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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成25年度分)

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全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
大澤英昭、広瀬幸雄、大沼進、大友章司

フランスにおける高レベル放射性廃棄物管理方策と地層処分施設のサイト選定の決定プロセスの公正さ

フランスのこれまでのHLW管理事業の進め方を取り上げて、手続き的公正さ、分配的公正さに関し、規範的分析を行った。その結果は、HLW管理方策と地層処分施設の候補地の各々の決定プロセスを明確にするとともに、独立した第三者組織による討議の結果も含め、意見の反映や意思決定の仕方を事前に明確に規定しておくことが、手続き的公正さを高めるために必要であることを示唆している。また、将来世代への責任に関しては、時間的側面での衡平および均等の視点のどちらを重視するのかを、手続き的公正さを確保したプロセスで熟議すること、可逆性の概念の導入にあたっては、意思決定の手続き的公正さが十分担保されることが必要であることを示唆している。さらに、空間的側面および経済的側面の分配的公正さは表裏一体であり、候補地選定における負のイメージの均等という視点での分配的公正さと、対象とされた地域の価値を高めるための経済的側面での分配的公正さを、手続き的公正さが確保された決定プロセスで熟議していくことが必要になると推察された。

社会安全学研究 第4号 pp.51-76 2014

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Sasaki and M. Naito

Status of JAEA’S R&D Program for HLW Geological Disposal

JAEA has been conducting R&D for Japanese HLW geological disposal to provide solid technical basis to both implementation and regulatory activities for the repository. These R&Ds are related to site investigation techniques, repository engineering technology, and safety assessment methodology. A particular focus of our R&Ds is placed on projects at two off-site Underground Research Laboratories. Nationwide studies of tectonics, volcanic and faulting activities have been also conducted to establish methods to evaluate the long-term stability of geological environments. JAEA's developing advanced knowledge management system (KMS) is aiming to efficiently cover all aspects of the development, integration, quality assurance, communication and maintenance/archiving of such knowledge to support both implementer and regulator.

The 4th East Asia Forum on Radwaste Management Beijing (China) 2013

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Shimizu, T. Koyama, M. Chijimatsu, S. Nakama and T. Fujita

The distinct element analysis for the de-stress drilling in the near field of the HLW repository

国際共同プロジェクトDECOVALEX-2011では、Äspöピラー安定性試験(APSE)における熱−力学連成挙動のシミュレーションが行われた。本稿では、現場における岩盤中の既存の亀裂の影響に着目した個別要素法モデルを開発し、APSEへの適用を行った。その結果、ピラーの応力解放は同モデルにより再現することができ、応力が解放される間の亀裂の発生および伸展は現場での観測結果と定性的に一致した。モデルの力学特性は、同じ粒子の配置および入力パラメータを使用した場合においても、既存の亀裂を取り込むことにより異なるものとなった。これは実際の岩盤のスケール効果と類似した結果である。また、既存の亀裂が多く含まれる岩盤モデルにおいては、微小亀裂が広く分布し、大きな割れ目は生じないことが示された。

The 6th International Symposium on In-situ Rock Stress (RS2013) Sendai (Japan) 2013

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
河村和廣、小出学、松下和正

日本の高レベルガラス固化体に対する粘度の温度依存性と結晶化時間の評価

本報では、模擬高レベルガラス固化体を対象としてガラス転移温度領域の高温側と低温側との粘度の温度依存性を測定することにより、粘度の対数値と温度の逆数からなる直線式、活性化エネルギー値を求め、さらに低温側の活性化エネルギー値が、高温側の0.1倍であることを明らかにした。従来ガラスの粘度の温度依存性は、Mazurinらによる一般ガラスを対象に測定したガラス転移温度領域の低温側の活性化エネルギー値が、高温側の0.5倍になるという結果が報告されていたが、その数値はガラス転移温度領域以下の温度における高レベルガラス固化体の長期結晶化時間を評価するのに適さないことがわかった。また結晶化度およびガラス溶解速度が最も大きい結晶化温度と時間(640℃, 10,000時間)を求め、粘度の温度依存式と合せて長期結晶化時間式を得た。その結果をもとに、長期結晶化時間の温度依存性を評価し、想定されている地層処分時の設計最高温度以上(150℃)で保持しても十分な長期安定性をもつことを明らかにした。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.13 No.1 pp.27-33 2014
笹本広、J. Wilson、佐藤努

鉄との相互作用による緩衝材への変質影響評価:影響要因に関する解析的検討

本報告では、高レベル放射性廃棄物の地層処分環境において緩衝材が被ると予想される変質のうち、オーバーパックの候補材である炭素鋼(鉄)と緩衝材(ベントナイト)の相互作用を対象とし、鉄による緩衝材の変質影響に関する既往の知見を整理するとともに、それを踏まえた鉄との相互作用による緩衝材の長期的な変質評価のための手法を諸外国における先行事例も参考にしつつ開発した。変質評価手法の開発にあたっては、鉄-ベントナイト相互作用に伴う長期的な変質影響の評価で考慮すべき主要な現象を概念モデルとして整理した。概念モデルで考慮した現象のうち、緩衝材の変質に影響を与えると考えられる主要な反応・プロセスとして、1)オーバーパックの腐食反応に伴うFe2+の供給、2)圧縮ベントナイト中でのFe2+の拡散、3)スメクタイト結晶端へのFe2+の収着や層間でのイオン交換、4)スメクタイトの鉱物学的変化に伴う二次鉱物の生成を抽出した。これらの主要な反応・プロセスを対象に、緩衝材の変質への影響が最も大きいと考えられる要因を解析的に検討した。

原子力バックエンド研究 Vol.20 No.2 pp.39-52 2013
山口正秋、前川恵輔、竹内真司、北村哲浩、大西康夫

土砂移動に着目した福島第一原子力発電所事故後の放射性物質分布に関する解析手法の開発

東京電力福島第一原子力発電所事故後に地表に降下した137Csを対象に、主要な移行経路の一つと考えられる土砂移動(侵食、運搬、堆積)を考慮した移行解析のための簡易的な解析手法を考案した。本検討では、地理情報システム(GIS)のモデル構築機能を用いて、各関係機関がオンラインで提供する公開データを用いて解析を行うためのプログラムを構築した。試解析の結果、ダム湖や貯水池における顕著な堆積傾向や、シルト・粘土等の細粒物が粗粒の砂等に比べてより遠方まで運搬されるといった粒径毎の流送土砂量の違いなどが計算で再現され、定性的には既存の観測結果と概ね整合的であることが確認された。

原子力バックエンド研究 Vol.20 No.2 pp.53-69 2013
岩田孟

2013年度バックエンド週末基礎講座(会議参加記)

2013年度週末基礎講座に参加しその参加記をまとめた。

原子力バックエンド研究 Vol.20 No.2 pp.123-124 2013
三ツ井誠一郎

本高弓ノ木遺跡5区出土鉄器の非破壊分析

鳥取県鳥取市本高弓ノ木遺跡の古墳時代前期(4世紀)の水路遺構から出土した鉄製鋤先の腐食状況について、X線CT装置を用いた腐食状態の観察、ポータブルX線回折・蛍光X線分析装置を用いた表面の腐食生成物等の分析を実施した。また比較のため、同時代の宮谷26号墳より出土した刀子並びに良田中道遺跡より出土した鉄斧についても同様な分析を実施した。その結果、鋤先と鉄斧については腐食生成物として菱鉄鉱を検出するとともに、遺物の内部に金属鉄が残存することを確認した。菱鉄鉱による腐食反応の抑制が既往の実験的研究で確認されており、鋤先と鉄斧の腐食状態についても菱鉄鉱の形成が関係している可能性がある。

一般国道9号(鳥取西道路)の改築に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書[「本高弓ノ木遺跡(5区)T」第3分冊 pp.241-258 2013
北村暁、藤原健壮、吉川英樹、五味克彦

GPSとGISを利用した線量測定現地調査ツールおよび調査結果管理システム(DRaMM-GiGs)の開発

除染のための線量率測定等の調査を迅速かつ確実に実施するために、あらかじめ校庭や田畑における線量率の測定地点を格子状に設定するとともに、測定結果を入力する際に位置情報と日時情報が同時に記録され、結果を集約することを可能としたシステムを開発した。本システムでは、地理情報システム(GIS)を用いて測定地点の情報を一元的に設定および管理することができるだけでなく、高精度の位置情報システム(GPS)およびカメラを内蔵した携帯情報端末(PDA)を用いて測定地点まで容易にアクセスすることが可能である。また、すべての測定結果をPDAに記録することで、測定結果が測定地点の位置情報や現場写真と連携した形で管理されることから、これらの情報をパーソナルコンピュータに集約することで、測定の日時、地点および結果を効率よく一元的に管理できる。その結果、測定地点の決定や測定結果の整理に費やしていた膨大な時間と多くの人工が大幅に低減され、作業を迅速かつ確実に遂行することに貢献した。

原子力バックエンド研究 Vol.20 No.1 pp.15-19 2013
高橋宏明、根本一昭、舘幸男、片山真祥、稲田康宏

圧縮ベントナイト中に拡散したNiのXAFS分析

圧縮ベントナイト中におけるCm, Am, Ni等の高収着性核種の拡散は、単一の化学種の単純な一次元拡散モデルではフィットできない2つのプロファイルを示す場合がある。このような特異な拡散挙動の理由は解明されていない。ベントナイトの主成分である、モンモリロナイトの圧縮体中に拡散したNiの高濃度領域におけるXANESスペクトルは、ホワイトラインの高エネルギー側にブロードニング形状を示した。水溶液中のNi(U)イオンやNi型モンモリロナイトの層間中のNiでは、そのようなブロードニング形状は見られなかった。これらの結果は、拡散の高濃度領域において、Niは内圏型錯体を形成することを示唆した。

立命館大学総合科学技術研究機構 先端研究施設共用促進事業 成果報告書
立命館大学 SRセンターホームページ R1228
2013

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
R. Doi

Molar entropy of the selenium (Y)/(W) couple obtained by cyclic voltammetry

Se(VI)/(IV)酸化還元反応のモルエントロピー変化を求めることを目的として、サイクリックボルタンメトリーを用いてSeの電気化学研究を実施した。HSeO4¯およびNa+間のイオン相互作用係数、εT(HSeO4¯, Na+)、を求めるために中性種を還元体とする次の反応を用いた:HSeO4¯ + 3H+ + 2e- = H2SeO3 + H2O。硝酸溶液中でNa+ の重量モル濃度をパラメーターとしてSe(VI)/(IV)の半波電位を測定した。15、25、35および50℃の温度で実施した。HSeO4¯/H2SeO3の標準電極電位、EHSeO4¯/H2SeO3(T,0)、およびεT(HSeO4¯, Na+)を各温度において算出するのに、特異イオン相互作用モデル(SIT)を用いた。EHSeO4¯/H2SeO3(T,0) の温度依存性から次のモルエントロピー変化を得た。ΔrS0m /2F = -0.3±0.3mV℃-1。εT(HSeO4¯, Na+)の25℃における値は0.29±0.04 kg mole-1であった。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.51 No.3 pp.359-368 2014
R. Doi

Determination of the selenium (Y)/(W) standard redox potential by cyclic voltammetry

前報告の問題を解決しつつ、信頼性の高いSeO42-/SeO32-の標準電極電位(E0)を求めることを目的として、Se以外の化学種の影響がないSeの純粋な系において、サイクリックボルタンメトリーにより更なる研究を行った。高pH溶液を用いることで溶液中のSe(W)がSeO32-として存在するようにした。試験溶液は高イオン強度なので、pH計によるpHを用いずに、水素イオンの活量に相当する正しいpH値を評価した。Na+の重量モル濃度をパラメータにして、SeO42-/SeO32-の半波電位を求めた。実験結果を特異イオン相互作用モデルにより解釈し、次のように標準電極電位および相互作用係数を求めた。E0(SeO42-/SeO32-)=0.8277±0.0032V vs. SHE, Δε=0.59±0.12kg/mol。本研究によるE0(SeO42-/SeO32-)は、OECD/NEA値の補正値とよく一致しており、特に酸化性地下水中における化学種分配評価の信頼性向上に資するものである。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.51 No.1 pp.56-63 2014
C. Katsuyama, H. Nashimoto, K. Nagaosa, T. Ishibashi, K. Furuta, T. Kinoshita, H. Yoshikawa, K. Aoki, T. Asano, Y. Sasaki, R. Sohrin, D. Komatsu, U. Tsunogai, H. Kimura, Y. Suwa and K. Kato

Occurrence and potential activity of denitrifiers and methanogens in groundwater at 140m depth in Pliocene diatomaceous mudstone of northern Japan

嫌気性微生物活性は地下環境に影響を与える。本研究では140mの深度の2つのボアホールから低酸素濃度の地下水を採取し脱窒菌とメタン生成菌の活性について調査した。脱窒菌活性は15Nをトレーサとしてボアホール環境にて測定し、メタン生成菌については16S rRNAの遺伝子解析により存在を確認した。メタンの安定同位体の分析値から溶存メタンは微生物活用由来であることが分かったが、本メタン生成菌の培養中には発生が確認できなかった。地下140m深の地下水中には酸素が含まれておらず、Ehが-144から6.8mVを示し、脱窒菌の活性が有意な環境であることが分かった。

FEMS Microbiology Ecology Vol.86 No.3 pp.532-543 2013
A. Kitamura, K. Fujiwara, M. Mihara, M. Cowper and G. Kamei

Thorium and americium solubilities in cement pore water containing superplasticiser compared with thermodynamic calculations

セメントペーストから抽出した水の中のトリウムおよびアメリシウムの溶解度を、過飽和側のバッチ法により調査した。セメントペーストの調製において、普通ポルトランドセメントと脱イオン水を混合し、固化したのちに間隙水を抽出した。本調査の目的は、セメント抽出間隙水中のトリウムおよびアメリシウムの溶解度に及ぼすセメント減水剤の影響を調べることであった。得られた溶解度の値は、セメント減水剤の有無によらなかった。また、原子力機構熱力学データベース(JAEA-TDB)を用いた熱力学計算の適用性を確認するため、計算結果を本研究の結果と比較した。結果として、セメントペースト中に混練したセメント減水剤はトリウムおよびアメリシウムの溶解度に大きな影響を及ぼすことはなく、熱力学計算が適用可能であることがわかった。さらに、トリウムおよびアメリシウムのコロイド成分についても調査を行った。

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry Vol.298 No.1 pp.485-493 2013
Y. Suzuki, H. Saiki, A. Kitamura and H. Yoshikawa

REDUCTION OF SELENITE BY BIOFILM OF AN IRON-REDUCING BACTERIUM

鉄還元菌により形成されたバイオフィルム(Shewanella putrefaciens)における亜セレン酸の還元挙動について調べた。カバーガラス上にバイオフィルムを形成させたのち、亜セレン酸を含む溶液と接触させ、嫌気条件で静置培養したところ、バイオフィルム上に赤褐色の沈殿が生じた。沈殿をX線蛍光分光法で分析したところ、単体セレンの沈殿であることがわかった。

Migration 2013 (14th International Conference on the Chemistry and Migration Behaviour of Actinides and Fission Products in the Geosphere) Brighton (United Kingdom) 2013
T. Ebashi, M. Kawamura, M. Inagaki, S. Koo, M. Shibata, T. Itazu, K. Nakajima, K. Miyahara and M.J. Apted

“Relative Rates Method” for Evaluating the Effect of Potential Geological Environmental Change due to Uplift/Erosion to Radionuclide Migration of High-level Radioactive Waste

隆起・侵食が地層処分の安全機能に与える影響については、サイト選定によって回避することが基本であるものの、評価が超長期に渡ることに起因してその不確実性を完全に排除することができず、その影響を仮想的に評価する可能性がある。本研究においては、仮想的な堆積岩分布域を対象として、隆起・侵食に起因する地質環境条件の変化が地層処分の核種移行に与える影響について、より現実に即して評価するためのアプローチを例示した。このアプローチは、既存の概念モデル(モダンアナログ的な観点と地史に基づく外挿の考え方)を応用したものであり、隆起・侵食による地質環境条件の変化に関する組合せを効果的に抽出可能であることに加え、処分事業の初期段階のように情報が限られた段階における地質環境調査や隆起・侵食に関する将来予測に対して、有効なフィードバック情報となりうるものである。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.39-45 (2014)
2013
H. Yoshikawa, T. Itoh, K. Ise and Y. Sasaki

Construction of Microbial Kinetics Database for PA of HLW disposal

地下における微生物活性による地下水組成や放射性核種の化学種の変化を評価することが高レベル放射性廃棄物の性能評価における微生物影響を予測する最初の課題である。本報告では、重要な微生物反応と微生物活性を評価するためのデータベースを構築した。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.47-53 (2014)
2013
J.M. Soler, J. Landa, V. Havlova, Y. Tachi, T. Ebina, P. Sardini, M. Siitari-Kauppi and A.J. Martin

Modeling of an in-situ diffusion experiment in granite at the Grimsel Test Site

マトリクス拡散現象は結晶質岩中の核種移行遅延プロセスとして重要である。スイスのグリムゼル原位置試験場において花崗岩マトリクス中の原位置長期拡散(LTD)試験を行った。試験孔内にHTO, Na+, Cs+を含むトレーサ溶液を循環させ、2年半の間、トレーサ濃度の減衰が観測された。拡散期間終了後に、オーバーコアリングによって、岩石中のトレーサ分布が分析された。岩石中の拡散深さは、HTOで20cm, Na+で10cm、Cs+で1cm程度であった。これらのデータセットに対し、拡散・収着モデルによる解釈が、複数のチームによって、異なるコードを用いて実施され、実効拡散係数(De)と岩石容量因子(α)が導出された。複数のチームによる評価結果は、観測データを概ね再現可能であり、掘削影響による表面部分のDeとαの値が、岩石マトリクス部に比べて大きいことを示唆した。一方で、HTOの結果は実験データと解析結果に大きな乖離が認められ、この点は今後の詳細な検討が必要である。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.85-91 (2014)
2013
K. Yotsuji, Y. Tachi and Y. Nishimaki

Diffusion Modeling in Compacted Bentonite Based on Modified Gouy-Chapman Model

圧縮ベントナイト中の核種の収着と拡散現象の定量評価のために、統合収着・拡散モデル(ISDモデル)の開発を進めてきた。平均化された狭隘間隙と電気二重層理論を仮定したISDモデルは、多様な環境条件での1価の陽イオン/陰イオンの拡散データを定量的に説明可能である。しかし、多価の陽イオン、陰イオンや複雑な化学種に対して、系統的な差異が認められていた。本研究では、排除体積効果および誘電飽和効果を現状のISDモデルに取り入れ、拡張Poisson-Boltzmann方程式の数値解析評価を試みた。表面近傍におけるイオン濃度分布は影響されるものの、間隙全体でみるとその効果は打ち消され、結果として、これらの改良モデルの実効拡散係数への影響はいずれも小さかった。一方で、有効電荷をもつ水和イオンとしての拡散を仮定したモデルでは、拡散データは良好に再現される結果となった。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.123-129 (2014)
2013
Y. Tachi, M. Ochs, T. Suyama and D. Trudel

Kd setting approach through semi-quantitative estimation procedures and thermodynamic sorption models : A case study for Horonobe URL conditions

岩石への核種の収着(Kd)は地球化学条件に大きく依存し、実際の性能評価条件に対応付けて設定される必要がある。具体的な地質環境条件に対するKd設定手法について、半定量的推定手法、熱力学的収着モデルといった条件変換手法に着目して開発を進めてきた。本報告では、幌延深地層研究所の泥岩環境におけるCs, Ni, Am, Thを対象に、Kd設定と不確実性評価を試行した。これらのKd設定の結果は、実測されたKdと比較され、十分なデータとモデルが利用可能な場合には、収着の定量的な評価が可能なことが確認された。ここで示したような複数の条件変換手法や実測データとの比較検討は、Kd設定の信頼性を高めるうえで有効であり、データや現象理解の状況を踏まえながら、複数の条件変換結果から、注意深く値を選択することが重要である。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.149-155 (2014)
2013
K. Ise, T. Sato, Y. Sasaki and H. Yoshikawa

Development of simplified biofilm sorption and diffusion experiment method using bacillus sp. isolated from Horonobe Underground Research Laboratory

近年、地下微生物のバイオフィルムが岩盤への吸着能力に大きな影響を及ぼすことが明らかとなってきた。しかしながら、バイオフィルムが放射性核種の移行遅延を阻害するかどうかは明らかとなっていない。この問題を解決するため、定量的な収着や拡散などの物理化学的パラメータについての研究が必要となる。そこで、本研究では簡易的なバイオフィルムへの核種の収着や拡散試験手法を構築した。共焦点レーザ顕微鏡によるバイオフィルムの観察の結果、バイオフィルムの大部分は鎖状のBacillus属細菌により構築されており、その隙間を細胞外マトリックスが覆っている様子が見られた。これは明らかに浮遊菌体状のBacillus属細菌とは異なる様子であった。得られた銅イオンの収着分配は溶液濃度が0.074mmol/Lより高い場合には約100ml/g(湿潤重量)となった。さらにTD法によって求めた実効拡散係数は1.1×10-10(m2/s)であった。これらの結果から、この方法を用いて比較的容易にバイオフィルムの収着・拡散係数を求めることが可能となると考えられる。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.171-177 (2014)
2013
S. Shimoda, T. Nakazawa, H. Kato, Y. Tachi and Y. Seida

The effect of alkaline alteration on sorption properties of sedimentary rock

セメント系材料によるアルカリ環境の影響については、高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価において評価される必要がある。本研究では、幌延深地層研究所の堆積岩のアルカリ変質及び未変質試料を用いて、Cs, Ni, Thの収着挙動を調査した。バッチ法で得られた模擬地下水系でのCs, Ni, ThのKdは、変質の度合いに応じて変化した。CsのKdは変質とともに増加傾向を示し、二次鉱物がイオン交換反応によるCs収着に寄与していることが示唆された。一方、NiとThのKdは変質の進行とともに低下した。この変化は、NiとThの表面錯体による収着を支配する粘土鉱物の溶解に起因している可能性がある。これらの結果は、岩石のアルカリ変質がKdに及ぼす影響が、変質岩石の表面特性と収着メカニズムに依存することを示すものである。

MRS 2013 International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Barcelona (Spain)
MRS Symposium Proceedings Vol. 1665 pp.179-184 (2014)
2013
K. Wakasugi, K. Nakajima, H. Shimemoto, M. Shibata and M. Yamaguchi

BOUNDING ANALYSIS OF UPLIFT AND EROSION SCENARIO FOR AN HLW REPOSITORY

我が国において隆起・侵食は、不回避な天然現象の一つとしてシナリオで考慮する必要がある。また、現時点では評価時間のCut-offが定められていないため、超長期の影響も含めた隆起・侵食シナリオに対する評価の信頼性向上が求められている。このため、本研究では、我が国の地質・地形的特徴を考慮したより現実的な評価モデルを設定し、隆起と河川侵食を考慮した安全評価を実施した。さらに、仮想的な線量基準を満たすパラメータの組み合わせを把握するために、隆起・侵食速度および透水量係数に着目したBounding解析を実施した。その結果、本解析条件のもとでは、余裕深度処分の安全評価基本シナリオへの線量目安値(10μSv/y)を満たすパラメータの組み合わせは見いだせなかったものの、すべてのケースにおいて、変動ケースの目安値である300μSv/yを下回った。さらに詳細分析から、EBSからの放出を加速させても、母岩の安全機能により、核種が処分場近傍に留まることが示された。この結果、隆起・侵食の影響は、原則的に適切なサイト選定と設計によって回避されるべきであり、処分場が地下深部に留まっている間の核種の減衰を期待するしかないことが再確認された。

21st International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-21) Chengdu(China)
Proceedings of ICONE21-16724 (DVD)
2013
S. Gin, A. Abdelouas, L.J. Criscenti, W.L. Ebert, K. Ferrand, T. Geisler, M.T. Harrison, Y. Inagaki, S. Mitsui, K.T. Mueller, J.C. Marra, C.G. Pantano, E.M. Pierce, J.V. Ryan, J.M. Schofield, C.I. Steefel and J. Vienna

An International initiative on long-term behavior of high-level nuclear waste glass

ガラスの長期溶解速度の支配機構に関する共通認識を得るため、使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の閉じ込め材料としてホウケイ酸ガラスを採用している国々が科学的協力を強化することとなった。共通認識の獲得は、性能評価及び地層処分の安全性実証に利用される信頼性の高い予測モデルの開発に向けて最も重要な課題である。この協力構想には、材料科学分野の最新ツールを利用して基礎又は応用研究を行っている多数の研究機関が参加している。本論文では、この協力構想に参画している6カ国におけるガラス固化に関する経緯、現在の政策、地層処分計画を紹介し、ガラスの長期挙動に関する共通及び各国のニーズを示す。また、この協力構想の提案及びこれまでに得られた成果を概括する。

Materials Today Vol.16 No.6 pp.243-248 2013
H. Yoshikawa

Input of iron corrosion studies to the Japanese safety case - Corroborative evidence by using iron-based archaeological artifacts to long term stability of the overpack -

地中における金属の長期腐食を傍証するために、金属ナチュラルアナログ研究として遺跡から出土した腐食した金属製品を用いた研究は有効である。JAEAではX線CTやXRDを用いて腐食量や腐食物質の化学組成について測定している。腐食環境を考慮して腐食データを分類し処分環境に適した事例を抽出した。

The 13th Natural Analogue Working Group Workshop Nagoya (Japan) 2013
T. Ishidera, S. Kurosawa, S. Ohtsuka, K. Uchikoshi and G. Kamei

Iodine mobility in bituminous marl at Maqarin

マカーリンサイトの泥灰岩中のヨウ素の挙動は、アルカリ条件におけるアスファルト固化体からのヨウ素の浸出挙動を検討する際に有効なナチュラルアナログ研究となると考えられる。そのため、高アルカリ地下水が流れたと推測される亀裂を有する泥灰岩岩石コア中のヨウ素含有量について調査を行った。調査においては、ヨウ素含有量とともに塩素含有量についても検討を行った。その結果、ヨウ素は泥灰岩中に含まれる比較的低分子量の有機物とともに抽出され、泥灰岩中で有機物と錯体等を形成した状態で保持されているものと推測された。これに対し、塩素はナトリウムやカリウム等とともに抽出されたことから、可溶性塩の形態で泥灰岩中に存在しているものと推測された。

The 13th Natural Analogue Working Group Workshop Nagoya (Japan) 2013

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Hama and R. Metcalfe

Groundwater dating applied for geological disposal of radioactive waste - A review of methods employed worldwide -

放射性廃棄物の地層処分および関連する研究開発において、地質環境調査の一環として実施される地下水の年代測定手法についてレビューを行なった。対象としたプロジェクトは、日本、フィンランド、スウェーデン、ベルギー、イギリス、ドイツ、フランス、スイス、カナダおよびアメリカで実施されているプロジェクトである。調査対象の岩種は、花崗岩、石灰岩、岩塩などであり、それらの岩盤中を流動する地下水の年代測定事例を収集した。年代測定にあたっては、単一の物質や核種を利用せず、複数の手法を組み合わせ、比較しつつ考察することが重要であることが示唆される。

日本水文科学会誌 Vol.44 No.1 pp.39-64 2014
堀内泰治、見掛信一郎、佐藤稔紀

瑞浪超深地層研究所における地震時の湧水量変化と水圧応答について

日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の基盤となる深地層の科学的研究の一環として、超深地層研究所計画を進めている。本計画では、深地層の研究施設である瑞浪超深地層研究所を建設しているが、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震直後に、同研究所の研究坑道内で湧水量増加が確認され、研究所周辺において実施している地下水圧モニタリング孔では水圧変化が観測された。本報告では、湧水抑制対策として実施したプレグラウト工への地震に伴う湧水量増加の影響評価と、地震時の水圧モニタリング孔の水圧変化と地震特性との関係の検討により得られた知見を述べる。

第42回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.96-100
2014
石橋正祐紀、尾上博則、澤田淳、渥美博行、升元一彦、細谷真一

地下坑道での調査データに基づく坑道周辺領域における水理地質構造モデルの構築(その1)

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市において地層処分技術に関する研究開発の一環として、超深地層研究所計画を進めており、結晶質岩における深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を目的の一つとして調査研究を実施している。本研究では、結晶質岩中の物質移動特性評価を行ううえで重要となるパラメータの抽出を目的として、原位置調査データに基づく研究坑道周辺領域(100mスケール)の水理地質構造モデルの構築、地下水流動解析、および粒子追跡解析を実施している。本稿では、地下坑道から取得したデータに基づき亀裂ネットワークモデルを構築した。さらに、調査データの解釈の違いが亀裂ネットワークモデル構築のためのパラメータに与える影響について検討を行った。

第42回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.101-106
2014
中嶌誠門、瀬尾昭治、尾上博則、石橋正祐紀、三枝博光、澤田淳

地下坑道での調査データに基づく坑道周辺領域における水理地質構造モデルの構築(その2)

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市において地層処分技術に関する研究開発の一環として、超深地層研究所計画を進めており、結晶質岩における深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を目的の一つとして調査研究を実施している。本研究では、結晶質岩中の物質移動特性評価を行ううえで重要となるパラメータの抽出を目的として、原位置調査データに基づく研究坑道周辺領域(100mスケール)の水理地質構造モデルの構築、地下水流動解析、及び粒子追跡解析を実施している。本稿では、地下坑道周辺で取得したデータに基づく水理地質構造モデルの構築方法について示す。特に水理地質構造モデルの構築に必要な水理特性パラメータの設定方法について検討を行った。

第42回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.107-112
2014
川口昌尚、藤田朝雄、杉田裕

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発 —グラウト材料の浸透特性の改善—

地層処分施設では、地下深部の坑道の掘削・施工時にグラウトが必要不可欠と考えられ、高水圧環境下で、湧水量の制限が厳しく、かつ長期的な岩盤変質への影響を最小限に抑えることが要求されている。日本原子力研究開発機構では、低アルカリ性(pH≦11)のグラウト材料として、低アルカリ性セメント、超微粒子球状シリカ、溶液型の3種類のグラウト材料を開発し、その技術の改良・高度化を行ってきた。本稿では、室内試験結果等に基づく各材料ごとの浸透特性改善策についての検討結果と、これに基づいて推定した浸透可能な亀裂開口幅の見直し結果について報告する。

第42回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.171-176
2014
関口高志、関根一郎、川口昌尚、藤田朝雄、杉田裕、荒木昭俊

超微粒子球状シリカ系グラウト材料における団粒化発生メカニズムの考察

筆者らは、地下深部の地層処分施設で用いる低アルカリ性(pH≦11)のグラウト材料として超微粒子球状シリカ系グラウト材料を開発し、その技術の改良・高度化を行ってきた。そこで、グラウト材料の浸透特性に悪影響を与える団粒化について、室内試験で発生状況を再現したうえで、その発生メカニズムを考察した。その結果、様々な撹拌条件や試験条件のうち、混合手順が異なる場合に団粒化が発生することがわかった。本稿では、団粒化の発生メカニズムの考察と団粒化防止のために定めた混合手順を報告する。

第42回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.177-182
2014
今井久、雨宮清、松井裕哉、佐藤稔紀、三枝博光、渡邉邦夫

地下空洞周辺岩盤内の不飽和領域解析手法に関する提案 —岩石の不飽和浸透パラメータと空洞壁面境界条件の設定方法—

放射性廃棄物の地層処分や液化石油ガスの地下貯蔵においては、地下空洞周辺岩盤内の不飽和領域の把握やその適切な管理が要求される。岩盤内不飽和領域の把握や管理に際しては岩盤内の浸透流解析が必要で、この解析では岩盤の不飽和特性の設定、掘削状況に応じた空洞壁面への適切な境界条件の設定という二つの課題が存在する。著者らは岩盤の不飽和特性の測定方法として土壌に対する方法を応用し、水分特性曲線および比透水係数の測定方法を考案、また、浸透流解析の境界条件設定に関しては、固定水位境界と固定流量境界を合わせたハイブリッド境界を考案した。考案した測定方法を室内試験に適用、ハイブリッド境界条件を仮想モデルに対して適用し、これらの適用性を確認するとともに、地下空洞周辺岩盤内の不飽和領域の評価解析手法を提示した。

土木学会論文集C Vol.69 No.3 pp.285-296 2013
相馬宣和、及川寧己、平野享、松井裕哉、浅沼宏

小規模コアボーリング掘削時のランダム連続振動の相関解析に基づく地下空洞周辺の不連続構造の推定法

本研究では、地下空洞内部から、簡便かつ安価に周辺の地下構造を評価する手法の確立を目的として、ボーリング掘削時に受動的に得られる弾性波を利用した地下イメージング方法を検討している。本稿では、日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所の研究坑道において、力学調査目的の岩石コア採取時の掘削音の観測を行い、坑道周辺の3次元的な反射イメージングを試みた。その結果、掘削音の観測はボーリング作業の施工工程にほとんど影響せずに実施でき、坑道周辺の3次元反射イメージングが可能な事が分かった。

物理探査 Vol.66 No.2 pp.69-83 2013
小瀬村隆、本多照幸、水野崇、村上裕晃、野村雅夫

北海道幌延地域に分布する堆積岩中のU, Thおよび微量元素の存在形態

北海道幌延町において掘削したボーリング孔(HDB-6孔)から得られた岩石試料を用いて、断層部における希土類元素の存在形態を推測した。その結果、UやThは主に硫酸塩態として、希土類元素は主に珪酸塩態として断層部に存在していることが確認された。

フィッション・トラックニュースレター No.26 pp.16-20 2013
平野享、引間亮一、山下雅之、石山宏二

ハンマードリルを用いた原位置岩盤強度測定器の開発

現場において簡単に効率よく岩石や岩盤の一軸圧縮強度(σc)を測定できる測定器を開発した。この測定器は市販のハンマードリルを改造したもので、ハンマードリルが岩石や岩盤を穿孔するときの電流、電圧、ノミ下りなどをメモリーカードに記録する機能を備えている。また、この記録からσcへの換算は、σcが既知の試験体を使い、σcと掘削体積比エネルギーとの関係式を予め作成してこれを参照する方法とした。開発したシステムは、測定後のデータ処理からσc算定までをパソコン上の表計算ソフトで行うことができる。また、測定器は、作業者一人で運搬と操作が可能で、手持ち式とすることで測定箇所への据付作業は不要であり、ハンドリングの良好なものとすることができた。本論文は、当該測定器の開発過程とその実施例について述べるもので、室内試験による測定原理の確認、実岩盤等への適用試験について良好な結果を得ることができた。

西松建設技報 Vol.36 Report No.9 2013
津坂仁和

幌延深地層研究所

幌延深地層研究計画は、原子力発電で使われた燃料を再処理した際に生じる高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる技術的信頼性の向上のために、日本の代表的な地下深部環境の1つである堆積岩かつ塩水系地下水を対象として、原子力機構が実施する研究施設計画である。同計画では、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの研究段階を20年程度で進める。計画において整備される地下施設は、深度500mの3本の立坑(換気立坑1本(内径4.5m)、アクセス立坑2本(内径6.5m))とそれらを結ぶ4つの深度(深度140m、250m、350mおよび500m)での調査坑道からなる。地下施設の建設における特徴的な施工および維持管理として、地下施設工事に伴う湧水の抑制対策、地下水の湧出に伴うメタンガスを主成分とする可燃性ガスの対策、堆積軟岩中での大深度立坑の施工の3つが挙げられる。この地下施設は、研究開発を進めていく施設であるとともに、非専門家を含む幅広い人々に地層処分に関する研究開発の理解を深めていただく場としての意義を有している。

地下空間利用ガイドブック2013 pp.350-354 (清文社) 2013
佐藤稔紀、見掛信一郎

瑞浪超深地層研究所

エンジニアリング協会地下開発利用研究センターが発行する予定の「地下空間利用ガイドブック2013」において、最近の地下空間利用の例として、瑞浪超深地層研究所を紹介する。

地下空間利用ガイドブック2013 pp.354-357 (清文社) 2013

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Hokari, T. Iwatsuki and T. Kunimaru

Estimation of In-situ Groundwater Conditions Based on Geochemical Equilibrium Simulations

原位置地下水の化学条件(pH、酸化還元電位)について、地球化学計算コードPHREEQCを用いた推測手法の検討を行った。その結果、数種類の鉱物と地下水の溶存成分の平衡状態を仮定することで、原位置地下水の化学条件を説明可能であることが示された。また、同様の手法を用いて、原位置の測定を行っていない地点についても、化学条件を推定する手法を構築することができた。

Journal of Sustainable Development of Energy, Water and Environment Systems Vol.2 No.1 pp.15-29 2014
K. Miyakawa, T. Tokiwa and H. Murakami

The origin of muddy sand sediments associated with mud volcanism in the Horonobe area of northern Hokkaido, Japan

地下水やガスの主要な移行経路の把握は地層処分研究開発において重要な課題である。泥火山は、地下水やCH4やCO2などの地下から地表への主要な移行経路の一つとして着目されており、その性状や分布域、活動が研究されている。(e.g., Kopf, 2002)。本邦陸域における泥火山については、新冠、松代泥火山の僅か2例しかなく、さらなる事例の蓄積が課題である(産業技術総合研究所, 2012)。このためには、地表部に見られる物質の異地性に関する起源の調査解析手法の確立が必要である。北海道幌延町の上幌延地区において、泥火山様泥質堆積物の存在が指摘されており(酒井ほか2010)、これを対象に、事例の蓄積と調査手法の検討を目的として、泥質堆積物の起源の推定を行った。調査手法に関しては既存の泥火山研究による鉱物学的・地球科学的手法に加えて、旧石油公団による5000mの基礎試錐データとの比較を行った。その結果、泥質堆積物の起源は函淵層であり、地下約1.5-2.5kmから噴出した可能性が明らかになった。本論文では、一見泥火山に見えない堆積物の産状が、実際には大規模な物質移動が生じた痕跡であることを明らかにし、本邦陸域における泥火山活動の一例を示した。

Geochemistry, Geophysics, Geosystems  Vol.14 No.12 pp.4980-4988 2013
K. Fukushi, Y. Hasegawa, K. Maeda, Y. Aoi, A. Tamura, S. Arai, Y. Yamamoto, D. Aosai and T. Mizuno

Sorption of Eu(V) on Granite: EPMA, LA-ICP-MS, Batch and Modeling Studies

Eu(V)の花崗岩への収着について、巨視的、微視的な手法を組み合わせた研究を行った。花崗岩の薄片と10μMのEu(V)溶液とを反応させ、EPMAおよびLA-ICP-MSにより分析した。その結果、多くの黒雲母粒子では、最大で6wt.%までEuが増加した。黒雲母中でEuが付加された部分ではKが減少しており、黒雲母へのEuの収着様式は層間の陽イオン交換反応であることが示唆される。また、花崗岩および黒雲母の紛体を利用したEu(V)のバッチ収着試験を実施した。この試験により得られた黒雲母に対するEu(V)の巨視的な収着挙動は、花崗岩に対する収着挙動と一致した。得られた収着エッジはシングルサイトの陽イオン交換反応を考慮したモデルにより、合理的に再現することが可能である。以上のことから、花崗岩は複雑な鉱物の集合体であるが、巨視的および微視的な手法を組み合わせることによって、複雑な鉱物集合体全体を代表する一つの基本となる収着反応を明らかにすることができた。

Environmental Science & Technology Vol.47 No.22 pp.12811-12818 2013
T. Saito, Y. Suzuki and T. Mizuno

Size and elemental analyses of nano colloids in deep granitic groundwater: Implications for transport of trace elements

瑞浪超深地層研究所の深度300mから採取した地下水中のコロイドのサイズ分布を把握するため、流体流動場分画法を用いた研究を行った。比較的低濃度に分布するコロイドを分析するため、限外ろ過、大規模なインジェクションループおよびスロットフローにより濃縮し、分析を行った。無機もしくは有機コロイドはUV⁄Visおよび蛍光検出器、さらには誘導結合プラズマ質量分析装置を流体流動場分画装置と接続し分析した。その結果、ランタニド(La, Ce, Eu, Lu)やアクチニド(U, Th)、重金属元素(Cu, Zn, W)といった元素がサイズ依存性を持って分布していることがわかった。

Colloid and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects Vol.435 No.20 pp.48-55 2013
M. Nakata, E. Sasao and K. Komuro

Calcium and Magnesium-bearing Sabugalite from the Tono Uranium Deposit, Central Japan

ウラン鉱床の酸化帯では様々なウラン二次鉱物が産出する。これらの二次鉱物の生成プロセスや生成環境を明らかにすることによって、地表近傍の酸化帯におけるウランの移行や遅延挙動の解明に貢献できる。我が国最大のウラン鉱床地帯である東濃地域では、燐灰ウラン石、燐バリウムウラン石、燐ウラニル石、燐銅ウラン石などの多様な二次鉱物が報告されているが、それぞれの生成プロセスや生成環境については明らかにされていない。そこで、東濃地科学センターに保管されている鉱石試料のX線回折および化学組成分析を行った。その結果、東濃ウラン鉱床の酸化帯の礫岩中から、燐灰ウラン石の一種であるサブガライトが同定された。この鉱物は、陽イオンとしてカルシウムとマグネシウムを含んでおり、水素イオンの代わりにアルカリ土類もしくはアルカリ元素が取り込まれたことを示す。このことは、地表近傍の環境では、リン酸濃度が高い場合には、ウランの溶解度は低いため、様々な元素を取り込みながらリン酸塩鉱物として保持されることを示す。

Resource Geology Vol.63 No.4 pp.404-411 2013
K. Tsusaka and T. Tokiwa

Influence of fracture orientation on excavatability of soft sedimentary rock using a hydraulic impact hammer: A case study in the Horonobe Underground Research Laboratory

日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分において、4万本の廃棄体の処分のためには総延長約300kmの処分坑道が必要となると試算されている。このため、効率的な地層処分事業の観点からは、母岩の掘削性が必要な調査項目となる。本研究では、ブレーカによる坑道掘削の掘削速度に影響を及ぼす岩石の強度特性に加え、岩盤に内在する割れ目の影響を分析した。対象とした坑道は、堆積軟岩に建設中の幌延深地層研究所の250m調査坑道である。坑道掘削において、1掘進ごとに、掘削面の詳細な地質観察による割れ目分布とエコーチップ反発度試験による岩石の強度特性の分布を調査した。結果として、岩盤中の主要な割れ目の方向と並行に掘削した坑道よりも、同方向と直交するように掘削した坑道の方が、掘削速度が約1.3倍大きい結果を得た。また、掘削速度と掘削面に分布する割れ目の頻度との関係においては、岩盤中の主要な割れ目と直交する方向に掘削した坑道において、両者の明瞭な相関関係があった。本研究の結果より、地層処分場の処分坑道のレイアウトの検討において、坑道の掘削性の観点からは、地上からの調査段階の結果として得られる岩盤中の主要な割れ目の方向と坑道軸方向を直交させることが望ましいことが明らかとなった。

Tunnelling and Underground Space Technology Vol.38 pp.542-549 2013
H. Sanada, S. Teodori, J. Rüedi and S. Vomvoris

Elasto-Plastic and Fracture Modeling of Concretes for Determining the Mechanical Behaviour of the Plug in the GAST Project

GAST(Gas-Permeable Seal Test)は、スイスのグリムゼル岩盤試験場で実施されている埋め戻し材における冠水中の水の移動や閉鎖後のガス移行に関する実規模でのデモンストレーション試験である。本報告書は、有限差分法での力学解析に基づくGASTにおけるコンクリートプラグおよび岩盤の力学状態についてのモデリングと原位置試験環境下で予想されるプラグと岩盤の力学挙動を述べている。その結果、圧縮アーチが全ての圧力ステップで生じ、プラグの力学的安定性を保持する上で重要な役割を果たすこと、圧縮アーチによる岩盤やプラグの圧縮および岩盤とプラグの境界面の閉塞によって遮蔽能力を高める効果が期待できること、試験中に生じるプラグの圧縮応力は材料強度を大きく下回っており、全ての圧力ステップにおいて力学的な安定性が保持されうることなどがわかった。また、プラグに設置されている変位や微小破壊音などのモニタリング結果の妥当性確認のために、プラグに蓄積される弾性エネルギーや引張破壊によって解放される塑性エネルギーなどを求めた。

Nagra Arbeitsbericht NAB 13-76 2013
T. Hitomi, K. Iriya, M. Nakayama and H. Sato

Study on long-term leaching behavior of low alkaline cement

日本における高レベル放射性廃棄物処分場では、構造材料にコンクリートの使用を検討している。処分場では止水材にベントナイトを用いるため、カルシウム溶出量の低い低アルカリ性セメントが適すると考えられている。本研究では、低アルカリ性セメントにHFSC(Highly Fly-ash containing Silica-fume Cement) を用い、1cm3に加工したHFSCの試験体を用いて北海道幌延地域の地下水に対する浸漬試験を行った。2年11カ月までの試験の結果、以下に示す溶出特性を得た。浸漬水のpHは、開始時のHFSCの8.9程度、普通ポルトランドセメント(OPC)の11.5程度から、緩やかな減少傾向を見せ、試験期間終了時ではHFSCで7.9程度、OPCで8.5程度まで減少した。HFSCおよびOPCとも水結合材比に関わらず同様にこの傾向を示した。浸漬試験体(以下、試験体)を採取し、FE-SEMを用いた試料表面観察を行い、HFSCの全てのW/Bの試料の水接面に近い深さ1mm周辺の領域において、変質を示す結果を得た。OPCでは、ほぼすべての観察像で組織の変化とともに、空隙部分の面積の増大が見られた。試験体の断面について、EPMAによる元素分布を求めた結果、HFSCおよびOPCのいずれの試料においても水接面からのCa溶脱が認められた。いずれのW/BにおいてもHFSCの溶脱範囲はOPCの1/2以下と考えられ、OPCと比較すると高い溶脱抵抗性を持つことが分かった。

International Conference on sustainable Construction Materials & Technologies (SCMT3)  Kyoto (Japan)
PDF: e179
2013
K. Aoyagi, K. Tsusaka, T. Tokiwa, K. Kondo, D. Inagaki and H. Kato

A study of the regional stress and the stress state in the galleries of the Horonobe Underground Research Laboratory

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、地圧は支保設計や処分場レイアウトを決定するための重要な情報となる。そのため、本研究では、幌延深地層研究所周辺の広域地圧場を把握し、さらに研究所の坑道で地圧を測定し、掘削による地圧状態の変化を把握することを目的とした。研究所周辺のボーリング孔および坑道内にて水圧破砕試験およびボアホールテレビューアー検層によるボアホールブレイクアウトの形状の観察が行われた。それらの結果を用いて、幌延深地層研究所周辺の地圧状態を検討した。結果として、ボーリング孔で計測された地圧値は、深度とともに増加する傾向が見られ、最大水平応力の方向は、研究所周辺に存在する断層を境に異なることがわかった。さらに、坑道で計測された地圧値は、ボーリング孔で計測された値よりも小さく、最大水平応力の方向は測定深度により異なる結果となった。このことから、坑道での地圧の測定は、地層処分分野において、掘削前に決定した処分場レイアウトを再検討するために重要であることが示唆された。

6th International Symposium on In-situ Rock Stress (RS2013) Sendai (Japan)
Proceedings of the 6th int. Symp. on In-Situ Rock Stress RS2013-1066 pp.331-338
2013
K. Tsusaka, D. Inagaki, M. Nago, T. Aoki and M. Shigehiro

Rock Spalling and Countermeasures in Shaft Sinking at the Horonobe Underground Research Laboratory

原子力機構は、幌延深地層研究計画において3本の立坑を建設している。深度250m以深の立坑掘削においては、立坑の掘削径以上の幅を有する断層が複数出現したため、立坑壁面岩盤の崩落が頻繁に生じるとともに、覆工コンクリートにクラックが顕著に生じた。本紙面では、3本の立坑のうち、換気立坑(仕上がり内径4.5m)の深度250mから350mまでの施工について報告する。同施工では、詳細な岩盤壁面の観察とともに、3次元レーザースキャナを用いた岩盤壁面の3次元形状の計測を実施した。これにより、立坑掘削に伴う岩盤壁面の崩落位置やその規模を定量的に分析することができた。さらに、同計測結果に基づいて、岩盤崩落を適切に抑制しつつ、経済的な施工を実施するために、事前に設計した4つの支保構造から最適なものを選定し、立坑の施工を実施し、その手順を崩落量に着目した支保構造選定フローとして整理した。ここで適用した手法は、後続する西立坑(仕上がり内径6.5m)の施工における支保構造の選定に使用されている。

6th International Symposium on In-situ Rock Stress (RS2013) Sendai (Japan)
Proceedings of the 6th int. Symp. on In-Situ Rock Stress RS2013-1141 pp.339-346
2013
T. Sato, T. Tanno, R. Hikima, H. Sanada and H. Kato

In situ stress measurement in the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の一環として、岩盤応力に関する研究を実施している。主な事項としては、1,000mボーリング孔における水圧破砕法、坑道から掘削したボーリング孔における応力解放法、数値解析による広域応力場を推定する方法の開発である。本報告では、高剛性システムを用いた水圧破砕法の適用による最大主応力値の評価、深度200mの坑道から掘削した湧水を伴うボーリング孔における円錐孔底ひずみ法の結果と発生したコアディスキングの評価、初期応力の実測結果を入力値として逆解析により広域応力場を推定する手法を開発した結果を紹介する。

6th International Symposium on In-situ Rock Stress (RS2013) Sendai (Japan)
Proceedings of the 6th int. Symp. on In-Situ Rock Stress RS2013-1031 pp.354-359
2013
Ö. Aydan, T. Sato, R. Hikima and T. Tanno

Inference of In-situ Stress by Blasthole Damage Method (BDM) at Mizunami URL and Its Comparison with Other Direct and Indirect Methods

初期応力を間接的に推定する方法として、ボアホールブレークアウト、断層条線、地震の発震機構解を利用した方法がある。そこで上記と同様な方法として、残存装薬孔周辺岩盤の損傷領域を利用した初期応力推定法(BDM)を新たに提案し、日本およびトルコ共和国のサイトで適用した。本報告は、日本で行った適用事例の一つである瑞浪超深地層研究所における適用事例について報告する。瑞浪超深地層研究所では、本手法による結果と地震の発震機構解による結果及び地殻ひずみ分布と比較することにより、本手法が地下構造物建設の際の初期応力推定法として、効果的かつ実用的な手法であることを確認した。

6th International Symposium on In-situ Rock Stress (RS2013) Sendai (Japan)
Proceedings of the 6th int. Symp. on In-Situ Rock Stress RS2013-1050 pp.360-369
2013
H. Sanada, R. Hikima, T. Tanno, T. Sato, M. Gohke, H. Tada and H. Kumasaka

Excavation analysis using crack tensor theory at the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

本報では、瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削時の変形挙動予測および第1段階の解析結果の検証のために等価連続体解析の一種であるクラックテンソル(岩盤中の割れ目の密度、大きさ、方向などの幾何学特性を表現するテンソル)理論を用いたモデル化方法や解析結果について記した。対象深度のクラックテンソルの推定のために、各深度のボーリングデータおよび壁面観察による割れ目の統計量の関係性から、各深度のクラックテンソルのトレース(割れ目の密度とトレース長から算出される岩盤の剛性に対応するパラメータ)の比率やテンソルの変換マトリクスを求めた。推定の結果、第1段階でモデル化した解析結果と比較して、岩盤のヤング率の低減と支保工の応力の増加が認められた。研究坑道掘削時の調査により、地表からの調査で捉えることが難しかった高角度割れ目の情報を追加したことによりモデルが改善された。今後、瑞浪超深地層研究所の研究坑道を利用した研究段階においてモデル化および解析結果の検証を実施する。

WTC 2013 (World Tunnel Congress) Geneva (Switzerland)
Proceedings of WTC 2013 pp.855-860
2013
K. Tsusaka, D. Inagaki, M. Nago, K. Kamemura, M. Matsubara and M. Shigehiro

Relationship between rock mass properties and damage of a concrete lining during shaft sinking in the Horonobe Underground Research Laboratory Project

原子力機構は、幌延深地層研究計画において3本の立坑を深度500mまで建設する予定である。深度250m以深の立坑掘削においては、立坑の掘削径以上の断層が複数出現したため、立坑壁面岩盤の崩落が頻繁に生じるとともに、覆工コンクリートにクラックが顕著に発生した。本研究では、3本の立坑のうち、東立坑(内径6.5m)の施工を対象として、岩盤特性と立坑掘削に伴う支保部材の力学挙動の関係を詳細に調査した。掘削対象となった岩盤特性を調査するために、立坑掘削前に実施した湧水対策工のために掘削したボーリングコアの観察と立坑掘削時の壁面観察を実施した。また、実際の施工においては、岩盤崩落を抑制するために、複数の異なった支保構造を構築し、三次元レーザースキャナとコンバージェンス計測を実施して、立坑掘削に伴う崩落量や変形量・変形モードを比較した。これらの結果として、岩盤特性、支保構造、壁面崩落量および覆工コンクリートの損傷の程度の関係に基づいて、覆工コンクリートの損傷を抑えることを目的とした支保構造の選定のための手順を提案した。本手順は、後続する西立坑(内径6.5m)の深度250m以深の施工における支保構造の選定に使用される予定である。

WTC 2013 (World Tunnel Congress) Geneva (Switzerland)
Proceedings of WTC 2013 pp.2014-2021
2013
K. Hama

Development of Site Characterization Technologies for Crystalline Rocks at Mizunami Underground Research Laboratory (MIU) - Surface-based Investigation Phase -

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、地層処分技術に関する研究開発のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、結晶質岩(花崗岩)を対象とした超深地層研究所計画を進めている。本計画は、「第1段階;地表からの調査予測研究段階」、「第2段階;研究坑道の掘削を伴う研究段階」、「第3段階;研究坑道を利用した研究段階」の3段階からなる。現在は、第2段階および第3段階の調査研究を進めているところである。本論文では第1段階調査研究成果のうち、地下水の地球化学特性に関する調査研究の成果を取りまとめた。

Journal of the Korean Radioactive Waste Society Vol.11 No.2 pp.115-131 2013
E. Sasao

Petrographic study of the Miocene Mizunami Group, Central Japan: Detection of unrecognized volcanic activity in the Setouchi Province

東濃ウラン鉱床の母層である瑞浪層群は地質学的には瀬戸内区の東部に分布する。瀬戸内区東部では瑞浪層群堆積時の火山活動は知られていないが、近傍での火山活動を示唆する火砕流堆積物が瑞浪層群から発見された。仮に瀬戸内区東部に火山活動が存在したとすると、当時のテクトニクスと火山活動の関係の見直しが必要となり、その結果に基づけば日本列島での長期的な地質事象の発生可能性の検討にも貢献できると考えられる。本研究では単一のボーリングコアから採取した瑞浪層群の砂岩の鉱物分析(全鉱物・重鉱物組成、斜長石の鉱物種同定)と全岩化学分析を行い、火山活動の検出を試みた。その結果、瑞浪層群の砂岩は最下部の一部を除いて火山ガラスもしくはその変質物を含むこと、鉱物組成からは(1)黒雲母と曹長石および灰曹長石が卓越するタイプ、(2)角閃石と曹灰長石が卓越するタイプ、(3)輝石と中性長石が卓越するタイプに分類できることが明らかになった。(1)は基盤の花崗岩から、(2)と(3)は火山灰として供給されたと考えられる。瑞浪層群に火山灰を供給した火山活動は、鉱物組成と化学組成から2つのフェーズに区分でき、この変化は火山活動の変遷を示すと考えられた。

Island Arc Vol.22 No.2 pp.170-184 2013
H. Sanada, R. Hikima, T. Tanno, H. Matsui and T. Sato

Application of differential strain curve analysis to the Toki Granite for in situ stress determination at the Mizunami underground research laboratory, Japan

DSCA法は、微小亀裂分布と初期応力を幾つかの仮定のもと関連付けて、評価する応力評価法の一種である。この手法は大規模な原位置試験を必要とせず、試験・解析方法ともに簡便であるが、実際の地質環境への適用事例は少なく、その有効性や適用可能性についての議論は十分ではない。本論文では、結晶質岩に対するDSCA法の適用性の検討と超深地層研究所周辺の応力状態の把握のために、地上および坑道内部から採取した岩石を用い、DSCA試験を行った。試験結果の検証のために、水圧破砕試験結果や地殻歪などで示唆される広域応力と比較した。DSCA試験で得られた最大主応力は北から西の範囲に分布し、水圧破砕試験結果や広域応力と調和的だった。主応力比については、断層部を除いて、深度の増加とともに低下し、初期応力の一般的な傾向および水圧破砕試験結果に近かった。この結果から、結晶質岩に対するDSCA法の適用は初期応力測定結果の補完として有効であると考えられた。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.59 pp.50-56 2013
Y. Yokoyama, T. Iwatsuki, Y. Terada and Y. Takahashi

Speciation of As in calcite by micro-XAFS: Implications for remediation of As constamination in groundwater

ヒ素汚染地下水中のヒ素の収着先としての方解石の役割を評価するため、ヒ素の酸化数に基づいて方解石と地下水中のヒ素の分配を調査した。μ-XRF-XAFSによる方解石中のヒ素の化学種分析の結果、方解石へのヒ素の取り組みが鉄の存在により促されることが明らかになった。この知見は、方解石によるヒ素の除染プロセスが、地下水の酸化還元状態を反映した亜ヒ酸/ヒ酸比に強く依存することを示唆している。

Journal of Physics: Conference Series Vol.430 Paper No.012099 2013

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
道家涼介、安江健一、廣内大助、國分陽子、松原章浩

岐阜県中津川市加子母地区長洞における阿寺断層帯中部の活動時期

本研究では、阿寺断層帯中部において活断層の露頭を確認し、詳細記載および東濃地科学センターにおいて放射性炭素年代測定を行った。その結果、同地点では、およそ3,500〜4,800年前(イベント2)、E層堆積中(イベント3)およびおよそ3,000年前以降(イベント1)の3つの古地震イベントが発生した可能性を指摘した。ただし、イベント1については、イベント3と同時期であった可能性もある。また、E層堆積中に古地震イベントが認められることから、同地点では少なくともM2面構成層の堆積時(約5万年前)より継続的に断層運動があったことが推定される。

活断層研究 No.40 pp.43-50 2014
田村肇、佐藤佳子

断層のK-Ar年代学

地質環境の長期安定性を評価するに際して、対象地域に存在する断層の最終活動年代を知ることは重要である。断層の活動年代は層序や複数の年代測定法による年代値を総合的に検討して判断されるべきであるが、断層試料のK-Ar年代測定値以外の情報を得るのが難しい場合、その年代値が唯一の根拠となることがある。本稿では、断層試料に対するK-Ar年代測定法の適用について解説する。年代測定の対象となる試料として、シュードタキライトと断層ガウジ中の自生イライトが注目されている。しかしいずれも、試料の処理や年代値の解釈に困難があり、未だ試行錯誤の段階にあるといってよい。シュードタキライトの分析を行う際は、レーザー融解法による40Ar-39Ar年代測定のようなスポット分析により、断層活動に伴う摩擦溶融によってシュードタキライトが生成する際に十分に融解し、大気と平衡になった部分を選択的に分析することが重要であると言える。断層ガウジのイライトを分析する際は、1マイクロメートル程度の細粒な試料を得たうえで、含まれているイライトが自生のものであるかどうかについて、電子顕微鏡による観察や粉末X線回折法により検討することが重要であると言える。

地質技術 第3号 pp.21-25 2013
梅田浩司、谷川晋一、安江健一

地殻変動の一様継続性と将来予測 地層処分の安全評価の視点から

地層処分の安全評価では、評価期間が長期になるにつれて地質学的現象といった外的要因の発生に伴い不確実性が増大する。そのため、評価期間の設定に際しては、これらの外的要因の予測の信頼性を予め検討しておくことが不可欠である(総合資源エネルギー調査会、2003)。地層処分で考慮すべき地質学的現象のように変化が遅く、永続性がある現象には、外挿法による長期的な予測が有効と考えられている。外挿法による予測が可能な期間については、過去から現在までの変動傾向や速度がどの程度継続していたかを把握することが重要となるが、これまでに得られている様々な地形・地質学的情報によると、日本列島の多くの地域では概ね中期更新世以降と考えられている。外挿法のような時系列解析モデルを用いた予測では、一般に過去の期間(N)に成り立っていた関係性(定常性)は、0.1N〜0.2N程度であればそれが継続する確率が高いと考えられている。そのため、地質学的現象について信頼性の高い予測が行える期間は、将来10万年程度と考えるのが妥当である。

地学雑誌 Vol.122 No.3 pp.385-397 2013
二ノ宮淳、梅田浩司、浅森浩一

新潟—神戸ひずみ集中帯におけるヘリウム同位体比分布

活断層・活褶曲・活傾動等の隆起・沈降・水平変動を含む第四紀の地殻変動(活構造)に関する研究は、従来、地形学、地質学及び地球物理学の領域で進められてきた。本研究では、活構造とヘリウム同位体比との関連性を明らかにするため、新潟−神戸ひずみ集中帯およびその周辺において、既存のヘリウム同位体比データのコンパイルを行うとともに、新たにデータを加え、その空間分布の特徴を明らかにした。その結果、火山活動や地殻変動の活発な地域と高いヘリウム同位体比(3HE/4He比)が認められる地域には、よい整合性が認められた。このことから地中ガスのヘリウム同位体比は、地殻変動の活動性を評価するための有効な指標であると示唆される。また、この指標を用いることにより、従来行われてきた地形・地質学的アプローチに基づく地殻変動の活動性評価の信頼性の向上を図ることが可能となる。

月刊地球 Vol.35 No.6 pp.297-304 2013
古澤明、安江健一、中村千怜、梅田浩司

根ノ上高原に分布する土岐砂礫層のテフラ層序 —石英中のガラス包有物の主成分化学組成を用いた広域テフラの対比—

火山灰を年代指標とした編年は、放射年代測定のように誤差を伴わないため、地層処分の観点から重要となる新第三紀と第四紀の年代区分を一義的に行える利点を有しているが、これらの時代の火山灰は、著しい風化のために火山灰対比に一般的に用いられる屈折率測定などが適用できないことが多い。そこで、本研究では、風化に強い石英などの鉱物中に含まれるガラス包有物の主成分化学組成を用いて、火山灰対比の事例研究を屏風山断層周辺の土岐砂礫層において行った。その結果、土岐砂礫層の中部の細粒土層にはガラス包有物を含む火山灰起源の石英が含まれ、そのガラス包有物の主成分化学組成から南谷T火山灰であることが判明したとともに、本手法の有効性が明らかになった。

応用地質 Vol.54 No.1 pp.25-38 2013

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Umeda, K. Asamori and T. Kusano

Release of mantle and crustal helium from a fault following an inland earthquake

断層から放出されるガスの同位体組成を指標に、地形判読では不明瞭な活断層の位置を特定するための調査技術の開発を進めている。今回はこれらの技術開発の一環として、2011年6月30日に発生した長野県中部の地震(M5.4)の震源域周辺において、地下水の溶存ガスや温泉の遊離ガスの採取を行い、希ガス同位体の測定を行った。その結果、地震を引き起こした牛伏寺断層に沿って高い3He/4He比が観測された。また、地震発生前に比べて断層近傍ではマントル起源ヘリウムが、断層から離れた地域では地殻起源ヘリウムの含有量が増加する傾向が認められる。

Applied Geochemistry Vol.37 pp.134-141 2013
K. Umeda, T. Kusano, A. Ninomiya, K. Asamori and J. Nakajima

Spatial variations in 3He/4He ratios along a high strain rate zone, central Japan

新潟平野から神戸に至る幅約100km長さ約500kmの領域は、その周辺の地域に比べて1桁以上、地殻歪速度が大きい顕著な変動帯(新潟・神戸歪集中帯)であることが知られている。歪集中帯での地震波速度構造や比抵抗構造解析の結果、この地域の下部地殻または上部地殻には不均質構造が認められる。この地域の地下水中に含まれるヘリウム同位体比を測定した結果、北部では太平洋プレートから南部ではフィリピン海プレートから脱水した流体がこれらの不均質構造に関与することが明らかになった。また、1995年兵庫県南部地震、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震等の震源域では顕著に高いヘリウム同位体比が観測された。

Journal of Asian Earth Sciences Vol.73 pp.95-102 2013
T. Negi, H. Mizunaga, K. Asamori and K. Umeda

Three-dimensional magnetotelluric inversion using a heterogeneous smoothness-constrained least-squares method

将来の地層処分システムに重大な影響を及ぼす可能性がある現象の潜在的なリスクを排除するためには、地表からの調査の段階において、地下深部における震源断層などの存否や構造をあらかじめ確認しておくための調査技術が必要となる。本研究では、震源断層などの地殻内の物性境界を適切に推定可能な三次元MTインバージョン法を構築するため、インバージョンにおいて平滑化拘束条件として用いるラプラシアン・フィルタ行列の各要素を反復計算の過程で修正するアルゴリズムを考案し、これを組み込んだ三次元インバージョン法を開発した。さらに、地下深部の物性境界の検出に対し、本手法が従来のインバージョン法に比して有効であることを数値テストにより示した。

Exploration Geophysics Vol.44 No.3 pp.145-155 2013
Y. Yokoro, T. Hanamuro and K. Nakashima

Unique Origin of Skarn at the Ohori Base Metal Deposit, Yamagata Prefecture, NE Japan: C, O and S Isotopic Study

炭素、酸素、硫黄等の同位体を用いて熱水活動の起源や流体の温度、化学組成等を推定するための技術開発の一環として大堀鉱床を事例とした研究を実施した。大堀鉱床は、東北日本のグリーンタフ地域の銅・鉛・亜鉛鉱床の一つで、スカルン型鉱体(蟹ノ又)と鉱脈型鉱体(中ノ又)から成る。炭素同位体比は白亜紀のスカルン鉱床に比べてやや低く、熱水活動の影響が考えられる。硫黄同位体比は両者で大きな違いはなく、同一の起源が考えられる。

Resource Geology Vol.63 No.4 pp.384-393 2013
S. Yamasaki, H. Zwingmann, K. Yamada, T. Tagami and K. Umeda

Constraining the timing of brittle deformation and faulting in the Toki granite, central Japan

断層帯の形成について時間的制約を与えることは、構造発達史を理解する上で重要である。土岐花崗岩の断層ガウジに含まれる粘土鉱物のイライトを対象に、粒度ごとにK-Ar年代測定を実施した。その結果、より細粒の試料でより新しい年代値が得られ、細粒の試料には自生の結晶がより多く含まれていることが示唆された。0.1μm未満の粒子の年代値は42.7〜46.5Maを示しており、母岩の冷却史におけるイライトの安定領域と脆性破壊の温度領域とに一致する結果が得られた。

Chemical Geology Vol.351 pp.168-174 2013
K. Umeda, K. Asamori, R. Komatsu, C. Kakuta, S. Kanazawa, A. Ninomiya, T. Kusano and K. Kobori

Postseismic Leakage of Mantle and Crustal Helium from Seismically Active Regions

地下水の溶存ガス等に含まれるヘリウム同位体比は、 変動地形の明瞭でない活断層を確認するための有効な地球化学的指標になることが示唆される。 しかしながら、高いヘリウム同位体比を示すガスは断層運動直後のみに放出された(非定常放出) であることも否定できないことから、 調査手法としての有効性を示すためには、 断層運動前後に観測したガスの化学組成を比較することが不可欠となる。そこで、東北地方太平洋沖地震によって誘発された内陸地震のうち2011年3 月12 日の長野県・新潟県境付近の地震(M6.7)、6 月30 日の長野県中部の地震(M5.4) を引き起こしたと考えられる十日町断層、牛伏寺断層等の周辺において地下水の溶存ガスの主成分組成や希ガス同位体組成の定量を行った。それらの結果, 断層運動の前後でヘリウム同位体比が上昇している場合と下降している場合の井戸が確認された。前者については、地殻深所から断層を通じて上昇した3Heが、後者については地殻浅所の岩石中に蓄積されている4Heが地下水中に混入した可能性が考えられる。なお、本報告は、Nova Science Publishers, Inc. が出版予定の「Helium: Occurrence, Applications and Biological Effects」に寄稿するものである。

Helium: Occurrence, Applications and Biological Effects pp.115-178 2013
M. Okuno, S. Nagaoka, I. Takashima, J. Aizawa, T. Kobayashi, Y. Kokubu and T. Nakamura

Radiocarbon Dating of Pyroclastic Flows in Central Part of Kuju Volcano, Kyushu, Japan

九重火山は、20座以上の溶岩ドームと火砕丘からなる。飯田火砕流の噴火は、約12km3で、過去10万年間で最大である。Kamata and Kobayashi(1997)は、約30cal kBPの姶良Tn火山灰より上位のテフラ層序を確立し、降下テフラの放射性炭素年代を用いて噴火史を編んだ。しかし、山地でのテフラ層の保存が困難なため、溶岩の層位は不明確であった。奥野ほか(準備中)は、沓掛山、星生山、扇ケ鼻に約50〜60ka、肥前ケ城に30kaの熱ルミネッセンス(TL)年代を得た。我々は、九州九重火山中西部の噴火史を詳しく知るため、AMS放射性炭素年代を報告する。放射性炭素年代は、JAEAの施設供用制度のもと加速器質量分析装置(JAEA-AMS-TONO)で測定した。九重火山南麓の火砕流の14C年代は、白丹火砕流で48kBPと41kBP、室火砕流で31〜34kBPであり、上記の溶岩のTL年代と対比できる。また、これらの噴火活動は、飯田火砕流の噴火(約53kBP)から休止期間をあまり置かずに起こった。

11th International conference “Methods of absolute chronology” Podlesice (Poland) 2013

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