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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成20年度分)

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全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
清水和彦

高レベル放射性廃棄物の地層処分をめざして —トイレなきマンションから持続可能な社会へ—

原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は何万年にもわたって放射能が持続する。いつまでも人間が管理しておくわけにはいかない。「トイレなきマンション」と揶揄されるが、世界は半世紀も前から、深地層への埋設処分を目指して取り組んできた。日本でも1976年から研究を進めている。その成果を集大成した2000年レポートを契機に、日本の地層処分は事業段階に踏み出した。2002年から実施主体であるNUMOが候補地を募集しているが、まだ調査に入った地域はない。世界を見ても、高レベル放射性廃棄物の処分を開始した国はなく、多くの国が計画の遅延や見直しを余儀なくされている。日本では、2030年代中頃に地層処分を開始する計画であり、まだ25年から30年の猶予がある。ただし、そこに到達するためには、今から候補地を確保し、段階的な調査に基づく意思決定のプロセスをたどっていく必要がある。正念場を迎えた日本の地層処分事業を推進していくため、国、NUMO、電気事業者が取り組みを強化している。研究開発が果たすべき役割も大きい。

日本原子力学会誌 Vol.51 No.3 pp.153-159 2009
日置一雅

IAEAの放射性廃棄物安全基準 —経緯、現状、将来展望

国際原子力機関(IAEA)の放射性廃棄物管理に関する安全基準策定の経緯、現状、将来展望について解説する。

原安協だより 第.226号 pp.3-10 2008
梅木博之

放射性廃棄物に関するIAEA安全基準とセーフティケース

国際原子力機関(IAEA)によって策定が進められている体系的な安全基準文書の一つとして出版された放射性廃棄物の地層処分に関する安全要件文書(WS-R-4)では、安全基準文書として初めて「セーフティケース(safety case)」の概念が導入されている。本稿では、セーフティケースにかかわる国際的な議論、特にこの安全基準文書を共同出版した経済協力開発機構/原子力機関(OECD⁄NEA)における検討経緯なども含めて、セーフティケース概念に関する概説を試み、安全基準文書の理解の一助とする。

原安協だより 第225号 pp.3-7 2008

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Makino, H. Umeki, K. Hioki and I. G. Mckinley

The Challenge of Development of a Holistic Waste Management Approach to Support the Nuclear Renaissance

経済産業省資源エネルギー庁の受託事業として日本原子力研究開発機構が進める「先進的地層処分概念・性能評価技術高度化開発」の取り組みと平成19年度の進捗を報告する。

Waste Management Symposium 2009 (WM '09) Waste Management for the Nuclear Renaissance Phoenix, Arizona(USA) 2009
H. Osawa, H. Umeki, K. Ota, K. Hama, A. Sawada, S. Takeuchi, T. Semba, H. Takase and I. G. Mckinley

Development of Next-generation Technology for Integrated Site Characterization of Deep Geological Repositories

地層処分のサイト特性調査では、段階的に調査を進めながら、サイトの地質環境条件や社会的要件などに応じて適宜、調査計画を見直し、処分場の設計や性能評価に用いる情報を体系的に整備していく必要がある。本事業は、このような作業を円滑に進めるため、調査の進展に伴って増加・詳細化されてくる地質環境情報に基づいて、その後の調査計画を効率的に最適化していくためのコンピュータ支援システム(次世代型サイト特性調査情報統合システム:Information Synthesis and Interpretation System)の開発を目指すものである。これまで、システムの基本設計として、深地層の研究施設計画での調査実績などを踏まえて、調査を通じて得られる知識・経験・ノウハウなどを保管しておく「知識ベース」や、調査の計画立案・実施・評価を支援するための「エキスパートシステム」などから構成されるISISの全体構造を構築した。また、地球化学分野を事例として、調査・評価にかかわる専門家のノウハウや判断根拠などの表出化・ルールベース化を試みた。本稿ではそれらの成果を紹介する。

Waste Management Symposium 2009 (WM '09) Waste Management for the Nuclear Renaissance Phoenix, Arizona (USA) 2009
T. Seo, E. Sasao, S. Notoya and K. Shimizu

R&D Supporting the Technology for Safe and Practical HLW Disposal in Japan

日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業の実施と安全規制の双方に寄与することを目的として高レベル放射性廃棄物処分技術に関する研究開発を行ってきた。この研究開発は地層環境、地層処分工学技術及び性能評価まで多岐に渡っている。二つの地下試験施設(瑞浪と幌延)においては、地表からの調査が完了し、主立坑及び換気立坑の掘削が進められている。火山活動や断層といった天然現象の研究も実施中である。地層処分基盤研究施設や地層処分放射科学研究施設ではニアフィールドにおける定量的な長期評価のためのモデル開発及びデータベースの整備に関連した工学技術の開発が行われている。これらの研究開発の成果及び膨大なデータを管理するために、原子力機構では実施主体と規制当局の双方を支援するための技術基盤を提供する、知識マネジメントシステムを開発する新規プロジェクトを開始したところである。

16th Pacific Basin Nuclear Conference (16PBNC) Aomori (Japan) 2008
H. Umeki, E. K. Forinash, C. Davies, D. Bennett, A. Hooper, A. Van Luik and S. Voinis

THE EC⁄NEA ENGINEERED BARRIER SYSTEMS PROJECT

OECD⁄NEAとECは、5年間に渡り、人工バリアの設計、建設、試験、モデリング及び性能評価をいかに実施し、これをセーフティケースとして統合するかという課題を検討するための国際共同プロジェクトを進めてきた。本論文では、人工バリア開発に関する一連のプロセスについての一般的概念を論ずるとともに、各国の地層処分計画における事例を検討し本課題に関して得られた経験・教訓について紹介する。

International Conference Underground Disposal Unit Design & Emplacement Processes for a Deep Geological Repository (CD) Prague (Czech Republic) 2008
I. G. Mckinley, M. Apted, H. Umeki and H. Kawamura

CAVERN DISPOSAL CONCEPTS FOR HLW/SF: ASSURING OPERATIONAL PRACTICALITY AND SAFETY WITH MAXIMUM PROGRAMME FLEXIBILITY

高レベル放射性廃棄物や使用済燃料に関する地層処分概念は、各国の処分計画の初期段階において開発されたものであり、科学技術的知見や要件などの境界条件が現在と異なっている。このような条件は今後も数十年以上をかけて進められるプロジェクトの中で変化することが予想される。このような変化を予見し、柔軟性を最大化できるような処分概念検討を行っておくことは有益である。本論文では、特に操業の実行可能性と安全性に焦点を当てた代替概念「CARE概念」について紹介する。

International Conference Underground Disposal Unit Design & Emplacement Processes for a Deep Geological Repository (CD) Prague (Czech Republic) 2008

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
松本一浩、棚井憲治

X線CTスキャナによる亀裂内侵入ベントナイトの密度測定に関する適用性

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、廃棄体埋設後における人工バリアの長期健全性を評価するための評価手法の構築と、その評価手法の信頼性を高めることにより、安全評価における不確実性を低減させることが重要な課題である。本研究では、地層処分研究において懸念される事象の一つである緩衝材の岩盤亀裂中への侵入現象について、現象理解とより現実的な評価手法の構築に反映するために、X線CTスキャナを適用した模擬亀裂中におけるベントナイトの侵入密度測定を試み、その適用性を考察した。

原子力バックエンド研究 Vol.15 No.1 pp.27-35 2008

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Naito, Y. Saito, K. Tanai and M. Yui

Experimental Study on the Effects of Fault Movement on the Engineered Barrier System

放射性廃棄物地層処分のサイト特性調査段階で特定することが困難な規模の断層が新たに発生し、人工バリアシステムに影響を与えると想定した場合、そのプロセスを理解するために実験的なアプローチを採用した。実験は室内試験装置を用いて行った。これまでのせん断試験の結果から、金属製のオーバーパックは緩衝材が有する可塑性により緩衝材中で回転するものの破損には至らないことが示された。また試験装置の性能によって制約される試験範囲を補完するため、数値モデルによる解析も実施した。

Journal of Power and Energy Systems (Internet)
Vol.3 No.1 pp.158-169
2009
Y. Yokoyama, H. Mitsui, R. Takahashi, H. Asano, N. Taniguchi and M. Naito

Corrosion Behavior of Weld Zone of Carbon Steel Overpack for HLW Geological Disposal

日本では高レベル放射性廃棄物の地層処分用容器のオーバーパック材料として炭素鋼が候補材として検討されている。オーバーパックには、内包するガラス固化体を地下水との接触から1,000年間隔離する機能(閉じ込め性)が求められており、機械的特性や放射線防護特性、耐食性を考慮して1,000年間の健全性が評価されている。耐食性については、JAEA(JNC)によって示された腐食シナリオに基づいて炭素鋼オーバーパックの腐食挙動が評価されている。しかし、溶接部の埋設後の腐食挙動については長期健全性の評価に資する十分なデータがない。溶接部(溶接金属及び熱影響部)と母材は材料の性状が異なるため、溶接部の耐食性も母材と異なる可能性がある。そこで本研究では、TIG溶接(GTAW)、 MAG溶接(GMAW)、 EBW(電子ビーム溶接)の溶接部を含む試験片を用いて、炭素鋼オーバーパックの腐食シナリオのうち、溶接部において留意すべき腐食挙動:不働態化挙動、埋設初期の溶存酸素の存在下での腐食挙動、応力腐食割れ感受性、酸素が消費された後の還元性雰囲気での腐食挙動と水素脆化生起可能性に着目し、調査を実施した。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q09-04 pp.463-471
2008
M. Chijimatsu, Y. Tsukada, A. Kobayashi and T. Fujita

Influence of Excavation of Disposal Tunnel on the Near-Field Coupled Thermal, Hydraulic and Mechanical Phenomena

In the International DECOVALEX-THMC project, the influence of coupled thermal, hydraulic and mechanical (THM) phenomena on the safety of the near-field of a typical hypothetical geological repository is studied. The hypothetical geological repository would be located in the Canadian Shield, with horizontal drift geometry, and the copper container for the Candu fuel emplaced in the drift would be surrounded by MX-80 bentonite. Properties of bentonite are calibrated against results from laboratory experiments by SKB and the CEA mock-up test. Furthermore, damage model of rock mass is used for the express the effect of excavation. By using calibrated bentonite model and damage model, influence of excavation tunnel is studied. As results, it is known that effect of property change of rock mass due to excavation is very low compared with property of bentonite itself.

Proceedings of 3rd International Conference on Coupled T–H–M–C Processes in Geo–systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2008) Lille (France)
Proceedings of GeoProc 2008 pp.381-390
2008
S. Uehara, A. Kobayashi, M. Chijimatsu, Y. Ohnishi, T. Fujita and A. Rejeb

Hydraulic Modelling of Unsaturated Zones around Three Openings at the Argillaceous Tournemire Site (France)

This paper reports the results of hydraulic modelling under unsaturated condition at the domain around openings in argillaceous rock formation at the Tournemire site, France, in order to determine permeability value suitable to explain measured distribution of saturation ratio. We performed modelling with finite element method with consideration of seasonal changes of humidity in the openings. Results of modelling could simulate reasonably well the characteristics of the measured distribution. Modelling results with permeability 10-19m2 to 10-20m2 show good agreement with the measurement results. This study is a part of works for Task C of the DECOVALEX-THMC project.

Proceedings of 3rd International Conference on Coupled T–H–M–C Processes in Geo–systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2008) Lille (France)
Proceedings of GeoProc 2008 pp.419-425
2008
A. Kobayashi, M. Chijimatsu, T. Fujita and K. Yamamoto

Assessing The Long-term Behavior of A Radioactive Waste Disposal Tunnel with A Damage Model Incorporating Chemical Degradation Effects

地層処分場のニアフィールドの力学的な変遷を評価するために、岩石の化学的劣化による力学的挙動の変化を予測するためのダメージモデルについて検討した。解析結果から、化学的な劣化により強度が減少し、破壊過程も表面の亀裂による卓越可能性があることがわかった。

Proceedings of 3rd International Conference on Coupled T–H–M–C Processes in Geo–systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2008) Lille (France)
Proceedings of GeoProc 2008 pp.621-628
2008
M. Naito, Y. Saito, K. Tanai and M. Yui

EXPERIMENTAL STUDY ON THE EFFECTS OF FAULT MOVEMENT ON THE ENGINEERED BARRIER SYSTEM

断層活動による地層処分システムの人工バリアに与える影響を理解するために実験的なアプローチを採用した。実験は室内試験装置を用いて行い、これまでのせん断試験の結果から、金属製のオーバーパックはその可塑性により緩衝材中で回転するものの、破損には至らないことが示されている。また、試験装置の性能によって制約される試験範囲を補完するために数値モデルによる解析も実施した。

16th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE16) Orland (USA)
ICONE16-48833(CD-ROM)
2008

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
江橋健、小尾繁、大井貴夫

高レベル放射性廃棄物地層処分における性能評価パラメータの安全裕度評価方法の例示

高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの頑健性を提示するための重要な対策の一つとしては、設計においてあらかじめ適切に安全裕度を見込んだパラメータの設定を行うことが考えられる。このため、このような安全裕度の評価においては、「それぞれのシナリオに対する適切な条件設定に基づいて、保守的な値を考慮した解析結果や感度解析結果から、線量目安値を満足するパラメータの値あるいは範囲、すなわち、裕度を見積もること」が求められる。本論文においては、包括的感度解析手法を高レベル放射性廃棄物の性能評価に適用し、性能評価パラメータの安全裕度を評価するための考え方について提案する。提案に際しては、工学的な対策により性能の高度化を見込める可能性があるパラメータ(ガラス固化体溶出率、オーバーパックの破損時期、緩衝材の厚さ)に着目し、天然バリアをきわめて保守的に設定した条件下における性能評価パラメータの安全裕度の評価を例示した。このような考え方に基づいて抽出される情報は、頑健なバリアの構築やシナリオ解析に資するものと考える。

原子力バックエンド研究 Vol.15 No.2 pp.99-115 2009
久野義夫、諸岡幸一、笹本広、油井三和

コロイドが存在する状態での核種の分配挙動の確認手法の検討

放射性廃棄物の地層処分における性能評価では、核種移行における遅延効果は一般に分配係数(Kd)によって評価されている。しかしながら、液相にコロイドが存在する場合、コロイドは核種を収着する可能性があるため、Kdの値に影響を及ぼすことが考えられる。本研究では、核種の収着挙動に及ぼすコロイドの影響を調べるために、Cs、ベントナイトコロイド及び石英砂を用いたバッチ法による収着試験を実施した。Csの石英砂へのKd(Kd1)及びベントナイトコロイドへのKd(Kd2)は、固相中、コロイド中及び液相中のCsの存在量から求め、試験溶液を分離するフィルタの孔径により、これらの核種の存在量の区分を行った。その結果、固相とコロイドが単独で存在する状態で取得された分配係数から、両者が共存する状態での核種の分配挙動を評価できることが確認された。このようなコロイドが共存する試験溶液の分画において、適切なろ過手法を選択することは、核種の固相への収着挙動に及ぼすコロイドの影響を見積もるうえで有効であることを確認した。

原子力バックエンド研究 Vol.15 No.2 pp.117-129 2009
T. Kato, Y. Suzuki and T. Ohi

Development of the methodology on priority of element-specific biosphere parameters for geological disposal applicable to any proposed repository site

放射性廃棄物の地層処分生物圏評価に用いるパラメータには、処分場サイトの地質環境特性に応じて設定される物質移行パラメータや、サイトの地表環境特性を反映しつつ、評価対象とする元素の特性に応じて設定されるパラメータ(以下、元素固有パラメータ)がある。生物圏評価で用いるパラメータの数は膨大であるため、効率的な方法に基づくパラメータの設定が求められる。本検討では、既存のデータベースの利用可能性を判定するためのフローを作成したうえで、評価上重要となる核種について、サイトでデータを取得すべき元素固有パラメータを特定し、実際のサイトでの調査の効率化に資する情報を提示した。

保健物理 Vol.44 No.1 pp.72-79 2009
佐藤治夫

高レベル放射性廃棄物地層処分における緩衝材の核種移行抑制機能

高レベル放射性廃棄物の地層処分の人工バリアを構成する緩衝材として使用されるベントナイトの放射性核種の移行抑制にかかわる特性のうち、透水特性、膨潤特性、化学的緩衝性、核種収着・移行遅延性について、これまでの研究動向を概説するとともに、現状において明らかになっていることと今後の展開について総括した。2000年以降、それ以前には余り存在しなかった海水系地下水条件に対する上記特性に関するデータ取得と現象解明に関する研究が精力的に行われてきており、透水係数は上昇し膨潤は減少することのほか、イオン交換性の核種の見掛けの拡散係数や陰イオンの実効拡散係数が増加するなど、上記の特性を含むさまざまな特性に影響を及ぼすことがわかりつつある。今後もこれらの研究を継続しつつ、共通的に変質の影響を考慮した長期的挙動に関する研究が必要であると考える。

Journal of MMIJ Vol.125 No.1 pp.1-12 2009
宮原要

地層処分の安全評価における長期の時間スケールに伴う不確実性の取り扱いに関する研究

本研究では、HLW地層処分の長期の時間スケールに伴う不確実性の取り扱いとして以下の2つの課題に取り組んだ。(1)将来の人間の生活環境の変化にかかわる線量評価の不確実性を補完する指標としてフラックスを用い、処分場から移行する核種のフラックス(処分場起源フラックス)と地下水中に天然に存在する核種のフラックス(ナチュラルフラックス)を比較する評価手法を提案した。処分場起源フラックスとナチュラルフラックスに共通の評価点として、下流側断層破砕帯から帯水層への地下水の流出点を選ぶことにより、フラックスの比較により各バリアの性能を例示し、処分システムが頑健であることを示した。(2)極めて起こる可能性が低い破壊的な天然現象として断層が処分場を横切る事象について解析を行った。解析においては断層活動による擾乱にかかわるプロセスを明確化することに基づき段階的な手順を設定し、合理的なケース設定を行った。最も厳しい条件の組合せによっても、破壊的な断層活動の影響に関し処分システムが有効に機能し、断層活動の影響を緩和できることを例証した。

九州大学博士論文 121pages 2009
澤田淳、鐵桂一

50cmスケールの花崗岩試料の研削による亀裂形状計測について

原子力発電環境整備機構が高レベル放射性廃棄物地層処分の長期的安全性を検討する際には、処分事業の長期に渡る事業期間を通して技術や意思決定の一貫性を保ちつつ、調査の段階に応じて詳細化されるサイト環境条件や技術の進歩に適切に対応した評価手法を用いた性能評価が実施される。花崗岩など亀裂性岩盤を対象とした性能評価では、岩盤中の核種移行のモデルとして亀裂を平行平板でモデル化する一次元平行平板モデルが用いられる。このモデルは簡略かつ、複数の一次元平行平板モデルを組合せることで岩盤中の不均質な移行経路を表現することが可能などの応用力を有するという利点があり、広く用いられている。一方で、実際の亀裂は複雑な形状で、その亀裂を一次元平行平板モデルで表現する際、透水量係数や亀裂開口幅の値をどのように設定するかが課題となっている。この課題解決に向けた研究の一つとして、天然の亀裂を含む50cmスケールの花崗岩試料を1mmごとの研削により亀裂を観察し、約500×500個の亀裂表面形状の座標データを取得した。これより、亀裂面の粗度、亀裂幅の空間的相関性など、天然岩石中の亀裂の特徴を表すパラメータ値を得た。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.266-271
2009

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Kuno and H. Sasamoto

Migration behavior of bentonite colloids through a fractured rock

ベントナイトコロイドの移行挙動を調べるために、単一な模擬亀裂を有する花崗岩を用いたカラム試験を実施した。10-3M NaCl溶液として調製した条件では、ベントナイトコロイドの一部は亀裂性花崗岩中で付着して、不動化した。比較的イオン濃度が高い条件の場合は、地質媒体中でベントナイトコロイドの移行に遅延効果が期待できると考えられる。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-14 pp.581-586
2008
Y. Tachi, Y. Seida, R. doi, X. Xia and M. Yui

Sorption and Diffusion of Cs in Horonobe-URL's Sedimentary Rock: Comparison and Model Prediction of Retardation Parameters From Sorption and Diffusion Experiments

Diffusion and sorption of Cs in the sedimentary rock of Horonobe generic URL site were studied in the present study. The retardation parameters, De and Kd, of rock for Cs were measured by both batch sorption and intact diffusion experiments with the comparison of obtained retardation parameters each other. The tracer depletion, breakthrough and inner concentration data in the through diffusion experiment were simulated simultaneously by the conventional transport model with one set of the retardation parameters. The Kd values obtained from the data fitting were consistent with those obtained by the batch sorption experiment with crushed rock. The obtained sorption parameters were also simulated based on geochemical model calculation to interpret the sorption behavior theoretically under the assumption of dominant sorption minerals and their sorption mechanism.

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-13 pp.573-579
2008
Y. Yoshida and H. Yoshikawa

Estimation of Ra Concentration in High-Level Radioactive Waste Disposal System

地層処分システムにおいて、Raの濃度は性能評価を行ううえで重要なパラメータである。第2次取りまとめではRa⁄Ca比を一定とするモデルにより評価を行ったものの、Ra⁄Ca比を一定とする仮定は妥当ではない。したがって、方解石に対する交換反応を元素分配比を用いて評価を行うモデルを作成した。本モデルを用いて4n+2系列元素について核種移行解析を行った結果、第2次取りまとめ解析に比べて、人工バリア外側境界面においては、本解析により求まるRa移行率が高くなったが、母岩100mの領域ではほぼ同じ結果となり、この領域では、Raの移行率は親元素からの放射性崩壊により支配されていることが示された。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-18 pp.413-420
2008
Y. Seida, Y. Tachi, A. Kitamura, T. Nakazawa and N. Yamada

Influence of Humic acid on Se and Th Sorption of Sedimentary Rock

In the present study, influence of humic acid on both solubility of Se(IV) and Th(IV), and the retardation parameters in sedimentary rock was studied using the rock sample obtained at Horonobe generic URL site in simulated in-situ underground water condition. Sorption behavior of the crushed sedimentary rock was evaluated by batch sorption method. The partition coefficient, Kd, of the rock for Se(IV) with humic acid was around 40 ml g-1 and little influence of the humic acid on the Kd was observed. The Kd for Th(IV) was estimated to be more than 1000 ml g-1 below 100 mg dm-3 humic acid but the Kd was largely decreased when the concentration of humic acid was 100 mg dm,-3. The through diffusion experiment showed that the coexistence of humic acid did not affect the diffusion of Se(IV). In the case of Th(IV), breakthrough of Th(IV) has not been observed for 6 months due to its large Kd.

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-12 pp.567-572
2008
T. Ohi, M. Inagaki, M. Kawamura and T. Ebashi

A systematic approach to evaluate the importance of concerns affecting the geological disposal of radioactive wastes

放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、さまざまな観点から懸念事象が抽出され、それらに対する研究が精力的に進められてきている。しかし、これまで、処分の安全評価におけるこれらの相対的な重要性を把握するための体系的な検討はなされていない。これらの相対的な重要性を明示することは、処分の安全評価の信頼性を向上に資する重要な課題である。本研究では、処分のシナリオや評価ケース及び個々の評価研究の相対的重要度の提示を可能とする体系的な評価手法を構築することを目的として、(1)処分の安全性に対する多様な懸念事象の影響を統一的な方法で評価するための総合評価作業フレームの整備、(2)評価パラメータの類型化や感度解析の結果得られる影響特性情報のフィードバックに基づいて重要度を把握するための情報整理手順の整備、に関する検討を行った。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-17 pp.407-412
2008
K. Iijima, S. Kurosawa, M. Tobita, S. Kibe and Y. Ouchi

Diffusion Behavior of Humic Acid in Compacted Bentonite: Effect of Ionic Strength, Dry Density and Molecular Weight of Humic Acid

圧縮ベントナイト中のフミン酸及びフミン酸共存下でのネオジム(Nd)の透過拡散試験を行い、拡散挙動に及ぼすイオン強度、ベントナイトの乾燥密度及びフミン酸の分子量の影響を調べた。フミン酸の拡散量は、イオン強度の増加とともに、また、乾燥密度の減少とともに、増加するのが認められた。フミン酸が共存するとNdの破過が認められたが、フミン酸が存在しない場合、Ndの破過は200日まで認められなかった。破過曲線及び圧縮ベントナイトを透過したフミン酸の分子量分布から、今回の実験条件下では、分子量3,000より小さいフミン酸のみが圧縮ベントナイトを拡散でき、錯形成による溶解度増加に伴いNdの拡散フラックスが増加したと考えられた。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q05-04 pp.263-270
2008
H. Sato

A Thermodynamic Approach on the Effect of Salt Concentration on Swelling Pressure of Water-saturated Bentonite

高レベル放射性廃棄物地層処分の人工バリアを構成する緩衝材や坑道の埋め戻し材として使用されるベントナイトの主要構成粘土鉱物のスメクタイトに着目し、蒸気圧測定から得られたスメクタイトの層間水と接触溶液の水の熱力学データ(相対部分モルGibbsの自由エネルギー)に基づいて、ベントナイト中のスメクタイト含有率や珪砂混合率を考慮した、スメクタイト部分密度に対する膨潤圧をさまざまな塩濃度に対して求め、実測値と比較検討した。解析は、実測値が報告されているさまざまな溶液条件([NaCl]=0.2-3.4M)に対して行った。計算結果は、塩濃度の増加に伴い膨潤圧は低下するものの、密度の高い領域では大きな差は見られない。一方、実測値は、膨潤圧に及ぼす塩濃度の影響は明確には見られず、バラツキの範囲内であり、計算値もこの範囲内であった。このバラツキの原因は、ベントナイトに含まれる可溶性鉱物が溶解し、間隙水のイオン強度が増加したためと考えられる。

MRS fall meeting 2008 Boston (USA)
MRS symposium proceedings Vol.1124-Q07-11 pp.307-312
2008
M. Kawamura, K. Yasue, T. Niizato, T. Tokiwa, T. Ebashi, T. Ohi, H. Makino, T. Ishimaru and K. Umeda

Study on Perturbation Scenario for Uplift and Denudation in Performance Assessment of a HLW Disposal System

隆起・侵食は火山活動などとは異なり広域的で緩慢な現象であるため、現象に起因する地質環境条件の変化をサイトにおける地質環境調査などから明示的に捉えることが困難である。本研究では、隆起・侵食による地質環境条件の変化を地史及びモダンアナログの観点から捉える方法論を検討した。その結果、地史及びモダンアナログに基づくことにより、隆起・侵食速度や場(山地,平野部あるいは沿岸域など)の差異による現象のバリエーションと推移のパターン、及びそれらに起因して生ずる可能性のある地質環境条件の変動パターンとそれらの時間的な変遷を温度-水理-力学-化学-幾何形状(THMCG)の情報として系統的に把握できるようになった。また、既に開発された現象論に基づき現実的かつ段階的に天然現象の発生から処分への影響を取り扱い評価シナリオやモデルを構築する枠組みをこの検討手順に適用することにより、現実に即した隆起・侵食シナリオを構築できる見通しを得た。

2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference Tokyo (Japan)
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive: 6 pages)
2008
H. Murakami and J. Ahn

Development of Geologic Repository Models for Design and Decision Making

This paper presents a new radionuclide transport model for performance assessment and design of a geologic repository for high-level radioactive wastes. The model applies compartmentalization and a Markov-chain approach. A model space consists of an array of compartments, among which radionuclide transport is described by a transition probability matrix. While the model is similar to Eulerian methods, the advantages of this approach are considered in flexibility in including various types of transport processes by probabilistic interpretation. We demonstrate this model approach with a hypothetical repository assumed in porous rock formation. A three-dimensional, non-uniform groundwater flow field is generated numerically by the finite element method. The transition probability matrix is constructed based on the velocity field and hydraulic dispersion coefficients. The results show that this transport model can effectively show differences in repository performance due to the change of hydraulic properties in the domain for differing repository configurations and material degradation.

16th Pacific Basin Nuclear Conference (16PBNC)  Aomori (Japan) 2008
H. Murakami and J. Ahn

DEVELOPMENT OF COMPARTMENT MODELS FOR RADIONUCLIDE TRANSPORT IN REPOSITORY REGION

This paper presents a new radionuclide transport model for performance assessment and design of a geologic repository for high-level radioactive wastes. The model applies compartmentalization, and a Markov-chain approach. A model space consists of an array of compartments, among which radionuclide transport is described by a transition probability matrix. While the model is similar to Eulerian methods, the advantages of this approach are considered in a great flexibility in probabilistic interpretation to include various types of transport processes, and in higher-order accuracy resulting from the direct formulation in a discrete-time frame. We demonstrate this model with a hypothetical repository in porous rock formation. A three-dimensional, non-uniform groundwater flow field is generated numerically by the finite element method. The transition probability matrix is constructed based on the velocity field and hydraulic dispersion coefficients. The results show that this transport model can effectively show differences in repository performance due to the change of hydraulic properties in the domain by differing repository configurations and material degradation. They also suggest that the effects of engineered barrier configurations and material degradation should be evaluated in conjunction with the site conditions such as the ambient hydraulic head gradient, and with the properties of radionuclides such as sorption coefficients and half-lives.

2008 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (2008 IHLRWM)  Las Vegas (USA) 2008
K. Miyahara, M. Inagaki, M. Kawamura and T. Ebina

“What-if?” Calculations to Illustrate Fault-Movement Effects on a HLW Repository

What if解析についてどのような想定とするかなどをわかりやすく示すため、断層シナリオを対象として、解析の一連の手順について解析とともに例示する。

2008 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (2008 IHLRWM)  Las Vegas (USA)
Proceedings for International High-Level Radioactive Waste Management Conference pp.593-599
2008

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
尾上博則、笹尾英嗣、三枝博光、小坂寛

過去から現在までの長期的な地形変化が地下水流動特性に与える影響の解析的評価の試み

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、長期の時間スケールで生じる地質学的事象が地下深部の地下水流動や水質などに与える影響を理解し、それを予測することが重要である。地下水流動の観点では、特に地下水流動の駆動力である地形分布の長期的な変化を推定し、それが地下深部の地下水流動に及ぼす影響を評価する必要がある。そこで、本研究においては古水理地質学的研究手法を用いて、地形の長期的な変化が地下水流動特性に与える影響を評価した。具体的には、岐阜県東濃地域を対象として、広範囲における古地形分布を概括的に推定したうえで、それを考慮した地下水流動解析を実施した。また、断層の存在が地下水流動特性に及ぼす影響についても検討した。その結果、地形変化や断層の存在が、動水勾配や地下水の流速、移行特性に及ぼす影響の程度を概略的に把握することができた。また、主要な尾根や谷の位置など、大局的な地形分布が変わらない場所であれば地下水の移行経路は大きくは変化しない可能性が示唆された。さらに、結果に基づき長期的な地形変化による地下水流動特性の変化を効率的に把握する手法について提案した。

日本原子力学会和文論文誌, Vol.8 No.1 pp.40-53 2009
杉田裕

幌延の地下研を例とした放射性廃棄物地層処分技術と地盤工学

地盤工学と地層処分のかかわりの例として、幌延深地層研究計画における立坑掘削で採用している情報化施工の取り組みを報告する。日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物地層処分の研究のための堆積岩を対象とした地下研究施設の建設を北海道幌延町において進めている。本立坑の掘削は最新の技術とされる情報化施工によって進められているが、これは、掘削前に設計された支保工の妥当性を、掘削で得られる地質情報に基づいて評価しながら掘削するものであり、今後の地盤工学の先駆けとなるものである。

地盤工学会誌 平成21年2月「最新の地質学」特集号 Vol.57 No.2 pp.14-17 2009
山崎雅直、関谷美智、藤川大輔、北川義人

幌延深地層研究計画における立坑工事の施工実績とサイクルタイム分析

本稿は、今後の立坑工事の積算精度の向上と積算手法の体系化の検討に役立てる基礎データとすることを目的として、これまで実施した立坑工事の施工実績の概要並びに掘削時間に注目してサイクルタイムを分析した結果を報告する。本分析の結果、(1)岩盤等級の違いによるサイクルタイムの違いは見られなかったこと、(2)掘削方式による掘削時間の違いは見られなかったことが判明した。この成果は、地層処分施設の建設を念頭においた工事工程管理や工事費用の積算に反映できるものである。

第14回地下空間シンポジウム講演論文集 pp.191-196 2009
松井裕哉、田中達也、藤井治彦、竹内真司、弥富洋介、杉原弘造

結晶質岩中の地下坑道掘削を対象としたグラウト効果に関する研究

地下空洞掘削時には、必要に応じ空洞内への湧水抑制のためにグラウトが実施される。一方、高レベル放射性廃棄物地層処分では、一般的なグラウトに用いるセメントが人工バリアに与える影響が懸念されている。本研究は一般的なセメントグラウト浸透範囲やその効果を把握・評価する手法の構築を主目的として、日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所の深度200mにおける坑道掘削時のプレグラウトを対象とし、ボーリング孔掘削、地質学的調査、地球物理学的調査、水理試験などを行うとともに、調査結果に基づく水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析により湧水抑制効果を評価した。この結果、グラウト浸透範囲は設計改良範囲にほぼ収まっており、かつ十分な湧水抑制効果があることなどを確認した。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.131-136 2009
安藤賢一、竹内真司、松井裕哉、田中達也、橋本秀爾、藤井治彦

結晶質岩中の地下坑道掘削を対象としたグラウト効果に関する研究(2) —グラウト施工時の透水試験手法の改良—

地下空洞掘削時には、必要に応じ空洞内への湧水抑制のためにグラウチングが実施される。一方、高レベル放射性廃棄物地層処分では、一般的なグラウトに用いるセメントが人工バリアに与える影響が懸念されている。本報では一般的なセメントグラウトの浸透範囲やその効果を把握・評価する手法の構築を主目的として、日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所の深度200mにおける坑道掘削時のプレグラウチング領域を対象に実施した、新たな透水試験手法の適用結果について報告する。その結果、提案した透水試験手法がボーリング孔近傍から周辺領域の10-9から10-4(m⁄s)程度の幅の広い透水係数を取得するうえで有効な手法であることを示した。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.137-142 2009
田中達也、松井裕哉、橋本秀爾、安藤賢一、竹内真司、三枝博光

結晶質岩中の地下坑道掘削を対象としたグラウト効果に関する研究(3) —プレグラウトによる湧水抑制効果の数値解析的検討—

地下空洞掘削時には、必要に応じ空洞内への湧水抑制のためにグラウトが実施される。一方、高レベル放射性廃棄物地層処分では、一般的なグラウトに用いるセメントが人工バリアに与える影響が懸念されている。筆者らは、経済産業省資源エネルギー庁からの研究受託の一部として、日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所の深度200mにおける坑道掘削時のプレグラウトを対象とした各種の原位置結果及び既往の研究成果を活用し、グラウト後の結晶質岩盤の水理地質構造を割れ目ネットワークとしてモデル化するとともに、グラウトの湧水抑制効果を地下水流動解析により定量的に示した。さらに、本解析を通じ、グラウト効果の評価事例と今後の適用に向けた課題をとりまとめた。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.143-148 2009
山崎雅直、津坂仁和、羽出山吉裕、南出賢司、高橋昭博

立坑掘削における内空変位の初期変形率と覆工コンクリート応力の相関

本稿は、地下研究施設の立坑掘削に伴う地下空洞の安定性や支保設計の妥当性を評価する目的で、立坑掘削時に取得した内空変位計測データと覆工コンクリート応力計測データから、初期変形率と覆工コンクリート応力の収束値(土被り圧で無次元化)を整理し、両者の相関について分析した結果を報告する。その結果、(1)内空変位の初期変位率と土被り圧で無次元化した覆工コンクリート応力収束値とは相関性が高いこと、(2)ショートステップ工法を対象とした内空変位の初期変位率より覆工コンクリート応力の収束値の予測が可能であることが判明した。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.196-201 2009
熊本創、下茂道人、三枝博光、大山卓也

立坑の冠水・排水時の湧水量・水圧観測データを用いた水理地質構造モデルの構築

日本原子力研究開発機構では、岐阜県瑞浪市において、おもに結晶質岩を対象とした地下研究施設の建設を進めている。施設建設にあたっては、坑内湧水量や周辺への水圧応答など、建設に伴うデータ取得を行っている。また、掘削途中(深度約180m地点)では、排水処理方法の改善のため、掘削及び排水を停止し、坑内は一時的に冠水され、その後、再排水された。この一連の坑内水位変動は、大規模な回復・揚水試験と考えられ、これに伴う水圧応答データは、周辺の水理地質構造や透水性評価に非常に有効なデータである。本報では、この掘削・冠水・再排水時の湧水量や水圧応答データを用いて、筆者等がこれまでに構築してきた水理地質構造モデルの妥当性確認及び更新の結果について述べる。

第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集 pp.281-286 2009
竹田宣典、入矢桂史郎、人見尚、小西一寛、栗原雄二

低アルカリコンクリートの鉄筋腐食ひび割れの予測に関する研究

高レベル放射性廃棄物処分場に適用が検討されているポゾランを多く含む低アルカリセメントを用いたコンクリートの鉄筋コンクリートとしての適用性を評価することを目的として、水セメント比が30%のコンクリートについて、6年間の海洋暴露試験を行い、圧縮強度、塩化物イオンの侵入、鉄筋腐食などの経時変化を調査した。また、これらの結果に基づき、海水起源の地下水を有する環境下で、鉄筋腐食の進行及び腐食ひび割れの発生時期の予測を行った。その結果、下記のことが明らかになった。(1)6年間の海洋環境下における圧縮強度の低下はない。(2)塩化物イオンの侵入は、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートに比べて少ない。(3)鉄筋腐食は、塩化物イオンの侵入がなくても開始するが、暴露6年までの進行は遅い。(4)海水起源の地下水中における低アルカリセメントを用いたコンクリート中の鉄筋の腐食速度は0.30〜0.55mg⁄(cm2・年)程度と予測され、かぶり100mm、鉄筋径22mmとした鉄筋コンクリート構造物に用いる場合、建設後50〜100年後に鉄筋腐食に起因したひび割れが発生すると予測される。

大林組技術研究所報 No.72 (CD-ROMのため頁数記載なし) 2009
栗原新、天野健治、劉春学、小池克明

花崗岩体上部に発達する低角度亀裂の空間分布特性と地質学的解釈 —瑞浪超深地層研究所周辺の土岐花崗岩からの知見—

岩盤中の地下水の流動経路や物質の移動経路となる亀裂の空間分布を精度よく把握することは、地層処分システムの安全評価や地下施設の設計・施工の信頼性向上の観点から、特に重要な課題である。本研究では、瑞浪超深地層研究所のボーリング孔に分布する土岐花崗岩中の亀裂の密度に関して広域的な地質構造との空間的相関性に着目した統計学的な検討と応答曲面の作成を行い、データの得られていない地点における亀裂密度を補間できる可能性が明らかとなった。

Journal of MMIJ Vol.124 No.12 pp.710-718 2008
津坂仁和、小泉悠、谷本親伯、亀山克裕、宮嶋保幸

TBM施工における二次破砕を考慮したディスクカッタの交換寿命の評価

TBM(Tunnel Boring Machine)は、ディスクカッタ(以下、カッタという)を岩盤に押しつけながら回転させ、隣接破砕を連続的に生じさせて岩盤を掘削する。発破工法に対する同工法の優位性は、岩盤のゆるみの抑制、高速掘進性、そして、掘削作業の安全性である。このため、第2次とりまとめにおいても、処分坑道の掘削に期待される工法として挙げられている。TBMによる岩盤の破砕現象は、切羽から隣接破砕により岩片を掘削することを一次破砕とし、切羽とカッタヘッドの間にたまった岩片が再破砕されることを二次破砕として考えることができる。本報告では、中口径のTBMにより堆積岩と火成岩を掘削した4つの事例を対象に、スクレーパによるずりの取込範囲よりも中心側のカッタの摩耗は主として一次破砕によって生じ、一方、その取込範囲にあるカッタの摩耗は一次破砕に加え二次破砕によって生じるものと考え、それぞれの範囲にあるカッタの交換寿命を考察した。カッタの取付半径が異なるために、カッタが交換されるまでの累積転動距離をその間に生じた摩耗量で除した値をその指標とした。その結果、外周部に取り付けられたカッタの交換寿命は、二次破砕現象により20%以上も低下することが示された。

第18回トンネル工学研究発表会 東京
トンネル工学報告集 第18巻 pp.77-84
2008
茂田直孝

ウラン探査における物理探査

ウラン探査の歴史は浅いが、物理探査を駆使することにより、探査活動の開始からわずか50年ほどの間に多くの鉱床が発見された。効率的な探査のためには、多様なウラン鉱床とその周囲の岩石の物性や、地表条件等の地域特性を適切にモデル化し、それに基づいて探査フローを選択する必要がある。経済的価値の観点から最も重要と考えられてきた不整合関連型鉱床については、1990年代に動力炉・核燃料開発事業団により探査フローの新たな構築や改善が図られた。鉱床モデルと探査フローは、探査データの最新の解釈に基づき、さまざまな技術的な課題を克服しつつ、常に更新されるべきである。1990年代以降、鉱床発見効率(探査経費あたりの発見量)は著しく低下しており、モデルと探査フローの大幅な見直しが必要な状況と考える。

物理探査学会創立60周年記念シンポジウム 東京
最新の物理探査適用事例集 pp.61-68
2008
茂田直孝

高レベル放射性廃棄物の地層処分における物理探査の役割と深地層の科学的研究における物理探査技術開発

高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性を担保するうえで、地質環境にはおもに二つの機能、すなわち、長期に渡る処分場の安定性及び、人工バリアの設置と天然バリアに適した特性が求められる。地層処分における地質環境調査では、地質環境に擾乱を与えることなく地下深部までの情報を取得可能な物理探査の果たす役割は大きい。原子力機構は、その前身の時代から、実際の地質環境への適用を通して体系的な地質環境調査技術の構築を進めており、その過程で物理探査についても、幾つかの重要な知見を得ている。

物理探査学会創立60周年記念シンポジウム 東京
最新の物理探査適用事例集 pp.257-264
2008
丹羽正和、島田耕史、黒澤英樹、三輪敦志

圧縮性ステップにおける破砕帯の構造 —岐阜県飛騨市の跡津川断層西部の例—

断層のステップに伴う破砕帯の構造の変化を把握するため、岐阜県飛騨市の跡津川断層西部を事例対象とした地質調査を行った。まず、空中写真判読により、ステップが示唆される地域と、直線的に発達する断層が明瞭に追跡できる地域とを選定した。次に、詳細な露頭記載により、両地域の破砕帯の構造の比較を行ったところ、卓越する剪断面の姿勢と運動センス、及び断層ガウジの幅や粘土鉱物組成などに違いが見られることが明らかとなった。空中写真判読でステップが示唆された地域は、剪断面の姿勢などの特徴により、圧縮性ステップであると認定した。

地質学雑誌 Vol.114 No.10 pp.495-515 2008
中村隆浩、加藤春實、真田祐幸、杉田裕

珪藻質泥岩における水圧破砕法による初期地圧の推定

日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究計画では、堆積軟岩の深地層における初期地圧の測定を行っている。地下施設建設に先立つ地表調査では、深層ボーリング孔を利用した水圧破砕法による初期地圧の測定を実施している。今回、深地層(珪藻質泥岩)のより詳細な初期地圧の把握を目的として、現在、掘削中の換気・東立坑の2本の立坑のうち、換気立坑の深度140mから分岐した横坑において初期地圧を測定した。初期地圧の測定方法は、水圧破砕法を用い横坑の切羽より方向の異なる3本のボーリング孔を削孔し3次元の初期地圧を測定した。本論は、今回得られた情報から深度140m地点での初期地圧を推定し、地表調査から得られている初期地圧結果を含めた考察について報告するものである。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.297-303
2008
山崎雅直、森岡宏之、羽出山吉裕、津坂仁和

幌延深地層研究計画における立坑掘削の情報化施工と挙動計測

現在、北海道幌延町において、日本原子力研究開発機構が建設中の地下研究施設は、最終的には深度約500mの3本の立坑とそれらを結ぶ水平坑道から構成される計画である。立坑掘削に先立ち、毎切羽を対象とした日常管理計測と後続施工箇所を対象としたステップ管理計測より得られたデータを設計や施工に反映する情報化施工プログラムを策定し、現在、運用中である。立坑の支保は、切羽進行に伴う掘削解放力を外力として挙動予測解析(FEM)を実施し、支保部材が空洞の安定を確保するように設計したが、深度121mの覆工応力の挙動計測データには、立坑掘削の余掘りによる覆工巻厚の違いと深度140m水平坑道の掘削に伴う影響が含まれていることが明らかとなった。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.305-310
2008
津坂仁和、山崎雅直、羽出山吉裕、山本卓也

幌延深地層研究所の立坑掘削におけるコンバージェンス曲線の評価

日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分計画に関連した研究開発のために、北海道幌延町において地下施設の建設を進めている。その地下施設のうち、2008年3月末において、換気立坑が深度161m、東立坑が深度110mに到達した。これらの立坑の掘削においては、コンバージェンスや支保工の応力の計測結果を逐次評価し、より深部の施工における坑道周辺岩盤の変形と支保部材に生じる応力を予測し、適切な支保工を構築するための情報化施工が試みられている。本研究では、これまでに得られた岩盤性状の観察結果から岩盤実質部の強度と岩盤の割れ目頻度の深度分布を表すとともに、コンバージェンス計測結果から初期変形速度と断面変形量の関係を考察した。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.311-317
2008
谷卓也、下野正人、岩野政浩、山本卓也、山崎雅直、真田祐幸

ショートステップ工法における地中変位挙動の評価

日本原子力研究開発機構が進めている幌延深地層研究計画での立坑掘削において、地中変位計測により壁面から深度6mの地山が圧縮方向に変形するという挙動が観測された他、軸力計測では長さ3mのロックボルトにも圧縮力が生じていることがわかった。筆者らは、これらの現象が切羽近傍1から3mで打設される覆工コンクリートの支保効果による、ショートステップ工法特有の挙動である考えた。そこで、3次元的な掘削形状が考慮できる弾性軸対称モデルにより、計測結果の再現を試みた。ショートステップ工法による切羽近くの覆工コンクリートを考慮した場合の解析結果からは、半径方向(立坑軸直交方向)の掘削解放率の分布が、同じ切羽離れの断面でも、壁面からの距離(半径方向)に応じて大きく変化することを確認した。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.319-324
2008
徐招峰、松井裕哉、佐藤稔紀、板倉賢一、山地宏志

ITを援用した大規模地下開発支援システムの設計とその実装

大規模地下開発の過程で発生する各種の調査・設計・計測データは、設計・施工のみならず、施設の維持管理にも資することのできる重要な情報である。しかしながら、施設の稼動期間までを含めた長期にわたり、これらの情報を管理し、適確に運用することは困難である。筆者らはこのような問題に対するひとつの回答として、仮想現実技術やRDBMSを援用した大規模地下開発支援システムを開発し、これを瑞浪超深地層研究所工事に試験的に適用した。本論文は、そのシステムの設計とシステム実装の実際を示し、提案する手法の妥当性を問うものである。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.647-652
2008
真田祐幸、松井裕哉、藤井義明

幌延地域に分布する珪質岩の力学特性

原子力機構が実施した複数の調査ボーリングで得られたコアを用いて各種室内試験を実施し、研究所設置地区に分布する珪質岩の力学特性を検討した。研究所設置地区の珪質岩は、稚内層の上部で急激に物理特性、強度特性が変化する。三軸圧縮特性は、声問層では有効封圧の増大に伴い、応力–ひずみの曲線形状がひずみ軟化型から弾完全塑性型に移行する。一方、稚内層では、本試験で設定した有効封圧の範囲では、いずれもひずみ軟化型の曲線形状を示す。非排水試験における間隙水圧の発生挙動並びに排水試験におけるダイレタンシー挙動は声問層と稚内層とで傾向が異なることがわかった。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.703-708
2008
青木智幸、真田祐幸、城まゆみ、山本卓也、松井裕哉

堆積軟岩中の坑道掘削に伴う応力–水連成現象による長期的変形挙動について

地下深部の堆積軟岩中の坑道周辺岩盤及び支保の長期挙動について、応力–水連成現象の観点から数値解析的検討を行った。堆積軟岩は、透水係数が小さくかつ空隙率が大きいという特徴を有するものが多く、掘削により周辺岩盤に発生する過剰間隙水圧とその経時的消散による長期的な変形挙動を生じる可能性がある。本研究では、まず幌延深地層研究計画で実施した地表からのボーリング調査で得られたコア(声問層、稚内層)を使用し、三軸試験装置を用いて多孔質弾性パラメータを求めた。次に、これを用いて、円形坑道及び馬蹄形坑道について、堆積軟岩に適応する多孔質弾性論に基づく応力–水連成解析を実施した。その結果、クリープ現象とは異なる、応力–水連成現象に特有の岩盤の変形や支保応力の長期挙動が生じることがわかった。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.709-716
2008
小川豊和、木ノ村幸士、青木智幸、山本卓也、真田祐幸、松井裕哉

物性の深度依存性を考慮した堆積軟岩中の大深度立坑逐次掘削解析

日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の一環として地下研究施設の建設を伴う研究プロジェクトとして幌延深地層研究計画を進めている。幌延深地層研究計画の一環として実施されたボーリング調査において、地下研究施設周辺に分布する堆積軟岩は拘束圧下でひずみ軟化挙動を示すことと岩盤の物性が深度依存性を示すことがわかった。本報告では坑道の力学的安定性と坑道周辺岩盤に生じる力学的な擾乱の範囲と程度を把握するために、ひずみ軟化挙動、岩盤物性の深度依存性並びに実際の施工手順を考慮して行った立坑の三次元逐次掘削解析の結果を報告する。

第12回岩の力学国内シンポジウム 山口県宇部市
第12回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.933-940
2008
高木秀雄、三輪成徳、横溝佳侑、西嶋圭、円城寺守、水野崇、天野健治

土岐花崗岩中の石英に発達するマイクロクラックの三次元方位分布による古応力場の復元と生成環境

花崗岩の古応力場を復元するための手法開発を目的として、土岐花崗岩中を対象としてヒールドマイクロクラックを3次元的な測定及び流体包有物を対象とした解析を行った。ヒールドマイクロクラックの3次元方位測定の結果、ヒールドマイクロクラック形成時の主応力軸は南北方向であり、流体包有物の解析から形成時期は70〜60Maであることが示された。この結果は、日本海拡大による西南日本の回転を考慮すると当時のプレート運動方向と調和的であり、本研究で開発した手法が古応力場を復元するための手法として有効であることを示した。

地質学雑誌 Vol.114 No.7 pp.321-335 2008

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Moriya, K. Asamori, I. Kitamura, H. Hotta, H. Ohara and T. Niizato

Estimation of crustal structure in Horonobe area, Hokkaido, Japan, by using Multiplet-clustering analysis

地震・断層活動が地層処分システムに及ぼす影響として、岩盤の破断や岩盤ひずみの変化などが想定されている。そのため、サイトの安全評価に際しては、断層面形状を考慮した解析が必要となる。そこで、本研究では幌延地域周辺を事例としてマルチプレット・クラスタリング法による震源決定を行い、当該手法の断層面形状推定技術としての有効性を検討した。これまでの研究による当該地域の浅発地震震源分布は疎らであり、地震活動を規制する地殻内の断層面形状が不明瞭であった。本研究では、原子力機構及び防災科学技術研究所による地震観測網で観測された地震波形データにマルチプレット・クラスタリング法を適用し、浅発地震の相対震源位置を従来に比して高い精度で推定した。その結果、既存の研究による震源位置決定精度が数kmであることに対し、数百mの精度で決定することができた。また、震源は主として2つの領域に集中し、面的に分布する傾向が認められ、震源メカニズム解や地殻変動の傾向と調和的である。これらのことから、震源集中域は断層面上のアスペリティを示唆し、その空間分布は断層面形状モデル構築のための主要な情報の一つとなり得ると考えられる。

19th International Acoustic Emission Symposium (IAES-19) Kyoto (Japan) 
Journal of Acoustic Emission Vol.28 pp.1-10 (2010)
2008
K. Matsuki, K. Nakatani, T. Arai, K. Ohmura, R. Takeuchi, Y. Arai and S. Takeuchi

A quadratic element method for evaluating groundwater flow by the inversion of surface tilt with application to the Tono Area, Japan

地下水流動を規制する水理地質構造を推定する手法の開発として、Vascoらによって提案された傾斜データを用いた地下水流動の推定手法を改良した。また、本手法に超深地層研究所計画で取得した実測データを適用した結果、本手法から推定された地下水流動は2つの構造に挟まれた領域でおもに生じていると推定された。この結果は、既存の調査結果から得られている遮水性の不連続構造の分布と整合したものであり、本手法の有効性が示された。

Journal of Hydrology Vol.360 Nos.1-4 pp.217-229 2008
T. Iwatsuki, T. Mizuno, K. Hama and T. Kunimaru

Hydrochemical records on long-term changes of deep groundwater system, Japan

地下水流動状態の長期的な変遷にかかわる推測手法を構築するために、岐阜県東濃地域の結晶質岩,北海道幌延地域の堆積岩を対象として、鉱物の沈殿状態や同位体に基づく解析を行った。その結果、結晶質岩においては、層状沈殿鉱物の解析が有効であることがわかった。一方、堆積岩においては、沈殿鉱物が地下水の循環よりも閉鎖系における物質循環を反映していることが明らかになった。

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan) 2008
J. Guimerà, H. Saegusa, H. Onoe, T. Ohyama, M. J. White and P. Robinson

GEOMASS: An integrated geological and hydrogeological modelling and visualisation system in complex geological environments

The synthesis of research programmes, for understanding deep groundwater flow, needs proper tools that permit the integration of all or part of the indicated fundamental aspects of hydrogeological characterization. In this respect, the GEOMASS system, which is composed a preprocessor, including geological modelling, and postprocessor for the core named FracAffinity, has been developed. The FracAffinity solves for steady and transient 3D flow in saturated and unsaturated conditions and permits embedded deterministic or stochastically generated 2D fractures in a continuous porous domain. The most outstanding feature of GEOMASS is the ability to integrate highly complex geological models with the requirements of hydrogeological ones. FracAffinity has been applied to simulate a large number of hydrogeological situations. In addition, part of the saturated, unsaturated fracture flow capabilities of the code has been tested with commercial software, resulting in significant enhancements.

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
H. Saegusa, M. Shimo, S. Kumamoto, H. Onoe, R. Takeuchi, S. Takeuchi and T. Ohyama

Hydrogeological characterization for estimation of hydraulic responses due to construction of the Mizunami Underground Research Laboratory

超深地層研究所は、結晶質岩(花崗岩)を主な対象とした深地層の研究施設の一つであり、この計画では、地層処分研究開発の基盤となる深地層の科学的研究の一環として、深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を全体目標の一つとした調査研究が進められている。超深地層研究所計画における地下水流動特性評価においては、水理調査と水理地質構造モデルの構築、地下水流動解析を繰り返し実施してきた。このモデル化・解析は、地下施設への地下水流入量及び地下施設建設が周辺環境へ与える影響の推定を目的として実施した。その結果、モデル化・解析結果の信頼性向上及び妥当性確認のために必要な水理地質構造などを抽出することができた。また、研究施設建設中の水圧応答データを用いたモデルの妥当性確認及び更新を行った。本稿では、これらの結果について紹介する。

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
A. Hayano, K. Nakamata, T. Tsuruta and S. Takeuchi

Relationship between fractures and flow paths in granitic rock at the Mizunami Underground Research Laboratory site

Appropriate control of water inflow is necessary for underground excavations, not only to avoid the risk of overwhelming water inflow but also saving the cost of pumping and/or water treatment. Therefore, understanding the characteristics of fractures which acted as flow paths is indispensable. A few rounds of borehole investigations and geological mapping were conducted to understand the characteristics of flow paths at the Mizunami Underground Research Laboratory. We identified flow paths by analysing the data from borehole TV survey and geological mapping. We confirmed that low and high-angle flow paths are distributed in a Low-Angle Fracture Zone in the upper part of the Toki granite. In addition, we confirmed that altered minerals, such as chlorite and sericite, filling high angle fractures are present in the fault, which functions as a barrier to groundwater flow near the main shaft. Meanwhile, flow paths closely relate to fractures filled with calcite.

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
T. Ohyama, H. Saegusa, H. Onoe, J. Guimerà, M. J. White and P. Robinson

GEOMASS: The application to characterizations of groundwater flow in the Mizunami Underground Research Laboratory project in Tono area

For effective characterization of geological environment, it is important to rapidly construct the conceptual model of geological environment based on the field-based investigation data and to identify issues for further investigation. The GEOMASS system has been developed by Japan Atomic Energy Agency in order to evaluate groundwater flow in deep underground. This system provides an integrated simulation system environment for both geological and hydrogeological model development, and groundwater flow simulations. JAEA has been tested the application of the GEOMASS system by applying to characterizations of groundwater flow during the Surface-based Investigation Phase and the Construction Phase in the Mizunami Underground Research Laboratory project in the Cretaceous Toki granite in the Tono area, central Japan. This paper describes the groundwater simulation results and the applicability of GEOMASS system to characterizations of ground water flow.

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
S. Takeuchi, K. Amano, R. Takeuchi and H. Saegusa

Fluid electric conductivity logging: Useful application for characterization of water conducting features

Fluid electric conductivity logging (FEC logging) and other fluid logging techniques have been carried out in the deep borehole in the granite to identify water-conducting features (WCFs). Also transmissivity have been estimated from the FEC logging and compared with the one estimated from hydraulic packer testing targeted on the same WCFs. From the results of the investigations, FEC logging can be used for identification of WCFs in detail than the other fluid logging techniques. Transmissivity estimated from FEC logging can be used for the supplement for the one from hydraulic testing in the borehole without the skin effect such as due to drilling mud and/or due to drilling damage. Based on the results above, one of the efficient methods for better understanding the groundwater flow in the borehole, that is the FEC logging for identification of the WCFs followed by the hydraulic testing focusing on the identified WCFs, is addressed.

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
N. Toya, R. Takeuchi, T. Tokunaga and M. Aichi

The groundwater pressure response due to shaft excavation and its possible application for characterizing hydrogeological structure

瑞浪超深地層研究の建設は2003年に開始された。2006年から2007年には立坑及びGL-200mの水平坑道から複数のボーリング掘削が実施され、これに伴い、周辺の地下水圧モニタリング孔において、deformation-induced effectに類似した特異な水圧応答が観測された。観測結果は、遮水性を有すると考えられる既知の断層を境目に水圧応答が異なっていることを示している。本研究では、今回観測された特異な水圧応答を用いた、地下水理地質構造推定の可能性について述べる。

The 36th IAH Congress 2008Toyama (Japan)
Proceedings of 36th IAH Congress 2008(CD-ROMのため頁数なし)
2008
K. Hama and M. Uchida

Development of Site Characterization Technologies for Crystalline Rocks at MIU: 1.Surface-based Investigation Phase

超深地層研究所計画は、原子力政策大綱に示された深地層の研究施設計画の一つであり、結晶質岩を対象として、独立行政法人日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めているプロジェクトである。この超深地層研究所計画では、「第1段階: 地表からの調査予測研究段階」、「第2段階: 研究坑道の掘削を伴う研究段階」、「第3段階: 研究坑道を利用した研究段階」の三つの段階に区分し、約20年をかけて進める計画である。超深地層研究所計画は、「深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備」及び「深地層における工学技術の基盤の整備」を第1段階から第3段階までを通した全体目標として定め、そのうち第1段階では、全体目標の前者については「地表からの調査研究による地質環境モデルの構築及び研究坑道掘削前の深部地質環境状態の把握」、後者については「研究坑道の詳細設計及び施工計画の策定」を段階目標として調査研究を進めた。

2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference Tokyo (Japan)
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive: 6 pages)
2008
T. Ohyama, H. Saegusa, R. Takeuchi, S. Takeuchi and T. Matsuoka

Development of Site Characterization Technologies for Crystalline Rocks at MIU: 2.Construction Phase

日本原子力研究開発機構は、東濃地域において土岐花崗岩を対象として瑞浪超深地層研究所計画を実施している。超深地層研究所計画は、亀裂性結晶質岩における深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備及び深地層における工学技術の基盤の整備を目標としている。超深地層研究所は深度1000mの2本の立坑と深度500m及び1000mに掘削される研究坑道からなる。本計画は、地表からの調査予測研究段階(第1段階)、研究坑道の掘削を伴う研究段階(第2段階)、研究坑道を利用した研究段階(第3段階)の三つの段階に区分し、約20年をかけて進める計画である。第2段階では、長期水理モニタリングや立坑の壁面観察などの調査をもとに、地質環境のモデル化とモデルの更新が実施され、また立坑の掘削が地質環境に与える影響の評価を実施した。本報告では、水理地質特性の評価に着目した第2段階の研究の現状について報告する。

2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference Tokyo (Japan)
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive: 6 pages)
2008
K. Hatanaka, H. Morioka and T. Fukushima

Development of Engineering Technology for Sedimentary Rock in “Horonobe URL Project”, Japan

幌延深地層研究計画における地上からの調査研究において実施した地下施設の設計と建設計画の策定、及びそれらに基づく坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)における地下施設建設の現状について報告する。

2008 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (2008 IHLRWM)   Las Vegas (USA)
Proceedings of the 2008 IHLRWM pp.250-257
2008
K. Hatanaka, N. Shigeta and T. Fukushima

Applying Systematic Geosynthesis Methodology to Surface-based Investigations in “Horonobe URL Project”, Japan

幌延深地層研究計画における地上からの調査研究段階(第1段階)は、2001年3月に始まり、2005年度に修了した。第1段階の調査研究においては、地質環境統合化と繰り返しアプローチの考え方を導入し、幌延における研究所設置地区及びその周辺の地質環境の特性評価を行うとともに、それらの適用性を確認した。第1段階の成果については、2006年度に取りまとめ、2007年3月に公表した。本報告では、幌延深地層研究計画の第1段階で適用したステップワイズな調査研究における地質環境統合化手法と繰り返しアプローチの考え方と適用性について議論するとともに、その成果について取りまとめた。

2008 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (2008 IHLRWM)   Las Vegas (USA)
Proceedings of the 2008 IHLRWM pp.101-108
2008
C. Doughty, C.F. Tsang, K. Hatanaka S. Yabuuchi and H. Kurikami

Application of direct-fitting, mass-integral, and multirate methods to analysis of flowing fluid electric conductivity logs from Horonobe, Japan

流体電気伝導度検層を幌延の深層ボーリング孔において適用した。その結果、幌延に存在する塩水系地下水に対しては、淡水系の井戸水で孔内水を置換することにより、水理特性の解析に有効なデータが取得できることがわかった。

Water Resources Research Vol.44 W08403 2008
C.F. Tsang, C. Doughty and M. Uchida

Simple Model Representation of Transport in a Complex Fracture and Their Effects on Long-Term Predictions

亀裂中の開口幅の不均質性、亀裂内の小亀裂、断層ガウジ、小亀裂に囲まれたブロック、健岩部などの要素を考慮したモデルを「現実的モデル」として構築し、粒子追跡法を用いて核種移行計算を行い、短期間の原位置トレーサー試験と自然の動水勾配(0.001)下での長期のトレーサーの破過曲線をモデル化し、得られた破過曲線を「真」と仮定した。通常性能評価で用いられる平行平板モデル(単一開口幅で、単一のマトリクスを考慮)と開口幅の不均質性追加したモデルで、自然の動水勾配下でのトレーサーの長期挙動について以下の2つのシミュレーションを行い、「真」の結果と比較した。(1)原位置トレーサー試験の破過曲線に対するフィッティングを行ったモデル、(2)室内実験で得られたパラメータを用いたモデル。その結果、(1)のモデルは「真」の破過曲線に対してピーク時間が10-100倍遅くピーク濃度を1⁄50-1⁄300過少評価し非保守的結果が得られた。また、(2)のモデルは「真」の破過曲線に対してピーク時間が1⁄50早く、ピーク濃度が50倍過大評価され保守的な結果が得られた。これらから、亀裂の内部構造を適切に考慮する必要があることが明らかとなった。

Water Resources Research Vol.44 W08445 2008
K. Tsusaka, M. Yamasaki, Y. Hatsuyama and T. Yamamoto

Proposal of a practical guide of convergence measurements in Horonobe Underground Research Laboratory

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において、2本の立坑を掘削しており、掘削に伴うコンバージェンスや支保工の応力の計測結果を整理し、より深部の施工における坑道周辺岩盤の変形と緩みの関係を予測する指標が必要とされている。一般的な二車線道路トンネルのコンバージェンス計測結果に対しては、初期変形速度、最終変形量、発達する緩みの幅、許容変形量の関係が整理され、施工管理のために5区分から成る岩盤挙動分類が提案されている。本研究では、その岩盤挙動分類を掘削径の異なる3事例でのコンバージェンス計測結果と比較し、その適用性に関して良好な結果を得た。そして、その結果を踏まえ、深度140mまでの立坑掘削でのコンバージェンス計測と支保工の応力計測の結果を既往の岩盤挙動分類と比較した。その結果、既往の分類で区分IIIの初期変形速度が計測された場合、区分IIの範囲の最終変形量となり、その際に発達する緩み域の幅は、掘削径の15から25%となることを明らかにした。

The 42nd U.S. Rock Mechanics Symposium and 2nd U.S.-Canada Rock Mechanics Symposium San Francisco (U.S.A) 2008
H. Yasuhara, N. Kinoshita, H. Kurikami, S. Nakashima and K. Kishida

Evolution of permeability in siliceous rocks by dissolution and precipitation under hydrothermal conditions

A conceptual model is presented to follow the evolution of permeability in Siliceous rocks mediated by pressure solution comprising the serial processes of interfacial dissolution, diffusion, and free-face precipitation. In this work the main minerals of siliceous rocks that are quartz, cristobalite, and amorphous silica, are notably focused to examine differences of the permeability evolutions attributed to the composed minerals, at the effective pressures of 1, 5, 10MPa, and temperatures of 20 and 90℃. The rates and magnitudes of the permeability degradation increase with increments of pressures and temperatures prescribed. Ultimate permeabilities reduce by the order of 90% at the completion of dissolution-mediated compaction at 10 MPa and 90℃.

3rd International Conference on Coupled T–H–M–C Processes in Geo-systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2008) Lille (France) 2008
H. Sato

A Thermodynamic Approach on Effect of Salinity on Swelling Pressure of Bentonite

高レベル放射性廃棄物地層処分の人工バリアを構成する緩衝材や埋め戻し材に使用されるベントナイトの主要構成粘土鉱物のスメクタイトに着目し、層間水と接触溶液の水の熱力学データ(相対部分モルGibbsの自由エネルギー)に基づいて、ベントナイト中のスメクタイト含有率や珪砂混合率を考慮して、スメクタイト部分密度に対する膨潤圧をさまざまな塩濃度に対して求め、実測値と比較検討した。解析は、これまでに報告されている溶液条件([NaCl]=0.5、 0.8、 1.7、 3.4M、幌延地下水(イオン強度IS=0.207M)、人工海水(IS=0.64M))に対して行った。計算結果は、塩濃度の増加に伴い膨潤圧は低下するものの、密度の高い領域では大きな差は見られない。一方、実測値では、スメクタイト部分密度0.9Mg⁄m3以上の領域で膨潤圧に及ぼす塩濃度の影響は明確には見られず、バラツキの範囲内である。この原因は、ベントナイトに含まれる可溶性塩が溶解し、間隙水のイオン強度が増加したためと考えられる。

The 4th Japan-Korea Joint Workshop on Radioactive Waste Disposal 2008 2008
H. Saegusa, H. Osawa, H. Onoe, T. Ohyama, R. Takeuchi and S. Takeuchi

Stepwise Hydrogeological Characterisation Utilising a Geosyntesis Methodology — A Case Study from the Mizunami Underground Research Laboratory Project —

超深地層研究所は「結晶質岩花崗岩を主な対象とした深地層の研究施設の一つであり」この計画では「地層処分研究開発の基盤となる深地層の科学的研究の一環として」深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を全体目標の一つとした調査研究が進められている。この目標を達成するために、統合化手法を構築してきているとともに、それの適用性を確認するための調査研究を進める。超深地層研究所計画の地表からの調査予測研究段階における地下水流動特性評価においては「水理調査と水理地質構造モデルの構築」地下水流動解析を繰り返し実施してきた。その結果「調査の進展に伴い水理地質構造モデルの不確実性が低減したことが確認でき」効率的に地下水流動特性を把握するためには「調査とモデル化・解析を繰り返し実施する」といったアプローチが有効であることが示された。

3rd AMIGO WORKSHOP ON APPROACHES AND CHALLENGES FOR THE USE OF GEOLOGICAL INFORMATION IN THE SAFETY CASE Nancy (France)
Proceedings pp.235-248
2008
K. Hatanaka, H. Osawa and H. Umeki

Geosynthesis: Testing a Safety Case Methodology at Generic Japanese URLs

本報告は、地質環境情報のデータ取得から特性評価までの作業フローの開発とその適用性について、我が国の地下研究施設(瑞浪と幌延)における調査において確認するとともに、関連するセーフティケースとの構築手法について検討した。

3rd AMIGO WORKSHOP ON APPROACHES AND CHALLENGES FOR THE USE OF GEOLOGICAL INFORMATION IN THE SAFETY CASE Nancy (France)
Proceedings pp.134-153
2008
H. Yoshida, R. Metcalfe, K. Yamamoto, Y. Murakami (Y. Amano), D. Hoshii, A. Kanekiyo, T. Naganuma and T. Hayashi

Redox front formation in an uplifting sedimentary rock sequence: an analogue for redox-controlling processes in the geosphere around deep geological repositories for radioactive waste

地下環境における酸化還元フロントは、多くの微量元素の移行及び固定を制御している。放射性廃棄物の地層処分に関する安全評価にとって、廃棄体周辺の長期に渡る酸化還元反応を評価することが必要となってくる。これらの反応を理解するために、隆起した堆積岩中に形成された酸化還元フロントに関する研究を実施したところ、フロントに存在する鉄酸化物の形成に微生物代謝が関与している可能性が示唆された。本報告で観察されたような水-岩石-微生物相互作用は、廃棄体周辺に形成される可能性のある酸化還元フロントで起こる反応のアナログとなると考えられる。このような酸化還元フロント中に形成された鉄酸化物は、廃棄体閉鎖後に還元環境が復元された後も保存される可能性がある。

Applied Geochemistry Vol.23 Issue 8 pp.2364-2381 2008

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
及川輝樹、笹尾英嗣、星野安治

長野県梓川上流セバ谷沿いに分布する礫層中から産する材化石の14C年代の再検討

火山活動や地すべりなどに伴う大規模な地形改変は、地下水流動系を変化させることなどにより、地下深部の地質環境に影響を及ぼす可能性がある。このため、大規模地形改変に関する研究事例を積み重ねることは、さまざまな自然事象が地下深部の地質環境に及ぼす影響に関する理解を深めるとともに、地層処分における地質環境の長期安定性にかかわる不確実性を低減させるうえで有益である。そこで、飛騨山脈を源とする梓川上流部の流路変更時期の推定に重要なデータとなる、焼岳の山麓に分布する段丘礫層の形成年代を、加速器質量分析装置を用いた放射性炭素年代測定によって調査し、礫層中の材化石群から約48ka BPの年代値を得た。この年代は、白谷山火山の活動開始時期とほぼ一致することから、白谷山火山の活動により梓川が堰き止められ、流路が東に変化し、平坦面付近の河川流量が増し急激な下刻が起きた可能性が考えられた。

第四紀研究 Vol.47 No.6 pp.425-431 2008
小坂英輝、楮原京子、三輪敦志、今泉俊文、黒澤英樹、野原壯

横手盆地東縁断層帯の後期鮮新統〜更新統のフィッション・トラック年代

奥羽脊梁山脈及びその周辺に分布する後期鮮新世以降の地層は、東北日本の短縮変形ステージに属し、奥羽脊梁山脈周辺の断層褶曲帯の発達に伴い堆積したものと考えられる。奥羽脊梁山脈西縁を限る断層褶曲帯及び周辺の地質構造の発達過程を明らかにするために、奥羽脊梁山脈西縁に分布する後期鮮新統〜更新統(田沢層・栗沢層・千屋層)において露頭観察と地層中に挟在する酸性火山岩5試料のFT年代測定を行った。その結果、本断層褶曲帯の活動変遷に関連する地層の年代として、2.7±0.4〜0.93±0.14Maが得られた。また層相の特徴を踏まえると、本地域で酸性火山活動のあった1Ma以前に断層活動に伴う地形変化が生じた可能性が高い。

地学雑誌 Vol.117 No.5 pp.851-862 2008
梅田浩司、壇原徹

フィッション・トラック年代によるむつ燧岳の活動年代の再検討

火山灰を用いた編年法の一つであるRIPL法は、後期更新世の地質年代を決定するために有効な方法として、活断層調査のみならず考古学等の分野に幅広く利用されている。さらに、梅田・古澤(2004)は、RIPL法を前期〜中期更新世の火山に適用し、噴火史の編年を行っている。今回、前期〜中期更新世へのRIPL法による編年の妥当性を検討するため、最終期に噴出したとされる火砕流堆積物を対象に通常の3〜4倍のジルコンを用いたフィッション・トラック年代(FT年代)測定を行った。その結果、FT年代(約80万年)は、RIPL法によって推定された年代(約30万年)に比べて有為に古い値を示す。このことは、RIPL法による編年に用いた河岸段丘堆積物が従来から指摘されていた形成年代(MIS10)より古い時代に形成されたことを示唆する。

岩石鉱物科学 Vol.37 No.5 pp.131-136 2008
中田高、隈元崇、奥村晃史、後藤秀昭、熊原康博、野原壯、里優、岩永昇二

空中レーザー計測による活断層変位地形の把握と変位量復元の試み

活断層に沿った変位量分布の情報は、活断層の空間的な分布や、地下の断層面のアスペリティの偏在を理解するための基礎的情報であり、多くの研究者による精力的な調査・研究が行われている。これまで、このような情報は空中写真判読や地上での測量などにより情報を得ていた。しかし、空中写真判読は、使用する写真や判読者により地域差や個人差が生じる問題がある。また、空中写真判読や測量には多大な労力と時間がかかる。一方、日本のように植生に覆われる斜面や家屋が密集する市街地が広く分布する地域では、空中写真判読や、地形測量の実施が困難な場合が少なくない。本研究では、植生等の影響が少ない地域で実施されている空中からのレーザー計測の国内での適用可能性を検討するため、横手盆地東縁の千屋丘陵周辺と阿寺断層沿いにおいて、独自に空中レーザー計測を実施し、そのデータを用いて三次元画像化による断層変位地形の把握と、断層変位量計測の手法的検討を行った。その結果、国内の活断層での空中レーザー計測により、断層変位地形や断層変位量の広域的な情報を効率的に取得できることがわかった。

活断層研究 29号 pp.1-13 2008
鈴木元孝、西澤章光、大脇好夫、西尾智博、齋藤龍郎、石丸恒存

JAEA–AMS–TONOの現状

東濃地科学センターでは、平成9年3月に岩石や地下水など天然試料の同位体分析を目的としてタンデム型加速器質量分析計(NEC製15SDH-2ペレトロン)を導入した。平成19年7月のタンデム研究会以降の装置の現状と、測定精度を向上するために行った改善を報告する。

第21回タンデム加速器およびその周辺技術の研究会 群馬県高崎市 2008

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Umeda, A. Ninomiya and T. Negi

Heat source for an amagmatic hydrothermal system, Noto Peninsula, Central Japan

地層処分システムの長期的な安全性を検討するうえで考慮すべき天然現象として、最近注目されている非火山性温泉の熱源を解明するため、能登半島(和倉温泉:95度)を事例に、温泉ガスの希ガス同位体分析及び三次元比抵抗構造解析を行った。その結果、三次元比抵抗構造によると、地下2〜3kmまでは、中新世の堆積岩と考えられる低比抵抗帯がそれ以深は、基盤岩(花崗岩)と考えられる高比抵抗帯が存在する。また、温泉ガスのヘリウム同位体比は、大気の値と同程度あるいはそれより低い値を示す。一方、最近発生したM6.5以上の内陸地震の震源域では、大気の2倍以上の値を示した。以上のことから能登半島の非火山性温泉は、高いU、 Th、 Kを含む花崗岩の崩壊熱によって温められた天水起源の地下水が、活構造帯等に規制され地表まで上昇した可能性があると考えられる。

JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH Vol.114 pp.B01202_1-B01202_10 2009
K. Umeda, A. Ninomiya and G. F. McCrank

High 3He emanations from the source regions of recent large earthquakes, Central Japan

活断層からCO2, H2O, H2, Rn, He等の揮発性物質が放出されているという観測事例が多く報告されている。このうち、不活性ガスであるHeは、地殻中での化学反応を生じにくいことから、地下深部の化学的な情報を得るための重要な指標の一つである。これまでにも1984年長野県西部地震の前後に遊離ガス中のヘリウム同位体比(3He/4He比)が増加したことやSan Andreas断層ではマントル・ヘリウムが断層に沿って上昇していることが指摘されている。本研究では、新潟平野の活断層や最近の巨大内陸地震震源域において、温泉ガスのヘリウム同位体比の測定を行った。その結果、これらの地域では高いヘリウム同位体比が認められることから、遊離ガスや地下水に含まれるヘリウム同位体比は、変動地形学的根拠に乏しい活断層を検出するための有効な地球化学的指標であることが示唆される。

Geochemistry, Geophysics, Geosystems Vol.9 No.12 2008
T. Ishimaru, M. Niwa, H. Kurosawa and K. Kagohara

Effects of earthquakes and faulting on the deep geological environment based on case studies in Japan

高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性確保にあたっては、変動帯に位置する我が国では、地震・断層活動が地質環境に与える影響を評価することが重要となる。地震・断層活動が地質環境に与える影響のうち、断層活動に伴う岩盤変位は、直接的な岩石の破壊のみならず周辺岩盤に透水性の高い破砕帯を形成するため、水理学的な影響を及ぼす可能性がある。本研究においては、我が国の代表的な横ずれ断層である跡津川断層帯を対象とした事例研究を行い、活断層に沿った破砕帯の分布頻度は、断層から500m離れると減少することがわかった。また、活断層沿いで行った断層水素ガス測定の結果からは、水素ガスの放出量と破砕帯の内部構造との関連性が見いだされ、断層水素ガスを利用した調査手法は破砕帯内の流体移行経路の把握に役立つという見通しを得た。

2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference Tokyo (Japan)
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive: 6 pages)
2008
K. Yasue, H. Saegusa, H. Onoe, R. Takeuchi and T. Niizato

Study for Evaluation of the Influence of Long-term Climate Change on Deep Groundwater Flow Conditions: integration of paleo-climatology and hydrogeology

東濃地域を事例とした地下水流動の数値シミュレーションの結果、気候変化に伴う涵養量の変化が地下水流動に影響を与えることがわかった。このことは解析地域の長期的な気候変化とそれに伴う涵養量の変化の把握が必要であることを示している。このことを踏まえて、さらに本研究では、将来の涵養量の推定手法を示し、既存データから涵養量の推定に必要な蒸発散量が年平均気温からある程度推定できることを示した。また、花粉化石分析の結果から東濃地域の氷期の気温は日本列島の最北部地域における現在の気温と同程度であり、日本最北部地域の現在の表層水理情報が東濃地域の氷期の涵養量推定に役立つ見通しを得た。

The 36th IAH Congress 2008 Toyama (Japan) 2008
T. Niizato, K. Yasue, H. Kurikami, M. Kawamura and T. Ohi

Synthesizing geoscientific data into a site model for performance assessment: A study of the long-term evolution of the geological environment in and around the Horonobe URL, Hokkaido, northern Japan

地層処分システムのセーフティケースにおける信頼性の構築のために重要な課題の一つは、地質環境の安定性を示すための一連の論拠及び解析結果を提示することである。本研究では、北海道北部の幌延深地層研究所を事例として、“データフローダイアグラム”と“プロセスダイアグラム”の手法を一連の調査・解析に対して適用した結果を示す。特に、地下水の流動特性と塩分濃度の空間分布にかかわる長期変遷を記述するための調査・研究を対象とした。このアプローチを用いることにより、さまざまな分野にまたがる調査結果を統合し、境界条件の変化を伴う水理地質構造モデルの変遷を検討することができた。そして、過去から現在に至る気候,地形及び地質構造の変化を反映させた水頭分布や地下水中の塩分濃度の変遷を描くことが可能となった。過去から現在に至るこのような地質環境モデルは、セーフティケース構築において必要とされる地層処分システムの将来変化の評価にかかわる信頼性向上につながるものと考えられる。

3rd AMIGO WORKSHOP ON APPROACHES AND CHALLENGES FOR THE USE OF GEOLOGICAL INFORMATION IN THE SAFETY CASE Nancy (France)
Proceedings pp.222-234
2008

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