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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成22年度分)

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全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
大澤英昭

安全性の論理構造を用いた地層処分分野の知識マネジメント手法の構築

従来から、原子力分野をはじめとする工学プラントの安全性の向上のため、マニュアル、失敗事例集や失敗事例の知識の構造化、危険予知活動といった様々な取り組みが行われてきているが、知識量の増大や急速な科学技術進歩とその応用過程の複雑化にともない、知識が体系化されず放置されているという問題が指摘されている。1970年代より国際的に活発な研究開発が進められるようになった高レベル放射性廃棄物の地層処分においても、時間の経過に伴い共通の問題が存在し、こうした知識をいかに取り扱うかは、地層処分事業を進めていくうえでも本質的な課題となっている。そのため、本稿では、高レベル放射性廃棄物の地層処分分野を事例とし、安全性の論理構造という新たなメディアを用いた知識マネジメント手法を提案する。また、提案した手法に基づき、安全性の向上に関する知識の構造化と、ウェブを介した地層処分関係者による対話による知識の構造化と更新の試行を行い本方法論の適用可能性および課題を論ずる。最後に、今後の展開として、関係者にコミュニケーションのための共有プラットフォームを提供するという観点から、討論モデルという新しいメディアの意義を論ずる。

日本情報経営学会誌 Vol.31 No.2 pp.66-78 2011
仙波毅

2010年度バックエンド週末基礎講座報告

2010年10月30日(土)および31日(日)に福井大学において開催された、日本原子力学会バックエンド部会主催「2010年度バックエンド週末基礎講座」の概要を報告する。

原子力バックエンド研究 Vol.17 No.2 pp.91-93 2010
大澤英昭、日置一雅、牧野仁史、仙波毅、梅木博之、高瀬博康

安全性の論証構造を用いた関係者間コミュニケーションの共有プラットフォーム

日本原子力研究開発機構では、地層処分の安全性を説明するうえで必要となる多様かつ大量な情報をユーザーの要望に応じて知識として提供し、信頼性を高めるために必要となる新たな知識の創造や関係者のコミュニケーションのための共有プラットフォームとするとともに、次世代への知識継承などを支援する知識マネジメントシステム(KMS)の開発を進めている。本稿では、地層処分の安全性の説明のための論証構造等に基づく新たなコミュニケーションの共有プラットフォームの基本的コンセプトとそれに基づくKMSの開発状況を紹介する。

研究・技術計画学会 第25回年次学術大会 講演要旨集 pp.55-60 2010

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Makino, K. Hioki, H. Umeki, H. Takase and I.G. Mckinley

Knowledge management for radioactive waste disposal: moving from theory to practice

廃棄物管理に係る知識の爆発的な増加の取扱いは国際的な関心事項となっている。この問題は、サイト選定に公募方式を採用している日本では特段の柔軟性が求められ、サイトに合わせてサイト特性調査計画、処分場概念、性能評価を行えるようにする必要がある。JAEAでは早くからこの点についての問題意識を持ち、2005年より先進的な知識マネジメントシステム(KMS)の開発を開始した。これは、基盤研究開発により地層処分の規制と実施主体の双方をサポートするというJAEAの役割を促進することを目的としたものである。本論文では、知識マネジメントシステムの開発の現段階までの進捗を、既存の知識工学的なツールや方法の廃棄物管理への適用を中心にまとめるとともに、将来の開発や挑戦の課題を概説する。

International Journal of Nuclear Knowledge Management Vol.5 No.1 pp.93-110 2011
H. Umeki and H. Takase

Application of knowledge management systems for safe geological disposal of radioactive waste

長寿命放射性廃棄物の地層処分は、他の産業分野に比べより多くの学際的知識を必要とする技術領域であると考えられる。このため、その一側面として、現在の情報技術(IT)の限界への挑戦といった課題を有している。この章では、知識工学やITの分野で開発された最新技術を利用した知識マネジメントシステム(KMS)と関連する知識ベースに関わる問題への取り組みについて紹介する。また、先進的な知識マネジメント(KM)ツールが地層処分のセーフティケースを継続的に進化させるために必要な開発、レビューとコミュニケーション、あるいは管理にとってどのように貢献することができるかについて考察を加える。

Geological repository systems for safe disposal of spent nuclear fuels and radioactive waste pp.610-638 2010

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
清水浩之、小山倫史、千々松正和、藤田朝雄、中間茂雄

連続体・不連続体解析手法を用いた処分孔周辺岩盤の熱–応力連成挙動の評価

本論文では、原位置試験場における花崗岩の坑道の掘削および加熱による亀裂進展挙動に対して、連続体解析手法である有限要素法と不連続体解析手法である粒状体個別要素法を適用した解析結果を比較した。有限要素法による解析結果では、掘削や加熱による応力やひずみの変化を定量的に良好に評価できることが分かった。一方、粒状体個別要素法による解析結果では試験孔壁面付近に微小亀裂が発生しており、このことから原位置試験で観察された試験孔壁面での岩盤の破壊現象について考察することができた。このような数値解析手法の特徴を踏まえて解析結果を比較することで、温度、応力やひずみ、亀裂進展過程について、定性的かつ定量的により精度の高い評価を行うための手法を提案する。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.248-253 2011
谷口直樹、川崎学、内藤守正

低酸素濃度下での模擬地下水の飽和した圧縮ベントナイト中における炭素鋼の腐食挙動

低酸素の濃度下、圧縮ベントナイト中において10年間にわたる炭素鋼の浸漬試験を行った。XRD, XPSにより、ほとんどの条件で腐食生成物として2価鉄の炭酸塩化合物が確認された。炭酸塩濃度の高い溶液中では10年間の試験期間を通して他の条件よりも腐食量は小さくなった。また、50℃の条件では初期の腐食速度は80℃よりも小さいが、数年後にはむしろ大きくなった。これら炭酸塩濃度と温度による長期的な腐食速度への影響は鉄炭酸塩の沈殿・溶解挙動が関連していると推察された。また、初期腐食量と皮膜の保護性の関係を調べると、高炭酸塩溶液を除き初期腐食量の大きいほど皮膜の保護性も高くなる傾向が認められた。実験結果の外挿により炭素鋼の長期的な腐食量を推定すると、推定値の範囲と考古学的鉄製品の腐食量の範囲は概ね一致した。

材料と環境 第59巻 第11号 pp.418-429 2010
谷口直樹

高レベル放射性廃棄物処分におけるオーバーパック材料としてのチタンの適用性とチタン製オーバーパックの寿命評価の現状

チタンは高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるオーバーパック候補材料のひとつに挙げられている。本報ではチタンオーバーパックの基本概念および、すきま腐食、全面腐食、水素脆化に対する耐食性の観点からの長期健全性について概要を述べる。すきま腐食はその生起臨界条件に関するデータに基づき、環境条件に応じて適切な合金種を選定することによって避けることができる。高炭酸塩または高pH環境では低酸素濃度下における腐食速度が比較的大きくなるため、チタンはオーバーパック材料として適切とはいえない。このような環境条件をのぞき、適切な厚さを設定することによってチタンオーバーパックには1000年間以上にわたって全面腐食、水素脆化による破損は生じないと考えられる。

チタン Vol.58 No.3 pp.37-41 2010

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
B. Garitte, A. Gens, Q. Liu, X. Liu, A. Millard, A. Bond, C. McDermott, T. Fujita and S. Nakama

Modelling benchmark of a laboratory drying test in Opalinus Clay

本論文は、DECOVALEXプロジェクトにおける、オパリナスクレイを用いた室内乾燥試験を対象としたベンチマークテストについて示したものである。DECOVALEXプロジェクトの概要および室内乾燥試験の試験設定を示し、理論式やパラメータの決定について説明した。五つのチームによって実施された解析結果を試験結果とを比較し、両者に良い一致が認められた。

EUROCK2010 Lausanne (Switzerland) Rock Mechanics in Civil and Environmental Engineering pp.767-770 2010
T. Sasakura, K. Masumoto, M. Toida, T. Fujita and Y. Sugita

Full–Scale Experimental Study on Mechanical Behavior of a Clay Plug under HLW Disposal Conditions

高レベル放射性廃棄物の地層処分を行う地下施設は、廃棄物等の埋設後に埋め戻し、プラグ、グラウト注入などの閉鎖技術を用いて閉鎖される。閉鎖による処分場全体の安全性を向上させるためには、これらの閉鎖要素について有効性の確認を行う必要がある。本論文では、閉鎖技術の確立に向け、これら閉鎖要素のうちのプラグに着目してカナダにおいて実施した原位置での実規模閉鎖試験の概要を紹介した後、試験中のプラグ周辺挙動のうちの力学的挙動の整理結果を示すとともに、プラグ構築にあたって適用した既往技術の有効性を検討した結果を述べる。

9th Geo-environmental Engineering (GEE 2010) Seoul (Korea)
Proceedings of 9th International Conference on Geo-environmental Engineering pp.47-56
2010
K. Tanai and H. Kikuchi

ANALYTICAL STUDY OF THE LONG-TERM MECHANICAL DEFORMATION OF THE BUFFER ON HLW DISPOSAL

緩衝材の長期力学挙動評価の観点から、オーバーパックの自重沈下挙動に関する解析評価を行った。解析の目的は、オーバーパックの自重沈下により緩衝材に期待されている要求機能の一つであるコロイドフィルトレーション及び自己シール性にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。なお、オーバーパックの自重沈下解析は、海水地下水条件で行った。オーバーパックの自重沈下及びそれに伴って生じる緩衝材の変形によって、緩衝材上部に空隙が生じることが想定される。この場合、オーバーパックの自重沈下によって発生した空隙を緩衝材が有する自己シール性によって充てんし、コロイドフィルトレーション機能を維持するための下限密度として0.8Mg⁄m3を確保していることが必要となる。したがって、自重沈下解析により得られた沈下量をもとに、沈下によって生じた空隙を充てんするための自己シール性を緩衝材が有すること、および緩衝材の密度低下がコロイドフィルトレーション機能を損なわない範囲であることを確認した。自重沈下解析の結果、沈下量は10,000年で31mm、100,000年で33mmである。また、この沈下量に伴って生じる空隙を緩衝材の自己シール性によって充てんした場合の密度は1.27Mg⁄m3であり、コロイドフィルトレーション機能を維持できることがわかった。

European Nuclear Conference 2010 Barcelona (Spain) 2010
M. Naito, H. Kishi, N. Fukuoka, T. Yamada and H. Ishida

Development of Superfine Spherical Silica Grout as an alternative grouting material for the geological disposal of long-lived radioactive waste

放射性廃棄物の地層処分に向けた湧水対策として開発しているグラウト技術開発において、セメント系材料に代わる代替材料として超微粒子球状シリカグラウト材を開発している。この材料は、セメント系材料に比べて1桁以上も粒径サイズの分布が小さいという利点(最大で1ミクロン以下)を活かし、セメント系では対応できない微細な亀裂への充填が期待できるとともに、地層処分で要求される低アルカリ性も確保することも可能である。本件は、地層処分での実用的な観点から種々の室内試験を行い、すでに開発されているセメント系材料の特性との比較検討から、その有効性について考察を行い今後の課題等と併せて提示を行った。

ICONE-18 Xian (China)
Proceedings of the 18th International Conference on Nuclear Engineering ICONE18-30141(CD-ROM)
2010

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
澤田淳、鐵桂一、坂本和彦

50cmスケールの岩石試料の亀裂開口幅測定データに基づく亀裂の透水特性評価

亀裂性岩盤を対象とした地下水流動評価や核種移行評価には、亀裂を一枚の均質な平行平板に近似したモデルを一般的に用いる。実際の亀裂は複雑な形状を呈しており、これを平行平板モデルで表現する際、透水量係数や亀裂開口幅の値をどのように設定するかが課題となる。本研究では、天然の亀裂を含む50cmスケールの花崗岩試料を、亀裂に直交する方向に1mm毎に精密研削して各断面における亀裂断面の観察から亀裂開口幅の分布データを得た。その結果から亀裂の透水特性を評価し、透水試験により得られた亀裂の透水特性との比較を通じて亀裂開口幅の分布と透水特性の関係を検討する。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.236-241 2011
川村淳、江橋健、牧野仁史、新里忠史、安江健一、稲垣学、大井貴夫

高レベル放射性廃棄物地層処分における性能評価のための隆起・浸食に起因する地質環境条件変化の評価方法の検討

隆起・浸食⁄沈降・堆積は広域的に生ずる現象であり、長期的には高レベル放射性廃棄物地層処分への影響の不確実性を考慮する必要がある。著者らは、そのために隆起・浸食⁄沈降・堆積の可能性のある変遷のパターンとそれらに対する地質環境条件の変化を合理的に抽出し変動シナリオを構築する方法論として、隆起・浸食を取り扱うための「概念モデル」を検討した。概念モデルは、検討対象とする領域の地質環境条件をモダンアナログ的な観点から温度(T)、水理(H)、力学(M)、化学(C)および幾何形状(G)(THMCG)の分布状況で整理し、隆起・浸食⁄沈降・堆積の可能性のある変遷のパターンについては地史の情報を用いて整理するものである。この方法論に基づきその地域の地史とその周辺地域を含む現在の地質環境条件をモダンアナログ的な観点から情報整理することにより、構築される変動シナリオの科学的合理性の保持と、それを理解したうえでの簡略化が可能となった。また、具体的な地域が与えられた場合においても、本手法を適用することにより評価すべき現象と地質環境条件の変化を抽出でき見通しを得た。

応用地質 第51巻 第5号 pp.229-240 2010
佐藤久、澤田淳

不均質な開口幅分布を有する単一亀裂の光学的手法による計測とその透水特性評価

岩石試料の亀裂を複製した100mm×100mmの透明のレプリカ試験体を用いて、透水試験とトレーサー試験を実施するとともに、同条件下で光学的手法を用いた測定により0.15mm間隔という高解像度の亀裂開口幅分布のデータとトレーサー移行時の濃度分布データを取得した。これらの実験データは、これまでに数値的や実験的に検討されてきた、不均質に分布する亀裂開口幅の特徴の分析や亀裂の透水現象に与える影響の検証に役立つものである。例えば、局所的には三乗則が成り立つと仮定して計測された開口幅データに基づいて推定した透水量係数分布を用いて二次元浸透流解析で求めた亀裂の透水量は過大に評価される傾向があると報告されているが、本実験データからも同様の結果が得られた。

土木学会論文集C Vol.66 No.3 pp.487-497 2010
宮原要、舘幸男、北村暁、柴田雅博

高レベル廃棄物地層処分の安全評価 —ニアフィールドアプローチにおける入力パラメータの信頼性確保—

本報告は、地層処分研究開発第2次取りまとめとそれ以降の研究を踏まえ、ニアフィールド性能評価モデルへの入力パラメータの中で特に重要な溶解度、収着分配係数の信頼性確保の取り組みについて紹介したものである。これらのパラメータの信頼性確保という観点から、それぞれのパラメータに関するデータ取得、熱力学的モデリング、性能評価用のパラメータ値の設定、といった各段階において留意すべき事項や、関連する研究開発の現状、今後の課題などについて、国際的な動向についてもレビューしつつ情報を整理し、とりまとめた。データ取得手法については、その信頼性確保のための留意点の整理や、学会による手法の標準化が進められて来ているが、与えられる処分環境条件を考慮した性能評価用の値の設定のための一連の手続きについては、より体系化な情報の整理が求められていることを示した。

原子力システム研究懇話会
原子力システムニュース Vol.21 No.1 pp.6-14
2010

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Kitamura

Study on Reductive Sorption of Selenium(IV,VI) onto Pyrite using a Micro X-ray Absorption Spectroscopy

セレン-79は地層処分性能評価の重要元素であり、酸化還元に鋭敏なことから地層処分環境中で複雑な挙動をとることが予想されている。このことから、黄鉄鉱に対するセレンW価およびY価の相互作用を、雰囲気制御下におけるマイクロX線吸収分光(μ-XAS)測定を用いて調べた。表面を研磨したスペイン産黄鉄鉱片と10-2mol dm-3のSe(IV)もしくはSe(VI)水溶液を、不活性ガス雰囲気、80℃にて約2ヶ月間接触させた。試験後の黄鉄鉱表面のセレンの分布を、ビーム径が約1×1μmのマイクロX線による蛍光測定(μ-XRF)で調べるとともに、セレンのK吸収端付近におけるμ-XAS測定をスイス放射光研究施設にて実施した。マイクロ-XRF分布の結果、セレンが不均質に分布しており、セレンの濃集スポットの周囲に低濃度のセレンが分布していることが観測された。また、マイクロX線吸収端近傍スペクトルの測定結果から、Se(IV)およびSe(VI)が部分的にSe(0)に還元されていることが観測された。

Actinide XAS 2011 Harima (Japan) 2011
M. Kawamura, S. Tanikawa, T. Niizato and K. Yasue

DEVELOPMENT OF METHODOLOGY TO CONSTRUCT A GENERIC CONCEPTUAL MODEL OF RIVER-VALLEY EVOLUTION FOR PERFORMANCE ASSESSMENT OF HLW GEOLOGICAL DISPOSAL

わが国における高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの長期の安全評価にとって、隆起・侵食の影響を考慮することは重要である。また、隆起・侵食および気候・海水準変動に起因する地表地形の発達進化は、処分環境に影響し、結果的に地下の地層処分システムに影響し、地表付近に達すると処分場が地表に露出するため、バリア性能が著しく劣化する。以前の研究で、わが国において河川侵食は重要な懸念事象と特定された。ここで、われわれは、わが国の河川を対象とした河川侵食の現象理解に基づく性能評価のための一般的な概念モデルの構築をするための方法論を検討した。河川発達に起因する地形の変遷を考慮した概念モデルを構築する際に考慮すべき事項は、「河川の上流と下流における侵食場と堆積場の関係」、「氷期・間氷期サイクルに起因する侵食・堆積現象の時間的変化」、「隆起量と河川下刻量のバランス」、「河川下刻と側刻のバランス」および「過去の氷期・間氷期サイクルの持続時間と変動幅」である。本論では、河川侵食の現象理解からこれらの事項の不確実性の把握とそれをどのように簡素化するか、取り扱いを検討することにより、河川中流域における典型的な特徴を含む一般的な概念モデルを構築することができ、性能評価のための概念モデル構築の方法論を提示することができた。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40137 (CD-ROM)
2010
A. Kitamura, R. Doi and Y. Yoshida

EVALUATED AND ESTIMATED SOLUBILITY OF SOME ELEMENTS FOR PERFORMANCE ASSESSMENT OF GEOLOGICAL DISPOSAL OF HIGH-LEVEL RADIOACTIVE WASTE USING UPDATED VERSION OF THERMODYNAMIC DATABASE

更新した熱力学データベース(JAEA-TDB)を用いて、わが国における「地層処分研究開発第2次取りまとめ(H12)」で設定した間隙水における25元素の溶解度を評価し、旧データベース(JNC-TDB)の結果と比較した。さらに、すべての目的元素の溶解度制限固相の設定技術の確立を目指した。多くの元素の溶解度評価結果は大幅には変わらなかったものの、いくつかの元素に対する溶解度や支配溶存化学種がJAEA-TDBを用いることで変化した。たとえば、ジルコニウムの多核加水分解種の生成定数の導入やトリウムのヒドロキソ炭酸錯体の生成定数の置換などに起因するものである。JAEA-TDBおよびJNC-TDBを用いて評価された溶解度の比較および議論の詳細を紹介する予定である。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40172 (CD-ROM)
2010
H. Takahashi and M. Yui

Orientation of Hydroxyl Groups on Clay Mineral Surfaces Probed by Infrared Multiple-Angle Incidence Resolution Spectrometry (IR-MAIRS)

赤外多角入射分解分光法により粘土表面水酸基の配向角を分子レベルで解析した。OH伸縮振動スペクトル分解、カーブフィットすることで、Al、Mg、Feの各カチオン対に対応するOH伸縮振動をすべて帰属した。AlO-Hal、AlOHMg、MgOHMgの表面水酸基について、(001)面に対する配向角度をそれぞれ決定した。

NCSS2010 (International Conference on Nanoscopic Colloid and Surface Science) Chiba (Japan) 2010
A. Kitamura and M. Yui

Reevaluation of Thermodynamic Data for Hydroxide and Hydrolysis Species of Palladium(II) Using the Brønsted-Guggenheim-Scatchard Model

Pd2+-OH--ClO4-溶液系におけるパラジウム(II)の熱力学データを、文献値のレビューおよび再解釈によって、ブレンステッド–グッゲンハイム–スキャッチャードモデルを用いて決定した。パラジウム(II)水酸化物の溶解度積および加水分解定数ならびにイオン相互作用係数を、95%信頼区間を付与する形で導出した。これらの熱力学データは、低濃度から相対的な高濃度の溶液の範囲でパラジウム(II)の溶解制限の水素イオン濃度依存性を精度よく予想することを助けるために得られたものである。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.47 No.8 pp.760-770 2010
E. Curti, K. Fujiwara, K. Iijima, J. Tits, C. Cuesta, A. Kitamura, M.A. Glaus and W. Muller

Radium uptake during barite recrystallization at 23±2℃ as a function of solution composition: An experimental 133Ba and 226Ra tracer study

133Baと226Raの収着試験を同じ溶液条件(温度や圧力、pHなど)のバライト懸濁液を用いて行った。133Baを用いたバライトへの再結晶化の時間依存性を測定することにより、再結晶化率を算出することができた。試験期間で再結晶の反応がほぼ完全に収束し、トレーサが均一に分布していることが確認された。これらのことからこの固溶体についてはRaの取り込み現象を熱力学的に評価することが可能であった。

Geochimica et Cosmochimica Acta Vol.74 No.12 pp.3553-3570 2010
K. Iijima, T. Tomura and Y. Shoji

Reversibility and modeling of adsorption behavior of cesium ions on colloidal montmorillonite particles

モンモリロナイトコロイドに対するCsの収着及び脱離挙動を調べた。イオン交換・表面錯体モデルにより、Csの収着及び脱離挙動を良好に再現することができた。0.005Mより高いCs濃度で処理されたベントナイトは、Csの層間への固定につながると考えられる層間距離の減少が認められた。本研究では、Cs濃度が0.0001Mより低いので、モンモリロナイトコロイドへのCs収着は可逆であると考えられた。

Applied Clay Science Vol.49 No.3 pp.262-268 2010
M. Terashima, S. Nagao, T. Iwatsuki, Y. Sasaki, Y. Seida and H. Yoshikawa

Structural Characteristic of Deep Groundwater Humic Substances in Horonobe Area, Hokkaido, Japan

幌延の深部地下水(450–550m)に溶存する腐植物質を分離・精製し、この腐植物質について酸性官能基および分子サイズの観点から構造特性を調査した。一連の分析結果から、この深部地下水に溶存する腐植物質の構造特性について、以下の点が分かった。(1)幌延の深部地下水に溶存する腐植物質の主要分画は、フルボ酸である。(2)このフルボ酸分画のカルボキシル基含量は地表水に溶存するフルボ酸のものとほぼ同程度である。(3)このフルボ酸の50%以上の分画は、5kDa以下の分子量分画に分布する。以上の結果は、幌延の深部地下水に溶存する腐植物質が主に酸性官能基を有する低分子量の分画成分によって構成されていることを特徴付けている。

International Humic Substances Society Tenerife, Canary Island (Spain) 2010
S. Lee, H. Yoshikawa and T. Matsui

Biomineralization of Vivianite on Carbon Steel Surface Attacked by the Iron Reducing Bacteria

鉄還元菌共存下での炭素鋼腐食試験を実施した。41日の培養条件で、バイオフィルムの生成と腐食生成物が確認され、腐食生成物はSEM観察等を実施した。本実験の結果、防食機能を持つVivianiteが微生物の作用で腐食生成物として生成することが確認された。

2010 MRS Spring Meeting San Francisco (USA)
MRS Symposium Proceedings Vol.1265 AA06-01 pp.209-214
2010
Y. Ishii, Y. Seida, Y. Tachi and H. Yoshikawa

Influence of operational conditions on retardation parameters measured by diffusion experiment in compacted bentonite

拡散試験における試験溶液の淀みやフィルター拡散抵抗などの試験条件変化についてCs、Iを用いて測定し、モデル解析を用いてこれら効果の不確実性について見積もった。拡散パラメーター取得において、RD法だけではなく、同時にIDデータを取得して解析することで誤差を有効に低減できることを実験ならびにモデル解析により明らかにした。

2010 MRS Spring Meeting San Francisco (USA)
MRS Symposium Proceedings Vol.1265 AA06-08 pp.233-238
2010
K. Fujiwara, K. Iijima, S. Mitsui, M. Odakura, Y. Kohara and H. Kikuchi

Migration behavior of multivalent radionuclides from fully radioactive waste glass in compacted sodium bentonite

実高レベル放射性廃棄物ガラス固化体から放出される核種の濃度及び圧縮ベントナイト中の核種移行を調査するために拡散試験を行った。アクチニドやランタニドのような多価イオンの移行挙動は、地球化学および移行モデルを用いて評価した。モデル計算に必要な入力データは、それぞれの挙動を独立させた個別のモデルから導いた。Am, CmおよびEuのガラス近傍の濃度は熱力学データより計算される値とほぼ一致した。AmやCmについては、2つの拡散プロファイルが確認された。

2010 MRS Spring Meeting San Francisco (USA)
MRS Symposium Proceedings Vol.1265 AA06-09 pp.239-244
2010

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
宮澤大輔、真田祐幸、木山保、杉田裕、石島洋二

幌延地域に分布する珪質岩を対象とした間隙弾性パラメータの取得と室内試験法の提案

間隙弾性論は、岩盤中の空隙が水で飽和された状態において、水の流入・流出が生じた際の岩盤の変形や応力変化を説明する理論であり、岩盤と水の連成現象を表現できる。現在、北海道幌延町で進めている幌延深地層研究所に分布する新第三紀堆積岩は、多孔質・低透水性であり高い飽和度を示す。国内の他の地域に分布する新第三紀堆積岩においても似たような特性を持つ岩盤は少なくない。このような性質を持つ岩盤に構造物を設けると、岩盤内部に存在する多量の水が消散しにくくなるため、岩盤と水の連成現象が生じる可能性があり、間隙弾性論に基づいた評価が構造物の合理的な設計・施工に有効と考えられる。本論文では、間隙弾性パラメータを決定するための室内試験方法の構築と幌延地域に分布する珪質岩の間隙弾性パラメータの決定を行った。1回の三軸圧縮試験で複数の間隙弾性パラメータを効率的に取得できるように試験フローを工夫した。その試験に基づき取得されたパラメータは、既存研究で得られた泥岩等の間隙弾性パラメータと比較的近く概ね妥当な値が得られたと判断した。

Journal of MMIJ Vol.127 No.3 pp.132-138 2011
上原真一、嶋本利彦、松本拓真、新里忠史、岡崎啓史、高橋美紀

地下深部における新第三紀泥質軟岩中の亀裂の透水特性 〜室内試験による推定〜

高レベル放射性廃棄物の地層処分等の堆積岩の地下空間利用においては、広域的な水理特性の空間分布を把握することが重要である。本報告では、岩盤中の亀裂が流体経路として有効に機能する深度を評価する手法として、室内試験を用いることの適用性を検討することを目的に、北海道北部幌延地域の新第三紀堆積岩の声問層(珪藻質泥岩)及び稚内層(珪質泥岩)を対象として、静水圧条件下での単一亀裂の室内透水試験及び単一亀裂の流体特性に関する数値シミュレーションを実施し、室内試験と原位置透水試験の結果を比較した。その結果、声問層の珪藻質泥岩では深度約150mに相当する垂直応力で亀裂と健岩部の透水性がほぼ同一になったのに対し、稚内層の珪質泥岩では、深度約8km程度で同一となった。このことは、原子力機構による原位置透水試験で得られた声問層と稚内層の透水係数の違いを説明するものと考えられる。さらに、岩石力学試験で得た力学特性に基づく亀裂透水性の数値シミュレーションも同様に、室内試験で得られた亀裂透水性の深度に伴う変化を支持する結果が得られた。

Journal of MMIJ Vol.127 No.3 pp.139-144 2011
稲垣大介、津坂仁和、井尻裕二、小池真史、羽出山吉裕

幌延深地層研究所における立坑掘削に伴う周辺岩盤および支保の挙動分析(その1)

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において堆積岩を対象に地下研究施設を建設中である。立坑の施工では、ショートステップ工法を採用しており、掘削後すぐに剛性の高い覆工コンクリートを打設するサイクルを繰り返すため、立坑掘削に伴い周辺岩盤並びに支保は、NATM工法とは異なる挙動を示す。立坑掘削時に取得した周辺岩盤挙動並びに支保部材応力の計測データの分析結果より、覆工コンクリート打設後は、立坑壁面から半径方向に遠方の地山の方が立坑壁面よりも大きく内空側に変位することから、ロックボルトには圧縮方向の軸力が発生するため、引張方向の軸力による吊下げ効果等を発揮していないと考えられた。そこで、ロックボルトを打設しない区間を試験的に設定し、地山の挙動並びに覆工コンクリート応力を計測することにより、ロックボルトの作用効果を確認したうえで、最終的にロックボルトの必要性について判断することとした。その結果、懸念された壁面の崩落等の事象も発生しないことを確認できたことから、後続の施工区間において、ロックボルトを省略することとした。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.1-6 2011
津坂仁和、稲垣大介、小池真史、井尻裕二、羽出山吉裕

幌延深地層研究所における立坑掘削に伴う周辺岩盤および支保の挙動分析(その2)

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において堆積岩を対象に地下研究施設を建設中である。平成22年7月末時点で、東立坑(内径6.5m)と換気立坑(内径4.5m)は深度250.5mに到達した。立坑の施工には、ショートステップ工法を採用している。高さ2m、厚さ40cmの剛性の高い覆工コンクリートを、掘削後直ちに構築する施工サイクルを繰り返すため、立坑掘削に伴い、その周辺岩盤並びに支保部材の挙動は、一般的な吹付けコンクリートとロックボルトを用いた坑道掘削の場合と大きく異なる。ショートステップ工法に伴う岩盤並びに支保部材の力学挙動を解明し、合理的な設計と施工管理手法を確立するために、本研究では、幌延深地層研究所の東立坑の深度220m付近を対象として、立坑掘削に伴って生じる覆工コンクリート内の円周方向応力分布を、数値解析と現場計測によって分析した。数値解析では、施工手順を再現した立坑の三次元逐次掘削解析を実施した。現場計測では、覆工コンクリートの同一水平面内に応力計を配置する一般的な計測手法に対して、初期地圧の主応力方向の断面内の複数の高さに各5個の応力計を配置した。その結果、厚さ60cm(実績)、高さ2mのリング形状の覆工コンクリート内の応力分布について、その最大値と最小値の生じる箇所や、その応力差が10MPa以上と顕著であることを明らかにした。今回の成果に基づいて、次年度以降の立坑の施工における覆工コンクリート応力計測手法について、その計測箇所と頻度を見直した。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.7-12 2011
浅井秀明、久慈雅栄、堀内泰治、松井裕哉

瑞浪超深地層研究所における新しい定量的岩盤分類法の適用性評価

高レベル放射性廃棄物の地層処分などの岩盤地下構造物建設においては、合理的・効果的な設計施工の観点より、地上からの調査や掘削中の壁面観察結果からサイト固有の岩盤力学的特徴を反映しつつ、設計等に必要な適切な岩盤分類を行う手法の構築が大きな課題と考えられる。このような観点から、筆者らは「岩盤の工学的分類方法JGS3811-2004」をベースとした新しい定量的岩盤分類法を考案し、日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所における立坑2本を含む研究坑道の堆積岩部および結晶質岩部へ適用するとともに、電研式岩盤分類法の岩盤等級と比較することによってその適用性を評価した。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.13-18 2011
杉田裕、中村隆浩、真田祐幸

弾性波トモグラフィ調査の掘削影響領域モニタリング技術への適用

地下深部に坑道を掘削すると、坑道の周囲には掘削影響領域が発生する。この掘削影響領域は、岩盤の力学的、水理的、地球化学的特性が変化することとなり、高レベル放射性廃棄物の地層処分における放射性核種の移行経路を評価する上で、掘削影響領域の広がりや特性の変化の度合い、それらの経時変化を把握することが重要となっている。筆者らは、幌延深地層研究計画において、珪藻質泥岩に掘削した水平坑道を対象とした掘削影響試験において、坑道周囲の岩盤の力学特性の変化を把握する目的で、弾性波トモグラフィ調査および孔内載荷試験を実施し、弾性波トモグラフィ調査のモニタリング技術としての可能性を示した。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.230-235 2011
堀内泰治、平野享、池田幸喜、松井裕哉

地下深部岩盤の歪変化のメカニズムに関する研究

日本原子力研究開発機構は、瑞浪超深地層研究所立坑中心の深度200m付近から掘削したパイロットボーリング孔を利用し、深度500m地点に高精度歪計を設置し、200mからの研究坑道掘削中に取得した深度500m地点での岩盤の歪データを用い、地球潮汐といった定常的な外力変動や地震および発破などの瞬間的な外力変動による岩盤の変形状況を分析した。その結果、評価できるデータの取得期間は短かったが、今回使用した高精度歪計は、地球潮汐や地震時のみならず鉛直深さで300m程度離れた場所の発破の微少変形も観測しえたことから、掘削面前方の岩盤の剛性の違いなどの岩盤状況を相当離れた位置から把握できる可能性が示された。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.242-247 2011
郷家光男、石井卓、佐ノ木哲、松井裕哉、杉田裕

せん断変形の進行に伴う堆積軟岩の透水特性の変化

せん断変形の進行に伴う透水特性の変化を把握することを目的として、日本原子力研究開発機構が幌延深地層計画において採取した稚内層の硬質頁岩に対してせん断破壊透水試験を行った。透水試験には軸方向の一様流と半径方向の放射流による方法を採用した。その結果、軸方向の透水試験では、弾性変形状態以降に透水係数は増加し、残留強度時には初期状態の十倍程度まで増加した。一方、半径方向の透水試験では、ひずみ軟化過程に至ると透水係数は急激な増加を示し、最終的には約十万倍まで増加した。そして、支保工や掘削方法を工夫することにより、ひずみ軟化状態に至る前の状態に制御でき、さらに、拘束圧を1MPa程度に維持できるならば、透水係数の増加を抑制できることが示唆された。

第40回岩盤力学に関するシンポジウム 講演集 pp.282-287 2011
大津宏康、有薗大樹、三枝博光

不連続性岩盤における突発湧水を対象とした地質調査の価値に関する一考察

岐阜県瑞浪市において日本原子力研究開発機構が建設を進めている瑞浪超深地層研究所における立坑掘削工事を事例として取り上げ、不連続性岩盤サイトにおける突発湧水を対象とした地質調査データを蓄積することの価値に関して考察を加える。なお、突発湧水が発生する危険性の検討においては、不連続亀裂ネットワークモデルを用いた地下水流動解析を実施した。

土木学会論文集 F4(建設マネジメント)特集号 Vol.66 No.1 pp.77-90 2010
木村かおり、松木浩二、大山卓也、竹内竜史、竹内真司

地下水流動に伴う地表面傾斜量に及ぼす岩体の不均一性と地表面形状の影響

地表で測定された傾斜データを用いて地下深部における地下水流動を評価する逆解析法は、Vascoらによって提案され、中谷ら、松木らにより改良され、成川らによって現場への適用も行われている。しかし、岩体の不均一性や地表面形状が地表面傾斜量に及ぼす影響に関する研究は極めて少なく、断層を含む岩体の力学的性質の不均一性や地表面形状が及ぼす地表面傾斜量への影響に関する系統的な研究はないのが現状である。そこで、本研究では、上下二層からなる不均一岩体、地表面に凹凸を有する均一岩体、さらに1条および2条の断層を有する岩体など、比較的単純な幾何学的構造を有する場合を対象に、まず、地下水流動場を与えて三次元有限要素法により順解析で得られた不均一岩体などの地表面傾斜量を用い、岩体が均一な半無限多孔質弾性体であると仮定して従来の二次要素を用いた逆解析法により地下水体積変化を評価し、評価した地下水流動場と与えた地下水流動場を比較することにより、表面に凹凸のある不均一岩体を均一半無限体と仮定することの影響について検討した。その結果、地表面の凹凸や断層の存在が地表面傾斜量に与える影響は大きく、凹凸のある不均一岩体を均一反無限体と仮定することによって解析結果に誤差が生じ、地下水体積変化を過大または過小に評価する可能性があることが示された。

Journal of MMIJ Vol.126 No.12 pp.660-667 2010
真田祐幸、杉田裕、大丸修二、松井裕哉、柏井善夫

光ファイバーを利用した多段式岩盤内変位計の開発

坑道周辺岩盤の長期的な挙動の把握は、高レベル放射性廃棄物の地層処分の性能評価や坑道の設計・施工を行う上で重要である。坑道近傍の変位を計測するためには、通常、電気式の地中変位計が埋設される。従来型の電気式地中変位計は数年にわたる使用では絶縁不良を生じるなど長期的な計測が困難であった。また、岩盤へのインパクトが小さい小口径のボーリング孔では多段化できないという問題があった。本論文では小口径で長期耐久性を有し、多段かつ高い精度での計測を可能にするために、光ファイバーを使用した地中変位計の開発を実施した。恒温槽内にて変位、温度を変化させた室内検定試験を行い、ブラッグ波長の変化量との対応関係を整理し、校正式の算出と測定精度の検証を行った。その結果、測定精度は測定範囲の0.5%または1⁄100mmと今回設定した測定精度を概ね満たしていた。また、変位計の性能の確認のために行った原位置性能確認試験結果から、ブラッグ波長の変化量から算出した変位は、実際に与えた変位量と良い一致を示した。さらに、作業性や作業時間については、通常用いられる電気式の地中変位計と同程度であり、原位置での実現可能性に対する見通しを得た。

Journal of MMIJ Vol.126 No.10,11 pp.569-576 2010
早野明

3Dレーザースキャナーの反射強度画像を用いた画像処理による岩石マッピング —瑞浪超深地層研究所における適用事例—

高レベル放射性廃棄物の地層処分事業においては、総延長約200kmを超える地下坑道の建設が想定されており、処分場建設に伴う壁面地質観察では、工期短縮や建設コスト削減の観点から観察作業の効率化が課題となる。その一方で、地層処分システムの安全評価に必要な地質情報を確実に取得していくことが課題である。三戸ほか(2002)では、対象物の高精度な三次元形状とレーザーの反射強度を迅速に取得できる3Dレーザースキャナー計測(以下、「3Dレーザー計測」)を活用することにより、地質観察の省力化が可能であることを報告している。しかしながら、3Dレーザー計測を適用した地質観察の事例は限られている。そこで、日本原子力研究開発機構は、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所において実施している研究坑道の壁面地質観察では、3D-LSを適用した地質観察手法の整備を行っている。これまでの手法整備では、持田ほか(2007)および早野(2008)ほかにより、堆積岩および花崗岩を対象にして、反射強度の高密度点群データから生成した画像の画像処理による岩石マッピングの手法の適用性を確認している。

写真測量とリモートセンシング Vol.49 No.4 pp.202-205 2010
岩月輝希

幌延の地下研究施設における研究技術開発の現状

幌延深地層研究センターにおける研究技術開発の現状について解説する。地上からの地質環境調査に関わる研究技術開発においては、物理探査やボーリング調査に関わる計画立案から調査、モデル化までの一連の調査技術を構築することができた。その過程で得られた地質環境情報については、実際の地下施設の設計(坑道レイアウトなど)、建設管理に反映されている。現在は、研究坑道で利用可能な要素技術の開発を行っており、坑道周辺の力学特性や地下水環境の変化を観測する技術を開発中である。今後は深度350mにおいて処分技術開発なども行っていく予定である。

日本応用地質学会北海道支部講演会 札幌市
北海道応用地質研究会 EPOCH No.61 pp.1-6
2010
弥富洋介、保科宏行、瀬古典明、島田顕臣、尾方伸久、杉原弘造、笠井昇、植木悠二、玉田正男

放射線グラフト捕集材を用いた湧水中フッ素・ホウ素除去効率化の検討

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、結晶質岩(花崗岩)を対象とした地層科学研究のため、瑞浪超深地層研究所において研究坑道の掘削工事を行っている。掘削工事に伴って発生する湧水(地下水) は、天然由来のフッ素とホウ素が含まれるため、排水処理設備において環境基準値以下まで除去した後、河川に放流している。今後増加していくと予測される湧水の効率的な処理が求められることから、低コストかつ小規模の設備で効率的な処理方法として放射線グラフト捕集材を用いた湧水中のフッ素及びホウ素除去の検討を行った。その結果、ホウ素については、一般的なイオン交換樹脂よりも約12倍の高速吸着処理が可能であり、繰り返し利用も可能であることを確認したが、湧水のpHによって捕集材の吸着性能が影響を受けることが明らかになった。また、フッ素についても、湧水中濃度の90%を吸着可能であったが、吸着性能はホウ素と比べると低くなった。その理由として、湧水中濃度の差が考えられ、吸着性能が十分発揮できる溶存濃度を把握してから、研究所の湧水に適用可能か判断する必要がある。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.9 No.3 pp.330-338 2010
本多眞、山本真哉、櫻井英行、鈴木誠、真田祐幸、杉田裕、松井裕哉

地球統計学的手法を用いた地下水水質分布の推定とその不確実性の評価

地下水水質や透水性などの地下深部の地質環境は一般に空間的に不均質であり、限られた調査から合理的かつ信頼性の高いモデルを構築する技術は、高レベル放射性廃棄物処分場のような大規模な地下構造物の設計において非常に重要となる。またモデルの信頼性を担保するためには、モデルに含まれる不確実性を定量的に評価できることが求められる。本論文では特に地下水の水質分布に着目し、広範囲かつ網羅的に調査が可能な電磁探査から得られる比抵抗値との相関関係を利用した地球統計学的な三次元分布のモデル化手法を提案した。具体的には幌延深地層研究計画で取得された広域の電磁探査から試錐孔における電気検層まで様々なスケールの比抵抗値データをその精度に応じて段階的に統合した比抵抗値モデルと離散的にしか得られない限られた地下水水質データから三次元分布モデルを構築した。さらには、構築されたモデルに含まれる不確実性に着目して、不確実性の要因を整理した上でデータに基づいたシミュレーションによりその評価を行った。その結果、提案手法によるモデルの不確実性が他の手法と比べて小さく見積もられ、提案手法の有効性を示すことができた。

土木学会論文集C Vol.66 No.3 pp.609-624 2010
岩月輝希、石井英一、水野崇、本多照幸

北海道幌延地域における微量元素を利用したナチュラルアナログ研究

地下深部における微量元素の挙動(移動経路や移動プロセス)を推測する技術を構築するために、北海道幌延地域において岩石中の微量元素分析を行い、その分布、移動状態について考察した。その結果、岩盤中の希土類元素濃度が一様であり大局的な移動は生じてないことが確認された。その一方で、一部の断層部において粘土鉱物への希土類元素の濃集が認められ、希土類元素の分布状態の調査が元素の移動経路を判別する上で有効であることが示された。

東京都市大学原子力研究所報 第36号 pp.1-13 2010
水野崇、永田寛、岩月輝希、本多照幸

岐阜県東濃地域における微量元素を利用したナチュラルアナログ研究

本研究では、岐阜県東濃地域に分布する堆積岩及び花崗岩を対象として、天然環境で観察される過去の化学環境(pHや酸化還元環境)の変化を推定し、その変化に伴う元素の挙動を把握することを目的としたナチュラルアナログ研究を実施した。その結果、堆積岩においては、希土類元素やUは、酸化還元環境やpH条件の変化に伴い、岩盤内で移動していることが明らかとなった。これらの元素は、化学的環境の変化に伴って岩盤から溶出し、スメクタイト等の粘土鉱物に取り込まれているほか、炭酸塩鉱物やリン酸塩鉱物中に保持されていることがわかった。他方、花崗岩については、分析した試料においては系統的な変化を示さず、花崗岩内部での物質移動プロセスを把握するためには、分離鉱物の分析など、より詳細な検討が必要である。

東京都市大学原子力研究所報 第36号 pp.14-24 2010
本島貴之、尾上博則、井尻裕二、大津宏康、三枝博光

割れ目が卓越する岩盤に大深度立坑を掘削する際の突発湧水リスク評価手法の提案

割れ目が発達した岩盤中に大深度立坑を掘削する際には、不連続面からの突発湧水リスクが大きいことが知られている。湧水リスクを割れ目ネットワークモデルを用いて算出する場合、ネットワークモデル構造の複雑さから数値解析に時間を要し、モンテカルロシミュレーションによる低頻度事象の再現性が課題となる。本研究では低頻度事象を精度よく再現するため、理論式に基づく湧水リスクの簡易評価式を提案する。また、瑞浪超深地層研究所での立坑工事を例として、同評価式を適用したシミュレーションを行い、調査した割れ目特性と湧水リスクの関係、すなわち割れ目特性のリスクに対する寄与度が定量的に把握した。これにより調査が進展して割れ目特性の確度が上がった場合の湧水リスクの変動度合いを定量的に把握することが可能となった。

土木学会論文集C Vol.66 No.2 pp.370-386 2010

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Saegusa, T. Sugai, T. Ogami, K. Kashima and E. Sasao

Reconstruction of Holocene environmental changes in the Kiso-Ibi-Nagara compound river delta, Nobi Plain, central Japan, by diatom analyses of drilling cores

隆起・侵食は処分場の深度を減少させ、地下水流動系の変化を引き起こす可能性があるため、地層処分の長期安全性を評価する上で考慮すべき重要な地質学的事象である。侵食量の見積りについては、河川上流部から下流域までを含む広い範囲を対象とする場合、侵食された土砂は河口付近の平野に堆積するため、平野での堆積量を見積ることにより、侵食量を推定することができる。しかし、海岸沿いの平野は海水準変動の影響を強く受けるため、その形成プロセスは複雑である。そこで、海水準変動の影響を受けて形成された平野の事例として、濃尾平野の形成プロセスを検討した。具体的には、海岸からの距離が異なる複数のボーリングコアを用いて、珪藻化石分析を行い、珪藻化石群集と堆積相とを比較検討した。その結果、海進時には海岸線の移動よりも珪藻化石群集の変化が緩やかに生じるのに対し、海退時には数百年の時間スケールで珪藻化石群集が海水生種から淡水生種に入れ替わることが明らかになった。この結果により濃尾平野の形成プロセスがより明確に示された。

Quaternary International Vol.230 No.1-2 pp.67-77 2011
Y. Niwa, T. Sugai, Y. Saegusa, T. Ogami and E. Sasao

Use of electrical conductivity to analyze depositional environments: Example of a Holocene delta sequence on the Nobi Plain, central Japan

隆起・侵食は処分場の深度を減少させ、地下水流動系の変化を引き起こすことから、地層処分の長期安全性を評価する上で考慮すべき重要な地質学的事象である。侵食された土砂は河口付近の平野に堆積するため、平野での堆積量を見積もることにより、河川上流部から下流域までを含む広い範囲の侵食量を推定することができる。しかし、海岸沿いの平野は海水準変動に応じて、河川から内湾にいたる様々な場所で堆積した地層から構成される。このため、侵食量の推定に用いるためには、地層が堆積した年代や環境を明らかにしたうえで、その単元ごとの堆積量を見積もる必要がある。地層の堆積年代は放射性炭素年代などによって推定できるものの、地層の堆積環境を推定する簡便な方法はあまり知られていない。そこで、そのような方法の一つとして、地層を混濁させた水の電気伝導度を活用する手法の適用性を検討した。その結果、電気伝導度は地層堆積時の塩分濃度の把握に有効であるものの、地層堆積後の圧密と堆積物の粒度組成の影響を考慮する必要のあることが明らかになった。

Quaternary International Vol.230 No.1-2 pp.78-86 2011
Y. Nara, S. Ho Cho, T. Yoshizaki, K. Kaneko, T. Sato, S. Nakama and H. Matsui

Estimation of three-dimensional stress distribution and elastic moduli in rock mass of the Tono area

本研究は原位置における初期応力測定結果等から広域的な応力場および岩盤の弾性係数を同時に評価するための3次元有限要素法による逆解析手法を示したものである。本研究では、3次元応力場の評価精度を向上させるため、弾性係数の異なる不均質な地層モデルを考慮し、東濃鉱山、正馬様用地および瑞浪超深地層研究所用地を含む領域の広域的な応力場の逆解析に適用した。

International Journal of the Japanese Committee for Rock Mechanics Vol.7 No.1 pp.1-9 2011
K. Koide and K. Koike

Identifying Groundwater — and Slope Movement–induced Vegetation Conditions in a Landslide Prone Area using Remotely Sensed Data

地形の不明瞭な古い地すべりや崩壊前の不安定斜面を抽出するため、不安定斜面に形成される水理地質構造による地下水滲出や斜面移動に伴う地盤変形によって生じる植生異常を衛星データを用いて捉える手法を考案した。本研究では植生状態の主要な影響因子である地形及び林相によって解析エリアを細分化し、同様な地理学的特徴を有する小領域毎に植生状態を評価することにより、不安定斜面における地下水滲出や地盤変形に起因する植生異常の抽出を試みた。また、植生状態の指標として広く利用されている正規化植生指標(NDVI)の問題点を改良したAdded Green Band NDVI(AgNDVI)を考案した。SPOT衛星データを用いて代表的な地すべり地域である八幡平を解析エリアとして本手法を適用した結果、地下水滲出が生じやすい地すべりの滑落崖直下や末端部周辺には高植生指標異常地点が分布し、一方、滑落崖の外縁部、移動体主部の側方境界、移動体押し出し部のような亀裂や地盤の変形が生じている部分には低植生指標異常点が分布していることが示された。この結果から、不安定斜面の抽出に関する本手法の妥当性を確認した。

International Symposium on Earth Science and Technology 2010 Fukuoka (Japan)
Proceedings of International Symposium on Earth Science and Technology 2010 pp.123-128
2010
C. Lee, K. G. Park, T. Matsuoka and T. Matsuoka

Fracture imaging using Image Point transform and midpoint imaging of RVSP data

Image Pointは、発震点、受振点、反射面間のジオメトリーにより決められる反射面に対する発震点の鏡像点である。IP(Image Point)変換により、共通発震点記録(空間–時間領域)上の反射波は、IP領域(IPの深度ξ–原点からIPまでの距離ρ)において、上記のImage Pointに集約される。さらにImage Pointと発震点の中点は、常に対応する反射面上に分布する特徴を有する。筆者らは、IP変換ならびにIP中点を求める手順(IP中点イメージ法)を利用して、均質媒体中に傾斜する断層を模擬した2次元モデルを使った数値実験を実施した。その結果、断層に対応する反射面の位置とその傾斜情報を取得できることを確認した。

Geosciences Journal Vol.14 No.4 pp.393-401 2010
E. Sasao

Function as a natural barrier of various geological units in Japan from the perspective of uranium mineralization

わが国のウラン鉱床では長期間にわたってウランが保持されてきており、地層処分に適した安定な地質環境が維持されてきた事例とみなされている。さらに、ウランが移行するような場合でも、吸着などによってその移行が遅延されることが考えられる。ウラン鉱床は日本列島に広く分布するため、わが国の様々な地質体がこのような天然バリアとしての機能を有することを定性的に示すことができる可能性がある。そこで、既存の文献からウランの産状を整理した。ウランは、結晶質岩では主に粘土や褐鉄鉱、ビスマスの二次鉱物などに吸着して、堆積岩では粘土や褐鉄鉱、炭質物、黄鉄鉱などに吸着して存在する。このような産状は、地下水に溶存していたウランがこれらの鉱物等に吸着されたことを示している。また、二次鉱物は酸化帯におけるウランの鉱物化を示している。わが国におけるウランの産状は、ウランの吸着および鉱物化が結晶質岩および堆積岩の双方で期待されることを示している。吸着や鉱物化は天然バリアにおける物質の遅延機構として期待されるものであることから、わが国の様々な地質環境において、物質の移行を遅延するという天然バリアとしての機能が期待される。

The 3rd East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2010 EAFORM) Gyeongju (Korea)
Proceedings of the 3rd East Asia Forum on Radwaste Management Conference pp.270-281
2010
E. Ishii, H. Funaki, T. Tokiwa and K. Ota

Relationship between fault growth mechanism and permeability variations with depth of siliceous mudstones in northern Hokkaido, Japan

岩質的にほぼ均質な岩盤(例えば泥岩)中において荷重圧(もしくは深度)が断層運動に伴う二次破砕の変形様式に与える影響を評価するために、幌延地域の珪質泥岩(埋没深度:1 km以上)中に発達する露頭スケールの横ずれ断層の発達モデルを検討した。露頭記載とコア観察による割れ目調査、室内試験による岩石の物性把握、及びグリフィス理論とクーロン理論に基づく理論計算を行い、それらを統合した結果、(1)上記の変形様式は岩石の強度のみならず荷重圧(もしくは深度)も重要なファクターであること、及び(2)岩盤の隆起侵食の間もしくは後に、深度約400m以浅では断層は多数の引張割れ目の形成を伴って連結し成長していくのに対して、深度約400m以深では剪断割れ目の形成を伴って発達することがわかった。このような深度による断層の発達メカニズムの違いは、水理試験により把握された本岩盤中の高透水領域(透水量係数:≧10-5m2⁄sec.)が深度約400m以浅に限られることと整合する。

Journal of Structural Geology Vol.32 No.11 pp.1792-1805 2010
H. Sanada, T. Nakamura and Y. Sugita

IN SITU STRESS MEASUREMENTS IN SILICEOUS MUDSTONES AT HORONOBE UNDERGROUND RESEARCH LABORATORY, JAPAN

原子力機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発を進めている。初期応力は、処分場の設計ならびに処分パネルの最適な幾何学配置を選定する上で重要なパラメータになる。堆積岩に対する初期応力測定は、高い技術が要求されることと既存の地下施設は硬質な岩盤に設けられることが多いため、測定事例がほとんどない。本論文では、堆積岩に対する初期応力測定の既存技術の適用性検証と地層処分事業を進める上での初期応力測定調査に関する方法論の構築を目的として、幌延深地層研究計画で実施された初期応力測定調査の内容と結果を述べる。調査は、水圧破砕法や応力解放法などの直接的な計測とコア法やブレイクアウトなどの間接的な評価の2項目に分け実施した。水圧破砕の結果によると、深度の増加とともに線形的に応力が増加することと最大主応力は東西方向に卓越した偏圧環境下に晒され、幌延地域周辺の造構作用と調和的であった。コア法については、AE法と比べるとDSCA法の方が水圧破砕結果と近い。ブレイクアウトについては、ボーリング孔や立坑内部で見られ、間接的に評価する方法としては、コア法に比べると効果的であった。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40019 (CD-ROM)
2010
M. Nakayama, H. Sato, Y. Sugita, S. Ito, M. Minamide and Y. Kitagawa

LOW ALKALINE CEMENT USED IN THE CONSTRUCTION OF A GALLERY IN THE HORONOBE UNDERGROUND RESEARCH LABORATORY

高レベル放射性廃棄物の地層処分施設は地下深部に建設されるため、坑道の空洞安定性確保などのため、セメント系材料が支保工に使用される。この場合、セメント系材料からの高アルカリ成分の溶出により、周辺の地下水のpHが13程度となり、緩衝材であるベントナイトや周辺岩盤を変質させ、そのバリア性能に影響を与えることが懸念されている。日本原子力研究開発機構では、このような影響を抑制するために低アルカリ性セメントを開発し、そのpH低下挙動や支保工としての実用性について検討を行っている。本報告では、幌延深地層研究センターの地下施設の深度140m調査坑道において、開発した低アルカリ性セメントを吹付けコンクリートとして使用した原位置施工試験について述べる。施工試験の結果、HFSCは、OPCと同等の施工性を有することが確認できた。また、施工後の日常管理計測から、内空変位についてもOPCと同等の傾向を示し、空洞安定性が確保されることを確認した。以上の結果から、地下坑道の施工においてHFSCを吹付けコンクリートとして適用できると判断された。今後は、10年程度に渡って、壁面からのコアの採取や採水などを実施し、坑道周辺の地下水および岩盤に与える影響を確認する計画である。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40038 (CD-ROM)
2010
K. Maekawa, H. Makino, H. Kurikami, T. Niizato, M. Inagaki and M. Kawamura

DEVELOPMENT OF METHODOLOGY OF GROUNDWATER FLOW AND SOLUTE TRANSPORT ANALYSIS IN THE HORONOBE AREA, HOKKAIDO, JAPAN

原子力機構が進めている深地層の研究施設計画のうち、堆積岩地域を対象とした幌延深地層研究計画においては、地上からの調査段階で取得した地質環境情報に基づいて、地下水流動解析から物質移行解析にいたる一連の評価手法の適用性の確認を目的とした解析を行った。その結果、現場での調査から物質移行評価にいたる評価手法について、実際の情報に基づく具体的な整理、解釈等の手順を含めた方法論を提示することができた。また、地質環境の長期変遷を考慮した地下水流動および塩分濃度分布の変化について試解析を行い、天然現象による地質環境への影響の大局的な傾向を示すことができた。本報では、これらの事例とともに、幌延地域を事例とした水理・物質移行評価手法の信頼性向上のための取組みを紹介する。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40041 (CD-ROM)
2010
H. Yokota, Y. Yamamoto, K. Maekawa and M. Hara

A STUDY ON GROUNDWATER INFILTRATION IN THE HORONOBE AREA, NORTHERN HOKKAIDO, JAPAN

高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性を評価する上で、地層中における物質移動の駆動力となる地下水流動を理解することは不可欠であり、地下水流動解析においては地下水涵養量などの適切な境界条件の設定が必要となる。日本原子力研究開発機構では、北海道北部幌延地域において、堆積岩地域の地下水涵養の把握を目的に様々な水理学的調査・観測を行っている。しかし、地表付近における地下水の浸透については、気候変動等の外的影響を受けやすく、詳細を明らかにすることが難しい。そこで、本研究では、各種観測結果を組み合わせ、境界条件の一部となる浅部地下水流動系の検討を行った。幌延地域においては、HGW-1および北進気象観測所の2か所で地中温度と土壌水分の観測が行われている。観測の結果、幌延地域では年間を通して地下への水の浸透と地下水涵養が生じていること、地表付近での水の浸透速度が深度により異なること、地表付近にゼロフラックス面が存在することが明らかとなった。今後は、ウェイングライシメータ、テンシオメータ、土壌水分計などの観測値を用いて、浅部地下への水の浸透量、中間流出量、地下水涵養量を定量的に議論する予定である。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40047 (CD-ROM)
2010
T. Tokiwa, K. Asamori, N. Hiraga, O. Yamada, H. Moriya, H. Hotta, I. Kitamura and H. Yokota

RELATIONSHIP BETWEEN HYPOCENTRAL DISTRIBUTION AND GEOLOGICAL STRUCTURE IN THE HORONOBE AREA, NORTHERN HOKKAIDO, JAPAN

地質環境の長期安定性を考える上で、地震・断層活動の特性を理解することが重要である。幌延地域は、北海道北部において地殻変動が活発な地域の一つと考えられている。そこで本研究では、北海道北部幌延地域における震源分布と地質構造の関係について検討を行った。震源分布の推定に当たっては、マルチプレット・クラスタリング解析手法を用いた。地震データは、2003年9月1日から2007年9月30日に観測された421イベントのデータを用いた。一方、地質構造は、反射法地震探査結果を用いたバランス断面図を基に、三次元地質構造モデルを構築した。両者を比較した結果、深度の違いはあるが、震源は西から東に向かって深くなっていく分布や北北西-南南東方向に分布する傾向は、断層などの地質構造の形態の傾向と似通っていることが分かった。このことから、震源分布と地質構造とは相関関係があり、両者を比較することで、活動域の特定に関して有益な情報を得ることができると考えられる。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40054 (CD-ROM)
2010
H. Saegusa, S. Takeuchi, K. Maekawa, H. Osawa and T. Semba

TECHNICAL KNOW-HOW FOR MODELING OF GEOLOGICAL ENVIRONMENT (1) OVERVIEW AND GROUNDWATER FLOW MODELING

地質環境モデルの不確実性を評価することは、調査計画立案における重要因子の抽出や優先順位付けを行うために重要である。このことから、地質環境モデルの構築結果に基づく調査計画の策定が必要となる。本研究では、瑞浪における超深地層研究所計画や幌延深地層研究所計画での経験に基づき、地上からの調査計画立案のために必要な地下水流動モデル構築に関わる技術的ノウハウや意思決定過程の表出化を試みた。この地下水流動モデルは、地質環境モデル構築領域の設定や設定した領域内の地下水流動特性の評価に用いられるものである。本報では、文献情報に基づく地下水流動モデル構築の作業フローや意思決定過程について取りまとめた。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40062 (CD-ROM)
2010
S. Daimaru, R. Takeuchi, M. Takeda and M. Ishibashi

HYDROGEOLOGICAL CHARACTERIZATION BASED ON LONG TERM GROUNDWATER PRESSURE MONITORING

日本原子力研究開発機構は岐阜県瑞浪市において超深地層研究所計画を進めている。この計画は「第一段階:地表からの調査予測研究段階」、「第二段階:研究坑道の掘削に伴う研究段階」、「第三段階:研究坑道を利用した研究段階」の三つの段階に区分して進められている。第二段階調査において、立坑掘削に伴う地下水流動の変化に関する情報を得るため、研究所用地内とその周辺において長期水圧モニタリングが実施されている。立坑掘削に伴う地下水圧の変化は、大規模な揚水試験とみなすことができる。本研究では、第二段階における長期水圧モニタリング結果にCooper-Jacobの直線勾配法によるs-log(t⁄r2)プロットを用いてサイトスケールでの水理地質構造の推定を試みた。その結果、(1)研究所用地周辺の水理場は断層Aによって区切られており、断層Aが水理学的なバリアとして機能していることがわかった。(2)s-log(t⁄r2)によって計算された透水係数は1.0E-7m⁄sであった。(1)および(2)の結果は第一段階調査に基づく水理地質構造の概念モデルの妥当性を支持するものである。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40064 (CD-ROM)
2010
T. Kunimaru, K. Ota, K. Amano and W.R. Alexander

DEVELOPMENT OF A QUALITY MANAGEMENT SYSTEM (QMS) FOR BOREHOLE INVESTIGATIONS: PART 2 - EVALUATION OF APPLICABILITY OF QMS METHODOLOGY FOR THE HYDROCHEMICAL DATASET

地質環境の調査・評価における適切な品質管理システムは、地質環境調査の初期段階から必要とされる重要なツールの一つであり、それを整備し適用することによって調査・評価を効果的・効率的に実施することが可能となると考えられる。ただし、このためには使用する品質管理システムが目的に適合していることを継続的に確認し、その適用した結果に基づき、品質管理システムを改善していくことが重要であると考えられる。幌延深地層研究計画では、これまでにスウェーデンのサイト特性調査において適用された地下水水質の品質保証の手法に加え、新たに提案した間隙水水質の品質保証の手法を用いて、HDB-1〜11孔の地下水および間隙水の地球化学データセットの品質保証区分を実施した。本報告では、地下水および間隙水の地球化学データセットについて品質保証区分を行った結果を示す。さらに、このような品質保証区分は、品質保証を実施する実施者に依存しない客観性を確保することが重要であることから、複数の専門家で実施した品質保証区分の比較結果についても報告する。その結果示される品質管理システムの課題に基づき、品質管理システムの高度化の必要性を示した。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40065 (CD-ROM)
2010
T. Matsuoka, K. Amano, H. Osawa and T. Semba

TECHNICAL KNOW-HOW FOR MODELING OF A GEOLOGICAL ENVIRONMENT: PART 2 — GEOLOGICAL MODELING

ある場所における地質環境特性に関する調査(サイト特性調査)においては、1 収集・整理した情報に基づく地質環境モデルの構築、2 構築した地質環境モデルに基づく調査計画の策定、3 調査による情報の収集、を実施することにより、地質環境の理解度を向上させていくことが重要である。このサイト特性調査は、長期にわたって段階的に進められるものである。したがって、一連の作業に関わる意思決定過程を透明性・追跡性を持って管理することや、作業を通じて逐次蓄積される経験・ノウハウを世代間で継承することが、技術継承や人材育成の観点から重要となる。日本原子力研究開発機構では、これまでに岐阜県東濃地域、北海道幌延地域で進めている地質環境調査技術開発において蓄積した経験・ノウハウ及び意思決定過程などの整理を行っている。また、これらの知識を管理するためのツールの一つとして、整理した情報をウェブを介して利用可能とするエキスパートシステム(ES)の開発を行っている。本研究では、ESに反映するための作業として、これまでに蓄積してきた経験・ノウハウに基づき、文献調査で得られる情報を用いた地質モデルの構築に関して考え方を整理し、作業の流れについてフロー図を用いて整理した。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40066 (CD-ROM)
2010
H. Sato

AN ANALYTICAL MODEL ON THE SEALING PERFORMANCE OF SPACE FOR THE DESIGN OF BUFFER MATERIAL AND BACKFILL MATERIAL

緩衝材や埋め戻し材として使用されるベントナイトに対しては、含水に伴って起こる膨潤によるオーバーパックや坑道壁間との隙間充填機能が期待されている。これまでに、緩衝材や埋め戻し材仕様に対するベントナイトのシーリング特性が蒸留水や海水条件で測定されており、例えば、「第2次取りまとめ」のレファレンスケースのクニゲルV1に対する実験では、乾燥密度1.8Mg⁄m3、隙間率10%に対して、有効粘土密度を指標とした体積膨潤量で表しており、密度1.3Mg⁄m3以上であれば海水条件であってもシーリングされると報告されている。これらの情報は、隙間シーリングの可否を判断する上で有用であるが、同一の有効粘土密度に対してベントナイト含有率の異なる条件が複数存在できるため、骨材混合率やベントナイトの種類が異なる場合には原理的に適用する事が出来ない。従って、ベントナイト乾燥密度、モンモリロナイト含有率、骨材混合率及び溶液条件を考慮した上で個別に隙間シーリングの可否を判断する必要がある。本研究では、ベントナイト中のモンモリロナイトの膨潤特性に着目し、圧縮ベントナイトの自由膨潤平衡時の体積膨潤比の実測データに基づいて、モンモリロナイト含有率の異なるベントナイトに対して、様々な塩濃度、乾燥密度、骨材混合率での体積膨潤比や最大充填隙間比を解析できる理論を構築した。これにより、様々な条件での緩衝材や埋め戻し材の隙間充填特性を解析する事が出来る。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40067 (CD-ROM)
2010
T. Mizuno, A.E. Milodowski and T. Iwatsuki

EVALUATION OF THE LONG-TERM EVOLUTION OF THE GROUNDWATER SYSTEM IN THE MIZUNAMI AREA, JAPAN

岐阜県東濃地域に分布する土岐花崗岩を対象として、過去の地下水環境の長期変化を推定するために、花崗岩中の割れ目に発達する自形方解石を対象とした古水理地質学的研究を実施した。方解石の結晶形から沈殿時期が4つに区分でき(古い時代からI、II、III、IV)、沈殿時期の境界では地下水の化学環境が変化したことが明らかとなった。沈殿時期III(18Ma〜15Ma)では、東濃地域の地下水が海水に置換されたと考えられ、現在確認できるNa-Cl型地下水はこの時期に浸透した海水であり、その後、沈殿時期IVの間の淡水による置換により現在の不均質な分布が形成されたと考えられる。この間、東濃地域の地形は平坦であったことから、北部における山地の隆起が始まる1Maまでの地下水流動の主な駆動力は海進、海退に伴う水位の変化であと考えられる。以上のように、方解石を対象とした古水理地質学的研究の結果、地下水の化学環境だけでなく、その流動状態の長期変化についても考察することができ、過去の地質環境を推定するための重要な知見となることを示すことができた。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40070 (CD-ROM)
2010
Y. Yamamoto, D. Aosai and T. Mizuno

EVALUATION OF BEHAVIOR OF RARE EARTH ELEMENTS BASED ON DETERMINATION OF CHEMICAL STATE IN GROUNDWATER ON GRANITE

原位置の被圧・嫌気状態を保持したままの限界ろ過法、天然有機物の寄与を考慮した希土類元素(REEs)の化学種計算、地下水中のREEsの錯体種の錯生成定数のREEパターンを用いた指紋法を組みあせて、地下水中のREEsの化学状態を決定した。地下水試料は岐阜県に位置する瑞浪超深地層研究所内の地下200mから掘削されたボーリング孔より採水した。メンブレンフィルター上に回収されたコロイドについても分光分析を行い、コロイド配位子の化学的性質を推定した。地下水中のREEsの化学状態は腐植物質錯体が支配的であることが、地下水の分析結果より示された。地下水中に腐植物質が存在することは、コロイドの分光分析によっても示された。REEsの挙動は腐植物質に依存していることが予想される。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40072 (CD-ROM)
2010
D. Aosai, Y. Yamamoto and T. Mizuno

DEVELOPMENT OF NEW ULTRAFILTRATION TECHNIQUES MAINTAINING IN-SITU HYDROCHEMICAL CONDITIONS FOR COLLOIDAL STUDY

元素の挙動を把握するうえで、分子のサイズ分布は重要な情報である。分子のサイズ分布は、地下水の物理的及び化学的状態に支配されるが、地下水は一般に被圧・嫌気状態で存在しており、採取時の脱ガスや酸化によって地下水の物理的及び化学的状態が変化するという問題を抱えている。そのため、地下水中における元素の挙動を把握するためには、地下水の化学的状態に関する情報を、原位置の環境を保持したまま取得することが必要である。本研究では、地下水を被圧・嫌気状態を保持したままろ過する手法を開発した。手法の開発後、岐阜県瑞浪市で建設中の瑞浪超深地層研究所深度200m地点のボーリング孔を利用して地下水を被圧・嫌気状態を保持したままろ過し採取した。ろ液について化学成分分析を実施し、得られた結果から、手法の妥当性を評価し、地下水を被圧・嫌気状態を保持したままろ過できることを確認した。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40074 (CD-ROM)
2010
S. Takeuchi, T. Kunimaru, K. Ota and B. Frieg

DEVELOPMENT OF THE QUALITY MANAGEMENT SYSTEM FOR BOREHOLE INVESTIGATIONS: PART 1 — QUALITY ASSURANCE AND QUALITY CONTROL METHODOLOGY FOR HYDRAULIC PACKER TESTING

深層ボーリング孔における水理試験を深地層の研究施設計画の中で実施してきた。水理試験で取得された結果(透水量係数やフローモデルなど)は水理地質構造の概念構築や地下水流動解析に利用される。したがって、水理試験の品質はモデル化や解析の信頼性にとって非常に重要な要素である。このため、JAEAでは、試験データの取得からデータ解析に至る一連の水理試験に関する品質保証⁄品質管理システムを構築した。構築したシステムを最近の現場試験に適用した、その適用性を確認した。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba(Japan)
Proceedings of ICEM2010-40098 (CD-ROM)
2010
Y. Iyatomi, H. Hoshina, N. Seko, N. Kasai, Y. Ueki and M. Tamada

REMOVAL OF FLUORINE AND BORON FROM GROUNDWATER USING RADIATION-INDUCED GRAFT POLYMERIZATION ADSORBENT AT MIZUNAMI UNDERGROUND RESEARCH LABORATORY

排水に含まれる高濃度のフッ素とホウ素は、一般的に凝集沈殿およびイオン交換処理によって除去される。それらの処理方法に変わるものとして、放射線グラフト捕集材(以下、捕集材)を用いて湧水中のフッ素およびホウ素の効率的な除去について適用性を確認する試験を行った。また、湧水の通水速度を変化させたり、捕集材の繰り返し利用試験を行って、捕集材の耐久性についても把握した。
その結果、捕集材は湧水中のフッ素およびホウ素を95%以上除去可能であり、ホウ素除去については一般的な処理方法であるイオン交換樹脂よりも効率が良いことが分かった。さらに、捕集材は繰り返し利用も可能であることから、効率的なホウ素除去に適用可能であることが明らかになった。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40099 (CD-ROM)
2010
T. Tokiwa, K. Asamori, T. Niizato, T. Nohara, Y. Matsuura and H. Kosaka

AN ATTEMPT TO EVALUATE HORIZONTAL CRUSTAL MOVEMENT BY GEODETIC AND GEOLOGICAL APPROACH IN THE HORONOBE AREA, NORTHERN HOKKAIDO, JAPAN

地質環境の長期安定性を考える上で、地殻変動に関する情報を把握することは重要である。本研究では、幌延地域を事例として、GPSによる測地学的手法と地質断面を用いた地質学的手法による地殻の水平変位速度を推定するための検討を行った。その結果、両手法から求めた水平変位速度やその方向は類似していた。地層処分システムの長期挙動の予測では、その対象期間が万年オーダー以上となるため、一見地質学的手法が重要であると考えられる。しかし、今回の結果から、測地学的手法が長期の地殻変動を推定する上で有益な情報を提供する可能性があることが明らかとなった。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40189 (CD-ROM)
2010
R. Nakata, Y. Takahashi, G. Zheng, Y. Yamamoto and H. Shimizu

Abundances of rare earth elements in crude oils and their partitions in water

中国、新彊ウイグル自治区の泥火山より採取した原油および共存する水の中の希土類元素の存在度を世界ではじめて報告した。原油は軽希土類元素に富み、重希土類元素に枯渇した相対存在度パターンを示した。原油中の希土類元素濃度は共存水より百倍高かった。原油の疎水性と希土類元素イオンの性質を考慮すると、原油中の希土類元素は錯体として存在していると考えられる。13C-NMRの分析によると、原油中にはフェノール基とカルボキシル基が含まれており、希土類元素はそれらの官能基に錯生成していると考えられる。原油中の希土類元素の相対存在度パターンは泥火山中の泥のパターンと類似しており、原油中の希土類元素は原油が発生した岩石もしくは堆積物から供給されたと考えられる。

Geochemical Journal Vol.44 No.5 pp.411-418 2010
Y. Takahashi, M. Yamamoto, Y. Yamamoto and K. Tanaka

EXAFS study on the cause of enrichment of heavy REEs on bacterial cell surfaces

希土類元素の相対存在度のパターン(REEパターン)は様々な天然の物質で観測されるユニークな地球化学的トレーサーである。バクテリアに吸着したREEのパターンは重希土類元素(HREE)を濃集し、天然試料におけるバクテリア関与の指標に成りえる。本研究では広域X線吸収微細構造(EXAFS)とバクテリアへのREEの分配パターンを用いて、バクテリアの細胞表面へのHREEの濃集機構の解明を試みた。EXAFSの結果より、HREEは低REE⁄バクテリア比環境では多座リン酸基に結合しているが、高REE⁄バクテリア比ではカルボキシル基に結合していることが示された。一方、軽希土類元素および中希土類元素は低REE⁄バクテリア比において低配座数のリン酸基に結合し、高REE⁄バクテリア比ではカルボキシル基に結合していることが示された。REE⁄バクテリア比の変化に伴うバクテリアへのREEの分配パターンの変化は、EXAFSの結果と整合的であった。バクテリアの細胞表面へのHREEの濃集は多座リン酸基による安定な錯体の形成が原因であることがEXAFSによって示された。多座リン酸基はバクテリア以外の天然試料では見られない特徴であり、本研究の結果はバクテリアが関与した試料のREEパターンがバイオマーカーとして利用出来る可能性を示した。

Geochemical et Cosmochimica Acta Vol.74 No.19 pp.5443-5462 2010
T. Tanno, T. Hirano and H. Matsui

Development of Method for Evaluation of Three Dimensional Distribution of in situ Stress State and Preliminary Estimation of Applicability

日本原子力研究開発機構は、地表からの調査段階で実施した初期応力測定結果から施設スケールにおける初期応力分布を精度良く評価する手法を開発してきた。本評価手法では、応力場が重力に起因する応力成分と地殻運動による水平応力成分から形成されると仮定し、また、領域内の初期応力状態に影響する岩種の相違や断層などの地質的不均一性のモデル化が必要であるとした。これを踏まえて、3次元有限要素法および3次元境界要素法を用いた二種類の数値モデルを構築した。次いで、その検証として、これらのモデルを用いて、瑞浪超深地層研究所周辺の初期応力評価を行った。その評価において、外力は未知数であるが、初期応力測定結果を用いた逆解析で求めることができ、この外力を用いて、順解析により瑞浪超深地層研究所周辺の応力状態を計算した。現在施工中である瑞浪超深地層研究所の深度100mおよび深度200mで応力測定を実施し、解析結果と比較した。その結果、解析された初期応力状態は、モデル化された地質的不均一性に依存して二種類の解析モデルで異なるものの、深度100mおよび深度200mの測定結果と概ね一致した。

The 5th International Symposium on In-situ Rock Stress Beijing (China) Rock Stress and Earthquakes; Proceedings of 5th International Symposium on In-situ Rock Stress (ISRS-5) pp.521-526 2010
S. Yamamoto, M. Honda, H. Sakurai, M. Suzuki, H. Sanada, Y. Sugita and H. Matsui

Geostatistical Modeling of Groundwater Properties and Assessment of their Uncertainties

高レベル放射性廃棄物の地層処分での処分場の設計においては、地下水水質分が明らかになれば地下深部水理地質環境を理解することが出来る。本研究は、広範囲で網羅的に調査されている比抵抗値と関連性がある地下水の化学的特性をモデル化する地球統計学的手法を提案するものである。提案するシステムは2つの手法を組み合わせており、一つはクリギング手法を用いた比抵抗データの統合、もう一つはクリギングによる水理地球化学特性の3次元モデル化である。偶然の不確実性と認識された不確実の2種類の不確実性が明らかになったが、提案した手法によるこれらの不確実性は、従来のモデルの不確実性よりも小さかった。

IAMG 2010 (The 14th Annual Conference of the International Association for Mathematical Geosciences) Budapest (Hungary)
Proceedings of 14th Annual Conference of the International Association for Mathematical Geosciences (IAMG 2010) (CD-ROM) 12 Pages
2010
C. T. Mills, Y. Amano, G. F. Slater, R. F. Dias, T. Iwatsuki and K. W. Mandernack

Microbial carbon cycling in oligotrophic regional aquifers near the Tono Uranium Mine, Japan as inferred from δ13C and Δ14C values of in situ phospholipid fatty acids and carbon sources

微生物は地下環境に普遍的に存在しているが、それらが炭素循環に果たす役割については未解明である。微生物細胞膜の脂質分析を行い、炭素の同位体を測定した。その結果、一般的な細菌のバイオマーカーに加えて、メタン酸化細菌(type II)のバイオマーカーが検出された。type IIメタン酸化細菌の脂肪酸におけるΔ14Cは、溶存無機炭素のΔ14Cの値と非常に近い値であることが明らかとなった。この結果は、type IIメタン酸化細菌が、その全ての炭素源を溶存無機炭素あるいは無機炭素から生成されたメタンとしていることを示唆している。一方で、type II脂肪酸のδ13C値は堆積岩地下水と花崗岩地下水で異なっていることから、それぞれの地下水でメタンの炭素同位体比は非常に近い値を示しているにもかかわらず、堆積岩と花崗岩地下水に生息する微生物は異なる炭素同化作用構造を有していることが示唆された。脂肪酸の14C測定結果から、多くの従属栄養性微生物は古い時代に堆積したリグナイト由来の有機物を利用していることが示唆された。

Geochimica et Cosmochimica Acta Vol.74 No.13 pp.3785-3805 2010
A. Fukuda, H. Hagiwara, T. Ishimura, M. Kouduka, S. Ioka, Y. Amano, U. Tsunogai, Y. Suzuki and T. Mizuno

Geomicrobiological Properties of Ultra-Deep Granitic Groundwater from the Mizunami Underground Research Laboratory (MIU), Central Japan

花崗岩深部においても微生物の生態系がみられることが知られているが、そのバイオマスや生物多様性、代謝活性を制限する地球化学的要因は明らかになっていない。今回、筆者らは地球化学特性と微生物学特性の関連性を明らかにするため、2005年および2008年に瑞浪超深地層研究所(MIU)用地内に掘削されたMIZ-1号孔より深度1,169m地点において採取された地下水試料の生物地球化学的特性の調査を行った。化学分析の結果、いずれの試料においても酸素や硝酸、硫酸等の電子受容体は乏しいものの、有機酸を含まない有機炭素に富むことがわかった。いずれの地下水においても、優占する微生物種は、芳香族や脂肪族炭化水素のような利用されにくい電子供与体を利用可能なThauera属に属する微生物であることがわかった。複数のエネルギー源や電子受容体を添加した3〜5週間の培養試験では、培養試験の条件にかかわらず、優占種がBrevundimonas属へと変化した。これらの生物地球化学調査の結果から、MIU深部では、酸素や硝酸の電子受容体と有機酸が乏しいことからThauera属が優占する環境が保持されていると考えられる。

Microbial Ecology Vol.60 No.1 pp.214-225 2010
Y. Sugita, T. Nakamura, H. Sanada, T. Aizawa and S. Ito

Seismic tomography investigation in 140m Gallery in the Horonobe URL project

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町に分布する堆積岩の深部地質環境を調査することにより地層処分技術に関する信頼性の向上を行っている。放射性廃棄物を深部地層に処分するために坑道を地下深部に掘削する場合、坑道の周囲には掘削影響領域が発生する。地下140mの調査坑道において、原位置掘削影響試験を行った。試験では、弾性波トモグラフィー調査を行った。調査領域は、坑道壁面近傍の3m四方のエリアである。調査坑道の掘削の進捗とともに弾性波トモグラフィー調査を繰り返し行い、坑道周囲に弾性波速度の変化領域が観測された。弾性波トモグラフィー調査は、坑道周囲に発生した掘削影響領域を捉える事が出来た。

2010 MRS Spring Meeting San Francisco (USA)
MRS Symposium Proceedings Vol.1265 AA06-03 pp.39-44
2010
K. Hatanaka, D.H. Lim and E. Ishii

Geo-Descriptive Modeling of Water Conducting Features Characterized in Sedimentary Formations in Horonobe Area of Japan

幌延地域の堆積岩中に分布する不連続な透水構造に着目して、3次元不連続亀裂ネットワークモデルを構築した。具体的には、幌延深地層研究計画における主たる調査研究場所である研究所設置地区周辺に分布する亀裂⁄断層系を、地上からの調査研究で取得した物理検層データ、地質学的なデータ、亀裂⁄断層データを考慮して特性の評価を行った。また、重要パラメータである亀裂⁄断層系の体積密度を他のデータとの相関性を考慮して推定し、3次元不連続亀裂ネットワークモデルを構築するに際してのベースとした。その結果、不連続な透水構造として同定された亀裂⁄断層システムについての3次元不連続亀裂ネットワークモデルが構築できた。このモデル化の方法は、我が国の高レベル放射性廃棄物処分場の性能評価をする際のパラメータを導出するための根拠とすることができる。

2010 MRS Spring Meeting San Francisco (USA)
MRS Symposium Proceedings Vol.1265 AA06-04 pp.45-50
2010

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
田力正好、安江健一、柳田誠、古澤明、田中義文、守田益宗、須貝俊彦

土岐川(庄内川)流域の河成段丘と更新世中期以降の地形発達

過去10万年間程度の隆起量の推定手法の整備は、地質環境の長期安定性研究の重要な課題である。東北日本では、気候変動に連動して形成された河成段丘の比高を用いて隆起速度が広く推定されているが、西南日本においては、気候変動に伴って形成された河成段丘はほとんど報告されていない。本研究においては、西南日本の比較的小起伏な山地丘陵を流域とする土岐川沿いの河成段丘を対象とし、東北日本と同様な河床変動が生じているかどうか検討した。空中写真判読、14C年代測定、火山灰分析、花粉分析を行い、段丘の形成時期と形成環境を推定した結果、土岐川流域の河成段丘は気候変動に連動した河床変動の結果として形成されたことが分かった。段丘面の比高から最近10万年程度の土岐川流域の隆起速度は0.11–0.16m⁄千年と推定された。

地理学評論 Vol.84 No.2 pp.118-130 2011
田力正好、高田圭太、古澤明、須貝俊彦

利根川支流、鏑川流域における飯縄火山起源の中期更新世テフラ

地層処分においては、地質環境の長期的安定性を評価することが重要な課題となっている。その中でも隆起速度の評価は、長期的安定性を示すうえでの重要な課題である。ところが、内陸部の隆起速度を推定するための手法として用いられる、氷期の段丘同士の比高を指標とする方法(TT法)は、酸素同位体ステージ(MIS)6の段丘の編年に利用できる火山灰(テフラ)が少ないため、信頼性の高いデータが得られている地域は限られている。このため、本研究では、利根川支流の鏑川流域に分布する段丘面を覆う細粒堆積物中のテフラの同定を試みた。細粒堆積物中の火山灰起源粒子の岩石学的特徴と、長野県飯縄火山付近の露頭における飯縄火山起源テフラの岩石学的特徴を比較することにより、鏑川流域の中位段丘を覆う細粒堆積物の最下部に、飯縄上樽テフラ(In-Kt)の可能性が高いテフラが検出された。このことにより、鏑川流域の中位段丘はMIS6の堆積段丘である可能性が高いことが示され、関東北部及び東北南部の広い範囲にIn-Ktが分布し、TT法を用いて隆起速度がより広い範囲に渡って推定できる可能性が示された。

第四紀研究 Vol.50 No.1 pp.21-34 2011
梅田浩司

地熱活動

日本地質学会地質環境の長期安定性研究委員会では、地層処分や地下空間利用等を背景とした深部地質環境の理解に対する一般市民へのアウトリーチの一助として、日本列島に特有な地質現象である地殻変動や火成活動の特徴やそれに伴う将来の地質環境の変化について、わかりやすく解説したリーフレットを作成する予定である。本解説は、リーフレットのうち、第5章「日本列島の地熱活動」に相当する。ここでは、地温勾配分布コンター図を用いて、我が国の地熱活動の特徴を概観するとともに、第四紀火山との空間的分布の相関性について述べる。また、非火山地帯の高温異常域の存在とそれらの成因に関する最新の学術的知見について紹介する。

日本地質学会 リーフレット4「日本列島と地質環境の長期安定性」 2011
守田益宗、神谷千穂、佐々木俊法、宮城豊彦、須貝俊彦、柳田誠、古澤明、藤原治

岐阜県瑞浪市大湫盆地堆積物に記録された花粉化石群の変動 —酸素同位体ステージ9以降の植生と気候の変遷—

気候変動に伴う気温や降水量の変化は、地下水流動等の地質環境に変化を及ぼすことが想定される。そのため、過去から現在までの汎地球規模の気候変動のほか、ローカルな気候変動を把握するための調査技術が不可欠である。岐阜県瑞浪市の大湫地区には、直径数百mの楕円形の内陸小盆地が形成されており、これまでのボーリング調査によって、過去約30万年の堆積物が存在していることが確認されている。今回、このボーリングコア(25m)から10cmの詳細な間隔で試料の採取を行い、そこに含まれる花粉の種類によって当時の気候の復元を行った。その結果、同じ緯度にある近畿地方に比べて東濃地域では、間氷期には降水量が多いこと、氷期にはより寒冷・乾燥化していることが明らかになった。このことは、内陸小盆地の堆積物に含まれる花粉データを用いたモダンアナログ法が、ローカルな気候変動を推定するための有効な手法であることを示している。

季刊地理学 Vol.62 No.4 pp.195-210 2010
國分陽子、西澤章光、鈴木元孝、大脇好夫、西尾智博、松原章浩、石丸恒存

JAEA-AMS-TONOの現状(平成21年度)

日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターに設置されているタンデム型加速器質量分析計JAEA-AMS-TONOの平成21年度の運転状況及び装置の改善点について報告する。平成21年度の実績として846件の測定を行った。このうち、施設供用利用による外部研究による使用は251試料であった。また、平成9年3月に導入以降、運転時間のべ11466時間、平成21年度は1287時間であった。測定精度の向上を目指し、イオン電流の安定化を図るため、イオン源のセシウム蒸気輸送系の温度制御、ターミナル部のストリッパーガス圧の安定化、ビームラインのアライメントを行った。また、ビームラインのアライメント後、入射側電磁石の前の四重極レンズで放電が起こり、電磁石のテスラメータが故障したため、修理を行った。

第23回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 pp.45-48 2010
松原章浩、西澤章光、鈴木元孝、大脇好夫、西尾智博、國分陽子、石丸恒存

JAEA-AMS-TONOの装置改善(平成21年度)

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターにおけるタンデム型加速器質量分析計JAEA-AMS-TONOに関する平成21年度の改善点について報告する。報告内容は、主として1.イオン源のセシウム蒸気輸送系の温度制御、2.ターミナル部のストリッパーガス圧の安定化である。イオン源のセシウム蒸気輸送系の温度制御については、セシウム輸送管を独立して加熱するシステムを新規に導入し輸送管の温度制御を行った。また、ターミナル部のストリッパーガス圧の安定化については、ストリッパーガスのニードルバルブに断熱材を取り付けたところ、効果が見られた。

第23回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 pp.53-56 2010
根木健之、梅田浩司、松尾公一、浅森浩一、横井浩一、大原英史

MT法スペクトルデータの効率的且つ効果的な編集方法 —コヒーレントノイズに対する有効性—

MT法による地下深部の比抵抗構造探査を行う際には、解析結果とともに、調査によって測定されたデータの精度を客観的に評価し、さらにその品質に基づいて解析結果の信頼性を評価する必要性がある。その必要性から、本稿では、従来、調査者の経験とスキルに強く依存していた測定データの品質評価を客観的に行うことを目的として、「推定位相誤差」、「不連続性指標」、「エラーバー指標」を提案し、これらを数値化することにより、測定誤差量との関連性を検討した。その結果、「推定位相誤差」が測定誤差量との相関が極めて高いことが認められ、MT法測定データの測定誤差量を評価する際の有用なパラメータとして期待できる。さらに「推定位相誤差」、「不連続性指標」、「エラーバー指標」を総合的にまとめることで、客観的かつ安定的に、データの精度を評価する手法を提案した。

物理探査 Vol.63 No.5 pp.395-408 2010
丹羽雄一、須貝俊彦、大上隆史、田力正好、安江健一、藤原治

相対的海水準の急激な上昇イベントが示唆する養老断層系の完新世活動 —濃尾平野西縁におけるボーリングコアの解析から—

沿岸域における断層活動や海水準変動の調査・評価手法を確立することは、長期安定性研究の重要な課題である。本研究では、濃尾平野で掘削された3本のボーリングコア(KZ、KM、AN)の解析と14C年代測定値に基づいて完新統に残された急激な相対的海水準上昇の痕跡と平野西縁を画する養老断層系の活動との関係を検討した。調査の結果、急激な相対的海水準上昇に起因するデルタフロント堆積物の一時的な細粒化が4700年前から5600年前の間にKM地点とAN地点で、4000年前にはKZ地点とAN地点で検出され、海水の侵入に起因する放棄チャネル堆積物の高EC値が4300から1000年前の間に検出された。これらの海水準上昇イベントは養老断層の活動による地震性沈降に起因する可能性が高い。これらのイベントは養老断層系の一部をなす桑名断層の活動イベントと概ね時期が同じである。このことは養老断層と桑名断層が同一の活動セグメントを構成するという既存研究の見解を支持する。以上の結果から、平野の堆積物の分析から断層活動・海水準変動を評価する見通しが示された。

地学雑誌 Vol.119 No.4 pp.668-682 2010

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Umeda, K. Asamori, T. Negi and T. Kusano

A large intraplate earthquake triggered by latent magmatism

2000年10月に発生した鳥取県西部地震はMj=7.3の巨大な内陸地震であったにもかかわらず地表には明瞭な地震断層を生じなかった。しかしながら、その後の解析によって、地震を引き起こしたのは未成熟な断層であり、震源断層からの主破壊は地下1–2kmまで達したものの、地表ではいくつかに分散する僅かな横ずれ変位しか生じなかったことが明らかにされた。本研究では、未成熟な震源断層を検出する手法として、地磁気・地電流観測に基づく比抵抗構造解析と地下水中のヘリウム同位体の観測をそれぞれ適用した。その結果、鳥取県西部地震を引き起こした震源断層の南西側の中部–下部地殻には溶融体が存在することが明らかになった。また、溶融体の周辺には低周波地震も発生していることから、溶融体から放出された流体が震源断層の活動と密接に関連することが示唆される。

Journal of Geophysical Research Vol.116 No.B1 pp.B01207_1 - B01207_12 2011
T. Hanamuro, K. Yasue, Y. Kokubu, K. Asamori, T. Ishimaru and K. Umeda

CURRENT R&D ACTIVITIES IN THE STUDY ON GEOSPHERE STABILITY

日本列島は地震や火山活動が多い変動帯に位置しており、わが国において高レベル放射性廃棄物の地層処分を考える場合にはこれらの自然現象についての理解と長期的な活動性の評価が不可欠である。原子力機構では、サイト選定や安全評価にとって必要な地質環境の長期安定性に関する調査・評価手法の構築を進めている。本報告では、原子力機構で実施している研究開発の成果及び今後の取り組みの概要について報告する。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40018 (CD-ROM)
2010
E. Sasao

THE LONG-TERM STABILITY OF GEOLOGICAL ENVIRONMENTS IN THE VARIOUS ROCK TYPES IN JAPAN FROM THE PERSPECTIVE OF URANIUM MINERALIZATION

地質学的な変動帯に位置するわが国において、地層処分の安全性に対する信頼性をさらに向上させるために、天然の事例としてウラン鉱床の保存状況に関する情報を活用して、わが国の多様な地質環境における核種の移行・保持挙動についての理解を深めることが有益である。そこで、既存の文献情報に基づいて、岩石種ごとのウラン鉱床の存在状況を整理した。国内で認められるウラン鉱床は主に新第三紀の堆積岩中および花崗岩中に存在する。花崗岩中のものは鉱脈型金属鉱床に伴って存在するが、同様なウラン鉱床は中生代の堆積岩および変成岩中でも認められる。このほか、中生代の堆積岩では層状マンガン鉱床に伴うウラン鉱床も存在する。このように様々な時代の多様な岩石中にウラン鉱床が存在することは、日本列島のような変動帯においても地層処分に適した地質環境が広く存在することを示している。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40039 (CD-ROM)
2010
T. Niizato, K. Amano, K. Ota, T. Kunimaru, B. Lanyon and W. R. Alexander

DEVELOPMENT OF COMPREHENSIVE TECHNIQUES FOR COASTAL SITE CHARACTERISATION
(3) CONCEPTUALISATION OF LONG-TERM GEOSPHERE EVOLUTION

地層処分システムの長期的な安全性に係る信頼性を向上させるためには、地質環境の有する安全機能が長期にわたり維持されることを示すための調査・解析手法や論拠の整備が不可欠である。このためには、対象とする地質環境特性の過去から現在に至る変遷の評価が重要であり、その結果に基づいて、地質環境特性の変遷を考慮した安全機能の維持や両者の関係性が評価される。原子力機構では、沿岸域における地質環境特性の長期変遷を評価するための総合的な調査・解析・評価技術の整備について、北海道北部幌延町の沿岸域を事例として進めている。本研究では、幌延地域で過去に生じた気候・海水準変動や地殻変動の特徴とともに、それらを考慮して構築した幌延地域における地質環境の長期変遷に関する概念モデルを提示する。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40052 (CD-ROM)
2010
K. Ota, K. Amano, T. Niizato, W.R. Alexander and Y. Yamanaka

DEVELOPMENT OF COMPREHENSIVE TECHNIQUES FOR COASTAL SITE CHARACTERISATION
(1) STRATEGIC OVERVIEW

地層処分システムの長期的な安全性の評価においては、地質環境の有する安全機能が長期にわたり維持されることを示すための解析結果や論拠の整備が不可欠である。このためには、まず対象とする地質環境特性の過去から現在に至る変遷の評価が重要であり、その結果に基づき、将来にわたる地質環境特性の変遷を考慮した安全機能の維持や両者の関係性が評価される。わが国においては、とくに地形変化や気候・海水準変動に伴う沿岸域の地質環境特性の長期変遷の評価が重要であり、このための総合的な調査・評価技術の整備が課題となっている。原子力機構では、この観点から、北海道幌延町の沿岸域を事例とした取り組みを進めており、これまでに、沿岸域における地質環境特性の長期変遷を考慮した調査・評価の体系的な枠組みを示す「統合化データフローダイアグラム」を構築し、それに基づき沿岸域の地質環境を段階的に調査・評価するための方法論を整備した。今後、幌延町の沿岸域において進めている地質環境調査を通じて方法論の見直しを図っていく。

13th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM'10) Tsukuba (Japan)
Proceedings of ICEM2010-40056 (CD-ROM)
2010
K. Asamori, K. Umeda, Y. Ogawa and T. Oikawa

Electrical resistivity structure and helium isotopes around Naruko Volcano, northeastern Japan and its implication for the distribution of crustal magma

地質環境の長期安定性を検討する上では、地下深部のマグマ・高温流体等の存在の有無を把握することが必要不可欠である。本件では、地下深部のマグマ・高温流体等の調査技術の開発の一環として、鳴子火山周辺地域を対象としたMT法による地下比抵抗構造調査及び温泉ガスの希ガス同位体比測定を実施した。その結果、当該火山下の地殻において、地下深部のマグマ及びそれに関連する水等の流体の存在を示唆する低比抵抗体が認められたほか、地表において有意に高いヘリウム同位体比が確認された。以上の結果は、当該調査技術がマグマ・高温流体等の存在の有無を確認する方法として有効であることを示していると考えられる。

International Journal of Geophysics Volume 2010 Article ID 738139, (7pages) 2010
K. Umeda, A. Ninomiya and K. Asamori

Release of Mantle Helium and Its Tectonic Implications

不活性の単原子ガスであるヘリウムは、その大きさや質量が小さいため、地殻内の拡散性(diffusibility)や浸透性(permeability)に優れている。そのため、マントル起源のヘリウムは、地殻中のマントル起源物質の存在を知る上で重要な化学的指標の一つと考えられる。本報では、飯豊山地や鳥取県西部地震震源域の地下水の溶存ガスに含まれるヘリウム同位体比の特徴やその原因に関するこれまでの研究事例をレビューするとともに、北米プレートとユーラシアプレートの境界にあたる糸魚川−静岡構造線での観測結果を報告する。また、地下水中の溶存ガスを用いた地球化学的アプローチが地下深部のマグマや震源断層の検出に有効な手法であることを紹介する。

Helium: Characteristics, Compounds, and Applications (Chapter3) 2010

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