである。

Journal of Geophysical Research Solid Earth Vol.120 No.4 pp.2220-2241 2015
H. Osawa, K. Koide, E. Sasao, T. Iwatsuki, H. Saegusa, K. Hama and T. Sato

Current status of R&D activities and future plan of Mizunami Underground Research Laboratory

1996年に結晶質岩を対象とした深地層の研究施設計画として瑞浪市で開始した超深地層研究所計画は、3つの段階(第1段階: 地表からの調査予測研究段階、第2段階: 研究坑道の掘削を伴う研究段階、第3段階: 研究坑道を利用した研究段階)で進めてきた。現在、深度500mまでの研究坑道の掘削を完了し、第2段階の調査研究は一旦終了した。第3段階の調査研究は2010年から行っている。原子力機構は、これまでの調査研究の成果を、ウェブベースの報告書(CoolRepH26)として取りまとめた。今後、超深地層研究所計画では、地層処分の信頼性を向上するための基盤研究として、第3段階の調査研究を継続して進める。

2015 International High-Level Radioactive Waste Management conference (IHLRWM 2015) Charleston (USA)
Proceedings of IHLRWMC 2015 pp.371-378
2015

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
生田正文、丹羽正和、壇原徹、山下透、丸山誠史、鎌滝孝信、小林哲夫、黒澤英樹、國分陽子、平田岳史

歴史時代に噴出した同一火山由来の軽石層の同定:宮崎平野で見出された桜島文明テフラの例

既往文献の火山ガラス屈折率データからは識別が困難であった桜島の歴史時代の噴火(文明, 安永, 大正)軽石について、本研究では火山ガラスの水和部と未水和部とを区別して屈折率測定を行い、斜方輝石の屈折率も含めてそれぞれの軽石に違いがあることを見出した。一方、宮崎平野南部で掘削したコアに含まれる軽石濃集層に対して鉱物組成分析、火山ガラスの形態分類や屈折率測定、斜方輝石の屈折率測定、火山ガラスの主成分・微量元素同時分析、および炭質物の放射性炭素年代測定を行い、本研究による桜島歴史噴火軽石の分析と比較した結果、軽石濃集層は桜島文明テフラに対比されることが判明した。桜島文明テフラは、軽石の状態で宮崎平野南部まで到達していた可能性が高い。本研究における軽石濃集層の給源の同定結果は、宮崎平野における地震イベント堆積物の年代決定において重要な示準となりうる。

地質学雑誌 Vol.122 No.3 pp.89-107 2016
丹羽正和、石丸恒存、島田耕史

地球科学の原子力安全への貢献 (その2)破砕物質の鉱物・化学分析と断層の活動性評価

原子力施設の耐震安全性評価において最近、破砕帯の活動性評価が重要な議論となっている。本稿は、日本原子力研究開発機構が断層の活動性評価手法の一つとして開発として進めている、破砕帯構成物質の鉱物・化学的分析に関する現状について、日本原子力学会会員向けに広く紹介を行ったものである。

日本原子力学会誌  Vol.58 No.3 pp.167-171 2016
梅田浩司、浅森浩一

地球科学の原子力安全への貢献 (その1)地球科学からみた地殻流体と地層処分技術への応用

最新の地球科学の研究によって、火山地帯に限らず地殻中にはメルトや水などの地殻流体が存在することが明らかになった。これらの流体の存在によってレオロジーの空間的不均質が生じ、それに伴って大きな地震や地殻変動が生じる。そのため、地層処分において数万年以上に及ぶサイトの安定性を検討する際には、その地域の地殻流体の存在や起源を知ることは極めて重要となる。

日本原子力学会誌  Vol.58 No.2 pp.110-114 2016
松原章浩

原子衝突の新しい風

本コラムでは、筆者の経歴に触れた後、ネオテクトニクス研究グループで行っている加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry: AMS)について述べ、AMS分野と原子衝突の学術分野の接点について紹介する。AMSの分析性能を支える技術には、測定目的核種(長半減期放射性核種)に対する安定同重体の分別がある。この分別は、多くの場合、イオンのエネルギー損失が原子番号と正の関係(ベーテ・ブロッホ則的)である事実を基にしている。ここに、両分野の接点の一つがある。

しょうとつ Vol.12 No.4 p.126 2015
福田徹也、棚瀬充史、梅田浩司、小林哲夫

黒島火山の活動時期の再検討と南西諸島火山岩のK-Ar年代の総括

火山の活動年代を明らかにすることは、将来の火山活動の場の予測に重要な情報を与える。筆者らはこれまでに南西諸島の島々の第四紀火山岩の年代測定を実施してきたが、今回新たに火山フロントよりやや北西側に位置する黒島におけるK-Ar年代値を得た。これらを含めて西南諸島の第四紀の火山活動の時空変化を解析した結果、西南諸島の火山活動は最近50万年に開始したことが明らかになった。なお、本稿は第2次取りまとめの際に作成した第四紀火山カタログの個別データの引用元として活用できる。

月刊地球 Vol.37 No.5 pp.197 - 203 2015
奥野充、長岡信治、國分陽子

五島列島、福江島の鬼岳降下スコリア直下の土壌試料の放射性炭素年代

五島列島、福江島の鬼岳降下スコリア堆積物は、鬼岳火山群最新の降下テフラである。今回、その直下の土壌試料から19,840±120BPの14C年代を得た。測定試料のC⁄N=9.14は、土壌として分解がある程度進んでいることを示唆し、年代値が若返っている可能性がある。しかし、この年代値は、長岡・古山(2004)が同じ層準から報告した18.090±100BPよりも古く、広域テフラであるATやK-Ahとの層位関係とも矛盾しない。また、この14C年代を暦年代に換算すると、約24cal kBPであった。

月刊地球 Vol.37 No.4 pp.119-121 2015

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Asamori and D. Zhao

Teleseismic shear wave tomography of the Japan subduction zone

将来の地層処分システムに重大な影響を及ぼす可能性がある地震・火山活動の潜在的なリスクや超長期の地殻変動を適切に評価するためには、その背景にあるプレートの沈み込みやそれに起因する流体及びマグマの生成・移動等のダイナミクスに関する理解が必要である。本研究では、遠地地震波形データから読み取った多量のS波相対走時残差を地震波トモグラフィー法に適用することにより、日本列島下のマントル遷移層までを対象とした高分解能三次元S波速度構造を初めて推定した。その結果、西南日本下には非地震性のフィリピン海スラブがマントル遷移層まで沈み込んでいることや、太平洋スラブの深部脱水に伴う流体の上昇が西南日本の火成活動やフィリピン海スラブの複雑な構造の形成に関与していることが明らかになった。

Geophysical Journal International Vol.203 No.3 pp.1752-1772 2015
K. Umeda

Localized extensional tectonics in an overall reverse-faulting regime, Northeast Japan

2011年東北沖地震の直後から福島県の浜通りでは、群発地震が発生し、現在もその活動が継続している。この地域では東北沖地震の前から引張場であり、沈み込み帯の前弧域としては特異な地殻応力であることが知られていた。本報では地震テクトニクス、物理探査、地形・地質調査等の最近の研究成果のレビューを行うとともに、局所的に引張場が生じるメカニズムについて検討した。

Geoscience Letters (Internet) Vol.2 pp.12_1-12_8 2015
M. Okuno, S. Nagaoka, Y. Kokubu, T. Nakamura and T. Kobayashi

AMS Radiocarbon Dates of Pyroclastic-Flow Deposits on the Southern Slope of the Kuju Volcanic Group, Kyushu, Japan

九州、九重火山群の中央及び西側における噴火史を明らかにするため、火砕流堆積物の加速器質量分析による放射性炭素年代測定を行った。放射性炭素年代測定は、施設供用制度に基づきJAEA-AMS-TONOで行った。飯田火砕流堆積物の放射性炭素年代は、~5.35万年BPであり、白丹及び室火砕流のものは4.4~5万年BP以上及び3.5~3.9万年BPであった。これらの結果は、溶岩ドームの熱ルミネッセンス年代と一致し、熱ルミネッセンス及び放射性炭素年代法が、溶岩ドームの形成や火砕流の噴火過程を明らかにするために有用な手段となりうることを示した。また、これらの結果により、これらの噴火活動が15万年間で最も大きな噴火である飯田火砕流の後にあまり期間をおかず発生したこともわかった。

22nd International Radiocarbon Conference (Radiocarbon 2015) Daker (Senegal)
Radiocarbon Vol.59 No.2 pp.483-488 (2017/4)
2015
H. Pachri, Y. Mitani, H. Ikemi, R. Nakanishi and Y. Kokubu

Relationships between of Sediment Concentrations from 10Be Analysis and Morphometric Aspect in Sangun Catchment Area, Fukuoka Prefecture, Japan

福岡県三郡流域では斜面崩壊の寄与を土砂移動のタイムスケールで定量化することが困難であった。本稿では、AMS測定によるベリリウム-10を利用し、宇宙線生成核種を用いた方法がどのような地形プロセスに関する情報を与えるかについて述べる。河川堆積物に蓄えられた宇宙線生成核種濃度は河川系を介して輸送中の堆積物の配合量に応じて、増加または減少することを前提とした。ベリリウム-10濃度を流域の短期土砂混合率を決定するために利用し、三郡流域の地形情報とベリリウム-10分析による土砂濃度の関係、数年のタイムスケールにおける景観の変化への斜面崩壊の寄与について議論した。

Journal of Geological Resource and Engineering Vol.3 No.4 pp.163-172 2015
M. Niwa, Y. Mizuochi and A. Tanase

Changes in chemical composition caused by water–rock interactions across a strike-slip fault zone: case study of the Atera Fault, Central Japan

断層破砕帯における水-岩石反応に伴う化学組成変化について明らかにするため、本研究では、中部日本の阿寺断層の破砕帯露頭を対象に、断層岩の化学組成分析を行った。粘土鉱物や炭酸塩鉱物の安定同位体組成分析からは、破砕帯の断層ガウジが地表付近で形成されたことを示し、変形構造解析に基づく破砕帯の発達過程と整合的である。全岩化学組成分析の結果、本研究では、粘土鉱物の形成に伴うSi, Na, Kや軽希土類元素の減少、断層活動によって混入してきた玄武岩岩片の変質に伴う炭酸塩鉱物の沈殿、その炭酸塩鉱物との錯体形成に伴う重希土類元素の濃集を確認することができた。

Geofluids Vol.15 No.3 pp.387-409 2015
C. Thiel, S. Tsukamoto, K. Tokuyasu, J-P. Buylaert, A. S. Murray, K. Tanaka and M. Shirai

Testing the application of quartz and feldspar luminescence dating to MIS 5 Japanese marine deposits

第四紀後期の隆起特性を評価するためには、堆積物の年代決定が重要である。本研究では、秋田県男鹿半島の海岸沿いの海成堆積物を用いて、堆積物中の石英および長石に対するルミネッセンス年代測定法の適用性について検証した。石英は、熱に不安定で、Linear modulated (LM)-OSL分析よりslow成分が卓越していることが示された。また、石英からは、堆積物に挟在する2つのテフラの年代と比較して、非常に若い年代値が得られた。カリ長石は、ドーズリカバリーテスト等の結果、225℃のpost-IRIRSL信号を用いた場合に年代測定に適した鉱物であることが示されたが、篩い分けた粒径を基とした年間線量を年代値の算出に用いたところ、テフラの年代よりも若干、若い年代値が得られた。SEM解析により、長石粒子は小さな結晶を含んだ非晶質なものであることが分った。この場合、標準的な内部線量率を用いると、年間線量を過大に見積ることになる。そこで、以下の3つの年間線量のシナリオについて検討した。i)篩い分けた粒径サイズ(90-180μm)で、カリウム(K)の含有量が12.5±0.5%、ii)SEM画像を基にした小さい粒径サイズ(40±20μm)で、Kの含有量が6±0.5%、iii)小さい粒径サイズ(40±20μm)で、Kの含有量が12.5±0.5%。その結果、iii)のシナリオがテフラ年代と最も調和的な年代値であった。

Quaternary Geochronology Vol.29 pp.16-29 2015
K. Tokuyasu and K. Tanaka

Changes in optically stimulated luminescence components, thermoluminescence property and impurity content of natural quartz accompanied by thermal annealing treatment

第四紀後期の断層イベントの推定や10万年以上にわたる地殻変動を評価するために、年代測定技術を発展させることは重要である。光ルミネッセンス(OSL)年代測定法は、地質試料に普遍的に存在する鉱物を用いて幅広い年代を測定できることから、このような試料への適用が期待されている。石英を用いたOSL年代測定法では、ブリーチしやすい成分であるfast成分からの信号を用いることが望ましい(Wintle and Murray, 2006)。fast成分は照射や光ブリーチング、熱処理で感度が増加することが知られているが、そのメカニズムについては完全には分かっていない。一方で、天然石英の熱ルミネッセンス(TL)については、OSLと比べてよく知られている。Hashimoto (1986、1994)は、石英のTLが2つの異なるタイプの色(赤または青色TL)を示し、TLカラーと石英中の不純物量には密接な関係があると報告した。しかし、OSL成分とTL特性及び不純物量の関係については調べられていない。そこで本研究では、熱処理に伴う天然石英のOSL成分とTL特性及び不純物量の変化について調べた結果を報告する。

Quaternary Perspectives on Climate Change, Natural Hazards and Civilization (19th INQUA 2015) Nagoya (Japan)
Book of abstracts p.206
2015
K. Umeda, K. Asamori, A. Makuuchi, K. Kobori and Y. Hama

Triggering of earthquake swarms following the 2011 Tohoku megathrust earthquake

2011年東北地方太平洋沖地震の直後から茨城・福島県境の沿岸域を震源とする群発地震の活動が始まり、1年以上経過した現在も継続している。群発地震の震源域の温泉水・地下水を採取し、そこに含まれる溶存ガスの希ガス同位体を測定した。ヘリウムおよびネオン同位体組成から太平洋プレートの最上部を構成する堆積物から脱水した流体が震源域の地下に上昇している可能性が示唆される。これらのことから群発地震は、巨大海溝型地震による地殻応力の変化とそれに伴う太平洋プレートからの流体の上昇によって引き起こされたと考えられる。

Journal of Geophysical Research: Solid Earth Vol.120 No.4 pp.2279-2291 2015

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使用済燃料直接処分に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Kitamura and H. Takase

Effects of α-radiation on a direct disposal system for spent nuclear fuel -(1)review of research into the effects of α-radiation on the spent nuclear fuel, canisters and outside canisters

使用済燃料の再処理を経て生成するガラス固化体の地層処分だけでなく、使用済燃料そのものを深地層中に処分(直接処分)する可能性について、日本の地層処分計画において検討される可能性が出てきている。使用済燃料の直接処分においては、廃棄体中の放射濃度が高く、放射線による影響も高くなる。放射線による影響の可能性の具体例としては、キャニスターの腐食量が増える、放射線によって地下水が変質することで酸化性化学種が生成し還元型地下水が酸化される、使用済燃料の溶解速度が上昇するといったことが挙げられる。安全評価におけるα線による影響に特に注目し、本研究では使用済燃料、キャニスターおよびキャニスター外部におけるα線の影響に関する研究をレビューした。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.53 No.1 pp.1-18 2016
(2015/3電子ジャーナル)
A. Kitamura, H. Takase, R. Metcalfe and J. Penfold

Effects of α-radiation on a direct disposal system for spent nuclear fuel -(2)review of research into safety assessments of direct disposal of spent nuclear fuel in Europe and North America

使用済燃料の再処理を経て生成するガラス固化体の地層処分だけでなく、使用済燃料そのものを深地層中に処分(直接処分)する可能性について、日本の地層処分計画において検討される可能性が出てきている。使用済燃料の直接処分においては、廃棄体中の放射濃度が高く、放射線による影響も高くなる。放射線による影響の可能性の具体例としては、キャニスターの腐食量が増える、放射線によって地下水が変質することで酸化性化学種が生成し還元型地下水が酸化される、使用済燃料の溶解速度が上昇するといったことが挙げられる。このことから、ガラス固化体の地層処分では問題とならないと思われる放射線による影響について、使用済燃料の直接処分の安全評価では考慮することが必要となる。安全評価におけるα線照射影響に特に注目して、本研究では直接処分を計画している日本以外の国々の安全評価をレビューした。本レビューは、日本における直接処分の安全評価に適切な論点を明確にした。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.53 No.1 pp.19-33 2016
(2015/3電子ジャーナル)

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