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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成23年度分)

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全項共通(国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

全項共通

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Makino, K. Hioki, H. Osawa, T. Semba and H. Umeki

A Challenge on Development of an Advanced Knowledge Management System (KMS) for Radioactive Waste Disposal : Moving from Theory to Practice

本論文では、放射性廃棄物地層処分に係る先進的知識マネジメントシステム開発への挑戦についての現在までの進展を、既存の知識工学ツールや手法の放射性廃棄物処分への適用に向けた調整に特に注目してまとめるとともに、将来の開発と挑戦について概説する。

New Research on Knowledge Management Technology ⁄ Chapter 10 pp.165-184 2012
H. Umeki, H. Takase and I.G. Mckinley

Geological disposal: KM challenges and solutions

放射性廃棄物の地層処分には、知識マネジメント(KM)に関わるもっとも興味深い問題が凝縮されている。これらのなかには、指数関数的に膨れ上がる関連情報を参照しつつ多岐にわたる様々な学問分野から知識を収集し、これを統合することや、一世紀以上にわたって継続するプロジェクトにおいて暗黙知を表出化し保存すること、さらには、厳密な方法にしたがった情報品質の保証、情報に基づくあらゆるステークホルダー間の対話の促進といったものが含まれる。こうした問題は従来の知識マネジメントのアプローチでは対応することができないことが次第に明らかになってきており、日本においては、5年前より、21世紀の知識マネジメントシステム(KMS)と呼ぶにふさわしいシステムの確立を目指したプロジェクトを開始した。この取り組みにあたって特に留意したのは、類似のKMプロジェクトにおける成功と、とくに失敗を学びつつ、地層処分以外の分野ですでに実用に供されているアイデアや技術をできるだけ利用しようとしたことである。本KMSはなお開発途上にあるものの,インターネットを使ったプラットフォームがすでに機能しており、知識ベースや知識工学(KE)ツールへのユーザーフレンドリーなアクセスとともに、主要なステークホルダーグループを対象とした異なる技術レベルでの対話用インターフェイスを提供している。

Knowledge Management Research & Practice Vol.9 No.3 pp.236-244 2011
H. Makino, H. Umeki, H. Takase and I.G. Mckinley

A VISION OF NEXT GENERATION PERFORMANCE ASSESSMENT MODELS

性能評価は、異なるサイトや設計オプションの適用性や優劣の評価で重要な役割を果たすことが期待される。本論文では、その役割を果たすための、次世代性能評価への要求と関連する研究開発課題について論じる。

IHLRWMC2011 (International High-Level Radioactive Waste Management Conference) Albuquerque (USA)
Proceedings of 2011 International High-Level Radioactive Waste Management Conference pp.25-31
2011

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
岸田潔、小林賢一郎、細田尚、藤田朝雄、岸裕和、葛葉有史、延藤遵

慣性項を考慮した単一亀裂グラウト注入モデルと平行平板実験への適用

本研究では、慣性項を考慮した非ニュートン流体としてのグラウト注入のモデルの構築を行い、単一亀裂平行平板モデルという簡略化した岩盤亀裂モデルに対し行われた模型実験に対する数値シミュレーションを行った。その結果、従来モデルと本研究で提案するモデルでは、平行平板での亀裂内のグラウト浸透距離における明瞭な差異は確認できなかったが、圧力の変動や浸透速度に差異が生じることを確認した。また、いずれのモデルにおいてもグラウト材料の要素試験で決定した降伏値や塑性粘度と平行平板実験から推定される塑性粘度に差異があることが確認された。

材料 第61巻 第3号 pp.245-252 2012
津田秀典

グラウトデータベースの開発

(独)日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関するグラウト技術開発において、グラウトデータベースを開発しました。グラウトデータベースとは、グラウト材料とグラウト施工に関するデータベースです。前者は地層処分のために新たに開発した低アルカリ性セメント系グラウト材料・超微粒子球状シリカグラウト材料・溶液型グラウト材料に関する物理的・力学的および化学的特性を集約したデータであり、後者は既往のグラウト施工に関する事例を、施工概要(施工目的等)・設計施工条件(地質、地下水、割れ目等)・グラウト仕様(注入工法、配合等)の観点から集約したデータです。本データベースの利用では、ユーザ管理システムを導入し、データ利用上の利便性とユーザ情報の安全性を高めています。本データベースは、原子力機構のホームページ(https:⁄⁄groutdb.jaea.go.jp⁄grout⁄)を通じて誰もが利用可能です。今後、グラウト設計、施工に関してさらに有用な経験や知見が提供できるよう、データベースの質・量を継続的に改良・更新していく予定です。

土木学会誌 第97巻 第2号(2月号) p.116 2012
中西達郎、藤田朝雄、津田秀典、田中達也、鵜山雅夫、大西有三

地層処分におけるグラウト技術の高度化研究(その1) —結晶質岩サイトにおけるグラウト実証試験に向けた事前調査—

日本原子力研究開発機構は、地層処分におけるグラウト技術の高度化研究の一環として、深部1,000m程度までの環境下での注入技術、グラウト材料がバリア材料に与える影響の評価技術、および処分場の建設・操業時に要求される性能を考慮したグラウト材料等の開発に取り組んできた。本報告は、スイスのグリムゼル岩盤試験場において、開発したグラウト材料を用いて原位置でのグラウト施工の実証試験に向けた事前調査の結果およびグラウト注入試験の試験計画をとりまとめたものである。同試験では、新たに掘削したボーリング孔から得られた幾何学的亀裂情報、通水試験および孔-孔間での透水確認試験を通して、グラウト注入試験の試験計画に資する水理地質情報および各種データを取得した。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.71-76
2012
田中達也、Patrick Bruines、鐙顕正、橋本秀爾、葛葉有史、大西有三

地層処分におけるグラウト技術の高度化研究(その2) —結晶質岩サイトにおける水理地質構造評価事例—

日本原子力研究開発機構は、スイスのグリムゼル岩盤研究所において、グラウトの浸透範囲を管理しつつ、グラウト施工を行う実証試験を予定している。本報告では、グラウト注入の対象範囲および注入仕様の設定を目的とした、水理地質構造の調査と評価の結果を取りまとめる。同試験場は花崗岩体中に位置し、グラウトは割れ目を主な経路として移動することから、調査・評価結果を3次元的な割れ目ネットワークモデルを用いて統合・記述した。また、着目する岩体の割れ目帯の方位や深度および水理特性を可能な限り決定論的にモデル内に記載する方針を採用したことで、同モデルを施工計画の基盤情報として活用することが可能となった。さらに、同モデルにアップスケーリング手法を適用することで、試験エリアの透水テンソル場を構築し、グラウトの浸透範囲を予測するグラウト浸透モデルへの提供情報とした。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.77-82
2012
小山倫史、片山辰雄、薄井昭則、田中達也、岸裕和、大西有三

地層処分におけるグラウト技術の高度化研究(その3) —多孔質媒体モデルを用いた溶液型グラウト注入解析—

本研究では、亀裂性岩盤における溶液型グラウトの注入・浸透過程のメカニズム解明、およびグラウト注入効果の検証を目的として、スイス・グリムゼル岩盤試験場における溶液型グラウト注入試験の事前解析を実施した。本解析では、原位置より得られた不連続面幾何学情報をもとに作成した亀裂ネットワークモデルを等価多孔質媒体に置き換える。また、溶液型グラウトはニュートン流体であると仮定し、粘性試験の結果より算出した粘性の経時変化を時間と濃度の関数で表し、透水係数低減関数を算出する。この透水係数低減関数を用い、浸透流解析と移流・分散解析を組み合わせることでグラウト注入過程の3次元シミュレーションを実施した。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.83-88
2012
清水浩之、小山倫史、千々松正和、藤田朝雄、中間茂雄

粒状体個別要素法によるHLW処分坑道における熱–応力連成解析

本研究では、HLW地層処分において廃棄体定置後にニアフィールド環境に生じる熱–水–応力連成現象を評価することを目的とし、まずは粒状体個別要素法を用いた岩盤を対象とした熱–応力連成解析モデルの開発を行った。さらに、スウェーデンのエスポ地下研究所で実施された室内及び原位置試験結果と数値解析結果の比較により開発した熱–応力連成解析モデルの検証を行った。その結果、掘削による応力解放および加熱による岩盤内の亀裂進展をシミュレーションによって表現することができ、原位置試験で観測された結果と比較的よい一致を示すことがわかった。しかし、定量的により精度の高い解析を行うためには、今後、粒子の微視的パラメータの温度依存性などといった更なる改良が必要である。

材料 Vol.60 No.5 pp.470-476 2011

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Yamaguchi

Hemibonding of hydroxyl radical and halide anion in aqueous solution

ヒドロキシルハライド(XOH-; X=Cl、Br、I)の密度汎関数法による計算を領域分割ハイブリッド交換相関汎関数を用いて行った。計算には奇数電子系や励起状態に満足できる結果を与える長距離補正の汎関数(LC-ωPBE)を用い、ジハロゲンラジカルアニオンやヒドロキシルラジカルの水和クラスターの計算で事前にテストした。酸素–ハロゲン間に半結合をもつ最適化構造が四水和体について得られ、時間依存DFT法で計算したσ–σ*遷移の光吸収は実験値とよく一致した。生成反応の自由エネルギー変化はClでは吸熱的、BrとIとでは発熱的となったが、これは実験から見積もられた平衡定数と整合的であった。

Journal of Physical Chemistry A Vol.115 No.51 pp.14620-14628 2011
A. Noguchi, H. Kishi, K. Hatanaka and M. Naito

MIX DESIGN OF LOW pH CEMENT SHOTCRETE IN HIGH LEVEL RADIOACTIVE WASTE REPOSITORIES

多様な地質環境条件に適用するため、高レベル放射性廃棄物処分場を対象とした低アルカリ性吹き付けコンクリートの一般化された配合選定手法を提案する。本手法には2つの改善点がある。一つが低アルカリ性を担保する統合材の配合を事前に選定すること、もう一つが強度を担保するために水セメント比を設定することにある。これらの手法はこれまでの吹き付けコンクリートの配合選定手法に幌延深地層研究センターの地下坑道への適用を念頭に置いた研究の成果および既往のコンクリート配合選定手法が加味されている。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43532 (CD-ROM)
2011
T. Koyama, H. Shimizu, M. Chijimatsu, S. Nakama and T. Fujita

Distinct element approach for the analysis of coupled thermal-mechanical processes in the near field of the HLW repository

本研究では、2次元粒状体個別要素法(2-D DEM)において、新たに熱の移動および熱–力学連成項の定式化および解析コードへの導入を行った。新たに開発した解析コードを用いてスウェーデンのエスポ地下研究所で結晶質岩を対象とした原位置試験(Pillar stability test)の数値シミュレーション(熱–力学連成解析)を実施した。シミュレーションの結果は原位置における計測結果および別途実施した2次元および3次元の有限要素法(2-D、3-D FEM)による解析結果との比較を行い、新たに開発した個別要素法による解析コードの妥当性を検討した。試験中の主応力・温度などの変化は原位置試験における観測結果および2-D、3-D FEMによる解析結果と定性的に良好な一致がみられた。また、原位置試験では試験孔壁面での岩盤の破砕およびV字型に破壊・欠落する現象が観察されており、2-D DEMでは初期に存在するメイクロクラックの存在割合に関するパラメータ・スタディを実施することで、その再現を試みた。

The 2011 World Congress on Advances in Structural Engineering and Mechanics (ASEM11plus) pp.3759-3782 Seoul (Korea) 2011
H. Shimizu, T. Koyama, S. Murata, T. Ishida, M. Chijimatsu, T. Fujita and S. Nakama

Distinct element modeling for Class II behavior of rock and hydraulic fracturing

本研究では、個別要素法(DEM)を用いて新たに構築した数値解析法を示し、岩盤工学における二つの問題についての物理現象およびメカニズムの解明のためのDEM解析を実施した。まず、半径方向のひずみを制御した一軸圧縮試験のDEM解析を行い、岩石のクラスII挙動を解析した。その結果、DEM解析によりクラスII挙動が再現可能であること、岩石の載荷条件がクラスII挙動に重要な役割を果たしていることがわかった。次に流体を連成させたDEM解析により水圧破砕の解析を実施した。その結果、水の浸透挙動は水の粘性に依存することを示した。粘性が低い時は、水は亀裂にすみやかに浸透し、粘性が高い時は、亀裂の発生・伸展の後、亀裂へゆっくり浸透した。さらに従来の理論と同様にDEM解析においても引張亀裂が優先的に発生した。しかし、岩石の引張強度は圧縮強度よりも小さいため、引張亀裂から放出されるエネルギーは小さい。このような小さなAEイベントはノイズと見分けることが困難である。よってAE観察においては、大きなエネルギーのせん断型のAEイベントが優先的に観察された。

International Journal of the JCRM Vol.7 No.1 pp.33-36 2011
M. Chijimatsu, T. Koyama, A. Kobayashi, H. Shimizu and S. Nakama

Simulation of the spalling phenomena at the Äspö Pillar Stability Experiment by the coupled T-H-M analysis using the damage model

国際共同研究DECOVALEX-2011では、Äspö Pillar Stability Experiment の解析評価が実施された。試験坑道に2本の試験孔が掘削され、Pillar とは2本の試験孔に挟まれた幅1.0m程度の部分のことである。解析は損傷力学モデルを組み込んだ熱–水–応力連成解析コードを用いて実施した。損傷力学モデルに必要な損傷パラメータはSKBにより実施された一軸圧縮強度試験より設定した。この損傷パラメータを用いて解析を実施したところ、損傷は発生しなかった。これは、一軸圧縮強度試験は岩石コアを用いて実施されており、実際の岩盤の強度は岩石コアの強度より劣っているためであると考えられる。そこで、損傷パラメータのキャリブレーションを実施した。キャリブレーションにより得られた損傷パラメータを用いて解析を行ったところ、解析結果は測定結果を良く再現できた。掘削時に損傷の発生が生じており、発生した損傷領域と観察された剥離領域とは整合している。以上より、適切なパラメータを用いることにより有限要素法を用いた連続体モデルでも実際に観測された剥離現象をある程度は再現できることが分かった。

GeoProc 2011 Conference Perth (Australia)
GeoProc 2011 International Conference on Coupled T-H-M-C Processes in Geo-systems: Fundamentals, Modelling, Experiments & Applications (CD-ROM) GP033
2011
T. Koyama, H. Shimizu, M. Chijimatsu, A. Kobayashi, S. Nakama and T. Fujita

Numerical Simulations for the Coupled Thermal–mechanical Processes in Äspö Pillar Stability Experiment —Continuum and Discontinuum Based Approaches—

本研究では、スウェーデンのエスポ地下研究所で結晶質岩を対象として実施された原位置試験(Pillar stability test)を対象とし、2次元粒状体個別要素法(2D-DEM)による熱–応力連成解析を適用し、原位置における計測結果との比較を行った。解析においては、新たに熱の移動および熱–力学連成項を定式化し解析コードに導入した。また、原位置試験の解析結果は3次元有限要素法(3D-FEM)によるものと比較を行い、新たに開発した解析コードの妥当性を検討した。試験中の主応力・温度などの変化は原位置試験における観測結果および3D-FEMによる解析結果と定性的に良好な一致がみられた。また、掘削・加熱工程において試験孔壁面付近に微小亀裂が発生しており、このことから原位置試験で観察された試験孔壁面での岩盤の破砕、V字型に破壊し欠落する現象について考察することができると考えられる。

GeoProc 2011 Conference Perth (Australia)
GeoProc 2011 International Conference on Coupled T-H-M-C Processes in Geo-systems: Fundamentals, Modelling, Experiments & Applications (CD-ROM) GP039
2011
M.C. Alonso, J.L. García Calvo, S. Pettersson, M.A. Cuňado, M. Vuorio, H. Weber, H. Ueda, M. Naito and C. Walker

Development of an Accurate Methodology for Measuring the Pore Fluid pH of Low-pH Cementitious Materials

低アルカリ性セメントの開発において基本的なことは、pHの目標値を決定づける配合の量と品質を確保するために正確かつ信頼できる方法でpHを測定することである。本件の目的は低アルカリ性セメントのpHを測定するための標準的な手順を開発することである。文献調査により4つの方法を出発点に検討を開始し、その結果、圧搾法をレファレンスに、浸出法を通常の方法として2つのタイプを選定した。これらについて、pHに影響を与える固液比などのパラメータを変えて手順の検討を行い、同じサンプルを用いて7カ国8機関でそれぞれ測定を試みたところ、ばらつきは小さく、高い再現性を有することが示された。

XIII ICCC Congress Madrid (Spain)
13th International Congress on the Chemistry of Cement Proceedings (CD-ROM) (Paper 494)
2011
T. Fujita, Y. Sugita and M. Toida

Experimental Studies on Penetration of Pulverized Clay-Based Grout

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、廃棄体の定置後、処分のために建設した地下構造物を埋め戻し材、プラグ(粘土、コンクリート)、グラウトといった要素技術により閉鎖し、処分場の安全性に悪影響を与えないようにする必要がある。地下空洞周辺岩盤に存在する掘削影響領域、あるいは周辺岩盤⁄支保工間などは、将来的に水みちとなる可能性がありえる。これらの水みちになりうる部分に対しては、埋め戻し材やプラグによっての対応を行うとともに、必要に応じたグラウトの施工によってこれら閉鎖要素の機能発揮を補助することも考えられている。ここでは、これまでプラグ周りのグラウト材として、釜石鉱山及びカナダ原子力公社の地下研究施設でその適用性を検討してきた粘土系グラウトに関して、浸透性の向上を目的とした、材料の微粉砕化についての基礎的検討を行った。その結果、粘土系グラウト材料の微粉砕化による浸透性の向上が認められた。

Journal of Energy and Power Engineering Vol.5 No.5 pp.419-427 2011
N. Taniguchi, H. Suzuki, M. Kawasaki, M. Naito, M. Kobayashi, R. Takahashi and H. Asano

Propagation behaviour of general and localised corrosion of carbon steel in simulated groundwater under aerobic conditions

炭素鋼は高レベル放射性廃棄物地層処分におけるオーバーパック候補材料の一つに選定されている。炭素鋼の腐食は全面腐食と局部腐食の二つに分類される。本研究では酸化性雰囲気における炭素鋼の浸漬試験によって全面腐食と局部腐食の進展挙動を調べた。浸漬試験結果、腐食進展速度は環境条件と鋼種に大きく依存した。しかし、孔食係数(最大腐食深さと平均腐食深さの比)の上限はおよそ平均腐食深さのみから決定されることがわかった。実験データと文献データに基づき、Gumbel分布を用いた極値統計解析を適用することによって平均腐食深さからオーバーパックの最大腐食深さを推定する経験的モデルを提示した。

Corrosion Engineering Science and Technology Vol.46 No.2 pp.117-123 2011
M. Kobayashi, Y. Yokoyama, R. Takahashi, H. Asano, N. Taniguchi and M. Naito

Long term integrity of overpack closure weld for HLW geological disposal Part 2 - corrosion properties under anaerobic conditions

炭素鋼オーバーパックの長期健全性を予測するため、還元条件下での炭素鋼溶接部の腐食挙動が調べられた。本研究で用いた試験片は3つの溶接方法(GTAW、GMAW、EBW)から作成された。各試験片には全面腐食が観察され、溶接部における腐食速度は母材と同等かそれ以下となった。浸漬期間中に吸収された水素量は3年間で2.48x10-5mol⁄kg–Fe(0.05ppm)以下であり、水素脆化の影響がほとんどない値となった。水素脆化感受性は母材で最も大きく、溶接による悪影響はほとんどないことが示された。溶接された炭素鋼オーバーパックは還元条件下で期待される寿命期間中耐食性を有すると考えられる。

Corrosion Engineering Science and Technology Vol.46 No.2 pp.212-216 2011

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
三ツ井誠一郎

青銅器の埋蔵環境について

長野県中野市の柳沢遺跡から出土した弥生時代の銅戈及び銅鐸の埋蔵環境を調査した結果、赤銅鉱が安定に存在しうる、比較的大気の影響を受けにくい条件であったことが確認できた。また、土壌中の青銅器由来成分の分布を調査した結果、銅及び鉛は、埋納坑から少なくとも2m程度離れた場所まで移動しているのに対し、錫は青銅器近傍に残存する傾向があることが確認できた。錫の挙動は青銅器の長期腐食状態に影響している可能性がある。

長野県埋蔵文化財センター発掘調査報告書100 —柳沢遺跡— pp.139-146 2012
前川恵輔、長田昌彦

珪藻質泥岩の水分量変化に伴う物性変化に関する研究

地下施設建設時における坑道内の空気の循環等に伴い、坑道近傍の岩盤の透水性等の物理特性が掘削前と異なることが知られている。地層処分場を想定した場合、これらの影響を考慮することは、施設の健全性に加え長期に亘る安全性を評価する上で極めて重要となる。しかし、物理特性の変化の程度や範囲を評価する手法は確立されていない。そこで、評価手法の整備の一環として、北海道幌延町の原子力機構の地下研究施設で採取した珪藻質泥岩を用いた乾燥変形試験を実施し、乾燥に伴う岩石の変形挙動等を検討した。その結果、乾燥変形挙動が層理面に対して異方性を示すなどの挙動の特徴を確認できた。乾燥速度の温度依存性等から、物性試験時の留意点や挙動のモデル化に必要な基礎情報を取得できた。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.53-58
2012
舘幸男、小林大志

MIGRATION 2011 参加報告

第13回地層中におけるアクチニドと核分裂生成物の化学および移行挙動に関する国際会議(MIGRATION 2011)が、中国の北京大学にて9月18日-23日の6日間にわたり開催された。本報告では、会議の全体概要と各セッションのトピックスを紹介し、地層処分における核種移行研究の最新の国際動向を伝える。

原子力バックエンド研究 Vol.18 No.2 pp.113-115 2011
小田好博、高須民男、佐藤久、澤田淳、綿引孝宜

室内試験による塩淡境界部における塩濃度分布の光学的評価

塩水系地下水が存在する場合、淡水系地下水との密度差により地下水の流動が複雑化すると考えられる。さらに放射性廃棄物の地層処分においては、緩衝材候補等人工バリアシステムの特性が塩水系地下水によって変化することが知られている。塩水系地下水が存在する場合の地下水流動挙動を、原位置調査により評価する場合、多大な調査が必要になるため、数値解析による評価が中心となっている。しかしながら浸透流に移流・分散と密度流を連成した複雑な解析を行う必要があり、定性的には十分なコードの検証が行われているものの、原位置のデータ等による定量的な検証が十分ではない。今回、塩水系地下水が存在する場合に起きる現象の一つである塩水楔現象について、楔の形状のみならず淡水と塩水の境界部の塩濃度分布を定量的に測定することができたので報告する。

土木学会論文集C Vol.67 No.2 pp.186-197 2011

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Sakurai and H. Yoshikawa

Isolation and identification of bacteria able to form biofilms from deep subsurface environments

幌延深地層研究センターの井戸の140m地点で採取された地下水から細菌を単離した。バイオフィルムアッセイの結果、単離された菌株のうち98%の菌株は好気条件下と嫌気条件下でバイオフィルム形成能を持つことが明らかになった。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.49 No.3 pp.287-292 2012
R. Arthur, H. Sasamoto, C. Walker and M. Yui

POLYMER MODEL OF ZEOLITE THERMOCHEMICAL STABILITY

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、地下坑道の掘削、施工段階での湧水対策としてセメント系グラウトが用いられた場合、岩盤の長期的な劣化等による化学場の変化が予想される。化学場の変化は、地層処分の性能評価における核種移行評価に影響を与えるため重要である。沸石類は、セメント系グラウトと岩盤との反応で生ずる変質生成物の一つである。化学場の長期的な変化を評価する場合、沸石類の様な変質生成物に対する熱力学データが必要となる。本報告では、沸石類を対象に、信頼性の高い熱力学データを整備するため、既往の経験的な計算手法を改良し、実験値との整合性の高い、より信頼性の高いデータを導出するモデルを提案した。また、本モデルを用いることで、沸石類以外の重要な変質生成物(粘土鉱物等)の熱力学データ導出への適用可能性も示唆された。

Clays and Clay Minerals Vol.59 No.6 pp.626-639 2011
H. Sasamoto, R. C. Arthur and K. Hama

Interpretation of undisturbed hydrogeochemical conditions in Neogene sediments of the Horonobe area, Hokkaido, Japan

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、地下深部の未擾乱状態の水理地球化学的条件を把握することは、処分の性能評価において初期条件となる地下水の地球化学的条件を設定する上で重要である。本報では、幌延の深地層研究所計画における地上からの調査段階で得られた地下水データをもとに、経験的および統計的手法による地下水データの信頼性・相関性のチェックや地球化学モデルを用いた未擾乱状態の水理地球化学条件の解釈(推定)を行い、地上からの調査段階で得られた地下水データの品質や信頼性を評価する手法の適用性を検討した。

Applied Geochemistry Vol.26 No.8 pp.1464-1477 2011
A. Kitamura and T. Sasaki

Thermodynamic Interpretation on Solubility of Neptunium, Technetium, Selenium and Palladium in Nitrate and Ammonium Solutions

硝酸およびアンモニア水溶液中におけるネプツニウム、テクネチウム、セレンおよびパラジウムの溶解度に対する熱力学的考察を、日本原子力研究開発機構が整備した熱力学データベース(JAEA-TDB)を用いて実施した。熱力学計算においては窒素の酸化還元に特に注意する必要があることがわかった。本研究で用いた実測データはJAEA-TDBを用いた熱力学計算である程度説明できることがわかったものの、硝酸が溶液系の酸化還元状態に影響を与えること、および窒素の挙動に注目した実験研究が必要であることがわかった。

Global 2011 Chiba (Japan)
Proceedings of GLOBAL 2011 (CD-ROM) Paper No.384177(abstract) Full-paper No.503879
2011
Y. Tachi, K. Yotsuji, Y. Seida and M. Yui

Diffusion and sorption of Cs+, I- and HTO in samples of the argillaceous Wakkanai Formation from the Horonobe URL, Japan: Clay-based modeling approach

幌延深地層研究所の稚内層試料中のCs+、I-、 HTOの拡散・収着挙動を、地下水のイオン強度影響に着目して、透過拡散とバッチ収着試験によって調査した。実効拡散係数Deはイオン強度の影響が明瞭で、イオン強度の増加とともに、CsのDeは減少、Iは増加、HTOは変化なく、陽イオン濃集、陰イオン排除の効果が確認された。Csの分配係数Kdは、拡散法とバッチ法で整合的な結果が得られ、イオン交換の競合の結果としてイオン強度とともに減少した。拡散・収着現象が、含まれるイライトとスメクタイトの粘土成分によって支配されると仮定し、粘土鉱物を主体としたモデル化アプローチを検討した。モデルによって一連の実験データが概ね説明可能であり、粘土粒子とナノサイズ間隙がこの岩石中のイオンの移行挙動に支配的に寄与していることが示唆された。

Geochimica et Cosmochimica Acta Vol.75 No.22 pp.6742-6759 2011
K. Kishida, T. Hosoda, A. Sawada, H. Sato, S. Nakashima and H. Yasuhara

Dependence of fracture geometry and spatial variation in pressure on hydraulic conductivity in rock fractures

自然の亀裂中の開口部は不均質な分布を呈するにもかかわらず、一般に均質な平行平板モデルで表現され、亀裂の透水特性の評価には三乗則が適用される。平行平板モデルで三乗則が適用されるのは、レイノルズ数が1.0以下であり、移流項が流れに影響しないことが知られている。本研究では、レイノルズ数が1以下の条件下での単一亀裂透水実験に対し、移流項を考慮したモデル(2Dモデル)による2次元浸透流解析を行った。得られた結果から、局所レイノルズ数の評価と三乗則成立に加えて2Dモデルの検証に関する検討を行った。

12th ISRM International Congress on Rock Mechanics Beijing (China)
Harmonising Rock Engineering and the Environment pp.1327-1330
2011
S. Mitsui, A. Fujii, M. Higuchi and K. Nishimura

Long-Term Corrosion of 2,000-Year-Old Ancient Iron Sword

1997年1月に大阪府八尾市大竹西遺跡の弥生時代後期初頭(1世紀前半)の遺構面から出土した鉄剣は、鋳造鉄剣としては畿内最古級である。直線的な鎬の形状が明瞭に残存するなど、本鉄剣の遺存状態が極めて良好であったことから、その埋蔵環境と腐食状況に関する調査・分析を実施した。埋蔵環境として、湧水水質、酸化還元電位、溶存酸素濃度等の分析、鉄電極の腐食速度(プローブ腐食速度)等の測定を1997年2月に現地で実施した。鉄剣の腐食状況については、X線CT装置を用いた腐食層厚の計測、ポータブルX線回折・蛍光X線分析装置を用いた鉄剣表面の腐食生成物等の分析を実施した。その結果、鉄剣が酸化還元電位や溶存酸素濃度が低い環境に埋蔵されていたこと、最大腐食速度はプローブ腐食速度に比べ2桁程度小さいこと、腐食生成物として検出した菱鉄鉱が腐食反応を抑制していた可能性があることを確認した。

MRS 2011 35th International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Buenos Aires (Argentina)
MRS symposium proceedings Vol.1475 pp.545-550 (2012)
2011
H. Yoshikawa, M. Kawakita, K. Fujiwara, T. Sato, T. Asano and Y. Sasaki

An Investigation of Microbial Effect as Biofilm Formation on Radionuclide Migration

高レベル放射性廃棄物についての微生物影響評価の一環として、マトリックス拡散に対するバイオフィルムの影響をシナリオと実験データにより検討した。バイオフィルム中の放射性核種の拡散としてCsについて実験したところ、実効拡散係数が自由水中の拡散係数より低いものの、岩石に比べると桁違いに大きいことが示された。バイオフィルムのマトリックス拡散への影響は少ないことが示唆された。

MRS 2011 35th International Symposium on Scientific Basis for Nuclear Waste Management Buenos Aires (Argentina)
MRS symposium proceedings Vol.1475 pp.617-622 (2012)
2011
H. Takahashi

MICROSTRUCTURAL ANALYSIS BY X-RAY NANO-CT AND ITS IMPLICATIONS ON HDO DIFFUSION IN COMPACTED MONTMORILLONITE

異なるイオン強度で飽和させたNa型および0.1M CsClで飽和させたCs型モンモリロナイト圧縮体のHDO拡散性とX線ナノCTを用いて270nmあるいは360nmのピクセル分解能で撮像した圧縮体の微細構造を比較分析した。

NEA Clay Club workshop Karlsruhe (Germany) 2011
K. Miyahara, M. Kawamura, I.G. Mckinley, M. Inagaki and T. Ebina

Consequence Analysis of Fluvial Erosion Scenarios for a HLW Repository

隆起・侵食の継続による高レベル放射性廃棄物処分場への影響は処分後の遠い将来においてのみ想定され得るものの、評価の時間枠が定められていないわが国では、隆起・侵食シナリオを評価しておくことが求められる。このため、河川の下刻による段丘の形成を含む地形の超長期の変遷に関する地質学的記録の文献調査を踏まえ、現実的な現象理解に基づく下刻侵食モデルを構築した。このモデルに基づきフラックスを指標として処分場の下刻侵食による影響を評価することにより、処分システムの有効性と頑健性を例示した。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.48 No.7 pp.1069-1076 2011
K. Miyahara, Y. Tachi, A. Kitamura, S. Mitsui, A. Sawada, M. Shibata, F. Neall and I. G. Mckinley

ROLES OF CONCEPTUAL MODEL DEVELOPMENT FOR REALISTICALLY QUANTIFYING RADIONUCLIDE MIGRATION

日本の地層処分計画における公募方式による複数の処分候補地を比較評価するため、処分場閉鎖後の安全評価ではできるだけ現実的に核種移行現象を取り扱うことが求められる。現実的なモデルやパラメータ設定のためには、理論の裏付け、室内、野外試験、ナチュラルアナログによる知見や情報を総合した現象理解を踏まえる必要があり、データ取得手法の信頼性をチェックする等のこれまでの紋切り型の品質保証手続きは役に立たない。本研究では、この問題を掘り下げた上で、知識工学手法を適用した解決策を提案する。

IHLRW2011 (International High-Level Radioactive Waste Management Conference) Albuquerque (USA)
Proceedings of 2011 International High-Level Radioactive Waste Management Conference pp.292-298
2011

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
松井裕哉

大深度地下環境(深地層)を対象とした工学技術の適用事例

原子力機構は北海道幌延町に堆積軟岩を対象とした幌延深地層研究所を、岐阜県瑞浪市に結晶質岩を対象とした瑞浪超深地層研究所(Mizunami Underground Research Laboratory, 以降MIUと称す)を建設しつつ、土木・資源工学で培われた既存の工学技術の有効性確認を主に行ってきた。本報告は、MIUにおける工学技術の適用事例を紹介している。

土木学会誌 第97巻 第2号(2月号) pp.36-37 2012
津坂仁和、稲垣大介、名合牧人、松原誠

堆積軟岩における大深度立坑掘削に伴う壁面崩落現象

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町にて高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発のために地下研究施設の建設を進めている。同施設では、新第三紀堆積岩に、換気立坑(内径4.5m)と2本のアクセス立坑(内径6.5m)をショートステップ工法にて深度500m程度まで掘削する。掘削対象となる岩盤の一軸圧縮強さは25MPa以下であり、深度250m〜350mには、立坑の掘削径以上の連続性のよい不連続面が多数分布する。複数の立坑を順次掘削していく中で、作業安全性の確保や掘削工程の遅延、支保部材の損傷等の抑制のために、先行する換気立坑の施工にて、立坑掘削に伴う岩盤壁面の崩落現象を分析し、その結果を後続の東・西立坑の施工にフィードバックすることが重要となる。そこで、透水性の高い割れ目帯が分布する深度250m以深の施工前に、ボーリング調査結果とプレグラウト工の実績から3次元地質構造モデルを構築し、立坑掘削に伴う壁面の崩落危険区間を設定した。換気立坑の掘削では、立坑壁面の崩落状態を評価するために、3次元レーザースキャナーにより壁面形状を計測した。その結果、掘削に伴う立坑壁面の崩落発生区間は、崩落危険区間とよく整合し、また、断層上面にて小崩落が確認されたものの、ショートステップ工法では「高抜け」の抑制に効果的であることが明らかとなった。

土木学会 第17回地下空間シンポジウム 東京
地下空間シンポジウム論文・報告集 第17巻 pp.155-162
2012
松井裕哉、水野崇、笹本広、杉原弘造、油井三和

結晶質岩におけるグラウト材が地下水へ及ぼす化学的影響に関する調査研究

日本原子力研究開発機構は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託研究「地下坑道施工技術高度化開発」の中で、既存のグラウチング技術の有効性や、その化学的影響に関する調査研究を、平成19年度から実施してきた。本調査研究では、グラウト材が浸透・固化した領域に、水圧・水質連続モニタリングシステムを設置して、物理化学パラメータの連続観測と採水・分析を行い、近傍で実施中の地下水の地球化学的調査結果と比較し、その影響を検討した。その結果、地下水水質は、本モニタリング期間中にバックグラウンドと同等程度まで戻ったことが示され、影響が解消されるまでの期間は、空洞状態を保持している場合には、概ね2年程度と推定された。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.179-184
2012
丹野剛男、佐藤稔紀、松井裕哉、真田祐幸、熊坂博夫、多田浩幸

瑞浪超深地層研究所での研究事例に基づいた等価連続体モデル化手法の適用に関する一考察

日本原子力研究開発機構では地層処分技術に関する研究の一環として、超深地層研究所計画を進めている。超深地層研究所計画における岩盤力学分野では、研究坑道の掘削に伴い周辺岩盤に生じる掘削影響の評価方法の構築を課題の一つとして設定して調査研究を行っている。その中で本報では、瑞浪超深地層研究所において研究坑道を利用し、等価連続体モデル化手法の一つであるクラックテンソルによるモデル化領域設定のための検討結果を報告する。クラックテンソルの算出では、坑道壁面などの曲面状の壁面に現れる割れ目のトレース長の算出が必要であり、本研究では、その算出方法を新たに提案した。また、算出されたクラックテンソルについて、岩盤等級との関係を検討した。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.185-190
2012
納多勝、佐藤伸、丹生屋純夫、畑浩二、松井裕哉、見掛信一郎

長期岩盤挙動評価技術への適応性検討(その1) 浸透–応力連成解析を用いた断層部に位置する立坑の力学挙動評価

瑞浪超深地層研究所における主立坑は断層部に位置しており、その影響によって異方性の地下水流動場が確認されている。今後、裏面排水材の劣化や地下水場の変化によっては水圧による覆工応力が増加し覆工に変状が生じる可能性もある。そのため、水圧変化による影響を予測する手法について検討する必要がある。そこで、本検討では水–応力連成解析を実施し、透水性の異方性の影響について主立坑で計測されているB計測との比較を行い解析方法の妥当性の検討を行った。検討の結果、顕著な水圧依存の傾向は見られなかったものの、透水性の異方性を考慮することによって本立坑の挙動を模擬することができ、劣化手法の予測としての水–応力連成解析の適応性を確認した。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.202-207
2012
佐藤伸、納多勝、丹生屋純夫、畑浩二、松井裕哉、見掛信一郎

長期岩盤挙動評価技術への適応性検討(その2) コンプライアンス可変型モデルのパラメータ設定方法と岩盤挙動評価への適応性検討

岩盤の長期挙動の一つとしてクリープ現象があり、それを表現するモデルの一つとしてコンプライアンス可変型モデルがある。これまでの多くの岩盤クリープに関する検討は、対象とする岩質に対して一軸圧縮試験等からモデルパラメータを取得し、それを用いた2次元の解析を実施してモデルとパラメータ値の検証がなされているものが多い。そこで、本検討では主立坑建設時に実施されたパイロットボーリングの岩石コアを用いて各地質区分における一軸圧縮試験からモデルパラメータの設定を行った。さらに、同定されたパラメータを用いて3次元の掘削解析を実施して、実測値との比較を行った。検討の結果、概ね実測値を再現できパラメータの同定方法並びに解析手法の妥当性を確認した。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.208-213
2012
丹生屋純夫、松井裕哉、見掛信一郎、佐藤伸、納多勝、畑浩二

パイロットボーリング調査から設定した力学モデルの有効性検討

日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市の超深地層研究所主立坑において工学技術に関する研究開発を進めている。平成22年度の研究において、パイロットボーリング調査の有効性を確認したが、その際力学物性値の設定では、立坑深度500m施工前に実施されたパイロットボーリング(深度180m〜500m)によって得られた岩石コアの一軸圧縮強さより電研式の岩盤分類を用いて物性値を定めており、地山の亀裂や風化等の影響が十分考慮されていない可能性があった。本研究では、パイロットボーリング調査によって取得したコアを用いた室内試験、コア観察データおよび主立坑壁面観察データを用いRMRを算定し、算定したRMRより静弾性係数等の力学物性値を評価するとともに、孔内PS検層結果から評価した力学物性値と比較した。その結果、主立坑に出現している脆弱な岩盤においてもRMRのような岩盤分類手法に基づく物性値評価が可能であることが示唆された。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.214-219
2012
大津宏康、大川淳之介、竹内竜史、三枝博光、太田康貴

地盤リスクという観点からみた地質調査の意義に関する研究

本研究は、地下構造物建設プロジェクトにおける岩盤の不連続面の不確実性に起因する建設・対策工のコスト変動リスク(以下、地盤リスクと称す)に着目し、反射法弾性波探査などの地質構造を面情報として捉える地質調査、あるいはボーリング孔の観察などの点情報として捉える地質調査のそれぞれが、地盤リスク変動に及ぼす影響を事後評価の観点から定量的に評価するものである。具体的には、不連続性岩盤における立坑掘削工事事例をもとに、地盤リスクとして地下建設プロジェクトにおける突発湧水リスクをコスト次元で示すことで定量的なリスク評価を行った。その結果、地質調査を実施することにより一時的に地盤リスクは増加するが、更なる地盤情報の蓄積により地盤リスクを低減することが可能となることが示された。

第41回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.276-281
2012
鐙顕正、天野健治、小池克明、鶴田忠彦、松岡稔幸

多変量解析を用いたボーリング孔での断層の区間判定と岩盤区分 —瑞浪超深地層研究所における深層ボーリング孔での事例—

岩盤中の破砕帯を伴うような断層は、岩盤の物性や力学的・化学的特性、透水性に強い影響を及ぼすことが多く、地下の地質環境や地盤の工学的性能を評価する際の重要な要素の一つと位置付けられている。しかしながら、ボーリング孔による調査では様々な制約により、常に同じ品質や量のデータが確保できるとは限らない。また、地質条件、あるいは地質技術者の能力などの諸条件によって断層区間の評価結果が異なる可能性がある。このような評価結果の差異は深部地質環境を空間的に理解していく過程での不確実性の増大につながり、その後の調査計画立案時における適切な意思決定を難しくするだけでなく、直接的な施工のリスク要因にもなる。そのため本研究では、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所用地内における深層ボーリング調査データを用いて、使用する変数を明確な基準で選択した上で、多変量解析(主成分分析およびクラスタリング)を適用した。その結果、客観的な基準により、岩盤を高精度で区分し、断層区間を適切に判定できるようになった。これにより、一つの調査項目のみに注目した従来の解析に比べ、多種情報を一度に扱う多変量解析は有効な手法であることが実証された。

情報地質 Vol.22 No.4 pp.171-188 2011
藪内聡、國丸貴紀、岸敦康、小松満

水平坑道の掘削に伴う坑道周辺の間隙水圧・岩盤水分量モニタリング —幌延深地層研究所140m調査坑道での測定—

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発として、幌延深地層研究計画を進めている。その中で、地下施設の建設に伴う坑道掘削影響試験の一部として、水平坑道近傍を対象に坑道の掘削前から掘削後にかけて、間隙水圧および岩盤水分量のモニタリングを約1年半にわたり実施した。その結果、水平坑道の掘削時には間隙水圧、水分量ともに明瞭な低下が認められた。坑道掘削後の間隙水圧は勾配が緩やかになりながら低下し、現時点でも正の間隙水圧を示している。一方、岩盤水分量は掘削後約半年が経過した頃から増加し、およそ5ヶ月後に再び減少するという挙動を示した。地下水中の溶存ガスの脱ガスが偏在的に生じている状況を考慮すると、坑道周辺では不均質な不飽和領域が形成されていると推察される。

土木学会論文集C Vol.67 No.4 pp.464-473 2011
小松満、西垣誠、瀬尾昭治、戸井田克、田岸宏孝、竹延千良、山本陽一

原位置土中水分計測による浅地層における降雨浸透量の評価方法

放射性廃棄物地層処分等の大深度地下空間開発において、大局的な地下水流動挙動を定量的に評価することが重要であるが、飽和・不飽和浸透解析においては、水理地質構造モデルの構築とともに境界条件の設定が重要である。具体的には、上部境界条件として必要となる地下水涵養量であり、タンクモデル等を用いた予測手法はいくつか提案されているが、実際にこれらを利用する際には不確実性を多く含むことから、対象領域において土壌に浸透した水分量から定量化する手法が有効であると考えられる。そこで、浅層における土中への浸透量を直接的に計測する手法として、現地水分量の計測結果から直接浸透量を算定する手法と、さらに不飽和透水係数の値から浸透量を推定する両手法について検討した。これらの手法により降雨浸透量を試算したところ、従来の水収支法による算定結果と比較的近い結果が得られた。さらに、今後の現地水分量計測の課題についてまとめた。

地下水地盤環境に関するシンポジウム2011 発表論文集 pp.17-26 2011
笹尾英嗣、檀原徹、岩野英樹、林譲治

岐阜県南東部に分布する中新統瑞浪層群および岩村層群のフィッション・トラック年代

東濃ウラン鉱床では、様々な地質学的事象を被りつつも長期間にわたってウラン系列核種が保持されてきている。このような天然の事例を活用し、地質学的な変動帯に位置する我が国の地質環境中における核種の保持・移行挙動についての理解を深めることは、地層処分の安全性に対する信頼性をさらに向上させる上で有益である。このためには、ウラン鉱床においてどのような地質事象が起こったか、そしてその地質事象が核種の移行・保持にどのような影響を及ぼしたかを明らかにする必要がある。東濃ウラン鉱床を胚胎する中新統瑞浪層群の堆積年代は、従来、層序学的・古生物学的研究に基づいて推定されてきたのみであり、個々の地質事象の発生時期の特定が困難であった。そこで瑞浪層群と瑞浪層群に隣接して分布する岩村層群に挟まれる凝灰岩中のジルコンを用いたフィッション・トラック年代測定を行った。その結果、瑞浪層群の堆積年代は20–15Maであると推定されるとともに、瑞浪層群を構成する各層の堆積年代が明らかになった。岩村層群についても年代測定結果に基づいて各層の堆積年代が推定された。なお、岩村層群においては年代測定値として初めての報告である。

地質学雑誌 第117巻 第8号 pp.476-481 2011
横田秀晴、山本陽一、前川恵輔

北海道幌延地域における地下水位と地質構造に基づく浅部地下水流動に関する検討

高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全性評価には、物質移動を規定する浅部から深部までの地下水流動特性の把握が必要とされる。原子力機構は、北海道幌延地域で浅部地下水流動系把握のための表層水理調査・研究を行っている。浅層ボーリング孔を用いた地下水位観測結果等から地下浅部の地下水位分布や地表から地下浅部への水の浸透を検討した結果、地下施設建設が周辺の地下水位に影響を及ぼしていないこと、積雪期にも地表から水の浸透が生じていること、大曲断層に沿って地表から地下への水の浸透が生じていることが明らかとなった。今後、土壌水分計等による観測結果等と併せて、地下への水の浸透・涵養を定量的に評価する必要がある。

地下水学会誌 Vol.53 No.2 pp.193-206 2011

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
E. Ishii

Microstructure and origin of faults siliceous mudstone at the Horonobe Underground Research Laboratory site, Japan

幌延地域の珪質泥岩に発達する断層の起源を露頭観察より検討した。露頭では断層沿いや断層の端部に非常に薄いシアバンドが確認された。それらの断層は延性変形によりシアバンドが形成された後、そのバンド沿いにすべり面が形成されることにより形成されたことが示唆される。

Journal of Structural Geology Vol.34 pp.20-29 2012
S. Takeuchi, R. Takeuchi, N. Toya and S. Daimaru

Study on Connectivity of Water-conducting Features in a Fractured Rock Based on the Fluid logging and Hydraulic Packer Testing

亀裂性岩盤中の水みちの連結性を推定する調査解析手法を構築した。初めに水みち(WCF)を高い解像度で検出する上で最も効果的な手法の一つである流体電気伝導度検層(FFEC)を実施した。次に検出された水みちを対象に水理試験(HT)を実施した。この結果に基づいて圧力変化の時間微分に基づく透水量係数換算値であるTNP(Transmissivity Normalized Plot)で整理した。このTNPは透水量係数の時間変化とみなすことが可能である。上記の一連の手法をボーリング孔の複数の破砕帯を対象に実施した。その結果、多くの水みちのTNPは破砕帯全体のTNPとほぼ一致した。また、水みち毎の水質データについても概ね一致している。 以上により、FFECに基づいて抽出された水みちを対象に実施した水理試験結果を基にTNPで整理する方法は、水みちの連結性を評価する上で有効なツールであると結論する。

Global 2011 Chiba (Japan)
Proceedings of GLOBAL 2011 (CD-ROM) Paper No.359259(abstract) Full-paper No.500780
2011
K. Tsusaka, D. Inagaki, M. Koike, Y. Ijiri and Y. Hatsuyama

A study on mechanical behaviors of concrete lining and rock caused by shaft sinking at the Horonobe underground research laboratory

幌延深地層研究所では、3本の立坑を深度500mまで順次掘削しており、2010年末には、換気立坑(内径4.5m)と東立坑(内径6.5m)を深度250mまで掘削した。先行する換気立坑の施工において、ショートステップ工法の施工手順を詳細に再現した三次元逐次掘削解析を実施し、覆工コンクリート内に大きな応力勾配が生じることが算出された。このため、後進する東立坑の深度220m付近にて、立坑掘削に伴って生じる覆工コンクリート内の円周方向応力分布と立坑壁面周辺岩盤の変形を、三次元逐次掘削解析と併せて現場計測にて評価した。一般的な覆工コンクリート応力の計測手法では、高さ2mの覆工コンクリートのほぼ中央かつ同一水平面内に応力計を配置するが、今回は、初期地圧の主応力方向の縦断面内に各5個の応力計を配置し、同コンクリート内の三次元応力分布を計測した。また、立坑壁面周辺岩盤の挙動を、長さ6mの地中変位計によって計測した。その結果、厚さ60cm、高さ2mのリング形状の覆工コンクリート内の応力分布にて、その最大値と最小値の生じる箇所や、その応力差が10MPa以上と顕著であること、さらに、地中変位計の計測結果により、覆工コンクリートを構築した後には、立坑壁面近傍の岩盤に圧縮ひずみが分布することが明らかとなった。

12th ISRM International Congress on Rock Mechanics Beijing (China)
Harmonising Rock Engineering and the Environment pp.305-308
2011
K. Tsusaka, Y. Sugita, D. Inagaki, M. Nakayama, S. Yabuuchi, H. Yokota and T. Tokiwa

Investigation of rock mechanics at Horonobe Underground Research Laboratory — Present status and Future plan —

原子力機構は、堆積岩を対象とした地層処分技術の信頼性を向上させるために、2001年より、北海道北部の幌延町にて、幌延深地層研究計画を実施している。この研究計画は、第1段階「地上からの調査研究段階」、第2段階「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階」、第3段階「地下施設での調査研究段階」の3つの段階からなり、全体で約20年を予定している。岩盤力学および工学分野の調査においては、第1段階では、地下施設の建設対象となる岩盤の物理・力学・水理・熱などの特性に関する基礎データと地下施設エリア周辺の地圧の空間分布を把握する。第2段階では、地下施設の建設を行いながら、第1段階の結果の妥当性の評価と坑道掘削に伴う掘削影響領域の程度や発達機構を調査する。第3段階では、坑道内に定置された人工バリアの周辺岩盤や掘削影響領域の長期的な挙動の調査を行う。本紙面では、これまでに得られた第1および第2段階の結果と今後350m坑道にて実施する調査研究計画を述べた。

12th ISRM International Congress on Rock Mechanics Beijing (China) 2011
E. Ishii, H. Sanada, H. Funaki, Y. Sugita and H. Kurikami

The relationships among brittleness, deformation behavior, and transport properties in mudstones: An example from the Horonobe Underground Research Laboratory, Japan

幌延深地層研究センター周辺に分布する泥岩の脆性度、変形挙動および移行特性の関係を明らかにするために、BRIという概念を用いて地質学的・岩盤力学的・水理学的データを総合的に解釈した。BRIという概念は、本泥岩のようなシリカ続成により硬化した岩石に対して適用可能である。検討の結果、本泥岩は天然の歪速度および低温条件下において、BRIが概ね2以下の場合は延性変形が生じ、概ね2から8の場合は脆性変形もしくは延性変形が生じ、概ね8以上の場合は脆性変形が生じることが分かった。但し、脆性変形領域と延性変形領域の境界付近には准脆性変形領域も存在する。また、BRIが概ね8以上の場合は、断層が発達すると水理学的には亀裂性媒体として振舞うようになるが、概ね8以下の場合は、例え断層が発達したとしても水理学的には多孔質媒体として取り扱いができると考えられた。

Journal of Geophysical Research Solid Earth Vol.116 B09206 2011
H. Onoe, R. Takeuchi, H. Saegusa, S. Daimaru and T. Karino

Interpretation of Hydrogeological Characteristics based on Data from Long-Term Cross-Hole Pumping Test

結晶質岩中の地下水流動特性は、断層の分布やその特性によって不均質を有する。そのような水理学的な不均質性の不確実性は、高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価に影響を及ぼす要因の1つであることから、断層の水理特性および物質移行特性の評価は重要な調査項目と考えられる。 研究対象領域に分布する主要な断層の水理学的特性の評価を目的として、長期揚水試験を実施した。揚水試験の結果、断層の両側に位置する水圧観測孔では、大きく異なる水圧応答が観測された。水圧観測孔における水圧応答からは、水理学的なコンパートメント構造を含む既存の地下水流動の概念モデルの妥当性が確認されたとともに、新たな水理学的コンパートメント構造の存在の可能性が示唆された。
本研究によって、長期揚水試験が不均質な亀裂性岩盤の水理特性を評価するための有効な調査手法であることが示された。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43560 (CD-ROM)
2011
H. Kurikami, T. Niizato and K. Yasue

A STUDY ON TIMEFRAME DEFINITION AND REFERENCE EVOLUTION OF THE GEOLOGICAL SYSTEM FOR THE SAFETY ASSESSMENT — CASE STUDY ON THE HORONOBE URL SITE —

システム変遷の記述は安全戦略・調査戦略において重要なタスクのひとつである。本論は安全機能とFEPsを軸としたシステム変遷記述手法およびその幌延への適用性について示したものである。SDMおよび新たに構築した幌延FEPsに基づき、重要な事象・特徴を、主要な安全機能とともに時間ラインに設定した。それら事象や特徴に応じ、熱・再冠水期間、地質安定期間、地質環境変遷期間を定義した。地質安定期間においては、稚内層深部の遅延・希釈機能が重要であることから、核種移行シナリオに基づき移流、分散、収着を評価することが重要である。一方、地質環境変遷期間においては、隆起・侵食が重要な事象である。それゆえ、隆起・侵食およびそれに起因する熱、水、応力、化学現象をレファレンスに含めた。適用および議論を通して、手法、FEPs、安全機能の時間フレームを若干の修正を行うことで他の地点へも適用可能であることがわかった。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43731 (CD-ROM)
2011
H. Sato, Y. Sugita and M. Nakayama

STATUS OF THE HORONOBE UNDERGROUND RESEARCH LABORATORY PROJECT, HOKKAIDO, JAPAN, AND FUTURE PLAN

幌延深地層研究計画は、オフサイトの地下研究施設として、堆積岩(泥岩)と塩水系地下水を対象とし、2001年から北海道北部の幌延町で実施している。全体で20年程度の計画であり、3段階(地表、坑道掘削時及び坑道に於ける調査研究段階)に分けて進めている。第1段階は2005年度に終了し、2005年11月から第2段階を開始した。地下施設は、換気立坑と2本のアクセス立坑(東及び西)の他、複数の水平坑道(深度140m、250m、350m、500m)から構成される。2010年度の前半までに、換気と東立坑を深度250mまで掘削し、深度140mの水平坑道が完成した。また、深度250mの水平坑道が換気と東立坑間で貫通した。地下施設周辺の地層は、主に声問層(上層)と稚内層(下層)で構成される。これまでに、深度140mの水平坑道では、地質環境や工学技術に関する原位置試験やモニタリング、例えば、掘削影響(EDZ⁄EdZ)に関する測定(弾性波トモグラフィーなど)、孔間水理試験、地圧測定、低アルカリ性コンクリートの吹付け施工試験などを実施した。現在、地下水化学のモニタリング、EDZ⁄EdZに関する測定、水–岩石–微生物系での酸化還元能に関する原位置試験などを実施している。第2段階と並行して、2010年度の後半からは第3段階を開始した。第3段階の研究では、様々な原位置試験を計画している。本論文では、原位置試験の現状と得られた成果に加えて、第3段階での計画について述べる。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43903 (CD-ROM)
2011
T. Kunimaru, R. Takeuchi and T. Matsuzaki

Technical Know-How of Selection Process for the Horonobe Underground Research Laboratory Area and Site

幌延深地層研究計画では、既存情報に基づき研究所設置場所選定の要件として、地質環境特性(技術要件)と地下施設を安全に建設できること(安全要件)を設定し、既存情報や地上からの地質環境特性調査により取得した情報に基づき、これらの要件について適合性を確認した。さらに、これらの技術要件と安全要件に加え、土地利用やインフラストラクチャーなどの社会的条件を考慮して、段階的に絞り込みながら幌延町全域から研究所設置場所を設定した。このように、段階的に技術要件、安全要件及び社会的条件を考慮して、研究所設置地区及び研究所設置場所を設定するプロセスは、実際の地層処分事業においても有効であると考えられる。本件では、このような考え方を整理するとともに、意思決定過程を分析・整理し、エキスパートシステム(ES)を構築した結果について報告する。

14th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2011) Reims (France)
Proceedings of ICEM2011-59088 pp.1185-1194
2011
H. Saegusa, T. Niizato, K. Yasue, H. Onoe and R. Doke

Technical Know-How of Site Descriptive Modeling for Site Characterization

地質環境モデルの不確実性を評価すること、及び不確実性に対する影響因子を抽出するとともに、その重要度を評価することは、調査計画を策定する上で重要である。地層処分の観点からは、地質環境モデルとしては、現時点の地質環境を対象としたものと、地質環境の長期変化を考慮したものの両者がある。この地質環境モデルを構築する上では、多くの技術的ノウハウが存在し、技術基盤整備の点からは、それらを保管・管理することが必要となる。本研究では、瑞浪における超深地層研究所計画や幌延深地層研究所計画での経験に基づき、既存情報収集から地質環境モデルの構築、調査計画立案までの包括的フローを構築するとともに、地質環境モデル構築に関する作業フローや技術的ノウハウなどについて取りまとめた。

14th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2011) Reims (France)
Proceedings of ICEM2011-59089 pp.1451-1460
2011
R. Doke, K. Yasue, T. Niizato and A. Nakayasu

Technical Know-How for the Investigation and Modelling of Topographic Evolution for Site Characterisation

「次世代型サイト特性調査情報統合システム(ISIS)」における判断支援エキスパートシステム開発の一環として、時間変化を含む地質環境モデルの構築に係る経験的な知識の抽出・整理を行った。特に、他のモデルへの基本的な入力情報となる地形発達過程のモデル化とそれに関連する調査に焦点を当て、モデルの構築及び調査の実施における作業手順を整理したタスクフローと意思決定プロセスのフローダイアグラムの作成を行った。

14th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2011) Reims (France)
Proceedings of ICEM2011-59171 pp.1467-1476
2011
K. Amano, T. Niizato, K. Ota, B. Lanyon and W. R. Alexander

Development of Comprehensive Techniques for Coastal Site Characterisation: Integrated Palaeohydrogeological Approach for Development of Site Evolution Models

地層処分システムの長期的な安全性の評価においては、地質環境の有する安全機能が長期にわたり維持されることを示すための解析結果や論拠の整備が不可欠である。このためには、まず対象とする地質環境特性の過去から現在に至る変遷の評価が重要であり、その結果に基づき、将来にわたる地質環境特性の変遷を考慮した安全機能の維持や両者の関係性が評価される。わが国においては、とくに地形変化や気候・海水準変動に伴う沿岸域の地質環境特性の長期変遷の評価が重要であり、このための総合的な調査・評価技術の整備が課題となっている。原子力機構では、沿岸域における地質環境特性の長期変遷をモデル化する手法の開発を目的として、北海道幌延町の沿岸域を事例として過去数百万年前から現在までの地史に基づいた古水理地質環境の概念モデルを構築し、長期の地下水流動解析に必要な地質環境特性やプロセスを抽出するとともに、初期条件や境界条件の範囲を適切に設定するための方法論を整備した。

14th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2011) Reims (France)
Proceedings of ICEM2011-59259 pp.1477-1481
2011
E. Ishii, H. Sanada, T. Iwatsuki, Y. Sugita and H. Kurikami

Mechanical strength of the transition zone at the boundary between opal–A and opal–CT zones in siliceous rocks

塊状の珪質泥岩(オパールCTゾーン)の珪藻質泥岩(オパールAゾーン)との境界付近に、高い一軸圧縮強度を示す部分が認められた。その硬質部に関して、全化学組成はとりわけシリカの付加的なセメント作用や鉱物組成の違いを示さない。一方、硬質部はオパールAとオパールCTが共存する遷移帯に対応している。電子顕微鏡(SEM画像)は、遷移帯において、珪藻から構成される既存の骨格の空隙に微細なオパールCTが沈殿していることを示す。一方、遷移帯の下位では、そのような骨格は珪藻よりも細粒で球状なオパールCTの集積によって再構築されていることを示す。おそらく、硬質部はオパールAとオパールCTの共存によってより強固な骨格/セメント硬化がもたらされたことにより形成されたものと考えられる。遷移帯は一般的に強固に、そして脆性的になりやすく、岩石が変形を受けている場合は、地下水流動に対して大きな影響力を持ちえる。

Engineering Geology Vol.122 No.3-4 pp.215-221 2011
T. Yuguchi, T. Tsuruta and T. Nishiyama

Three-dimensional cooling pattern of a granitic pluton II: The study of deuteric sub-solidus reactions in the Toki granite, Central Japan.

本論文は、西南日本内帯の中部地方に位置する土岐花崗岩体の冷却過程を、岩体内でのサブソリダス組織の発達の程度を通して明らかにした。サブソリダス反応組織とは、結晶化が完結する温度(ソリダス)以下での物質移動により形成される組織であり、花崗岩体のソリダス温度以下での冷却過程の指標となる組織である。土岐花崗岩体中のサブソリダス組織は2つの温度ステージ(離溶期、熱水期)があること、それぞれの温度条件は地質温度計を用いることにより離溶期が780-690℃、熱水期は500℃以下であることを明らかにした。熱水期に形成されるサブソリダス組織(パッチパーサイト、ミルメカイトおよび反応縁)の発達の程度は、標高が下がるにつれ増大することに加えて、水平方向の変化についても西側縁からの系統的に増大する傾向が認められる。これは、土岐花崗岩体が熱水期において天井部境界と西側壁部境界からの系統的に冷却することを意味する。

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.106 No.3 pp.130-141 2011
H. Matsui, M. Noda and J. Nobuto

Status of the Mizunami URL construction and study on engineering technology

原子力機構は岐阜県瑞浪市および北海道幌延町の結晶質岩、堆積岩を対象とした2つの深地層の研究施設で地質環境調査や深地層の工学技術の研究開発を行っている。このうち、瑞浪にて実施しているプロジェクト(超深地層研究所計画)では、主に結晶質岩を対象とした研究開発を進めている。瑞浪超深地層研究所は2つの立坑、水平坑道およびボーリング横坑から構成され、掘削深度は、2010年11月時点で460mに達している。工学技術の開発は、設計施工技術、掘削技術、施工対策技術および安全を確保する技術の有効性確認という4つの課題を設定して進めている。設計施工技術については、掘削中の岩盤分類および掘削ずりを用いた一軸圧縮試験結果と設計時の岩盤モデルとの比較を通じ、予測の妥当性を確認しかつ、断層に遭遇した主立坑ではパイロットボーリング調査の有効性を示した。掘削技術では、ショートステップ工法の有効性やスムースブラスティング工法の適用性を示すとともに、施工対策技術ではグラウチングにより数十Luから1Lu程度までの岩盤の透水性の改良が可能であることを示した。

ITA-AITES World Tunnel Congress 2011 Helsinki (Finland)
Proceeding of ITA-AITES World Tunnel Congress pp.1248-1255
2011
T. Yuguchi, T. Tsuruta and T. Nishiyama

Three-dimensional cooling pattern of a granitic pluton I: The study of exsolution sub-solidus reactions in the Toki granite, Central Japan.

本論文は、西南日本内帯の中部地方に位置する土岐花崗岩体の冷却過程を、岩体内でのサブソリダス組織の発達の程度を通して明らかにした。サブソリダス反応組織とは、結晶化が完結する温度(ソリダス)以下での物質移動により形成される組織であり、花崗岩体のソリダス温度以下での冷却過程の指標となる組織である。土岐花崗岩体中のサブソリダス組織は2つの温度ステージ(離溶期、熱水期)があること、それぞれの温度条件は地質温度計を用いることにより離溶期が780-690℃、熱水期は500℃以下であることを明らかにした。離溶期に形成されるサブソリダス組織の発達の程度は、標高が下がるにつれ増大する傾向にある。これは離溶期における土岐花崗岩体の天井部境界からの鉛直方向の系統的な冷却を示す。熱水期に形成されるサブソリダス組織の発達の程度は、標高が下がるにつれ増大することに加えて、水平方向の変化についても西側縁からの系統的な増大する傾向が認められる。これは、土岐花崗岩体が熱水期において天井部境界と西側壁部境界からの系統的に冷却することを意味する。

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.106 No.2 pp.61-78 2011
T. Tokiwa, K. Tsusaka, E. Ishii, H. Sanada, E. Tominaga, Y. Hatsuyama and H. Funaki

Influence of a fault system on rock mass response to shaft excavation in soft sedimentary rock, Horonobe area, northern Japan

原子力機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発として、幌延地域において地下施設を用いた幌延深地層研究計画を進めており、現在換気立坑と東立坑の坑道掘削を行っている。プレート運動と初期地圧から推定される本地域の現在の応力場はEW方向であるのに対して、立坑の収縮は、NNE-SSW方向であり両者は異なる。一方、断層系を形成させた水平面での応力場は、最大圧縮がNNE-SSW方向、最小圧縮がWNW-ESE方向であり、それぞれ立坑の最大収縮方向と最小収縮方向と一致する。通常、断層系などの不連続面は、堆積軟岩の岩盤挙動を把握する上で重要とされていない。しかし、本研究の結果は、立坑掘削に伴う堆積軟岩の岩盤挙動は、断層系が大きく影響を与えており、現在の応力場が異なっていても、断層系を使って岩盤挙動が生じていることを示唆する。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.48 No.5 pp.773-781 2011
T. Yuguchi, K. Amano, T. Tsuruta, T. Danhara and T. Nishiyama

Thermochronology and the three-dimensional cooling pattern of a granitic pluton: an example from the Toki granite, Central Japan

花崗岩体の冷却過程の知見を得ることは、地殻の進化を考える上で非常に重要な課題である。また応用地質学的観点における花崗岩体中の割れ目の分布特性を理解する上でも重要な視点となる。なぜなら冷却に伴う応力は割れ目分布に影響を与えると考えられているためである。
本紙は、中部日本に位置する土岐花崗岩体の3次元的な冷却パターンを、閉鎖温度の異なる鉱物の年代測定を通して明らかにした。土岐花崗岩体は以下の年代値を有する:ホルンブレンドK-Ar年代74.3±3.7Ma(閉鎖温度510±25℃;n=2)、黒雲母K-Ar年代78.5±3.9〜59.7±1.5Ma(300±50℃;n=33)、ジルコン・フィッショントラック年代75.6±3.3〜51.9±2.6 Ma(240±50℃;n=44)、カリ長石K-Ar年代70.8±3.5〜57.7±1.3 Ma(150±20℃;n=21)。これらの黒雲母K-Ar年代とジルコン・フィッショントラック年代をサンプリング地点(11本のボーリングコアと7つの露頭)に3次元的にプロットおよび空間補完することで、岩体内の年代値の空間分布を得た。この結果、黒雲母K-Ar年代とジルコン・フィッショントラック年代の年代値の分布は類似したパターンを持つことを明らかにした。この年代値の分布は、それぞれの鉱物の閉鎖温度当時においての、岩体内の冷却パターンと読み替えることができる。このことは、黒雲母K-Ar年代とジルコン・フィッショントラック年代の閉鎖温度がある300℃から240℃の間に、土岐花崗岩体は天井部および西側境界部からの冷却を被ったことを示す。

Contributions to Mineralogy and Petrology Vol.162 No.5 pp.1063-1077 2011

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
安江健一、田力正好、谷川晋一、須貝俊彦、山田浩二、梅田浩司

第四紀後期における内陸部の隆起量の推定手法:鏑川流域および土岐川流域を例に

内陸部の隆起速度は、氷期に形成された2つの時代の河成段丘(2万年前および14.5万年前)の比高によって推定するTT法が良く用いられる。今回、TT法を用いた研究事例のレビューを行うとともに、河成段丘の形成年代を決定する際の問題点を整理した。また、鏑川と土岐川周辺の事例研究を通じて、1)フラッドローム層による離水層準の同定、2)植物珪酸体による気候(氷期)の推定、3)物理探査等による埋没谷底の位置の推定を行うことにより、河成段丘の形成年代が高い精度で決定できるとともに、TT法による隆起速度の評価に係る信頼性が大幅に向上することを示した。

原子力バックエンド研究 Vol.18 No.2 pp.51-62 2011
中村千怜、安江健一、石丸恒存、梅田浩司、古澤明

緑色普通角閃石中のガラス包有物の主成分化学組成を用いた広域テフラの対比:阪手テフラを例として

阪手テフラは、近畿・北陸地方のK–Ah、AT間の堆積物中に普通角閃石・カミングトン閃石が含まれるという特徴で識別されてきた。また、両斑晶の屈折率などで識別精度を向上させているが、十分な岩石記載により対比されているとは言いがたく、給源も明確に議論されていない。テフラ層に含まれる斑晶のガラス包有物の主成分を分析することで阪手テフラと同定できれば、同テフラの識別精度が飛躍的に向上する。本研究では、阪手テフラとされた各々のテフラ、及び給源と目される三瓶浮布テフラについて詳細な岩石記載を行った。結果、個々の地点における岩石記載からそれぞれのテフラが対比でき、かつ給源を明らかにすることができた。特に、薄層・風化した阪手テフラの普通角閃石中のガラス包有物の主成分が、同テフラの同定に極めて有効であることが明らかになった。

地質学雑誌 第117巻 第9号 pp.495-507 2011
根木健之、梅田浩司、松尾公一、浅森浩一、横井浩一、大原英史

MT法スペクトルデータの効率的且つ効果的な編集方法 —実データによる検証—

広帯域MT法探査では、1Hz以下の地球磁場変動を信号源とする周波数領域において、人工ノイズが多く含まれる関東以西で高品質なデータを取得するためには、長期間に渡る観測が必要となる。また、人工ノイズにはコヒーレントなものが多く、信号との区別が付き難い。さらに長期間に渡る観測データから、これらを効率的に排除することは難しい。本稿では、根木ら(2009)にて提案したMT法スペクトル・データの加重スタッキング方法について、その実データに対する適用性を検証した。使用した実データはコヒーレントなノイズが卓越する能登半島北部から中部にかけての4測点である。本地域では、直流電車の漏洩電流による人工ノイズが卓越しているが、深夜は比較的静穏であるため、信号スペクトルによる真の測定値を推定しやすい。これらの測点において取得されたデータに対し、本加重スタッキング方法を適用した結果、人工ノイズが卓越している時間帯のデータの影響を極力低減することができた。以上より、本方法を用いることにより、従来の調査技術者による編集作業と比して、十分に効率的且つ効果的な編集作業が可能となるものと考えられた。

物理探査 第64巻 第2号 pp.153-165 2011
Y. Niwa, T. Sugai, K. Yasue and Y. Kokubu

Tectonic Tilting and Coseismic Subsidence along the Yoro Fault System Revealed from Upper Holocene Sequence in the Nobi Plain, Central Japan

養老断層下盤側濃尾平野で掘削された24の浅層コアデータの解析によって、河道の西方への移動と一時的な相対的海水準上昇が起こった可能性が示された。コア堆積物はデルタシステムとそれを覆う河川システムからなる。北部の氾濫原地域の堆積相の累重パターンと14C年代から、約2300年前に河道の西方への移動が起こった可能性が示された。南部の三角州平野地域では後背湿地堆積物中に高電気伝導度、汽水〜海水生珪藻の産出が認められ、1600〜2700年前に一時的な相対的海水準上昇が起こった可能性を示す。河道の西方への移動と一時的な相対的海水準の上昇は同時性が認められ、これらのイベントの原因として(1)養老断層の活動による傾動沈降、(2)中世の海進、の2つの可能性が挙げられる。沿岸域の断層周辺の浅層コアの堆積相解析と年代測定によって、断層運動と海水準変動の複合的な地殻変動を精度良く把握できることが明らかになった。

地形 第32巻 第2号 pp.201-206 2011

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Yamada, T. Hanamuro, T. Tagami, K. Shimada, H. Takagi, R. Yamada and K. Umeda

The first (U–Th)⁄He thermochronology of pseudotachylyte from the Median Tectonic Line, southwest Japan

断層起源シュードタキライトは過去の地震活動によって生じた脈状岩石であり、その熱史は断層の活動性の時間変化を反映している。三重県多気地域から得られ た領家花崗岩中のシュードタキライトの熱史を明らかにするため(U–Th)⁄He年代測定を行った結果、シュードタキライトと約10cm近傍の原岩からそれぞれ60.3± 2.7、55.5±4.5 (1SE) Maを得た。これらは本地域の冷却史を示すとともに、既に得られたシュードタキライトのFT年代と一致することからシュードタキライト生 成時の環境温度が180℃程度であったことが放射年代学的に明らかになった。この温度は鉱物学的に推定された値とも矛盾しない。これらの研究成果は熱年代学的アプローチによる断層岩の解析によりその活動性の評価が可能となることを示唆する。

Journal of Asian Earth Sciences Vol.45 No.2 pp.17-23 2012
K. Umeda and M. Ban

Quaternary volcanism along the volcanic front in Northeast Japan

東北日本の火山フロント付近の火山からのマグマ噴出量および年代のコンパイルを行い、過去200万年間の島弧スケールでの火山活動の特徴を明らかにした。その結果、約1Ma(現在から100万年前頃)を境に、1)噴火様式の変化(カルデラを伴う噴火→成層火山を伴う噴火)、2)マグマ噴出量の増大(0.19km3⁄ky→0.64km3⁄ky)、3)マグマ化学組成の変化(ソレアイト系列→カルクアルカリ系列)が認められる。また、火山フロント付近の断層運動の開始も約1Ma頃であり、逆断層の発達により第四紀火山の基盤となる脊梁山地も急速に隆起した。なお、今回の解析にあたっては第2次取りまとめの際に作成した第四紀火山カタログのデータを使用した。

Updates in Volcanology - A Comprehensive Approach to Volcanological Problems pp.53-70 2012
T. Niizato, H. Imai, K. Maekawa, K. Yasue, H. Kurikami, I. Shiozaki and R. Yamashita

DEVELOPMENT OF A METHODOLOGY FOR THE CHARACTERISATION OF THE LONG-TERM GEOSPHERE EVOLUTION (1)IMPACTS OF NATURAL EVENTS AND PROCESSES ON THE GEOSPHERE EVOLUTION OF COASTAL SETTING, IN THE CASE OF HORONOBE AREA

地層処分システムの長期的な安全性に係る信頼性を向上させるためには、地質環境の有する安全機能が長期にわたり維持されることを示すための調査・解析手法や事例・論拠の整備が不可欠である。このためには、対象とする地質環境特性の過去から現在に至る変遷の評価が重要である。特に日本列島の沿岸域における地質環境の長期変遷については地層処分の観点からの研究例が少なく、長期的な海水準変動の影響や塩水と淡水の混在など複数の事象を考慮する必要がある。本研究では、北海道北部の幌延地域を事例として地下水流動特性の長期変遷に関する概念モデルを構築し、それに基づく浸透流及び移流分散解析を実施した。その結果、海水準や海岸線位置の変動等の境界条件の変化に対して、全水頭やダルシー流速等の地下水流動特性は応答性が高いものの、地下水中の物質移動を間接的に示す塩分濃度は応答性が低く、これらの応答性は地層・岩盤の透水性に依存することが明らかとなった。また、沿岸域における地下水流動特性と地下水の地球化学特性は、沿岸域の平野部と丘陵部とで異なる変遷を経る可能性を示すことができた。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43163 (CD-ROM)
2011
H. Kosaka, H. Saegusa, K. Yasue, T. Kusano and H. Onoe

DEVELOPMENT OF A METHODOLOGY FOR THE CHARACTERISATION OF THE LONG-TERM GEOSPHERE EVOLUTION (2)ESTIMATION OF THE LONG-TERM EVOLUTION OF GROUNDWATER FLOW CONDITIONS IN A TONO AREA CASE STUDY

原子力機構では、東濃地域を事例として、演繹法・帰納法に基づくアプローチを適用した地下水流動特性の長期変遷の推定に関する方法論の開発を進めている。演繹法に基づくアプローチを用いた研究では、地形変化に関する物理モデルと地下水流動解析を組み合わせた手法は、地形・気候変化に伴う将来の地下水流動特性の変化の推定に適用できることを確認した。また、演繹法に基づくアプローチを用いた研究では、幾つかの空間・時間スケールを対象とした古水理地質学的研究を実施した。このうち、広範囲を対象領域とした研究では、長期的な地形変化に伴う地下水流動特性の変化を推定するための方法として、まず広範囲を対象とした粗い精度の古地形の推定と地下水流動解析により、現地調査を含むサイト特性評価を効率的に実施する領域を選定することを提案した。これらの研究を通して、演繹法・帰納法に基づくアプローチは、地下水流動特性の長期変遷の推定に有効であることを確認した。

19th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-19) Suita (Japan)
Proceedings of ICONE19-43567 (CD-ROM)
2011
K. Asamori, K. Umeda, A. Ninomiya and T. Negi

Manifestations of upwelling mantle flow on the Earth’s surface

東北日本の背弧側に位置する朝日山地は左沢−長井断層の活動に伴う逆断層地塊であり、第四紀に1400m以上の著しい隆起が生じたと推定されている。しかしながら、これらの活断層の近傍よりも10km以上西方に山地の稜線が続いており、この隆起を単純な逆断層運動および地塊傾動によって説明することはできない。本研究では朝日山地の隆起のメカニズムを解明するため、地磁気・地電流法による地殻からマントル最上部までの比抵抗構造および山地周辺における温泉ガスの希ガス同位体の特徴を明らかにした。その結果、山地の稜線の直下における下部地殻からマントル最上部にかけて顕著な低比抵抗体が存在すること、温泉ガスのヘリウム同位体比が東北日本における活火山の火山ガスと同程度であることから、朝日山地の直下には溶融体が存在し、その熱による局所的な非弾性変形によって山地が隆起していることが示唆された。従来より、山地の隆起のタイプは、1)褶曲断層山脈型、2)逆断層地塊型、3)横ずれ断層地塊型、4)曲隆山地型に区分されているが、日本列島のような島弧では、火成活動に伴う非弾性型の山地が存在することが新たに明らかになった。

The Earth’s Core: Structure, Properties and Dynamics pp79-94(Chapter 4) 2011
M. Niwa, H. Kurosawa, K. Shimada, T. Ishimaru and H. Kosaka

Identification of Pathways for Hydrogen Gas Migration in Fault Zones with a Discontinuous, Heterogeneous Permeability Structure and the Relationship to Particle Size Distribution of Fault Materials

地層処分の安全性を確保するためには、活断層からの適切な離間距離を設定することが重要な課題となる。断層破砕帯の力学的・水理学的影響を把握するための定量的な指標として、断層破砕帯から放出される水素ガスに着目し、これらの放出量と破砕物質の粒度組成の相関について検討した。その結果、水素ガス原位置測定結果は、粘土で充填された断層コアよりも、クラックの多いダメージゾーンの方が水素ガスの移行経路になりやすいことを示し、粒度分析の結果は、水素ガス濃度の高い花崗岩カタクレーサイトで細粒物質の割合が高くなることを示した。これらは、花崗岩カタクレーサイトでは粒子同士の粘着性が低く、細粒に分解されやすい、すなわち、流体の移行経路になるような微小割れ目・弱面が非常に多いことを示唆している。

Pure and Applied Geophysics Vol.168 No.5 pp.887-900 2011
M. Niwa, H. Kurosawa and T. Ishimaru

Spatial distribution and characteristics of fracture zones near a long-lived active fault: a field-based study for understanding changes in underground environment caused by long-term fault activities

断層活動に伴う破砕帯の形成は、周辺岩盤の物性や水理特性に変化を及ぼすことが考えられる。したがって、地層処分の観点からは、破砕帯の水理特性や力学特性に係る科学的知見は処分施設と活断層との離間距離を考える上で重要となる。本研究では、破砕帯の発達過程や性状を明らかにするため、岐阜県の跡津川断層を事例対象とし、断層周辺地域の破砕帯の分布、断層ガウジの幅などを調査するとともに、断層トレースからの距離ごとにその特徴を明らかにした。その結果、跡津川断層近傍(断層トレースから両側500mの範囲内)に幅2m以上の破砕帯が集中していること、及びより新しい断層活動に伴う破砕帯の発達は、古い破砕帯に沿って起こる傾向があること等が明らかとなった。

Engineering Geology Vol.119 No.1-2 pp.31-50 2011

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