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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成24年度分)

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
多田浩幸、熊坂博夫、齋藤亮、中谷篤史、石井卓、真田昌慶、野口聡、岸裕和、中間茂雄、藤田朝雄

セメントの使用を極力抑えた岩石利用セグメント支保工の開発

高レベル放射性廃棄物の地層処分施設に関し、セメント系材料の使用を極力抑えた坑道の新しい構築方法の開発に取り組み、低アルカリ性モルタルを用いた岩石利用セグメント支保工の成立性や有効性を示すための研究開発を進めている。本研究では、低アルカリ性モルタルを用いた岩石利用セグメント支保工と裏込め材の力学特性値を室内試験により取得し、得られた物性値を用いて坑道の安定性に関する検討を実施した。検討結果より、従来の吹付けコンクリートを主体とした支保工に対して、セメント使用量を大幅に低減し、かつ低アルカリ性モルタルを利用することにより、セメント影響のさらなる低減化を図った支保工の力学的な成立性、有効性を確認した。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.133-138
2013
杉田裕、真田昌慶、藤田朝雄、羽柴公博、福井勝則、大久保誠介

破砕した珪質泥岩の強度および遮水性の回復

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、廃棄体を埋設した坑道の周囲に発生する掘削影響領域の特性が放射性核種の移行挙動評価の上で重要となる。強度が小さい岩盤の場合、坑道を掘削することにより発生する掘削影響領域では岩盤の破壊も生じると考えられる。しかしながら、坑道閉鎖後の長期においては、破壊した岩盤に支保内圧と地圧の双方が作用することにより、破壊により低下した岩盤の物性が回復することが考えられる。本報告は、破壊により低下した岩盤の物性の回復を把握するために実施した室内試験の結果を示すものである。試験の結果、載荷した荷重の大きさ・時間に応じて、強度および遮水性が回復することが明らかとなった。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.207-212
2013
藤田朝雄、笹本広、杉田裕、松井裕哉

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その1) —プロジェクトの概要と開発技術の適用例—

高レベル放射性廃棄物などの地層処分に求められる性能を満足するグラウト技術の高度化開発プロジェクトに平成19年度より取り組んできた。本報告では、本プロジェクトで開発してきた地層処分に特化したグラウト技術を概括するとともに、本プロジェクトにおいて開発を行ってきた技術をわが国の地層場に適用する際の考え方、許容湧水量の目安、グラウト材料、注入工法及び注入装置等の設計技術と長期影響評価技術の適用例について報告する。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.331-336
2013
川口昌尚、岸裕和、藤田朝雄、岸田潔

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その2) —グラウト材料の選定—

地層処分事業において用いられるグラウト材料が満足すべき材料特性については、これまでの検討においてはフィンランドのPOSIVAが実施したR20プログラムのうちグラウト材料にかかわるプロジェクトであるIMA–projectの例を参考にして設定された選定基準を用いてきた。しかし、この要求基準は本来低アルカリ性セメントを対象として配合の絞り込みを行うための目安として設けられたものであり、施工性に関する要求基準を全て満足しても実際の現地の亀裂に対する浸透性は保証されない一方で、室内平行平板浸透試験の結果から強度特性やブリーディング特性を満足するためには浸透性を犠牲にしなければならないなどの問題点が明らかとなった。このため本検討においては圧縮特性やブリーディング特性を必須要件から外す一方、原位置の亀裂特性を反映した浸透特性についての選定基準を設けることにより、より現地の地質水理特性に合わせて最適な材料選定を行える選定基準を提案した。同時に、室内試験により得られたグラウト材料の浸透特性を基に原位置における浸透特性を推定するために必要となる水理学的亀裂開口幅の評価方法について検討を行い、水理学的亀裂開口幅の補正方法について新たな提案を行う。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.337-342
2013
中西達郎、津田秀典、鐙顕正、鵜山雅夫、小山倫史、大西有三

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その3) —Grimsel Test Siteにおける原位置試験の目的と成果—

日本原子力研究開発機構は、地層処分におけるグラウト技術の高度化研究の一環として、深部1,000m程度までの環境下での注入技術、グラウト材料がバリア材料に与える影響の評価技術、および処分場の建設・操業時に要求される性能を考慮したグラウト材料等の開発に取り組んできた。本報告は、スイスのグリムゼルテストサイトにおいて、グラウト浸透モデルを用いて計画された原位置でのグラウト施工の実証試験結果をとりまとめたものである。同試験では、平成21年度および平成22年度に掘削した3本のボーリング孔から得られた幾何学的亀裂情報、透水試験および孔間での通水確認試験結果を基に、グラウト浸透モデルを用いてグラウト注入試験結果を策定した。それらの情報と平成23年度新たに掘削した3本のボーリング孔から得られた各種データを基に試験結果を見直すことで、グラウト浸透モデルの妥当性を評価するために有益な情報を取得した。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.343-348
2013
田中達也、Patrick Bruines、橋本秀爾、葛葉有史、小山倫史、大西有三

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その4) —GTSにおける割れ目ネットワークモデルの構築—

日本原子力研究開発機構は、グラウト施工の実証試験をスイスのグリムゼル岩盤研究所において実施した。本報告では、グラウトの対象範囲、注入仕様の設定に加え、グラウトの浸透範囲を推定・評価するグラウト浸透モデルに反映する透水係数場のモデル構築を目的とした、水理地質構造の調査および評価の結果をとりまとめた。段階的に得られる割れ目特性や、水理特性のデータをモデル構築作業に反映させることにより、より信頼性の高い割れ目ネットワークモデルを構築することができた。また、アップスケーリング手法により、割れ目系岩盤の水理的な不均質性を等価連続体モデルとしてモデル化することができた。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.349-354
2013
小山倫史、片山辰雄、薄井昭則、田中達也、葛葉有史

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その5) —等価多孔質媒体モデルを用いた注入フィードバック解析—

本研究では、亀裂性岩盤における溶液型グラウトの注入・浸透過程のメカニズム解明、およびグラウト浸透範囲の推定・評価を目的として、スイス・グリムゼル岩盤試験場で実施した原位置注入試験のフィードバック解析を実施した。本解析における等価多孔質媒体モデルは、原位置におけるボーリング調査より得られた不連続面幾何学情報をもとに作成した亀裂ネットワークモデルを格子状のセルに分割し、個々のセルに単位動水勾配を3方向から作用させ、等価な透水係数テンソルを算出することにより作成したものである。また、溶液型グラウトをニュートン流体と仮定し、浸透流解析と移流・分散解析を組み合わせることでグラウト注入過程の3次元シミュレーションを実施した。グラウト注入過程は、現地で計測した粘性試験の結果より、粘性の経時変化を時間および濃度の関数として表現することで、透水係数低減関数を算出し、透水場を逐次更新することで表現する。注入圧は原位置注入試験で測定されたものを用い、グラウト注入範囲の推定を行うとともに観測孔で観察されたブレークスルーカーブと比較した。解析結果は定性的によい一致が見られ、多孔質媒体モデルによるグラウト注入解析の妥当性が示された。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.355-360
2013
津田秀典

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その6) —ボーリング割れ目柱状図の作成・適用—

本論では、スイスのグリムゼル岩盤試験場(GTS)でのグラウト技術の高度化開発において、コアの割れ目の記載をボーリング割れ目柱状図により行った事例を報告する。本柱状図は、原理的にコア観察とボアホールテレビ観測に基づきコア立体図を起こし、これを縦割りし、そして縦割り面を垂直視することにより作成した。この柱状図により、どんな割れ目が、どこに、どのように存在するかを視覚的に表示した。また複数の柱状図をつなげて孔間断面図に展開することにより、割れ目系の場の構造的な特質の理解に有用な資料となることを提案した。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.361-364
2013
松井裕哉、水野崇、笹本広、佐藤稔紀

地層処分におけるグラウト技術の高度化開発(その7) —結晶質岩における地震前後のプレグラウト領域の地下水流動および水質変化—

日本原子力研究開発機構は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託研究「地下坑道施工技術高度化開発」の中で、既存のグラウチング技術の有効性や、その化学的影響に関する調査研究を、平成19年度から実施してきた。本調査研究では、グラウト材が浸透・固化した領域に、水圧・水質連続モニタリングシステムを設置して、物理化学パラメータの連続観測と採水・分析を行い、モニタリング期間中に生じた地震前後のデータの比較から、地震に伴う水圧・水質変化の有無を検討した。その結果、震度3以上の地震では岩盤中の水圧変動は観測されるものの、同一領域内での地下水水質の変化は生じないことが確認された。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.365-370
2013
千々松正和、小山倫史、清水浩之、中間茂雄、藤田朝雄

スウェーデンAspo地下研究施設において実施されたPillar Stability Testの解析評価(その1) 連続体解析手法を用いた解析と各機関の解析結果の比較

国際共同研究「DECOVALEX–2011」は、熱–水–応力–化学連成モデルの開発・確証を目的とした国際共同研究であり、設定された同一の連成問題に対して、各国が開発した評価モデル⁄コードを用いて解析・評価を行っている。その中の課題の一つとして、スウェーデンのAspo地下研究施設における実際の高レベル放射性廃棄物の処分環境を模擬したPillar Stability Test を対象とし、原位置試験場における花崗岩の坑道の掘削および加熱による亀裂進展挙動の評価を連続体解析手法で行った。その結果、パラメータのキャリブレーションを行うことにより、現地で観察された現象を連続体解析手法でも、ある程度は再現することができた。また、各国の研究機関において様々な手法に関しての適用性の検討が行われたので、併せて報告する。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.437-442
2013
清水浩之、小山倫史、千々松正和、藤田朝雄、中間茂雄

スウェーデンAspo地下研究施設において実施されたPillar Stability Testの解析評価(その2) 不連続体解析手法である粒状体個別要素法を用いた解析

国際共同研究「DECOVALEX–2011」は、熱–水–応力–化学連成モデルの開発・確証を目的とした国際共同研究であり、Task B として結晶質岩における連成モデルの開発・確証を行っており、スウェーデンのAspo地下研究施設における実際の高レベル放射性廃棄物の処分環境を模擬したPillar Stability Test を対象とした連成解析を実施している。その中で、原位置試験場における花崗岩の坑道の掘削、加熱および応力解放による亀裂進展挙動に対して不連続体解析手法である粒状体個別要素法を適用した一連の数値解析を行った。解析の結果、得られた亀裂の発生および進展挙動は、原位置試験結果と定性的に一致しており、特に、拘束圧除荷および応力解放に伴う力学的挙動について詳細な検討を行うことができた。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.443-448
2013
鈴木英明、中間茂雄、藤田朝雄、今井久、九石正美

熱–水–応力–化学連成解析による緩衝材の地球化学環境の変遷に着目したニアフィールド長期挙動評価の一例

高レベル放射性廃棄物の地層処分における長期安全性の評価を行うためには、ニアフィールドで生じるプロセスの定量化が必要となる。そこで、開発された熱–水–応力–化学連成解析モデルを用いて、仮想的地質環境条件に基づく地層処分システムを想定した数値解析を実施し、ガラス固化体の放熱と人工バリア内への地下水の浸潤に伴うニアフィールドの化学的な環境の変化を定量的に例示した。海水系地下水環境下での緩衝材中では、一時的に、オーバーパック周辺で塩が析出することや、支保コンクリートとの境界近傍でスメクタイトがカルシウム型化するものの、長期的には安全評価上設定されたシナリオと整合する傾向が得られた。さらに、オーバーパックの腐食評価のための基盤情報として、オーバーパックに接触する緩衝材間隙水組成の変遷を示した。

原子力バックエンド研究 Vol.19 No.2 pp.39-50 2012
清水浩之、小山倫史、千々松正和、藤田朝雄、中間茂雄

既存亀裂を考慮した粒状体個別要素法によるHLW処分坑道の力学挙動解析

本研究では、スウェーデンのエスポ地下研究所で実施されたHLW地層処分に向けた原位置試験を対象とした、既存亀裂の存在を考慮した二次元粒状体個別要素法による熱−応力連成解析を行った。解析の結果、既存亀裂の割合が多くなるほど一軸圧縮試験および圧裂試験のシミュレーションから得られるモデル全体としてのヤング率や圧縮・引張強さが小さくなり、既存亀裂を導入することで実際の岩石における寸法効果と同様の効果を定性的に再現できることが確認できた。また、掘削による応力解放および加熱による岩盤内の亀裂進展をシミュレーションによって表現することが出来、原位置試験で観測された結果と比較的良い一致を示した。

土木学会論文集A2(応用力学) Vol.68 No.2 pp.477-486 2012
H. Tsuda, C. Walker, F. Shinkai, H. Kishi and M. Yui

Development of a grout database for geological disposal of high-level radioactive waste

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、高レベル放射性廃棄物の地層処分のためのグラウトデータベース(GDB)を開発した。この中にはグラウト材料の最新のデータが含まれる。現状のGDBの材料データベースには、JAEAにより新しく開発されたpH<11のアルカリ性を示すグラウト材料として、低アルカリセメント、超微粒子球状シリカ、およびコロイダルシリカのデータが格納されている。また施工データベースには、既往文献で報告されているグラウト施工例から、実際のグラウト施工・材料データが格納されている。こうしたGDBの利用では、ユーザーの利便性を考え、オンラインユーザー登録システムを導入している。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.49 No.11 pp.1110-1113 2012
笹本広、油井三和、高瀬博康

亀裂性媒体におけるセメント系グラウト材料による地下水・岩盤への影響評価手法の開発

地下坑道の掘削、施工段階での湧水対策としてセメント系材料によるグラウトが用いられた場合、高レベル放射性廃棄物地層処分の観点では、岩盤の長期的な変質劣化やそれに伴う天然バリア性能への影響等が懸念される。セメント系材料による岩盤等への影響は、地層処分の性能評価において、核種の移行挙動に影響を与えるため、長期的な岩盤変質影響を評価する手法を開発した。また、セメント系材料としては、土木分野で幅広く用いられ実績も多い普通ポルトランドセメント(OPC)以外に、岩盤等への影響を最小限に抑制するためセメント浸出液のpHを11よりも低く抑えた低アルカリ性セメント(LoAC)の利用が想定されている。そこで、地層処分システムでのセメント系グラウト材料の利用を想定し、本研究で開発した長期的な岩盤変質影響評価手法をもとに、OPCとLoACの場合での変質影響を比較し、セメント系材料の適用性評価に関わる手法や考え方の例を提案した。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.11 No.3 pp.233-246 2012
H. Kishi, M. Kawaguchi, M. Naito, K. Hatanaka, J. Nobuto and H. Sugiyama

Characteristic evaluation of colloidal silica grout material developed for a high level radioactive waste geological repository

高レベル放射性廃棄物の地層処分施設の湧水抑制対策は、我が国のような地下水が豊富で割れ目が多い岩盤について特に重要であり、日本原子力研究開発機構では、低pHで岩盤への影響が少なく、高い湧水抑制効果を有するグラウト材料の開発を実施している。グラウト材料の低pH性は、長期間にわたる岩盤の変質を抑制し、長期安全性評価における不確実性を低減する上で重要である。現在検討を進めているグラウト材料には低アルカリ性のセメント系、超微粒で球状のシリカ系の他、コロイダルシリカ系のものがある。ここでは、コロイダルシリカ系のグラウトについて、各種の室内試験により特性を評価した結果について述べる。使用したグラウトは、SiO2の濃度、粒子径、表面改質に関して比較ケースを設定した。また、基本的特性の把握のため、pH測定、粘性測定、寸法安定性試験、圧縮強度試験、抵抗性試験を実施した。さらに、長期耐久性の評価のため、主成分であるシリカの溶出試験を実施した。その結果、このグラウトは、pHは要求値11未満で粘性も低く、グラウト材料としての適性が高いと評価された。また、溶出が比較的少ない配合について確認し、原位置での使用に適当な配合を選出することができた。

原子力バックエンド研究 Vol.19 No.1 pp.3-8 2012

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Fujita, F. Shinkai and J. Nobuto

Fundamental study on a Grout Penetration Model for a HLW Repository

高レベル放射性廃棄物地層処分場で仕様可能なグラウト浸透モデルとして、室内試験結果にGustafson and Stillモデルを適用し、その有効性を確認した。

Journal of Energy and Power Engineering Vol.6 No.8 pp.1191-1203 2012
T. Fujita, M. Kawaguchi, C. Walker, H. Sasamoto, M. Yui and Y. Ohnishi

Development of Grouting Technologies for HLW Disposal in Japan (1) Overall Program and Key Engineering Technologies

高レベル放射性廃棄物などの地層処分に求められる性能を満足するグラウト技術の高度化開発プロジェクトに平成19年度より取り組んできた。本プロジェクトでは、設計技術、施工技術、分布確認技術、影響評価技術に分類して地層処分におけるグラウト技術を開発してきた。本報告では、開発してきた地層処分におけるグラウト技術を概括するとともに、本プロジェクトにおいて開発を行ってきた技術を処分場に適用する際の考え方、許容湧水量の目安、グラウト材料、注入工法及び注入装置等の例について報告する。

ARMS7 — 7th Asian Rock Mechanics Symposium Seoul (Korea)
Proceedings of 2012 ARMS7 pp.675-681
2012
T. Nakanishi, H. Tsuda, K. Abumi, M. Uyama and Y. Ohnishi

Development of Grouting Technologies for HLW Disposal in Japan (2) In–situ Grouting Test Program and Site Investigation Results at the Grimsel Test Site in Switzerland

日本原子力研究開発機構は、地層処分におけるグラウト技術の高度化研究の一環として、深部1,000m程度までの環境下での注入技術、グラウト材料がバリア材料に与える影響の評価技術、および処分場の建設・操業時に要求される性能を考慮したグラウト材料等の開発に取り組んできた。本報告は、スイスのグリムゼルテストサイトにおいて、グラウト浸透モデルを用いて計画された原位置でのグラウト施工の実証試験結果をとりまとめたものである。同試験では、グラウト注入試験の計画立案にあたって、現地の水理地質構造を把握するために平成21年度に予備調査、平成22年度に事前調査と段階的に進められた。段階的なステップを踏むことで、グラウト注入試験を実施する最適箇所を決定するだけでなく、起こりうる可能性のある問題点を抽出しそれらを可能な限り軽減することで、グラウト浸透モデルの妥当性を評価するために必要なデータを所得することができた。

ARMS7 — 7th Asian Rock Mechanics Symposium Seoul (Korea)
Proceedings of 2012 ARMS7 pp.682-691
2012
P. A. Bruines, T. Tanaka, S. Hashimoto, Y. Kuzuha and Y. Ohnishi

Development of Grouting Technologies for HLW Disposal in Japan (3) — Development of a Hydro–geological Model using a Discrete Fracture Network —

日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業で適用するグラウト施工方法を検討するために、スイスのグリムゼル岩盤研究所において、平成21年度から平成23年度にかけてグラウト施工実証試験を実施した。本実証試験では、グラウト注入試験の計画立案からグラウト浸透領域やグラウト効果を評価するために、原位置調査データを活用して割れ目ネットワークモデルを構築し、数値シミュレーションを行った。割れ目ネットワークモデルの構築には、主に試験領域で掘削したボーリング孔と交差する割れ目の位置や方位のデータと46区間の単孔式透水試験で得られた透水性のデータを活用した。また、構築した割れ目ネットワークモデルにより、孔間トレーサー試験やグラウト注入試験を模擬した数値シミュレーションを行い、最終的にグラウト浸透範囲や効果を評価するための等価不均質連続体モデルを生成した。

ARMS7 — 7th Asian Rock Mechanics Symposium Seoul (Korea)
Proceedings of 2012 ARMS7 pp.692-701
2012
T. Tanaka, M. Uyama, T. Ishida, T. Nakanishi and Y. Ohnishi

Development of Grouting Technologies for HLW Disposal in Japan (4) — Planning and Results of In–situ Grouting Test —

日本原子力研究開発機構は、スイスのグリムゼル岩盤研究所においてグラウト施工実証試験を実施した。本稿では、グラウト浸透モデルを用いて計画された原位置でのグラウト施工の実証試験に関し、試験計画の立案、グラウト材料の選定および原位置試験結果について報告する。本試験では、平成21年度から平成23年度にかけて岩盤中の割れ目の幾何学特性や水理特性に関する原位置調査を段階的に進めてきた。原位置調査結果に基づいて、割れ目ネットワークモデルおよび等価透水係数分布で表現したグラウト浸透モデルを構築し、グラウト注入試験の対象とする透水性の高い割れ目あるいは割れ目帯の空間的な分布を推定し、グラウトの注入区間および観測区間のレイアウトを決定した。また、事前に実施した孔間透水試験および孔間トレーサー試験の結果から、試験に適用するグラウト材料を選定した。グラウト注入試験の結果、2つの観測区間においてグラウトの到達を確認することができた。最後に、本実証試験結果を受けて、地層処分場の建設時に適用するグラウトの設計・施工方法について考察した。

ARMS7 — 7th Asian Rock Mechanics Symposium Seoul (Korea)
Proceedings of 2012 ARMS7 pp.702-711
2012
T. Koyama, T. Katayama, T. Tanaka, Y. Kuzuha and Y. Ohnishi

Development of Grouting Technologies for HLW Disposal in Japan (5) — Development and Application of Numerical Model for Grout Injection Process during In–situ Grouting Test —

本研究では、スイス・グリムゼル岩盤試験場で実施した原位置注入試験のフィードバック解析を実施し、グラウト浸透メカニズムの解明およびグラウト注入効果の検証を実施した。なお、本解析では等価多孔質媒体モデルは、原位置におけるボーリング調査より得られた不連続面幾何学情報をもとに作成した亀裂ネットワークモデルをもとに作成した。また、溶液型グラウトをニュートン流体と仮定し、浸透流解析と移流・分散解析を組み合わせることでグラウト注入過程の3次元シミュレーションを実施した。グラウト注入過程は、現地で計測した粘性試験の結果より、粘性の経時変化を時間および濃度の関数として表現することで、透水係数低減関数を算出し、透水場を逐次更新することで表現する。注入圧は原位置注入試験で測定されたものを境界条件として用い、グラウト注入範囲の推定を行うとともに観測孔で観察されたブレークスルーカーブと比較した。解析結果は定性的によい一致が見られ、多孔質媒体モデルによるグラウト注入解析の妥当性が示された。

ARMS7 — 7th Asian Rock Mechanics Symposium Seoul (Korea)
Proceedings of 2012 ARMS7 pp.712-720
2012
P.A. Bruines, T. Tanaka, T. Koyama, H. Kishi, T. Nakanishi and Y. Ohnishi

The JAEA grouting test at the Grimsel test site: Site characterization of a fractured rockmass and preparation of DFN model and its equivalent continuous porous media model

日本原子力研究開発機構は、スイスのグリムゼル岩盤研究所において、グラウトの浸透範囲を管理しつつ、グラウト施工を行う実証試験を予定している。本報告では、グラウト注入の対象範囲および注入仕様の設定を目的とした、水理地質構造の調査と評価の結果をとりまとめる。同試験場は花崗岩体中に位置し、グラウトは割れ目を主な経路として移動することから、調査・評価結果を3次元的な割れ目ネットワークモデルを用いて統合・記述した。また、着目する岩体の透水性の分布、異方性、割れ目密度および水圧等の水理特性を可能な限りモデル内に記載する方針を採用したことで、グラウト挙動を再現するモデルとしてふさわしいことがわかった。

European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2012) Stockholm (Sweden) 2012
T. Koyama, Y. Ohnishi, P. Bruines, T. Tanaka, A. Hasui, T. Katayama, H. Kishi and Y. Kuzuha

The JAEA grouting test at the Grimsel test site: Numerical simulation of the grout injection process of silica sol in fractured rock mass

亀裂性岩盤における溶液型グラウトの注入・浸透過程のメカニズム解明、およびグラウト注入効果の検証を目的として、スイス・グリムゼル岩盤試験場における溶液型グラウト注入試験の事前解析を実施した。本解析では、原位置より得られた不連続面幾何学情報をもとに作成した亀裂ネットワークモデルを等価多孔質媒体に置き換える。また、溶液型グラウトはニュートン流体であると仮定し、粘性試験の結果より算出した粘性の経時変化を時間と濃度の関数で表し、透水係数低減関数を算出する。この透水係数低減関数を用い、浸透流解析と移流・分散解析を組み合わせることでグラウト注入過程の3次元シミュレーションを実施した。

European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2012) Stockholm (Sweden) 2012

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
三ツ井誠一郎

大阪府八尾市大竹西遺跡出土鉄剣の非破壊分析

大阪府八尾市大竹西遺跡より出土した弥生時代の鉄剣の腐食状態を把握するため、X線CT分析による腐食層の厚さの測定、及びX線回折・蛍光X線(XRDF)分析による腐食生成物の同定と腐食層の組成分析を実施した。その結果、腐食層の平均的な厚さはほぼ全体に均一であった。また腐食生成物として菱鉄鉱(FeCO3)及び針鉄鉱(α-FeOOH)を確認した。

平成24年度 八尾市立歴史民俗資料館報・研究紀要 第24号 pp.73-80 2013
竹内真司、澤田淳、竹内竜史、大丸修二、戸谷成寿

透水性の空間的変化に着目した水理試験データに基づく水みちの連結性に関する考察

ボーリング孔を利用する水理試験から得られる圧力データを透水量係数相当値に変換し、その時間変化から異なる複数の水みちの連結性や連続性を推定する方法を、岐阜県東濃地域やフィンランドのオンカロサイトなどの亀裂性岩盤に適用しその有効性を検討した。その結果、当該手法により数十メートルの幅を持つ割れ目帯内部の水みちの連結性や主要な水みちの連続性が推定可能であることを示した。本手法により対象領域の地下水流動や物質移行のモデル解析に有用な情報が提供できることが期待される。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.143-148
2013
前川恵輔、長田昌彦、多田浩幸、熊坂博夫

堆積岩試料における水分量と物性の変化に関する数値解析的検討

地下施設の坑道近傍における岩盤の透水性や強度等の物理特性は、坑道内の空気の循環に伴い掘削前と異なることが知られている。地層処分では、長期に亘る施設の健全性および処分施設の安全性の評価が必要となるため、これらの影響を考慮することが極めて重要となる。そこで、岩盤の水分量変化に伴う物理特性の変化の程度や範囲を評価するための手法整備の一環として、原子力機構が幌延深地層研究計画で採取した堆積岩試料を用いて乾燥変形実験等を実施し、乾燥に伴う岩石の挙動等を検討している。本稿では、実験で得られた岩石の乾燥変形挙動を、岩石の水分拡散係数やその不均質性などを考慮した数値解析によって再現できる可能性を示し、挙動をモデル化する上で重要な基礎情報を取得した。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.179-184
2013
佐藤久、澤田淳

光学的手法による単一亀裂の亀裂表面形状と亀裂開口幅分布の同時測定

筆者らは、透水試験と同じ条件で空間的に高解像度で亀裂開口幅を測定可能な光学的測定手法を応用して、亀裂表面形状を同時に測定する手法を開発した。本手法を花崗岩亀裂試料から作製した透明レプリカ試験体に適用して、レーザー変位計を用いた計測と比較した。両者の結果はほぼ同様の値を示したが、本手法では局所的なバラツキや、試料の縁部に沿って帯状にバラツキが大きい傾向があり、今後手法の改良を進める。亀裂表面形状データは、局所的に三乗則が成り立つこと(LCL)を仮定した開口幅からの透水量係数の推定誤差の補正に用いることができる。亀裂表面の傾きが開口幅や移行距離に与える影響を考慮した補正の結果、LCLに基づく透水量係数が透水試験から求められる透水量係数に近づく結果が得られた。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.501-506
2013
土井玲祐

「Se(W)/Se(Y)の標準電極電位に関するサイクリックボルタンメトリーによる実験的研究」の訂正記事

研究論文「Se(W)/Se(Y)の標準電極電位に関するサイクリックボルタンメトリーによる実験的研究」において、対象の反応の式量電位を与える式が誤っていた。本報告は、その訂正記事である。

原子力バックエンド研究 Vol.19 No.2 pp.65-66 2012
M. Terashima, S. Nagao, T. Iwatsuki, N. Fujitake, Y. Seida, K. Iijima and H. Yoshikawa

Europium-Binding Abilities of Dissolved Humic Substances Isolated from Deep Groundwater in Horonobe Area, Hokkaido, Japan

北海道幌延地域における深部地下水から分離・精製した溶存腐植物質(HSs)に対するユウロピウムの結合を三次元蛍光消光法により調査した。電荷中和モデルにより拡張したRyan & Weberモデルを消光プロファイルへ適用することにより、pH5.0、イオン強度0.1の条件下における条件付き結合定数(K)を評価した。幌延の地下水フルボ酸およびフミン酸のK値は、三次元蛍光スペクトルの異なるピーク位置に関わりなく同じ値を示した。琵琶湖の湖水や段戸土壌およびAldrich社のHSsとの比較から、幌延の地下水HSsのK値は最も小さい値を示し、幌延の地下水HSsのユウロピウムに対する結合親和性が表層環境に由来するHSsと比較して低いことを見出した。さらに、Aldrich社製フミン酸を起点とする相対K値の比較結果は、幌延の地下水HSsが異なる地下水から分離・精製したHSsと比べてもユーロピウムに対する結合親和性が低いことを明らかにした。以上の結果は、地層処分システムの深部地下水おける放射性核種のスペシエーションへのHSsの影響を評価するには、地下水HSsの起源や構造特性の相違を考慮する必要があることを指摘している

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.49 No.8 pp.804-815 2012
Y. Inagaki, H. Makigaki, K. Idemitsu, T. Arima, S. Mitsui and K. Noshita

Initial dissolution rate of a Japanese simulated high-level waste glass P0798 as a function of pH and temperature measured by using micro-channel flow-through test method

マイクロチャンネル流水溶解試験法(MCFT法)を用いて、模擬ガラス固化体の初期溶解速度(r0)のpH依存性、温度依存性を評価した。その結果、25℃においてはシングルパスフロースルー法(SPFT法)などによる既往の結果と同様にV字型のpH依存性を示すことが分かった。しかしながら、70、90℃においてはpHが中性の条件でr0が一定となるU字型のpH依存性を示し、SPFT法等と異なる結果となった。また、90℃においては、pHが8から11の範囲でSPFT法と較べてr0が大きく、pH依存性の傾きも大きいことが分かった。温度依存性についてはどのpHにおいてもアレニウス則に従うが、pHの増加に伴ってみかけの活性化エネルギーが増加するという結果となり、溶解メカニズムがpHによって変化することが示唆された。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.49 No.4 pp.438-449 2012

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
E. Curti, L. Aimoz and A. Kitamura

Selenium Uptake onto natural pyrite

79Seは放射性廃棄物の処分サイトの安全評価において重要かつ酸化還元に鋭敏な核種である。水溶液中においてセレンは易溶な陰イオン種(亜セレン酸およびセレン酸)を形成し、負に帯電する一般的な母岩鉱物にはあまり収着しない。しかしながら、セレンは硫化物と強い親和性を持ち、スイス等の放射性廃棄物処分場の母岩である粘土質岩石に微量に含まれている黄鉄鉱と相互作用することが知られている。本研究では、マイクロおよびマクロ径のX線を用いたX線吸収分光法(μ-XRF、μ-XANESおよびEXAFS)を用いて、不活性雰囲気において亜セレン酸およびセレン酸が黄鉄鉱に直接的に収着し、時間(最大8ヶ月)とともに0価に還元されることを示した。この結果は、放射性廃棄物から放出されるSe(IV)が黄鉄鉱表面に収着することで効率的に還元され難溶性となることを示唆している。

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry Vol.295 No.3 pp.1655-1665 2013
K. Kishida, A. Sawada, H. Yasuhara and T. Hosoda

Estimation of fracture flow considering the inhomogeneous structure of single rock fractures

放射性廃棄物などのエネルギー生産に伴い発生する廃棄物の長期隔離の安全性評価において、重要なパラメータとして岩石の間隙中もしくは亀裂中の地下水流速がある。本研究では、三乗則を適用可能な条件で実施された亀裂内の透水試験について慣性項を考慮した亀裂内の二次元モデルを用いた浸透流れ解析を実施した。二次元モデルによる解析結果は試験結果によく一致し、局所三乗則に比べて正確な結果を示した。二次元モデルによる解析結果から不均質な構造を有する亀裂内の流れについて局所レイノルズ数や、亀裂の形状に起因した抵抗などを考慮した分析を行った。その結果、レイノルズ数が1.0より小さい場合には慣性項が亀裂内の流れに与える影響は小さく、亀裂の壁面抵抗が影響を受けることが示された。

SOILS AND FOUNDATIONS Vol.53 No.1 pp.105-116 2013
J.M. Soler, J. Landa, V. Havlova, Y. Tachi, T. Ebina, P. Sardini, M. Siitari-Kauppi and A. Martin

LTD Experiment - Postmortem Modelling of Monopole T

スイスのグリムゼル原位置試験場において原位置長期拡散(LTD)試験が行われた。パッカーで区切られた試験孔内にHTO、Na-22、Cs-134を含むトレーサ溶液を循環させ、2年半の間、トレーサ濃度の減衰が観測された。拡散期間終了後に、オーバーコアリングによって、岩石中のトレーサ分布が分析された。溶液中のトレーサ濃度変化はCsの減衰が顕著であった。また、濃度分布の進展深さは、HTOで20cm, Na+で10cm, CS+ で1cm程度であった。これらのデータセットに対し、拡散・収着モデルによる解釈が、複数のチームによって、異なるコードを用いて実施され、実効拡散係数(De)と岩石容量因子(α)が導出された。複数のチームによる評価結果は、観測データを概ね再現可能であり、掘削影響による表面部分のDeとαの値が、岩石マトリクス部に比べて大きいことを示唆した。一方で、HTOの結果は実験データと解析結果に大きな乖離が認められ、この点は今後の詳細な検討が必要である。

Nagra Arbeitsbericht NAB 12-53 2013
T.E. Payne, V. Brendler, M. Ochs, B. Baeyens, P.L. Brown, J.A. Davis, C. Ekberg, D.A. Kulik, J. Lutzenkirchen, T. Missana, Y. Tachi , L.R. van Loon and S. Altmann

Guidelines for Thermodynamic Sorption Modelling in the Context of Radioactive Waste Disposal

熱力学的収着モデル(TSM)は、セーフティケースにおけるKd設定の科学的基盤を提供するため、また、化学環境に応じたKdの変化を評価するために利用される。TSM開発は、表面サイト、収着反応、静電補正といったモデル選定における様々な意思決定を含む。TSM開発の最良手法についてはコンセンサスには至っておらず、そのためにNEAではTSM構築の方針と過程を評価するための国際プロジェクトを進めている。本論は、放射性廃棄物処分のためのTSM開発に関して、本プロジェクトを通じて得られた多様な観点からの推奨事項を提示する。主要な推奨事項として、モデル開発の目的の定義、主要な意思決定事項の同定、実験的・理論的根拠と関連付けた意思決定、適切なレビューと繰り返しによるモデル開発、できる限り多くのデータへの適用、主要な意思決定の文書化が挙げられる。

Environmental Modelling and Software Vol.42 pp.143-156 2013
T.N. Illankoon, S.M. Yee, M. Osada, K. Maekawa, H. Tada and H. Kumasaka

Drying-induced deformation of Horonobe sedimentary rocks in the Koetoi and Wakkanai formations

岩石の乾燥変形特性は、地層処分の長期の安全性に影響を及ぼす割れ目の影響や掘削影響領域を理解するために必要であり、換気された地下の坑道内では避けられないものである。そこで、乾燥過程における変形挙動を調べるために、声問層および稚内層の円筒形の泥岩試料を対象としてひずみの計測を行った。水銀圧入試験の結果、稚内層は声問層に比べ細孔が占める割合が高く、このことが高い収縮性に寄与していることが明らかになった。稚内層試料はひずみ挙動により2つのグループに分けられ、異なる間隙径分布を有している。そのため、稚内層の両グループは乾燥の過程で明確に異なるひずみ挙動を示す。真密度の類似性、深度に伴う間隙率の減少および細孔が占める割合の漸増は、幌延堆積岩において硬化が進展することを支持している。

13th Japan Symposium on Rock Mechanics & 6th Japan - Korea Joint Symposium Ginowan (Japan)
Proceedings pp.899-904
2013
T. Kobayashi, T. Sasaki, K. Ueda and A. Kitamura

Sorption Behavior of Nickel and Palladium in the Presence of NH3(aq)⁄NH4+

TRU廃棄物の管理においては、廃棄物に含まれる硝酸塩の影響を評価する必要がある。本研究では、軽石凝灰岩に対するニッケルおよびパラジウムの収着挙動を、アンモニア⁄アンモニウムイオン共存下で調べた。種々のアンモニア⁄アンモニウム濃度、pHおよびイオン強度条件において、軽石凝灰岩に対するニッケルおよびパラジウムの分配係数(D)をバッチ法で取得した。ニッケルの場合、中性付近での分配係数は初期アンモニウムイオンに対する顕著な依存性を示さず、熱力学データを用いた予測と一致した。パラジウムの場合、初期アンモニウムイオン濃度の増大とともに分配係数が低下し、アンミン錯体(Pd(NH3)m2+ (m:1-4) )の生成が示唆された。得られたニッケルおよびパラジウムの分配係数を表面錯体モデルで解析した。熱力学データを用いた予測計算を考慮したところ、アンモニア⁄アンモニウムイオン共存下におけるニッケルおよびパラジウムの収着挙動がよく説明された。

MRS 2012 Fall Meeting Boston(USA) MRS Symposium Proceedings Vol.1518 pp.231-236 (2013) 2012
H. Takahashi, K. Nemoto and Y. Tachi

Diffusion of Ni in compacted Na- and Ca-montmorillonites: Results from in-diffusion measurements with characterization of solid phases in the system

圧縮Na型及びCa型モンモリロナイト中のNi拡散試験をin-diffusionで行った。圧縮モンモリロナイト中のNi(II)の拡散プロファイル及びXRDにより、Niの拡散機構について検討した。

5th Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste Confinement Montpellier (France)
Poster Sessions MT⁄DP⁄5 pp.871-872
2012
T. Ishidera, S. Kurosawa, S. Ohtsuka and K. Uchikoshi

Effect of dry density on activation energy of effective diffusion coefficient for deuterated water in compacted bentonite

ベントナイト乾燥密度をパラメーターとして、異なる温度条件でHDOの透過拡散試験を実施し、実効拡散係数の活性化エネルギーを取得した。その結果、乾燥密度0.6Mg⁄m3においては、HDOの実効拡散係数の活性化エネルギーは自由水中の拡散の活性化エネルギーとほぼ同じ値を示したが、乾燥密度1.2Mg⁄m3の試料では活性化エネルギーが増大する傾向を示した。これは、モンモリロナイト表面付近のHDOの拡散の活性化エネルギーが、自由水中の値より大きいことに起因するものと考えられる。

5th Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste Confinement Montpellier (France)
Poster Sessions MT⁄DP⁄18 pp.895-896
2012
Y. Tachi and K. Yotsuji

Diffusion and sorption of Sr2+ in compacted sodium montmorillonite as a function of porewater salinity

放射性廃棄物地層処分の安全評価において重要となる圧縮ベントナイト中の核種の収着・拡散挙動を把握・評価するため、圧縮モンモリロナイト中のSrの収着・拡散挙動に及ぼす間隙水の塩濃度影響を、実験とモデルの両面から調査した。密度800kg⁄m3の圧縮モンモリロナイト中のSrの実効拡散係数(De)と分配係数(Kd)を、4種類の塩濃度(0.01、0.05、0.1、0.5M)の条件下で取得した。Deは塩濃度とともに大きく減少した。Kdも同様に塩濃度とともに大きく減少し、バッチ収着試験の傾向性と整合的であった。これらの収着・拡散挙動は、イオン交換を考慮した収着モデル、狭隘間隙中の電気二重層を考慮した拡散モデルを統合した統合収着拡散(ISD)モデルによって解釈された。このISDモデルは、基本的に2価カチオンの収着・拡散挙動評価にも適用できると評価されるものの、特に低塩濃度領域におけるモデルの改良を検討する必要がある。

5th Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste Confinement Montpellier (France)
Poster Sessions MT⁄DP⁄20 pp.899-900
2012
K. Yotsuji, Y. Tachi and Y. Nishimaki

Advanced Diffusion Model in Compacted Bentonite based on Modified Poisson–Boltzmann Equations

処分環境における圧縮ベントナイト中の核種の拡散係数や収着分配係数等の整合的な推定評価を目指し、原子力機構では統合収着・拡散モデル(ISDモデル)の開発を進めてきた。従来のISDモデルでは、多価イオンや錯体状化学種などの複雑な化学種に対してモデルの適用性が不満足であり、また付加的なフィッティング・パラメータの導入などモデル構造上の問題があった。そこで本報告では、より広範な処分条件へのモデルの適用、また圧縮系における拡散現象のさらなる理解を目的として、ISDモデルの基本仮定に立ち返ることによりモデル高度化要因を検討し、影響評価を試みた。本報告では高度化要因として、排除体積効果および誘電飽和効果の影響を考慮し、ISDモデルに取り入れて影響解析を実施した。その結果、実効拡散係数への影響は何れも小さく、したがって実測データとの不整合性はこれらの高度化要因に起因するものではないことが示された。

5th Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste Confinement Montpellier (France)
Poster Sessions GC⁄MM⁄14 pp.427-428
2012

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
水野崇、青才大介、新宮信也、萩原大樹、山本祐平、福田朱里

瑞浪超深地層研究所の建設に伴う地下水水質の変化

本研究では瑞浪超深地層研究所の地下施設である研究坑道の建設に伴う地下水水質の変化を把握するため、研究坑道内において水質モニタリングを実施した。その結果、研究坑道掘削に伴う地下水の流動状態の変化により、水質分布が変化していることがわかった。特に立坑の坑底付近においては、溶存成分濃度が高い深部地下水の上昇による"upconing"現象が生じている。また、地下水のpHは立坑壁面に打設されたセメント等と接触することにより最大で12程度まで上昇し、研究坑道内に流入している。酸化還元電位については、研究坑道掘削前の状態からの変化が推定できるものの、還元環境を維持している。これらの結果は地下施設建設時における地下水水質の変化を把握するための技術基盤が整備されつつあることを示しており、地層処分事業における精密調査を進めるための知見として活用できると考えられる。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.12 No.1 pp.89-102 2013
久保大樹、小池克明、劉春学、栗原新、松岡稔幸

地球統計学的手法による亀裂性花崗岩体の3次元透水係数モデリングと広域地下水流動解析への応用

広範囲の水理地質構造を明らかにするためには、調査によって得られた限られた情報を3次元的に拡張し、複数の情報を有機的に統合するための空間モデリング法が必要である。本研究では、地下水流動の支配要因である亀裂と透水係数の空間分布について、地球統計学を応用した推定手法を考案し、花崗岩体深部の水理構造の把握を試みた。作成した透水性分布モデルを用いた地下水流動シミュレーションの結果が、既往の調査結果と整合したことから、モデリング手法の妥当性が確認された。また同シミュレーションにより、対象地域において主要な地下水の流出域や、断層深部を通過する地下水の流れの存在が示唆されるなど、新たな知見を得ることができた。

地学雑誌 Vol.122 No.1 pp.139-158 2013
佐藤稔紀、丹野剛男、引間亮一、真田祐幸、加藤春實

円錐孔底ひずみ法とコアディスキングについて —土岐花崗岩における湧水孔での測定結果を例にして—

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の一環として、応力解放法による初期応力測定を実施している。本報告では、地表からの深度200mの花崗岩に掘削された坑道内において円錐孔底ひずみ法による測定を実施した際にコアディスキングが発生したため、その発生条件について検討した。その結果、既往のディスキング発生の条件式を支持する等の知見を得た。

Journal of MMIJ Vol.129 No.2,3 pp.59-64 2013
鶴田忠彦、田上雅彦、天野健治、松岡稔幸、栗原新、山田泰広、小池克明

瑞浪超深地層研究所における深部地質環境のモデル化を目指した地質学的調査

瑞浪超深地層研究所では、結晶質岩(花崗岩)を調査・研究において深地層の科学的研究を進めている。研究所で行っている地質学的調査では、特に結晶質岩中における地下水などの流体の主要な移行経路である割れ目や断層などの不連続構造の不均質性や特性に着目して、地表地質調査、反射法弾性波探査、ボーリング調査、研究坑道における地質調査などからなる現場調査と、それらの結果に基づく地質構造のモデル化を行っている。これまでの現場調査の結果、地下水の流動を規制する低透水性の断層が存在することと、多量の湧水を伴う割れ目帯が花崗岩上部に分布していることが明らかになっている。これらの地質構造については、スケールの異なる地質構造の規則性・関連性や地質構造の発達過程に着目したモデル化の整備を進めているところである。本報では、地質構造に関する現場調査と、地質構造モデルの構築に関する事例の紹介を通して、研究所における地質学的調査について報告する。

地質学雑誌 Vol.119 No.2 pp.59-74 2013
竹内真司、三枝博光、天野健治、竹内竜史

瑞浪超深地層研究所における地下深部の水理地質構造調査

高レベル放射性廃棄物の地層処分やエネルギーの地下備蓄などの分野では地下深部の地下水流動に影響をおよぼす構造を適切に把握することが地下施設の設計や物質の移行などを評価するうえで必要不可欠である。地下水流動を規制する地質構造要素としては、透水性の高い水みちや地下水流動を遮るような構造などが考えられる。このうち水みちについては、複数の検層手法を比較検討した結果、電気伝導度検層が最も多くの水みちを検出できることを確認した。またボーリング孔沿いに存在する複数の水みちの連結性は、水理試験時の水圧の経時変化データの時間微分値を透水量係数の時間変化に換算した値を指標とすることが有効である見通しを得た。さらに、複数孔間の水みちの連結性については、孔間水理試験で得られる水頭拡散率が有効な指標となる可能性を示すとともに、同試験の水圧応答挙動から遮水性の構造で囲まれた領域の存在を推定可能であることを示した。

地質学雑誌 Vol.119 No.2 pp.75-90 2013
丹野剛男、佐藤稔紀、真田祐幸、引間亮一、熊坂博夫、多田浩幸

瑞浪超深地層研究所におけるクラックテンソルの相対誤差に基づいたREVの基礎的研究

割れ目を多く含む岩盤の場合、変形特性は、岩盤中に内在する割れ目の幾何学的な分布特性に大きく影響を受ける。岩盤中の割れ目の幾何学的な分布特性を把握する場合、それが調査位置や調査領域のスケールで変化するため、これに基づいて設定される岩盤の物性も調査位置や領域のスケールにより変動する。そこで、本研究では、岩盤中の割れ目の幾何学的な分布を定量的に表現できるクラックテンソルに着目し、研究坑道において基準区間と観測区間長を変化させ、基準区間に対する観測区間長ごとのクラックテンソルの相対誤差(RE)の変動の様子を調べた。さらに、REの変動の様子からREV(Representative Elementary Volume:代表要素体積、不連続性岩盤を等価な連続体に置換して、変形解析・評価することが可能な体積の意味)の基礎的検討を試みた。その結果REの収束は換気立坑よりも深度300m研究アクセス坑道のほうが速いことが分かった。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.109-113
2013
橋詰茂、松井裕哉、堀内泰治、畑浩二、秋好賢治、佐藤伸、柴田千穂子、丹生屋純夫、納多勝

結晶質岩中の立坑掘削を対象とした脆弱部における空洞および周辺岩盤の力学的挙動に関する検討

瑞浪超深地層研究所は、結晶質岩(土岐花崗岩)を研究対象とした深地層の研究施設であり、地層処分研究開発の基盤である深地層の科学的研究の一環として、深地層における工学技術に関する研究開発を目的のひとつとして実施している。現在は、研究坑道掘削と並行し、結晶質岩を対象とした設計・施工計画技術、建設技術、施工対策技術及び安全を確保する技術の有効性を確認するための調査研究を進めている。本報告では、同研究所の立坑掘削により、地表から深度500m地点まで掘削断面を縦断するようなほぼ垂直傾斜の断層が分布する地質条件下で生じた立坑覆工の応力変化や岩盤内変位を分析し得られた、大深度の脆弱な岩盤中の空洞および周辺岩盤の力学的安定性に関する知見を述べる。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.121-126
2013
棚井憲治、藤田朝雄、納多勝、山本修一、志村友行、佐藤伸

岩盤中のガス移行挙動試験計画の立案(その1) ガス移行挙動試験に用いる載荷ガス圧の設定

幌延深地層研究計画では、深度GL-350m調査坑道で原位置ガス移行挙動試験を計画している。本試験は、緩衝材を対象とした試験や岩盤に着目した試験を計画中であり、これらの原位置試験の計画は、幌延の地質環境条件を考慮するため地下水中の溶存メタンを考慮する必要がある。このうち岩盤中のガス移行挙動試験計画立案の一環として、諸外国における岩盤中のガス移行挙動試験の事例調査をもとに試験に用いる載荷ガス圧に関する検討を行い、設定したガス圧の妥当性について力学連成二相流解析を行った。検討の結果、諸外国の事例調査に基づき設定した最大ガス圧で岩盤の最大有効主応力が岩盤の引張強度を若干上回る程度となり、ボーリング孔周辺を極端に乱すことがないことを確認した。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.167-172
2013
棚井憲治、藤田朝雄、佐藤伸、納多勝、山本修一、志村友行

岩盤中のガス移行挙動試験計画の立案(その2) —溶存メタンが及ぼすガス移行挙動試験への影響検討—

幌延深地層研究計画では、深度GL-350m調査坑道で原位置ガス移行挙動試験を計画している。本試験は、緩衝材のみならず岩盤にも着目した試験を計画中であり、これらの原位置試験計画の検討は、幌延の地質環境条件を考慮するため地下水中の溶存メタンを考慮する必要がある。このうち岩盤中のガス移行挙動試験計画立案の一環として、幌延の地下水中の溶存メタンが本試験に及ぼす影響を把握するため二相多成分解析を実施した。検討は、はじめに溶存メタンの基本的な挙動の把握を行い、次に調査坑道からの原位置試験を模擬する検討を実施した。検討の結果、地下水中に溶存メタンが存在すると気相全体のガス圧は上昇するが、注入した窒素は分圧分しか岩盤へ移行しないため、ガス注入量に影響を及ぼすことが分かった。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.173-178
2013
近藤桂二、津坂仁和、稲垣大介、杉田裕、加藤春實、丹生屋純夫/td>

幌延深地層研究所における珪藻質泥岩を対象とした水圧破砕法による初期地圧の測定

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において新第三紀堆積軟岩を対象に地下研究施設を建設中である。本研究地域には上位から声問層(珪藻質泥岩)、稚内層(珪質泥岩)が堆積し、南北走向の背斜軸に近い翼部に位置する。初期地圧の測定は、地下施設建設前に地上からの調査として鉛直深層ボーリング孔を利用した水圧破砕法により行い、その後、地下施設建設時に地上調査結果の妥当性の確認を目的として、これまでに声問層の深度140mで2地点、深度250mで3地点の計5地点にて、水圧破砕法により初期地圧を測定した。その結果、地層境界付近では、鉛直下向きを主応力の一つとし、鉛直応力を土被り圧と仮定した地上調査結果とは整合せず、初期地圧測定の際には地質境界に留意する必要があることが示唆された。

第13回岩の力学国内シンポジウム 併催:第6回日韓ジョイントシンポジウム 宜野湾市
第13回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.583-588
2013
岩月輝希、水野崇、國丸貴紀、天野由記、松崎達二、仙波毅

地層処分事業に関わる地球化学分野の技術者が継承すべき知見のエキスパート化 —文献調査から精密調査段階における地球化学解析手順について—

高レベル放射性廃棄物の地層処分は長期にわたって世代の異なるさまざまな技術者が関わる事業であり、その技術に関わる知見の継承やプロジェクト監理に関わる意思決定過程の追跡性を担保するための情報管理の仕組みが必要となる。筆者らは、地層処分に関わる地下深部の地質環境特性調査の手順、ノウハウ、留意点などの情報管理技術としてウェブ上で情報を利用(保管・閲覧)可能なエキスパートシステムを構築した。なお、本報告では、その概要とエキスパートシステムに収録した知見の一例として、文献調査から精密調査段階における地球化学解析の手順などについて述べる。

原子力バックエンド研究 Vol.19 No.2 pp.51-63 2012
舟木泰智、石山宏二、早稲田周、加藤進、渡辺邦夫

北海道北部、幌延地域に分布する新第三紀堆積岩中の炭化水素ガスの分子組成と炭素同位体組成

炭化水素ガスの分子組成と炭素同位体組成は、その生成、移動、集積に関する情報をもっている。そのため、これらは堆積岩の透過性を評価するための指標となることが期待される。本研究では、北海道北部の幌延地域に分布する新第三紀の堆積岩の透気特性を把握するために、ボーリングコアを用いたヘッドスペースガス分析を実施した。その結果、以下のような知見が得られた。(1)炭化水素ガスは、二酸化炭素還元反応などのメタンの生成反応と嫌気的メタン酸化反応といった堆積時から現在までの微生物の活動に伴う同位体分別によってもたらされた可能性が示唆される。(2)隆起・侵食時以降に高透水性の断層が発達し、開放的な環境が形成された可能性がある断層の近傍層準では、微生物起源の炭化水素ガスが移動、放出することに伴う同位体分別が生じた可能性も示唆される。(3)ヘッドスペース法による炭化水素ガスの分析は、調査地域の水理地質特性の変遷と併せた検討を通じて、地層の長期閉じ込め性評価のための指標となり得る可能性が期待できる。

地学雑誌 Vol.121 No.6 pp.929-945 2012
笹尾英嗣、中田正隆、小室光世

東濃ウラン鉱床月吉鉱体の重鉱物組成

東濃ウラン鉱床月吉鉱体において、鉱体母岩の瑞浪層群の鉱石、非鉱石の砂岩および基盤の土岐花崗岩の重鉱物組成分析を行った。鉱石に含まれる重鉱物は主に黒雲母、角閃石および不透明鉱物であった。鉱石のうちの1試料にはトパーズ、錫石、ザクロ石、褐簾石が含まれる。非鉱石の砂岩の重鉱物は、主に角閃石、輝石および不透明鉱物からなる。また、基盤の花崗岩は、主に黒雲母からなる。重鉱物組成から、鉱体周辺の堆積物は、花崗岩、火山灰およびペグマタイトもしくは熱水性鉱床から供給されたと推定された。鉱石には花崗岩から供給された堆積物が多く、非鉱石の砂岩は主に火山灰起源であると考えられた。トパーズと錫石は月吉鉱体北東側に分布する苗木花崗岩に伴われるペグマタイトや熱水性鉱床から供給されたと考えられた。鉱体周辺の礫岩を構成する礫の岩種からも堆積物は北東から供給されたと考えられることから、月吉鉱体周辺の堆積物には、北東側から供給された堆積物が含まれると推察された。

資源地質 Vol.62 No.3 pp.225-233 2012
天野由記、南條功、村上裕晃、藪内聡、横田秀晴、佐々木祥人、岩月輝希

北海道幌延地域における深部地下水調査 —地上からの地球化学調査の妥当性評価と地下施設建設に伴う地球化学特性変化—

北海道幌延町において、堆積岩を対象とした深地層の研究施設を利用して、地上からの地球化学調査技術の妥当性を検証した。また、地下施設建設が周辺の地球化学状態に及ぼす影響について考察した。地上からのボーリング調査数量と水質の深度分布の推定品質の関係を整理した結果、3本程度の基本ボーリング調査と断層・割れ目帯など高透水性の水理地質構造を対象とした追加ボーリング調査により、数キロメータースケールの調査解析断面の水質分布について不確実性も含めて評価できることが明らかになった。地下施設建設に伴う地下水の塩分濃度、pH、酸化還元状態の擾乱を観察した結果、一部の高透水性地質構造の周辺において、地下坑道への湧水により水圧や塩分濃度の変化が確認された。この変化量は事前の予測解析結果と整合的であった。これらの成果は、他の堆積岩地域における地上からのボーリング調査や地下施設建設時の地球化学調査の計画監理にも参照可能と考えられる。

地下水学会誌 Vol.54 No.4 pp.207-228 2012
玉村修司、遠藤亮、清水了、岩月輝希、天野由記、大味泰、五十嵐敏文

北海道幌延地区における地下水中の有機酸のメタン生成微生物の基質としての可能性

北海道幌延地区の第四系と新第三系の声問層を帯水層とする地下水中で、微生物の競争排除則とメタン生成反応の非平衡度に基づき、ギ酸及び酢酸がメタン生成微生物の基質となっている可能性を評価した。微生物の競争排除則では、声問層を帯水層とする地下水中で酢酸が基質となっている可能性が示唆され、非平衡度による評価では、還元的なすべての地下水中で、両有機酸が基質となっている可能性が示唆された。これらのことから、還元的な環境では両有機酸がメタン生成微生物の基質となっていること、特に新第三系声問層を帯水層とする地下水中では、酢酸濃度は微生物の競争排除則により規定されている可能性が指摘された。

Journal of MMIJ Vol.128 No.10,11 pp.570-575 2012
津坂仁和、常盤哲也、稲垣大介、羽出山吉裕、小池真史、井尻裕二

幌延深地層研究所におけるショートステップ工法による立坑掘削に伴う岩盤の力学挙動に関する研究

原子力機構は、北海道幌延町にて、新第三紀の堆積岩を対象に3本の立坑と深度300m以深の試験坑道からなる地下研究施設を建設している。立坑の施工は、標準工法のショートステップ工法である。現在、堆積岩系を対象とする地層処分場では、地下深部への主要な資機材の搬出入経路として、複数の立坑を建設することが想定されている。立坑を掘削することにより、天然バリアとして期待する岩盤の物質の封じ込め性能を低下させることが考えられ、掘削に伴う岩盤の状態の評価や適切な工学的対策の計画のために、その掘削に伴う岩盤挙動を評価することが重要となる。これまでに、大深度の立坑の掘削に伴う岩盤挙動の調査事例にて、施工手順に着目して、立坑周辺の岩盤挙動を分析した例はほとんどない。筆者らは、アクセス立坑の深度約160mと220mを対象に、立坑底盤の岩盤観察、内空変位と地中変位の現場計測、立坑の施工手順を詳細に再現した三次元逐次掘削解析を実施し、ショートステップ工法における立坑周辺岩盤の力学挙動を分析した。同工法では、無普請で3m掘削した後に、剛性の大きい覆工コンクリートを構築する施工手順を繰り返すため、掘削に伴う岩盤の内空側への変形は顕著に抑制され、立坑壁面から概ね1mの岩盤に圧縮ひずみが生じること、また、その挙動は覆工コンクリートを構築までの掘削にて一度開口・伸展した割れ目が再び閉口することにより生じるため、その発生方向は割れ目の方向性に依存することを明らかにした。

土木学会論文集F1 Vol.68 No.1 pp.7-20 2012
宮坂省吾、新里忠史、重野聖之

北海道北部、幌延地域西部の地すべり地形

高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価シナリオの構築では、自然現象の発生傾向と規則性を理解し、それら自然現象による地質環境への影響を考慮しつつ、数万年以上の長期にわたるサイトの変遷を記述することが必要であり、このための調査・評価技術の整備が課題となっている。自然現象のうち侵食作用は、処分施設と地表との距離を減少させ、処分施設周辺の地質環境条件を変化させる可能性があり、サイトの変遷をモデル化する際に考慮すべき重要な自然現象である。そこで、本論では、北海道北部の幌延地域を事例として、侵食作用に関する調査研究のうち、地すべりと地質分布及び気候条件との関連性を検討した。地形図と空中写真の判読により作成した地すべり分布図と既存の地質情報を比較した結果、本地域の地すべりには偏在性が認められ、地層に層理面が発達し斜面表層での物理的風化が著しく、地形が中起伏をなす地域に多く分布することが明らかとなった。また、地形学的特徴から推定される地すべりの形成時期は、温暖な時期の後氷期以降から現在であり、それ以前の著しく寒冷な最終氷期には、地表面での凍結融解作用に起因する面的な侵食作用が卓越していたことが推定された。

北海道の地すべり 2012 pp.61-66 2012
佐藤稔紀、丹野剛男、引間亮一、真田祐幸、加藤春實

水圧破砕法による初期応力データの品質について —花崗岩における実測結果に基づく高剛性装置の適用性と最大主応力値の評価—

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として、水圧破砕法による初期応力測定を実施している。水圧破砕法については実績が多いものの、国際岩の力学会のSuggested Methodsにおいて指摘されているように、主応力値を算定するパラメータの値に大きな誤差が含まれていることが課題となっている。本報告では、従来型の装置で測定した結果と、上記の課題を解決するために高剛性の装置を適用して測定した結果を比較した。最大深度1000mまでの花崗岩を対象として57回の水圧破砕試験を実施した結果、従来型のシステムでは35%のデータが低品質であった。高剛性型のシステムでは、ボーリング孔内で流量を測定したことにより、従来型のシステムと比較して、データの品質が向上した。従来型のシステムによる測定結果から算出される水平面内の最大主応力の値は、約23%大きく算出されていることが分かった。

Journal of MMIJ Vol.128 No.7 pp.449-454 2012
津坂仁和、稲垣大介、羽出山吉裕、小池真史、島田智浩、井尻裕二

ショートステップ工法による立坑掘削に伴う支保部材の力学挙動に関する研究

幌延深地層研究所にて新第三紀堆積岩に施工中の東立坑(仕上がり内径6.5m)の深度約220mを対象として、ショートステップ工法における覆工コンクリートと鋼製リング支保工の応力の変化や分布、発達機構を、現場計測と数値解析によって分析した。現場計測では、支保部材の初期地圧の水平面内の主応力方向の縦断面内に複数個の計器を設置し、応力計測を行った。数値解析では、立坑の施工手順を詳細に再現した三次元逐次掘削解析を実施した。その結果、覆工コンクリート内には、初期地圧の異方性と切羽の三次元的な仮支保効果の程度の差によって、10MPa以上の円周方向応力の差が生じることや、覆工コンクリートは、水平面内にて最小主応力方向を長軸とする楕円形で、上側が拡がり下側がすぼむ、すり鉢状の変形モードを呈すことを明らかにした。

土木学会論文集F1 Vol.68 No.1 pp.7-20 2012
津坂仁和、杉田裕、工藤元

幌延深地層研究計画における地下施設の建設

幌延深地層研究計画では、深度約500mの3本の立坑(アクセス(東・西)立坑2本(内径6.5m)、換気立坑1本(内径4.5m))とそれらを結ぶ4つの深度での調査坑道からなる地下施設を建設する。地下施設建設の特徴的な施工条件は、以下の3つである。1つ目は、平均的な一軸圧縮強さが約20MPa以下の岩盤(声問層と稚内層)での大深度の立坑掘削が挙げられる。2つ目は、声問層と稚内層の地質境界付近には、割れ目が顕著に発達した高透水性を示す岩盤(割れ目帯)が分布することから、地下施設の建設に伴う湧水量を適切に抑制するための湧水抑制対策工(以下、プレグラウト工という)が実施されている点である。3つ目は、幌延地域の地下水には1ccあたり約2ccのガス(全体の約80%がメタンで約20%が二酸化炭素)が溶存しており、坑道掘削時に湧出する地下水とともにこのガスが発生するため、坑道内の通気システムを整備するとともに、メタン濃度の常時モニタリングを実施していることである。地下施設の工事については、2011年末現在、換気立坑を深度331mまで、東立坑を深度289mまで、西立坑を深度47mまで掘削し、250m調査坑道を整備した。

土木技術 第67巻 第4号 pp.74-80 2012

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
C. Doughty, C.F. Tsang, S. Yabuuchi and T. Kunimaru

Flowing Fluid Electric Conductivity Logging for a Deep Artesian Well in Fractured Rock with Regional Flow

割れ目系岩盤を対象とした核種移行解析に必要な水理特性の不均質性に関する情報を取得し得る調査技術の一つに流体電気伝導度検層がある。流体電気伝導度検層は地下水流動を伴う割れ目がボーリング孔と交差する位置が推定できる調査であるが、さらに、同検層で得たデータを用いて割れ目の水理特性(透水量係数,塩分,水頭)を得る解析手法が報告されている。しかしながら、幌延地域のように堆積岩に発達する割れ目系岩盤に対してこのような解析が適用された例が少ないため、幌延深地層研究所の換気立坑先行ボーリング孔で実施した流体電気伝導度検層のデータを対象として解析を実施し、その適用性を検討した。解析の観点からデータは必ずしも十分とは言えず、一部取得されていない情報があったものの、検層区間内で認められた17箇所の透水性割れ目の水理特性を推定した。得られた結果は同ボーリング孔で実施した水理試験や揚水試料の電気伝導度の計測結果と整合するものである。

Journal of Hydrology Vol.482 pp.1-13 2013
T. Tanaka, R. Miyajima, H. Asai, Y. Horiuchi, K. Kumada, Y. Asai and H. Ishii

Hydrological gravity response detection using a gPhone below– and aboveground

Micro–g LaCoste社製の最新のバネ式相対重力計gPhone1台を用いて、地上および地下で連続観測を行った。瑞浪超深地層研究所深度100m予備ステージでの観測では、gPhoneは不圧帯水層より下に配置し、1次式および2次式の回帰残差の標準偏差がそれぞれ4.2 microGalと2.7microGalの結果を得た。降雨に伴う明瞭な重力減少が観測された一方で、環境擾乱に由来する原因不明の重力変化も発生した。御嶽山山腹における地上観測では、1次式および2次式の回帰残差の標準偏差はともに1.7microGalとなった。ここは環境擾乱が少ないため、重力計の性能を発揮した極めて良い観測データを得た。降雨量や積雪高との対応も明解であった。今後、瑞浪超深地層研究所での重力観測において、環境擾乱を充分に抑える事が出来れば、地上と地下の計2台の重力計を並行観測することにより、陸水変動起源の重力擾乱を抑える事が期待できる。そして、絶対重力測定を組み合わせることで、地熱発電所や地層処分場などにも有益な監視システムを構築することが期待出来る。

Earth, Planets and Space Vol.65 No.2 pp.59-66 2013
T. Yuguchi, T. Tsuruta, K. Hama and T. Nishiyama

The spatial variation of initial 87Sr ⁄ 86Sr ratios in the Toki granite, Central Japan: Implications for the intrusion and cooling processes of a granitic pluton

本稿は、中部日本に位置する土岐花崗岩体からストロンチウム同位体比初生値の空間分布を示し、それを用いて岩体の貫入・定置過程および冷却固化過程を提示する。7本のボーリングコアから採取された14試料に基づき、土岐花崗岩体の全岩Rb–Sr年代は71.04Maとの結果を得た。この年代は土岐花崗岩体が貫入・定置した時代を示す。また土岐花崗岩体のストロンチウム同位体比初生値は0.708507から0.709409までの幅(不均質性)を持つ。ストロンチウム同位体比初生値の不均質性と花崗岩体内の化学組成の不均質性との比較検討の結果、土岐花崗岩体は貫入・定置の際に、地殻の混成作用ならびに分別結晶作用が複合的に生じて形成されたことを明らかにした。また地殻の混成の影響の大きい場所から冷却されたという冷却固化過程に関しても言及を行った。

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.108 No.1 pp.1-12 2013
K. Aoyagi, K. Tsusaka, T. Tokiwa, K. Kondo and D. Inagaki

Geomechanical Assessment of Excavation Damaged Zone in the Horonobe Underground Research Laboratory, Japan

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、坑道掘削により坑道周辺岩盤に力学的、水理学的、地球化学的特性に影響を与えると予想される掘削影響領域(EDZ)の定量的な評価が重要である。幌延深地層研究所の地下250m坑道において、EDZを評価するために、弾性波トモグラフィ調査と、トモグラフィ領域内における岩石コア観察を行った。これらの原位置測定や観察に加えて数値解析も行い、坑道周辺の損傷領域を求めた。弾性波トモグラフィ調査の結果、壁面から約0.6m奥の地点まで顕著な速度低下領域が認められた。また、その領域における岩石コア観察の結果から、壁面から約0.3m奥までの岩石コア中に掘削に伴う割れ目(EDZ割れ目)が多く認められた。さらに、数値解析により、微小き裂が発生している領域は、壁面から0.2mの範囲であることが示された。これらの結果から、速度低下領域とEDZ割れ目の集中する部分は概ね整合することが示された。

13th Japan Symposium on Rock Mechanics & 6th Japan — Korea Joint Symposium Ginowan (Japan)
Proceedings pp.905-910
2013
K. Tsusaka, D. Inagaki, M. Nago, M. Koike, M. Matsubara and K. Sugawara

Influence of Rock Spalling on Concrete Lining in Shaft Sinking at the Horonobe Underground Research Laboratory

原子力機構は、幌延深地層研究計画において、深度500mまでの3本の立坑(換気立坑1本とアクセス立坑2本)を建設する予定である。これまでに換気立坑の深度250m以深の施工にて、いくつかの深度にて岩盤壁面の崩落が生じ、その崩落個所の直上に構築した覆工コンクリートに開口き裂が生じた。筆者らは、この開口き裂の原因を調査するために、三次元レーザースキャナにより、岩盤壁面の崩落形状を計測するとともに、岩盤崩落を模擬した数値解析により、崩落個所周辺の覆工コンクリートと岩盤内の応力分布の変化を分析した。その結果、立坑壁面の岩盤崩落によって、その近傍に構築した覆工コンクリート内に引張応力が発達することが明らかとなった。また、崩落の奥行深さが100cm以上となると、覆工コンクリートの引張強度を上回る引張応力が生じる結果となった。これらの結果は、後続する2本のアクセス立坑の施工時の施工管理指標として活用している。

13th Japan Symposium on Rock Mechanics & 6th Japan — Korea Joint Symposium Ginowan (Japan)
Proceedings pp.911-916
2013
T. Tokiwa, S. Sawada, S. Ochiai and K. Miyakawa

Occurrence of high-permeability fracture estimated by grouting in Horonobe URL of Japan

高透水性の割れ目の産状を把握するため、グラウト材の注入状況に着目した地質観察を換気立坑の深度250–350mで行った。換気立坑の本深度に認められる割れ目は主に剪断割れ目であり、断層岩類を伴う連続性の良い割れ目(断層)や引張割れ目を伴う。また、掘削に伴う割れ目も多数観察された。注入されたグラウト材は断層から派生した割れ目に多く認められ、断層自体に多くのグラウト材が入っているのではないことが分かった。この結果は、高透水性の割れ目は断層から派生した割れ目であることを示唆する。

13th Japan Symposium on Rock Mechanics & 6th Japan — Korea Joint Symposium Ginowan (Japan)
Proceedings pp.1021-1025
2013
K. Miyakawa, T. Nohara, T. Tokiwa and M. Yamazaki

Repetition of spectral analysis on rock permeability applied to seven years record of pore-pressure response to atmospheric loading at the Horonobe URL in Japan

本研究では、幌延深地層研究計画に基づき、地下施設近傍のボーリング孔において実施している長期水圧モニタリングのデータ解析により、地下施設の建設が周囲の帯水層へ影響を与え、鉛直方向の透水性を低下させることを明らかにした。地下施設から約130mの距離では立坑の掘削から約5年間で、鉛直方向の水頭拡散率が地下施設の建設前段階と比較して、約70%低下していたことが分かった。立坑の掘削に伴って大量の地下水が排水されるが、この透水性の変化は、地下水の排水に伴う間隙水圧の低下に因る岩盤中の間隙率の低下が要因と考えられる。本研究で提示した、透水性の時間変化の調査解析手法は、地下施設の建設が周囲の帯水層に与える水理的影響の定量的な評価に貢献できると考えられる。

13th Japan Symposium on Rock Mechanics & 6th Japan — Korea Joint Symposium Ginowan (Japan)
Proceedings pp.1027-1032
2013
T. Tokiwa, K. Tsusaka, M. Matsubara, T. Ishikawa and D. Ogawa

Formation mechanism of extension fractures induced by excavation of a gallery in soft sedimentary rock, Horonobe area, Northern Japan

地層処分システムの安全性を評価するためには、立坑や水平坑道などの掘削による影響(掘削影響)を把握することが必要である。本研究では、幌延深地層研究計画として進めている地下施設建設において、深度250mポンプ座の底盤において詳細な地質観察を行った結果を報告する。ポンプ座の底盤における割れ目は、掘削前の割れ目(既存の割れ目)と掘削後の割れ目(EDZ割れ目)とに明瞭に区分できる。EDZ割れ目は層理面または古応力場から推定される潜在割れ目と同じ方向である。また、これらの割れ目は、既存の割れ目で止まっている。つまり、堆積軟岩における掘削影響による割れ目は、層理面や潜在割れ目などの弱面に形成され、既存の割れ目にコントロールされていることを示唆する。このように、掘削に伴う割れ目の性質は、既存割れ目や岩石がこれまで置かれた応力場から推定することが可能と考えられる。

Geoscience Frontiers Vol.4 No.1 pp.105-111 2013
H. Sanada, T. Nakamura and Y. Sugita

Mine-by Experiment in a deep shaft in Neogene sedimentary rocks at Horonobe, Japan

坑道周辺に発生する掘削影響は、性能評価およびプラグやグラウト等の閉鎖技術の仕様に関連する重要な検討事項である。本論文では、堆積岩に設けられた坑道周辺岩盤の水理学的な変化および力学的な変化を把握するために実施された幌延深地層研究所での立坑掘削影響試験の結果について記した。BTV観察結果によると、坑道掘削に伴う側方応力解放による損傷(ブレイクアウト)が掘削後に生じた。孔内載荷試験結果によると、ボーリング孔自体の損傷に伴い全体的に弾性・変形係数が低下し、立坑壁面の1m以内で大きな低下を示した。地中変位計測では、最小主応力方向ならびに既存亀裂と平行な領域が大きく変形した。透水試験では、掘削後に立坑壁面1m以内で1オーダー増加し、力学試験から推定された掘削影響範囲と概ね一致した。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.56 pp.127-135 2012
S. Uehara, T. Shimamoto, K.Okazaki, H. Funaki, H.Kurikami, T. Niizato and Y.Ohnishi

Can surface samples be used to infer underground permeability structure? A test case for a Neogene sedimentary basin in Horonobe, Japan

Determination of underground hydraulic properties of sedimentary basin is needed in modeling subsurface and deep-underground fluid flow. The method to determine the hydraulic properties by laboratory measurements of surface samples is potentially very quick and economical one, but it remains uncertain whether surface samples can yields underground transport properties or not owing to weathering effects. We have conducted detailed permeability and porosity measurements using surface samples and drill cores. As a result, permeability and porosity decrease from upper to lower horizons due to compaction and cementation and with increasing effective pressure. Pressure cycling tests provide basic data for estimating host-rock permeability and porosity structures.

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.56 pp.1-14 2012
T. Yuguchi, M. Tagami, T. Tsuruta and T. Nishiyama

Three-dimensional fracture distribution in relation to local cooling in a granitic body: an example from the Toki granitic pluton, Central Japan

本紙は、中部日本に位置する土岐花崗岩体の割れ目頻度の空間分布を示し、それと岩体中の冷却挙動との関連について評価を行った。19本のボーリング孔のBTV情報から、割れ目頻度の空間分布は2つの傾向を示す。1つは花崗岩体の中心部分で高い頻度を持ち、もう1つは標高が下がるにつれ頻度が減少する。サブソリダス反応組織の発達の程度は、花崗岩体の冷却過程の指標となるパラメータである。隣り合う2つの位置で測定したサブソリダス組織の発達程度の差を、この2点間の距離で割った値を、局所冷却速度と定義する。土岐花崗岩体中のこの局所冷却速度の分布を明らかにしたところ、割れ目頻度の高い領域で大きな局所冷却速度を持つという相関が認められる。この相関は、割れ目の発生が熱歪という概念を通じ局所冷却速度によって説明できることを示す。故に、花崗岩体中の局所冷却速度の3次元パターンを明らかにすることは、割れ目頻度分布を評価する有用な手法である。

Engineering Geology Vol.149-150 pp.35-46 2012
K. Koide and K. Koike

Applying vegetation indices to detect high water table zones in humid warm-temperate regions using satellite remote sensing

本研究は、広域スケールにおける地質構造の水理学的特性評価にかかわる方法論の開発の一環として、従来困難とされてきたリモートセンシングによる温暖湿潤地域の森林地帯における高地下水面地区の抽出について、植生情報に基づく新たな検出方法を提案した。高地下水面によって引き起こされる植生状態の差異を検出するため、新しい植生指標(AgbNDVI)と対象エリアの地理学的特性に基づくセグメント解析を考案した。手法の妥当性を検証するため、岐阜県東濃地域の約5km四方の森林域の衛星データ(SPOT)を用いて本手法を適用した。その結果、抽出された高植生指標地点は、地下水流出が発生しやすい斜面傾斜変換点や地質境界付近、確認されている湧水点の近傍や地下水面の高い部分に分布していることが確認された。したがって、高植生指標地点は地下水流出点や高地下水面地区の重要な指標となることから、本研究で提案した植生指標(AgbNDVI)及び高植生指標地点抽出手法は、温暖湿潤地域における地質構造の水理学的特性や地下水流出域の推定にとって有効な方法と考えられる。

International Journal of Applied Earth Observations and Geoinformation Vol.19 pp.88-103 2012
H. Sanada, Y. Sugita and Y. Kashiwai

Development of a multi-interval displacement sensor using Fiber Bragg Grating technology

坑道周辺の長期挙動の把握は、地層処分場の性能評価や設計・施工を行う上で重要である。坑道近傍の変位計測には通常電気式の地中変位計が埋設される。従来型の電気式地中変位計は数年にわたる使用では絶縁不良を生じるなど長期計測が困難であった。また岩盤へのインパクトが小さい小口径のボーリング孔では多段化できないという問題があった。本研究では小口径で長期耐久性を有し、多段かつ高い精度での計測を可能にするために、光ファイバーを使用した地中変位計の開発を実施した。さらに開発した変位計の原位置への適用性を確認するために、幌延深地層研究所の立坑に開発した変位計を設置し、併設された電気式変位計と結果を対比した。室内検定試験によると、測定精度は測定範囲の0.5%と今回設定した測定精度を概ね満たしていた。また、原位置での性能確認試験から、ブラッグ波長の変化量から算出した変位は、坑道の掘削イベントや併設した変位計の計測結果と良好な一致を示した。また、光ファイバーを用いることで電気式変位計と比較して電気ノイズが見られず安定した結果が得られた。作業性や作業時間については、通常用いられる電気式の地中変位計と同程度であった。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.54 pp.27-36 2012
Y. Amano, E. Sasao, T. Niizato and T. Iwatsuki

Redox buffer capacity in water-Rock-Microbe Interaction Systems in Subsurface Environments

堆積岩における水-岩石-微生物相互作用システムの酸化還元緩衝能力を評価するために、培養試験を実施した。培養過程における溶液の化学分析、微生物増殖および群集組成の変化について分析を行った。培養液中に微生物を添加した直後から、溶存酸素濃度およびORP値は著しく減少したが、一方で微生物を添加しない実験系においては、ORP値はほとんど変化しなかった。微生物群集組成の変化から、硝酸還元菌および硫酸還元菌が、リグナイトを多く含む有機物を利用した還元反応に重要な役割を果たしていることが示唆された。これらの結果は、堆積岩環境における酸化還元緩衝能力において、微生物の役割が極めて重要であることを示している。

Geomicrobiology Journal Vol.29 No.7 pp.628-639 2012
M. Niwa, R. Takeuchi, H. Onoe, K. Tsuyuguchi, K. Asamori, K. Umeda and K. Sugihara

Groundwater pressure changes in Central Japan induced by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake

瑞浪超深地層研究所とその周辺では広域地下水流動研究などのため、複数のボーリング孔で地下水観測を実施しているが、2011年東北地方太平洋沖地震発生後に明瞭な地下水圧の変化が観測された。それによると、研究所用地のごく近傍では最大約15mの水圧上昇を示したが、研究所用地から離れた地域ではすべてのボーリング孔で数十cmから数m程度の水圧低下を示した。地震直後の地下深部における地下水位変化のパターンは、地震直後の体積歪変化の分布パターンと良い相関を示すことが言われている(膨張域で水位低下、収縮域で水位上昇)。地殻変動解析ソフトCoulomb3.1による体積歪の計算結果からは、研究所周辺ではおよそ2×10-7strainの膨張を示す。したがって、研究所用地から離れた地域におけるボーリング孔での水位低下は、東北地方太平洋沖地震に伴う体積歪の変化を反映している可能性が高い。一方、研究所用地のごく近傍で地下水位が大幅に上昇した要因としては、坑道掘削により平衡水位が低下していたところへの強制的な地下水の流入、および、研究所用地を横断する遮水性の断層に微小なクラックが発生(開口)したことによる局所的な透水性の変化が考えられる。

G-cubed: Geochemistry Geophysics Geosystems Vol.13 No. 5 2012
S. Kobayashi, J. Nobuto, H. Sugiyama, T. Kusano, M. Tsuji, S. Mikake and H. Matsui

Grouting Experiment with Colloidal Silica at 300m depth of the Mizunami URL

原子力機構は、岐阜県瑞浪市において建設中の深地層の研究施設において地質環境調査技術に関する研究開発を行っている。排水処理を考慮すると、湧水量は最少限にとどめる必要がある。瑞浪超深地層研究所の深度460m地点で湧水抑制のためセメントグラウトが行われたが、セメントが浸透しないような割れ目からの湧水が、より深い深度で問題となる可能性がある。本研究では、瑞浪超深地層研究所の深度300m地点において、コロイダルシリカの注入試験と水圧抵抗性試験を実施した。その結果、コロイダルシリカのような溶液型グラウトは微細な割れ目にも浸透し岩盤の透水性を1Lu未満に低下させることができること、9MPa以上の水圧抵抗性を有することを確認した。

European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2012) Stockholm (Sweden) 2012
K. Niimi, S. Kobayashi, J. Nobuto, H. Matsui and M. Yamamoto

Analysis and Numerical Simulation of Seismic Events Recorded in the Ventilation Shaft at the Mizunami URL

原子力機構は日本において地下の研究施設の建設を伴う研究プロジェクトを進めている。本研究では、地下の研究施設内に設置した加速度計による地震動のモニタリングにより観測された6つの地震時の加速度波形の記録を分析し、地震動は地表に近くなるにつれ増幅すること、地震波の伝搬特性は南北と東西方向で異なる可能性があることが明らかになるとともに、地表構造物が地上の地震動観測に影響を及ぼしている可能性があることがわかった。さらに、SHAKEと呼ばれる数値解析法を用いた地震動解析と実測結果と比較した結果、解析結果と実測結果は良く一致し、解析手法の妥当性が概ね確認できた。

European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2012) Stockholm (Sweden) 2012
H. Matsui, Y. Ijiri, K. Kamemura

Risk Management Methodology for Construction of Underground Structures

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪および北海道幌延町において結晶質岩と堆積岩中に研究施設を掘削し研究開発を実施している。本報告では、既往の地下構造物の建設事例や瑞浪超深地層研究所の建設で得られた経験等に基づき、個々のリスクアセスメント手法を示した。その結果、地層処分プロジェクトにおける個々のリスクアセスメントが、安全評価や処分場の設計に必要となるサイト特性モデルの構築、すなわち第1段階の調査で取得されデータ取得と評価により、提示した手法を適用することで可能であることが示された。それゆえ、提案した方法論は広範囲への適用可能性を有しており、リスクマネジメントのために特別な調査は必要としないと考えられる。

World Tunnel Congress 2012 Bangkok (Thailand) 2012
K. Tsusaka, D. Inagaki, T. Tokiwa, H. Yokota, M. Nago, M. Matsubara and M. Shigehiro

An Observational Construction Management in the Horonobe Underground Research Laboratory Project

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町にて幌延深地層研究計画を実施し、堆積岩を対象とした高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる技術の信頼性向上を目指している。同計画では、深度500mの3本の立坑と4つの深度の調査坑道からなる地下研究所を建設中である。掘削対象の岩盤は、一軸圧縮強さが20MPa以下の珪藻質泥岩と珪質泥岩の堆積軟岩であり、その地層境界に厚さ約100mの高透水性の割れ目帯が分布する。この様な深度の深い割れ目帯での立坑の掘削では、土木工学的な視点から、様々な対策が必要となる。特に、岩盤強度が低い上に、立坑の掘削径以上の不連続面(断層)と遭遇する場合には、立坑掘削に伴って壁面の崩落現象が生じることが予測された。そのため、壁面の崩落に伴う作業の安全性や工程の遅延を可能な限り抑制するために、情報化施工を実施してきた。本論文では、3本のうち最も先行する換気立坑を対象として、立坑掘削前に実施した立坑周辺の断層分布の予測と実際の断層分布の比較を述べるとともに、実際の断層と遭遇した際の立坑の支保構造の損傷とその対応策について述べた。これらは、現在割れ目帯を後続する東立坑の施工に反映されている。

World Tunnel Congress 2012 Bangkok (Thailand) 2012

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
道家涼介、谷川晋一、安江健一、中安昭夫、新里忠史、梅田浩司、田中竹延

日本列島における活断層の活動開始時期の空間的特徴

本研究では、日本列島の活断層を対象にその活動開始時期に関して、既存情報の収集を行うとともに、既存のデータベースを用いて活動開始時期が得られていない活断層について、計算による補間を実施し、それらの整理を行った。日本列島全体においては、3Ma頃から活動を開始した活断層の数が増え始め、その発生数は1.5Ma以降に大幅に増大し、0.5Ma前後にピークを迎える。現在の日本列島においては、同一地域内において、比較的古い時代から活動してきた系統の活断層と、約1.5Ma以降にその活動が顕在化した系統の活断層が共存し分布する。また、0.5Maのピーク以降に発生した活断層数が減少していることに関して、変位の累積が不十分なために、活断層が検出できていない、もしくは、活動開始時期の算出が困難である可能性が指摘された。したがって、活動開始時期が若く、顕在化していない活断層の活動を評価する手法の検討が今後の課題であると言える。

活断層研究 No.37 pp.1-15 2012
山田国見、安江健一、岩野英樹、山田隆二、梅田浩司、小村健太朗

阿寺断層の垂直変位量と活動開始時期に関する熱年代学的研究

上下変位を伴うA級の活断層である阿寺断層の周辺から採取された地表・ボーリングコア試料に対してフィッション・トラック分析を行い、上下変位量と活動開始時期を推定した。その結果、白亜紀以降の上下変位量は約1kmであり、基盤岩や地形的な変位量と変わらないことが明らかになった。これは阿寺断層の現在の活動様式が鮮新世末以降に開始したという従来の見解と整合的である。また、破砕帯内の地表・ボーリングコア試料から20Ma頃に破砕帯内で断層に沿って広い範囲で加熱があったことが明らかになった。これはこの時期には既に破砕帯が存在し、おそらく断層運動が始まっていたことを示す。

地質学雑誌 Vol.118 No.7 pp.437-448 2012
山崎誠子、梅田浩司

山陽帯東部、土岐花崗岩体の冷却史

本研究では、山陽帯東部に位置する土岐花崗岩体の熱履歴を明らかにするために、K-Ar法、およびフィッショントラック法による各種鉱物の年代測定を実施した。その結果、黒雲母のK-Ar年代は72〜74Maを示し、全岩Rb-Sr年代や年代や角閃石のK-Ar年代に一致した。また、ジルコンおよびアパタイトのフィッショントラック年代はそれぞれ64〜72Ma、 37〜40Maであった。これらの年代測定結果から、土岐花崗岩体を形成したマグマは、約70Maに地下5〜6km程度の地殻浅所に貫入し、数十万年間に母岩の温度まで冷却し、その後、岩体の隆起・削剥に伴い、約7〜10℃⁄m.y.の冷却速度で徐冷していったと考えられる。

岩石鉱物科学 Vol.41 No.2 pp.39-46 2012

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Yoshida, R. Metcalfe, M. Ishibashi and M. Minami

Long-term stability of fracture systems and their behaviour as flow paths in uplifting granitic rocks from the Japanese orogenic field

高レベル放射性廃棄物の地層処分などの地下施設を建設する上では、地下水や物質の移動場の長期的な変遷を評価するために、岩盤中の割れ目ネットワーク構造を理解する必要がある。しかし、変動帯に位置する結晶質岩中における透水性割れ目の長期的な変化や定常性については、理解されていない。これらを明らかにするために、日本に分布する異なる時代に形成された岩体を対象に検討を行った。また、割れ目の形成から充填の過程を明らかにするために、瑞浪超深地層研究所の深度300mで取得したサンプルを用いて、割れ目の幾何学的特徴の整理および地球化学的検討を行った。形成年代の異なる岩体を対象とした検討の結果、割れ目の形成・充填は、1.岩体の温度低下に伴う引張割れ目の形成、2.比較的早い岩体上昇中に発生する熱水循環による割れ目の充填、3.低温の地下水の循環による割れ目の充填の過程を経ることが考えられた。また、割れ目充填鉱物としての炭酸塩鉱物の炭素同位体組成は、沈殿した地下水の水質ごとに異なり、炭酸塩鉱物沈殿時の地下環境を示している。これらに着目することで、割れ目の形成および充填に関する詳細なモデルの構築が可能であると考えられる。

Geofluids Vol.13 No.1 pp.45-55 2013
K. Umeda, M. Ban, S. Hayashi and T. Kusano

Tectonic shortening and coeval volcanism during the Quaternary, Northeast Japan arc

自然現象の将来予測(外挿予測)に伴う不確実性を検討するためには、現在の変動傾向がどの程度の過去まで遡れるかを明らかにすることが重要となる。本研究では、東北日本弧の火山活動を事例に、過去200万年間の火山の分布、マグマ噴出量、噴火様式、岩石の化学組成等の時間変化を解析した。その結果、約1Ma(現在から100万年前頃)を境に、1)噴火様式の変化、2)マグマ噴出量の増大、3)マグマ化学組成の変化が認められる。これらのことから、現在の東北日本弧の火山活動のパターンは中期更新世まで遡ることができると考えられる。

Journal of Earth System Science Vol.122 No.1 pp.137-147 2013
K. Umeda, T. Kusano, K. Asamori and G.F. McCrank

Relationship between 3He⁄4He ratios and subducting of the Philippine Sea plate beneath Southwest Japan

ヘリウムは不活性ガスであることから地殻内の物質との化学反応を生じないほか、大気や地殻に比べてマントルのヘリウム同位体比(3He⁄4He比)は著しく大きいことから、マントル物質が地表に放出している地域を検出するためのトレーサーと考えられる。西南日本の地下水や温泉ガス中のヘリウム同位体の924データをコンパイルし、同位体比の分布とフィリピン海プレートの構造やテクトニクスとの関連性を検討した。その結果、ヘリウム同位体比は、プレート運動に伴って地殻変動が活発な地域を定量的に評価するための化学性指標として有効であることが示唆される。

Journal of Geophysical Research Vol.117 No.B10 pp.B10204_1 - B10204_13 2012
A.J. Martin, K. Umeda and T. Ishimaru

Modeling longterm volcanic hazards through Bayesian inference

将来の火山活動の発生の可能性を定量的に検討するため、火山の分布、発生時期、噴出量等の地質学データによって火山の発生する確率の空間的分布を計算した。さらに、ベイズ法を用いて地殻中のマグマや高温流体に関連すると考えられる地球物理学データ(地震波速度構造、地温勾配)、地球化学データ(希ガス同位体)を考慮したmultiple inferenceモデルを開発した。

Volcanology pp.128-159 2012

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