Englishサイトマップ原子力機構トップページ

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成17〜19年度分)

»投稿論文・雑誌へ

論文・雑誌に関する情報は、研究開発成果検索・閲覧システム(JOPSS)にも掲載しておりますので検索下さい。

全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
梅木博之

リスク学用語小辞典

平成19年10月刊行予定の「リスク学用語小辞典」の解説文を作成した。上記作業は、平成18年度外部兼職「日本リスク研究学会「リスク学用語小辞典」への協力」において依頼され、執筆者が担当したのは、(1)「高レベル放射性廃棄物の地層処分」に関する用語項目の選定、 (2)選定された用語項目についての解説文の執筆である。刊行に際しての最終的な校正及び確認作業は筆者及び編集責任者、丸善株式会社編集部が行う。

日本リスク研究学会編, 丸善株式会社, (執筆部分が複数頁に分散しているため頁数は省略) 2008
河田東海夫

地層処分研究開発の最近の進捗状況

地層処分研究開発の最近の進捗状況について、事業段階における研究開発の全体的な枠組みを概説するとともに、「第2次取りまとめ」以降に実施してきた研究開発の内容を、深地層の科学的研究と処分場の工学技術の観点から述べた。

原子力システムニュース Vol.18 No.4 pp.18-25 2008
河田東海夫

軽水炉から高速炉への移行期にそなえて

昨今の化石燃料調達に関する国際競争の激化で原子力への期待が高まる中、主要国では高速炉開発も再活性化の兆しを見せている。そうした中我が国では官民の関係機関からなる「五者協議会」が設けられ、高速炉への移行シナリオを含む開発戦略に関する議論が開始されつつある。高速炉への移行期には、プルサーマル燃料を含む中間貯蔵軽水炉燃料の再処理と高速炉燃料再処理が並行的に行われることになる。本報では、このような移行期の問題を、高レベル廃棄物処分とプルトニウムバランスの観点から検討を行い、主要課題を明らかにする。

日本原子力学会誌 Vol.49 No.6 pp.22-27 2007
河田東海夫

地層処分技術に関する知識の伝承 〜社会共通の知的財産作りに向けて〜

高レベル放射性廃棄物地層処分は、事業の長期性と安全確保の長期性から、地層処分技術に関しては実施主体や規制機関の活動を支えるための知識基盤として体系化し、それを次世代に向けて伝承していくことが不可欠である。日本原子力研究開発機構は、知識マネジメントの考え方を用いて、地層処分技術に関する知識を管理し次世代に伝承するための枠組みを提案している。本稿では、この地層処分技術に関する知識の伝承の枠組みを紹介する。

月刊エネルギー 2007年6月号 pp.15-20 2007
梅木博之

21世紀の地層処分研究開発:技術的知識基盤の構築

事業の長期性と安全確保の長期性から、地層処分技術に関しては実施主体や規制機関の活動を支えるための技術基盤として体系化し、継続的な研究開発によってその信頼性の向上を図っていくことが不可欠である。核燃料サイクル開発機構は、2005年9月に公表したH17取りまとめにおいて、このような体系化にあたっての新たな視点として知識管理に基づくアプローチを提案している。本稿では、このアプローチの意義、地層処分技術に関する知識のセーフティケース概念に基づく構造化や知識ベースの開発について解説し、日本原子力研究開発機構の今後の研究開発の方向性を与えるものであることを紹介している。

日本原子力学会誌 Vol.48 No3 pp.14-19 2006
梅木博之

地層処分の技術的知識基盤の構築 —処分計画を段階的に着実に進めるために—

高レベル放射性廃棄物のような長寿命の廃棄物の処分では、これまでの工学的プロジェクトと比較して安全性を考慮する時間スケールが極めて長期にわたり、モニタリングや制度的管理など人間の監視に基づく管理方法を前提としない、受動的なシステムによって安全を確保することが求められる。地層処分は、このような技術的な要求を満たすとともに、倫理的観点(IAEA、1995;NEA、1995)、さらには、社会の持続的発展を可能とするという観点から受け入れることのできる現実的な解決法と考えられている。地層処分を安全に行うためには、適切な地質環境を選定し、その条件に適した処分システムを設計するとともに、直接的な実証ができないシステムの性能が長期間にわたって発揮されることを、計算モデルを用いた定量的な解析に基づいて評価(これを安全評価という)しておく必要がある。こうした作業を行うためには、さまざまな分野に渡る学際的な研究開発によって、必要となる技術、関連する情報やデータ、科学的知見などを整えていくことが必要である。

月刊エネルギー 2005年12月号 pp.72-77 2005

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Kawata

The impact of fuel cycle options on the space requirements of a HLW repository

原子力を真に持続的なエネルギー源とするためには、燃料供給の持続性を保証することに加え、廃棄物の処分が永続的に行える道を確保する必要がある。後者を達成するためには、特に広大な面積を必要とする高レベル廃棄物の処分場については、単位面積あたりの廃棄物充填密度をできるだけ高めることにより、与えられた処分場の利用可能期間を極力長くする必要がある。高レベル廃棄物の場合、処分場への廃棄物充填密度の主要決定因子は発熱であり、特に半減期の長いTRU元素の発熱の影響は大きい。本報告では、代表的な核燃料サイクルオプションで生ずる高レベル廃棄物の発熱を、TRUに着目して比較し、それを除去することによる処分場所要面積低減の可能性を検討した。とくに将来のFBRサイクルでは、TRUの回収・燃焼を行うことで、単位発電量あたりに必要とする処分場面積を半分程度に低減できる可能性を示した。

Nuclear Engineering and Technology Vol.39 No.6 pp.683-690 2007
T. Kawata, H. Umeki and I.G. McKinley

Knowledge Management: the Emperor’s New Clothes?

地層処分技術は学際的な分野にわたり、そのセーフティケースを作成するためには関連する広範囲の知識を必要とする。ここで知識とは、処分計画を支える形式知と暗黙知の双方のあらゆる情報を含むことができるよう非常に幅広い意味で用いている。ナレッジマネジメントでは、そのような知識であるデータ、情報、理解や経験などの取得、統合、品質保証、伝達及び更新と記録といったすべての側面を対象としている。要求される知識が実施主体、規制当局、政策決定者、一般公衆などすべてのステークホルダーに受入れられ、また知識の欠如を明らかにし優先度づけすることができるよう、知識ベースは明確かつ論理的に構造化しておくことが重要である。本論文では、最新のITツールに基づく理想的な知識管理システムの特徴を示しながら、我が国の高レベル放射性廃棄物処分計画に向けた知識管理システムの基本的な概念を提案している。

Proceedings of International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM), Las Vegas, Nevada, pp.1236-1243 2006
Y. Miyamoto, H. Umeki, H. Ohsawa, M. Naito, K. Nakano, H. Makino, K. Shimizu and T. Seo

Key R&D Activities Supporting Disposal of Radioactive Waste: Responding to the Challenges of the 21st Century

クリーンで経済的で社会が受容できるエネルギーの十分な供給を確立することは、21世紀において重要で世界的なチャレンジである。原子力の役割をさらに拡大することが選択の一つと思われるが、このオプションの実施は、すべての放射性廃棄物を安全に処分することにかかっている。安全な処分は専門家の間ではその基本的な実現可能性についてコンセンサスは得られているが、特に主要なステークホルダーにより受け入れられるよう、その概念をもっと実際的なものとしなければならない。ここでは、世界的なトレンドを考慮し、また日本の例を引き合いにして、将来の研究開発の鍵となる分野を明らかにし、有益と思われる国際協力のシナジー効果が生まれる可能性のある分野に焦点を当てていくこととする。

Nuclear Engineering and Technology Vol.38 No.6 pp.505-534 2006

ページトップへ


人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
藤田朝雄、杉田裕、升元一彦、風間秀彦

結晶質岩における粘土プラグの閉鎖性能に関わる原位置試験および解析評価

本報告では、高レベル放射性廃棄物の地層処分場における閉鎖技術に関して、国内外における閉鎖概念の考え方を整理したうえで、その考え方に基づいた閉鎖性能の発揮において確認しなければならない課題を閉鎖要素自身の施工が可能であることと、期待される性能が発揮できることとした。この課題を解決すべくAECLとの共同研究としてカナダの地下研究施設において実施したTSXの施工概要及び連続計測で取得されたデータを示すとともに、施工した粘土プラグの止水性能を確認するために実施した加圧注水試験結果とトレーサー試験及びその試験結果に基づく解析結果を示した。今回の試験により、現状技術を組合せることによって施工した粘土プラグは、周辺部を含めて低透水性能を発揮できることを確認した。また、トレーサー試験の解析評価を行うことにより、粘土プラグ周辺の物質移行特性を把握することができた。

原子力バックエンド研究 Vol.14 No.1 pp.13-30 2007
谷口直樹、鈴木宏幸、中西智明、中山武典、舛形剛、建石剛

低酸素濃度下におけるチタンオーバーパックの長期水素吸収挙動と水素脆化の検討

高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるオーバーパック候補材料の一つであるチタンの長期水素吸収挙動と水素脆化の可能性を検討した。定電流カソード分極試験結果より、電荷量が同じ場合、電流密度が低いほど多くの水素が吸収されるとともに、より内部まで水素が浸入した。低酸素濃度条件での腐食速度2.8×10-2μm⁄yに相当する電流密度での水素吸収率はほぼ100%と推定され、1000年間で約400ppmの水素を吸収すると評価された。水素を吸収したチタンの機械的特性は水素濃度と水素濃度分布形態によって異なり、水素がチタン内部まで均一に分布したものほど脆化の程度が大きいことが確認された。1000年間で約400ppmの水素を均一に吸収した6mm厚のチタンオーバーパックにおいて、破壊が生じうるのは降伏応力相当の応力条件に対して亀裂寸法が約2〜3mm以上の場合と推定された。

材料と環境 Vol.56 No.12 pp.576-584 2007
鈴木宏幸、谷口直樹

低酸素濃度下におけるチタンの腐食速度と水素吸収挙動

高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるオーバーパックには1000年間以上の寿命が要求されており、その候補材料の一つとしてチタンが挙げられている。チタンをオーバーパック材料として用いる場合に評価すべき項目の一つとして水素脆化が挙げられるが、地層処分で想定される中性から弱アルカリ性の低酸素濃度環境におけるチタンの耐食性や水素吸収挙動について十分な知見が得られていない。よってチタンの腐食速度及び水素吸収挙動について信頼性の高いデータを取得するために、長期浸漬試験及び完全密封容器試験を実施した。環境因子をパラメーターとした試験の結果、高炭酸塩(1M)条件と高pH環境(pH13)でおもにアノード反応の促進によると思われる腐食速度の顕著な増加が認められた。それ以外の条件では、腐食速度は10-3〜10-2μm⁄yオーダーの値となった。また腐食により発生した水素のほとんど(98%以上)がチタン中に吸収されていたことがわかった。チタンの長期吸収について安全側の評価として水素吸収量の経時変化を直線則で近似すると1000年間で400〜500ppmの水素を吸収することが示唆された。

材料と環境 Vol.55 No.11 pp.485-494 2006

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
H. Mitsui, R. Takahashi, H. Asano, N. Taniguchi and M. Yui

Susceptibility to stress corrosion cracking for low-carbon steel welds in carbonate-bicarbonate solution

低歪速度法により高レベル放射性廃棄物地層処分容器の候補材料である炭素鋼の溶接部の応力腐食割れ(SCC)感受性を検討した。幾つかの溶接法を低炭素鋼に適用し、溶接金属部、溶接境界、熱影響部を含む溶接部のSCC感受性を母材と比較した。試験の結果、低炭素鋼溶接部の応力腐食割れ挙動は金属組織に大きく依存し、フェライト⁄パーライトからなる母材の応力腐食割れはおもにフェライト–フェライト又はフェライト–パーライトの粒界に沿って進展した。しかし、微細なフェライト組織からなる溶接部の割れ形態は複雑であり、割れ進展速度は母材よりも小さくなった。SCC進展は割れの経路に沿った微細な結晶あるいはセメンタイト(鉄炭化物Fe3C)により抑制された。また、溶接方法は低炭素鋼のSCC感受性に有意な影響を及ぼさないことが確認された。

CORROSION Vol. 64 No.12 pp.939-948 2008
N. Taniguchi and M. Kawasaki

Influence of sulfide concentration on the corrosion behavior of pure copper in synthetic seawater

硫化ナトリウムを含む人工海水中において、浸漬試験と低歪速度(SSRT)試験より腐食速度と応力腐食割れ(SCC)挙動を調べた。730日までの浸漬試験の結果、純銅の腐食速度は硫化物濃度に強く依存し、0.001M–Na2Sでは0.6μm⁄y以下、0.005M–Na2Sでは2–4μm⁄y、0.1M–Na2Sでは10–15μm⁄yの値が見積もられた。SSRT試験の結果、明瞭なSCCは硫化物濃度が0.005Mを超える比較的高い濃度条件で認められた。これらの試験結果から、銅は硫化物濃度が0.001Mの低い環境では腐食速度が低く応力腐食割れを起こさないため優れた耐食性を示す可能性がある。硫化物のベントナイト中における拡散を仮定してオーバーパック表面へのフラックスから長期的な銅オーバーパックの腐食量の推定を行い、硫化物濃度と腐食寿命の関係を評価した。

Journal of Nuclear Materials Vol.379[1-3] pp.154-161 2008
T. Okubo, H. Kikuchi and M. Yamaguchi

An approach of NMR relaxometry for understanding water in saturated compacted bentonite

地層処分研究開発において、人工バリアの設計及び安全性評価のために、圧密ベントナイトの透水係数及び水の拡散係数のデータが、取得されている。しかしながら、圧密ベントナイト中の水路に寄与するポア構造(粘土層間及び外部間隙)は、必ずしも明らかになっていない。本研究では、1H NMR緩和分布解析を飽和圧密ベントナイトに適用することにより、圧密ベントナイト中のポア構造とそれに影響する因子を明らかにすることを目的とする。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.169-176 2008
T. Okubo

Tortuosity based on anisotropic diffusion process in structured plate–like obstacles by Monte Carlo simulation

板状障害物が分散した媒体の拡散をモンテカルロ法により計算し、拡散テンソルの対角成分を評価した。計算された屈曲度は、多孔度と浸透閾値に関係付けられたkoponenの式としてモデル化された。これらの結果は、同一な多孔度を持つ媒体は、必ずしも等しい屈曲度を示さず、板場障害物の配列の影響を強く受けることを示した。さらに、計算結果は、ComitiとRenaudによる実験結果と比較された。屈曲度に対する結果は、0.86以上の多孔度で実験値とよく一致した。

Transport in Porous Media, 72, pp.339-350 2008
Y. Sugita, T. Fujita, Y. Takahashi, S. Kawakami, H. Umeki, M. Yui, M. Uragami and K. Kitayama

The Japanese approach to developing clay–based repository concepts -An example of design studies for the assessment of sealing strategies

本論文はPhysics and Chemistry of the Earth Tours 2005 Meeting特集号に投稿する論文である。日本の処分事業を進めるうえでのアプローチについて紹介するとともに、処分場概念の設計へ反映する材料の要件の検討の一例として、処分場の閉鎖にかかわる材料と人工バリア材料との関連について水理解析の結果を示している。処分事業を進めるうえでのアプローチとしては、公募方式の採用に基づき、処分場が決まっていない前提条件でどのように処分場の性能を確保するか、その確からしさが段階を追って精度を増すという考え方を示したものである。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol.32[1-7] pp.32-41 2007
T. Fujita, Y. Sugita and Y. Takahashi

Hydraulic calculation of clay-based backfill and plug for the intersections of tunnels in the geological repository for HLW

本検討では、地層処分システムに求められる閉鎖性能の考え方の提示に資することを目的に、処分場に存在すると考えられる構成要素を設定し、実際のデータに基づく物性値を考慮した水理解析を実施し、要素間の相互影響や埋め戻し材、粘土プラグ等の止水効果の概略的な把握を試みた。その結果、コンクリートプラグの透水性、動水勾配の方向、粘土プラグの設置数及び位置は、全体の地下水流動及び通過流量等に大きく影響することがわかった。

Australian Geomechanics, 41[4], pp.89-95 2006
J.B. Martino, D.A. Dixon, B. Vignal and T. Fujita

A Full–Scale Tunnel Sealing Demonstration using Concrete and Clay Bulkheads Exposed to Elevated Temperatures and Pressures

カナダAECLの地下研究施設において、国際共同研究として「トンネルシーリング性能試験」を実施している。本共同研究は、実規模プラグの施工性の確認、シーリング性能の把握及び性能に影響与える要因の評価を行うことを目的としている。試験は、AECLのURLの深度420mの試験坑道で実施しており、コンクリートプラグは低発熱高流動コンクリートを、また、粘土プラグはケイ砂とベントナイトの割合で混合したものを材料としている。両プラグ設置後、段階的に圧力を4MPaまで上昇させる注水試験、温度を15℃から65℃まで上昇させる加熱試験を実施し、両プラグ及びその周辺岩盤の力学、水理、熱的挙動を連続計測した。本報告では、トンネルシーリング性能試験の全体概要を報告するものである。

Waste Management Symposium 2006 (WM '06) 2006

ページトップへ


安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
吉川英樹

遺跡が語る地下の世界

雑誌「原子力eye」のコラムとして、考古学試料のデータが高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発分野、特に炭素鋼の腐食研究に役立っていることを紹介した。古墳から出土した鉄片や粘土で覆われて出土した鉄斧が、炭素鋼の長期安定性の予測の傍証となることを示した。

原子力eye Vol.54 No.3 pp.10-11 2008
T. Ishidera, S. Miyamoto and H. Sato

Effect of Sodium Nitrate on the Diffusion of Cl- and I- in Compacted Bentonite

TRU廃棄物処分の安全評価においては、14C、36Cl及び129Iといった核種のデータ取得が必要であるとともに、硝酸塩の溶出やセメント材料の溶解による地下水の高pH化の影響を評価する必要がある。よって、ケイ砂混合率及びNaNO3濃度をパラメータとして、高pH条件でCO32-、Cl-及びI-のベントナイト中の透過拡散試験を実施し、実効拡散係数(以下、Deの取得を行った。その結果、CO32-、Cl-、及びI-のDeは10-12〜10-11m2⁄s程度の値が得られた。これらのイオンのDeは、NaNO3濃度の増加に伴ってそれぞれ増大する傾向が見られ、これは、NaNO3濃度の増加に伴う陰イオン排除効果の低下によるものであると考えられた。また、CO32-はクニゲルV1中に含まれる方解石との化学平衡により、クニゲルV1中に保持されると考えられた。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.45 No.7 pp.610-616 2008
T. Ishidera, X. Xia, K. Idemitsu and Y. Kikuchi

Corrosion Products from Carbon Steel Formed in Compacted Bentonite under Reducing Conditions

オーバーパック腐食生成物が圧縮ベントナイト中の放射性核種の収着挙動、拡散挙動へ及ぼす影響を調べるため、あらかじめ電解腐食させた炭素鋼を圧縮ベントナイトに接触させて鉄腐食生成物をベントナイト中へ移行させ、圧縮ベントナイト間隙中の鉄腐食生成物の存在形態を調べた。圧縮ベントナイトをスライスし、スライス片の選択溶解抽出を行い鉄腐食生成物の結晶化の程度を調べ、鉄腐食生成物の価数を調べた結果、室温で数年の範囲内では、鉄腐食生成物は非晶質のFe(OH)2及びFe(OH)3として存在していることが推測された。XRD分析の結果より、鉄腐食生成物によってNa型スメクタイトのFe型化はほとんど起こっておらず、鉄腐食生成物はスメクタイト粒子間に存在していることが示唆された。また、あらかじめ大気下で生成した3価の鉄腐食生成物は、圧縮ベントナイト間隙中では容易に2価に還元されないものと考えられた。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.45 No.8 pp.763-772 2008
笹本広

第3回放射性廃棄物管理における天然及び人工バリア材としての粘土の役割に関する国際会議

第3回放射性廃棄物管理における天然及び人工バリア材としての粘土の役割に関する国際会議に出席し、最新の研究動向に関する情報を入手し、その概要をまとめた。

日本原子力学会誌 Vol.50 No.1 p.51 2008
T. Ebashi, Y.S. Hwang, Y.M. Lee, T. Ohi and S. Koo

Application of the Comprehensive Sensitivity Analysis Method to a Korean geological disposal concept

本検討においては、日本原子力研究開発機構と韓国原子力研究所間の研究協力の一環として、原子力機構が開発した包括的感度解析手法を韓国地層処分概念に適用し、感度解析を実施した。この適用の目的は、直接処分の概念に対して、線量の目標値を満足するニアフィールドパラメータの閾値を抽出できるかどうかについて確認することである。その結果、天然バリアが保守的な条件下において、線量の目標値を満足するニアフィールドパラメータの閾値が例示された。このことから、直接処分の概念に対する包括的感度解析手法の適用性を確認した。さらには、韓国の地層処分において、129Iに対するニアフィールド領域の重要な特性としては人工バリア周辺の地下水流量及び廃棄体からの溶解であることが示唆された。このようなアプローチは、直接処分の概念におけるシナリオ解析や頑健なバリアの構築に資するものである。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.45 No.11 pp.1138-1149 2008
甲斐邦男、前川恵輔

北海道天北地方幌延地域の新第三系珪藻質泥岩中の続成鉱物の分布 —地下水流動の推定—

原子力機構では、地層処分技術の信頼性を高め、処分事業や安全規制の技術基盤を堅固なものにするために、深地層の研究施設などを活用した研究を進めており、堆積岩・軟岩・塩水系地下水の地質環境を対象とした深地層の研究を北海道天北郡幌延地域で実施している。地層処分において地下水流動は処分場の安全性に影響する重要な要素である。地下水流動は地層内の変質鉱物の産状を支配する要因であるため、変質鉱物の産状は地下水流動を評価する指標となる。幌延地域の8孔の調査孔の続成変質鉱物の分布から珪質泥岩中の地下水の移動について考察を行った。自生続成鉱物として広く認められる黄鉄鉱や炭酸塩の量的な変化を、XRD解析、薄片モード観察、Fe2+/全Fe比、SO42-濃度、TIC濃度を用いて推定した。鉱物量の深度変化から調査地域の一部では天水起源の地下水が浸入していることが示された。この結果は地下水の化学成分から推定される地下水モデルを精緻なものとする知見と考えられる。

日本地熱学会誌 Vol.30 No.3 pp.205-214 2008
大澤英昭、梅木博之、牧野仁史、高瀬博康、I.G. McKinley、大久保博生

地層処分技術に関する知識マネジメントシステムの設計概念

高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する実際的な課題として、地層処分技術に関する知識の爆発的な増加が挙げられる。この課題に対応するためには、知識マネジメントの基本概念を取り入れ、長期に渡る地層処分事業において知識を伝承していくことが必要である。そのため、日本原子力研究開発機構では、最新の情報工学及び知識工学の技術を最大限に活用した次世代型の知識マネジメントシステムの開発を進めている。本稿では、地層処分分野における知識マネジメントの必要性を概観し、知識マネジメントシステムの開発の基本的な考え方と設計のアプローチを示す。

火力原子力発電 No.621 pp.26-33 2008
黒澤進、長崎晋也、田中知

DLVO理論に基づく地下水中でのモンモリロナイトゲルからの粒子の分散性に関する評価

DLVO理論を適用して、モンモリロナイトゲルの粒子間の剪断応力に相当する相互作用ポテンシャルを評価した。そして、Stokes則に従い、その相互作用ポテンシャルに相応する地下水流速を算定した。その結果、モンモリロナイト粒子の分散が生じるには、約10-5〜10-4m⁄sの範囲の地下水流速が必要であることが示された。この流速範囲は、我が国の地下深部の地下水流速よりも速いものである。また、熱運動に起因したモンモリロナイトのゲル粒子の易動性をMaxwell-Boltzmannの分布式を適用して検討した。その結果、ゲル状態にあるモンモリロナイト粒子の熱運動による易動性は、地下水中の溶存イオンの一般的な濃度条件のもとでは起こらないことが示された。本研究から、高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価において、核種移行におけるモンモリロナイト粒子の影響はほとんどないものと推測された。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.6 No.2 pp.205-213 2007
澤田淳、竹内真司、三枝博光、天野健治

亀裂性岩盤におけるボーリング調査に基づく水理学的有効間隙率の設定について

高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価など深部岩盤中での物質の移行評価においては、地下水の移行経路に当たる岩盤の間隙中での地下水流速が重要なパラメータの一つとなる。一般に、岩盤の間隙中の地下水流速はダルシー流速を有効間隙率で除すことにより求められ、その有効間隙率の設定に際しては、地下水の移行に寄与する間隙を適切に評価する必要がある。本論では、亀裂性岩盤における水理学的有効間隙率の設定について既往の研究例を紹介するとともに、地上からのボーリング調査で取得されたデータを活用した検討事例と課題について報告する。

第36 回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集 pp.273-278 2007
佐藤治夫

放射性廃棄物処分における易動性核分裂生成物および放射化生成物に関する国際ワークショップ

2007年1月16〜19日、仏国ラ・ボールにおいて、Mofap07「放射性廃棄物処分における易動性核分裂生成物及び放射化生成物に関する国際ワークショップ」が開催された。この会議は、放射性廃棄物処分にかかわる地質媒体中での核種、特にC–14、Cl–36、Se–79、Tc–99、I–129などの易動性核種の固定化や移動特性をスコープとして行われた。報告は、オーラル(6セッション)とポスター発表の2形態で行われた。ヨーロッパを中心に15か国から約90名が参加し、45件報告された。日本からは8名が参加し8件報告された。会議の最後には、今後の重点研究課題とキーワードが挙げられた。なお、各発表論文は、OECD⁄NEAの論文集として公表される。本報告では、各セッションのトピックスを紹介する。

日本原子力学会誌(会議報告) Vol.49 No.6 pp.48-49 2007
油井三和

地層処分基盤研究開発の現状と課題

本件は、高レベル放射性廃棄物の地層処分における基盤研究開発の現状と今後の課題について、基盤研究開発の構成要素である「深地層の科学的研究」、「工学技術開発」、「安全評価手法の開発」の3つの分野ごとに、これまでの研究開発成果に基づいて概説したものである。

金属 Vol.77 No.10 pp.1131-1134 2007
梅木博之

放射性廃棄物地層処分のセーフティケース

高レベル放射性廃棄物など半減期の極めて長い放射性核種を多く含む放射性廃棄物は、例えば数万年以上といった超長期間に渡って人間に危害を及ぼす可能性を持つ危険源となりうる。地層処分は、深部の地層が有する特性を利用して、こうした長寿命の放射性廃棄物を人間とその環境から安全に隔離するための方法である。本論文では、地層処分システムのセーフティケースについて、その役割や概念的特徴について概要を説明した後、これを信頼性の高いものとしていくための材料科学的チャレンジについて紹介する。

金属 Vol.77 No.10 pp.1135-1140 2007
黒澤進、水上雅史、佐藤久夫、野澤純、辻本恵一、栗原和枝

コロイドプローブ原子間力顕微鏡によるNaCl水溶液中のモンモリロナイト粒子の相互作用力の測定

本研究では、コロイドプローブAFMにより、モンモリロナイト粒子間の相互作用力をイオン強度〜500mMの水溶液中で直接測定した。その結果、粒子間には斥力が支配的に作用することが観察され、モンモリロナイト粒子の分散性は高いことが示唆された。また、この測定結果において観られた粒子間が接近する距離での斥力は、DLVO理論による理論予測とは不一致を示すものであった。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.5 No.3 pp.251-256 2006
藤井直樹、市川康明

圧縮ベントナイト中の表面拡散現象に関する均質化解析

ベントナイト中の拡散による物質移行において、均質化法を適用しスメクタイトのミクロレベルの構造と化学特性からマクロの拡散挙動を評価する研究が実施されている。しかしながら陽イオンを対象とした場合、計算した拡散係数が実験から得られた実効拡散係数より小さくこの差が表面拡散の影響であると考えられている。そこで、陽イオンの粘土表面への濃集による表面拡散現象を均質化法によって定式化し数値解析を実施した。この結果から、分配比の増加に伴って全体の拡散が大きくなることが示され、局所的な濃度勾配の増加によるフラックスの増加が表面拡散の大きな要因となることが確かめられた。

土木学会応用力学論文集 Vol.9 pp.323-332 2006
磯貝武司、神徳敬、笹本広

圧縮ベントナイト中の間隙水測定手法の検討

圧縮ベントナイト中の間隙水pHおよび間隙水組成の時間的・空間的変化を直接測定する手法を検討した。圧縮ベントナイト(Kunigel–V1®=100%、乾燥密度=1.6g⁄cm3)中の間隙水pHおよび間隙水組成の測定は、低脱色性のpH試験紙および高吸水性パットを用いて行なった。 試験は雰囲気制御グローブボックス内(O2≦1ppm)で行い、蒸留水、NaCl溶液、人工海水および低アルカリ性セメント(HFSC)浸漬液を用いた。蒸留水、NaCl溶液および人工海水についてはNaOHを添加してpH=9に調整し、HFSC浸漬液に関しては平衡に達したHFSC浸漬液pH≒11を用いた。
試験の結果、間隙水pHの時間的・空間的変化は、蒸留水試験では、ベントナイト内側でpHはほぼ一定(pH=8.0〜9.0)であったが、溶液との接触面近傍において時間の経過とともにpHが低下(pH=7.5〜8.5 → pH=7.0〜.0)する傾向が認められた。人工海水試験では、溶液との接触面近傍でpHはほぼ一定(pH=6.5〜7.0)であったが、ベントナイト内側では時間の経過とともにpHが低下(pH=6.5〜7.0 → pH=6.0〜6.5)する傾向が認められた。HFSC浸漬液試験では、蒸留水試験と同様な傾向が認められ、ベントナイト内側のpHはほぼ一定の値(pH=8.5〜10.0)を示し、溶液との接触面近傍では時間の経過とともにpHが低下(pH=9.5 → pH=7.5〜8.5)する傾向が認められた。 低脱色性pH試験紙によるベントナイト内側での間隙水pHの測定値は、既往の発色剤法による測定結果や鉱物–水反応の化学平衡に基づく間隙水化学モデルによる計算結果ともほぼ一致しており、測定手法の妥当性が確認された。
なお、蒸留水試験において認められたベントナイトと蒸留水との接触面近傍における間隙水pHの低下について、地球化学コードPHREEQCを用いて予察的な熱力学的解析を行った。その結果、接触面近傍における間隙水pH低下の原因の1つとして、黄鉄鉱の酸化による影響が考えられた。

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.1 pp.29-36 2005
吉田泰、吉川英樹、佐藤智文

炭酸塩固相に対する微量元素の共沈反応についての固溶体モデルによる評価

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、ガラス固化体から溶出したRaは、Ra単体固相(例えばRaCO3(s)など)に対して未飽和であっても、炭酸塩固相との共沈反応により固相内に取り込まれ、溶解度が制限されると考えられる。本研究では、Raが炭酸塩固相に取り込まれる反応を評価するために、固溶体生成実験を行い、固溶体式の導出を行った。実験により得られた溶液⁄固相中Ba⁄Ca存在量の測定値より、固相中のBa mol存在比に対する固相の ΔfGoss変化の傾向を、理想固溶体からのずれであるΔfGexcessとして導出できた。ΔfGexcess変化を考慮した補正項により、実験で行ったBa混合率における固溶体式の導出を行うことができた。

日本放射化学会誌 Vol.6 Supplement p.124 2005

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
S. Tanaka, T. Higashihara, N. Noda, S. Sato, T. Kozaki, H. Sato and K. Hatanaka

Kinetic behavior of water as migration media in compacted montmorillonite using H218O and applying electric potential gradient

圧縮ベントナイト中の物質移行経路について検討するため、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイト中の水の移行挙動について調べた。O18を水のトレーサとし、モンモリロナイトの乾燥密度1.0、1.2、1.4Mg⁄m3に対して拡散実験と電気浸透実験を行った。拡散実験からは見掛けの拡散係数を、電気浸透実験からは移流速度と水理学的分散係数を決定するとともに、これまでに報告されているHe、Na、Clのデータと比較することにより移行経路について検討した。各イオンの濃度分布とピーク位置の比較から、分散係数はHe、H2O、Cl、Naの順に減少し、この違いは化学種によって移行経路が異なるとともに、移行経路の違いによって分散係数が異なったことによると考えられた。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.163-168 2008
T. Ishidera, K. Ueno, S. Kurosawa and T. Suyama

Investigation of montmorillonite alteration and form of iron corrosion products in compacted bentonite in contact with carbon steel for ten years

炭素鋼を低酸素条件下80度において10年間圧縮ベントナイトに接触させた。その結果、圧縮ベントナイトの陽イオン交換容量が大きく変化しておらず、XRD分析においても新たな粘土鉱物の生成は確認されなかったことから、スメクタイトの変質は起こっていないものと考えられた。また、圧縮ベントナイト中へ移行した鉄腐食生成物はほとんどが2価であり、強く結晶化していないことがわかった。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.269-275 2008
H. Sato

Thermodynamic model on swelling of bentonite buffer and backfill materials

地層処分において使用される人工バリア材及び埋め戻し材を構成する主要構成粘土鉱物であるスメクタイトに着目し、その表面での水の熱力学データに基づいてベントナイトの膨潤圧を求めた。スメクタイト密度0.6–0.9Mg⁄mの範囲において、含水比(0–83%)をパラメータにスメクタイト表面の水の活量と相対部分モルギブスの自由エネルギー(dG)を測定した。スメクタイトは、あらかじめ、層間イオンをNaに置換させるとともに、可溶性塩を除去し、精製したものを用いた。活量とdGは含水比の減少に伴い低下し、過去に報告されたクニピアF(ほぼ100%がスメクタイト)と同様な傾向であった。自由水と含水したスメクタイト間での平衡状態における水の化学ポテンシャルバランスの差(dG)に基づいて膨潤圧を計算し、さまざまな種類のベントナイトや種々の条件で取得された実測値と比較した結果、計算値は実測値と一致した。このことは、ベントナイト中のスメクタイト含有率や珪砂混合率が既知の場合、スメクタイト表面での水の熱力学データに基づいて、任意のベントナイトや乾燥密度に対する膨潤圧を定量的に求めることができることを示している。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.538-543 2008
K. Fujiwara and Y. Kohara

Hydrolysis constants of tetravalent neptunium by using solvent extraction method

地層処分の安全性を評価するために、アクチニドの溶解度に関するデータの精度向上が必要である。そのためには地下水中の溶存化学種の熱力学データを求める必要がある。4価ネプツニウム(Np(IV))は水溶液中で加水分解をしており、溶解度の評価のためにはNp(IV)の加水分解定数が必要である。今回の試験では、コロイドの影響を除くためにトレーサー量の239Npを用いて溶媒抽出の試験を行った。試験により得られた分配比のpHやイオン強度の依存性を確認することにより、加水分解定数を求めた。得られた値はlogβ1°=13.91±0.23、logβ2°=27.13±0.15、logβ3°=37.70±0.30、logβ4°=46.16±0.30で、logβ4°については報告値より小さい値が得られた。この報告値は溶解度試験から得られた値であり、コロイドの影響があるために異なる値となったと考えられる。

Radiochimica Acta Vol.96 No.9-11 pp.613-616 2008
K. Iijima, Y. Shoji and T. Tomura

Sorption Behavior of Americium onto Bentonite Colloid

Amコロイドの生成を考慮して、弱アルカリ・低イオン強度条件下において、ベントナイトコロイドに対するAmの分配係数を評価した。得られた値は、大きなモンモリロナイト粒子について報告されている文献値に比べ、大きかった。これは、ベントナイトコロイドの1桁大きい反応サイト密度によるものと考えられた。比較的簡易で多くの核種に適用可能なメカニスティック収着モデルのベントナイトコロイドへの適用性も検討した。

Radiochimica Acta Vol.96 No.9-11 pp.721-730 2008
D.H. Lim, M. Uchida, K. Hatanaka and A. Sawada

Modeling of Radionuclide Migration through Fractured Rock in a HLW repository with Multiple Canisters

An integrated numerical model for groundwater flow and radionuclide migration analyses in a water-saturated HLW repository with a multiple-canister configuration is developed by incorporating the heterogeneity of fractured host rock based on the previous multiple-canister model. The current model enables to investigate the effects of heterogeneous fractured host rock on water flow and nuclide migration for the different configurations of multiple canisters, and to optimize the repository design parameters in terms of release of nuclides from the repository.

Scientific Basis for Nuclear Waste Management XXXI. Vol.1107 pp.567-575 2008
K. Miyahara and T. Kato

Illustration of HLW Repository Performance Using Alternative Yardsticks to Assess Modeled Radionuclide Fluxes

地層処分システムの安全性を判断するための指標である線量やリスクには生物圏評価にかかわる不確実性が伴い、それを補完する指標の一つとして、フラックス(生物圏評価における人間の生活様式などの仮定が不要)が考えられている。安全性を判断するための目安として、処分場からの放射性核種のフラックスに対し、自然プロセスにおいて生じる天然の放射性核種のフラックスをどのように選び、どのように両者を比較するかが課題となっている。本研究では、第2次取りまとめの地下水移行経路概念モデルを用い、処分場下流の断層破砕帯から帯水層への地下水の流出点における、処分場からのフラックスと天然の放射性核種のフラックスを比較することにより、地層処分システムの各バリアの有効性と処分システムの頑健性について示し、フラックスを用いたこのような比較の適切性について論ずる。

Scientific Basis for Nuclear Waste Management XXXI. Vol.1107 pp.673-680 2008
Y. Yoshida, H. Yoshikawa and T. Nakanishi

Partition coefficients of Ra and Ba in calcite

Ra及びBaについて方解石に対する元素分配比を取得した。平衡状態での元素分配比をフリードリフト法により測定した。実験の結果、沈殿速度は極めて遅く、また、pHの値より、飽和状態は極めて低いことが示された。実験の結果、元素分配比はRa及びBaについて0.0094及び0.0047となった。Raについては、Baと同程度の値となり、共沈反応におけるBaとRaでの化学的類似性が認められた。また、BaとRaの元素分配比は同程度の値となり、取り込み傾向にイオン半径の依存性がないことが示された。方解石の沈殿速度の評価を行った結果、本実験での沈殿速度が遅く、本実験で得られた元素分配比は平衡状態でのRa及びBaの溶液及び固相中の分配を示すものであると考えられる。

Geochemical Journal Vol.42 pp.295-304 2008
K. Miyahara, M. Inagaki, M. Kawamura and T. Ebina

“What-if?” Calculations to Illustrate Fault-Movement Effects on a HLW Repository

What if解析についてどのような想定とするかなどをわかりやすく示すため、断層シナリオを対象として、解析の一連の手順について解析とともに例示する。

Proceedings of International High-Level Radioactive Waste Management Conference, Las Vegas, Nevada, September 7-11, 2008 pp.593-599 2008
A. Sato and A. Sawada

Analysis of tracer migration process in the crack by means of X–ray CT

割裂により岩石試料内部に作成した亀裂についてトレーサー試験を実施し、亀裂内部をトレーサーが移行する際のプロセスをX線CT法により可視化するとともに、X線CT法により評価した亀裂開口幅と移行プロセスとの関係についての考察を行った。その結果、X線CT法による可視化によりトレーサー移行の観察が可能であり、亀裂内のトレーサー濃度の時間変化から亀裂内の流れの不均質性が示唆された。

11th Congress of International Society for Rock Mechanics - Ribeiro e Sousa, Olalla and Grossmann (eds) Vol.1 pp.15-18 2007
T. Kawata, H. Umeki, H. Osawa, T. Seo, T. Tsuboya, H. Tanabe, K. Yoshimura, H. Asano and J. Ohuchi

Knowledge Management in the Japanese High–Level Radioactive Waste Disposal Programme

事業の長期性と安全確保の長期性から、地層処分技術に関しては実施主体や規制機関の活動を支えるための技術基盤として体系化し、継続的な研究開発によってその信頼性の向上をはかって行くことが不可欠である。日本原子力研究開発機構は、2006年9月に公表したH17取りまとめにおいて、このような体系化にあたっての新たな視点として知識管理に基づくアプローチを提案している。本論文では、日本のHLW地層処分計画における知識マネジメントのアプローチの意義、課題、地層処分技術に関する知識のセーフティ概念に基づく知識の構造化や知識管理システムの基本概念を紹介する。

IAEA–CN–153⁄1⁄O⁄01 2007
T. Ohi, H. Takase, M. Inagaki, K. Oyamada, T. Sone, M. Mihara, T. Ebasi and K. Nakajima

Application of a Comprehensive Sensitivity Analysis Method on the Safety Assessment of TRU Waste Disposal in JAPAN

放射性廃棄物の地層処分の安全評価の信頼性を得るためには、多様な不確実性の影響を考慮する必要がある。本研究では、統計的手法に基づいて不確実性の観点から決定論的影響解析を補完することができる包括的感度解析手法を開発した。この手法は、キーパラメータや任意の目標値を下回るためのパラメータ値の組合せである成立条件を抽出することができる手法である。このアプローチを日本のTRU廃棄物の地層処分の安全評価に適用し、システムの安全性に対する不確実性の影響を包括的に評価するとともに、システムの性能の特性や今後の重要な研究課題をわかりやすく示した。

Scientific Basis for Nuclear Waste Management XXX, Vol.985 pp.129-134 2007
Y. Tochigi, H. Yoshikawa and M. Yui

Modeling studies on microbial effects on groundwater chemistry

地層処分場のバリア性能に及ぼす微生物活動の影響評価技術の高度化を目的として、幌延深地層研究センターの調査フィールドに設けた観測井の既存観測データを用い、微生物影響を考慮した数値解析コード(MINT)を使用して微生物存在下で安定な地下水水質の評価及び地下水中に溶存した有機物と電子受容体濃度をパラメータとした感度解析を実施した。成果として、微生物影響を受けた結果得られる地下水水質や、地下水水質の変動による微生物活動への影響を評価するための結果を得ることができた。解析の結果、同地下水環境は共存する微生物群のうち、硫酸還元菌とメタン生成菌の活性が高く、かつ硫酸イオン濃度の変遷に伴って地下水に溶存する微生物由来のメタン濃度が増減する傾向が予測された。

Scientific Basis for Nuclear Waste Management XXX. Vol.985 pp.575-580 2007
H. Sasamoto, M. Yui and K. Hama

A preliminary Interpretation of Groundwater Chemistry in the Horonobe Area

幌延深地層研究所における地表からの調査段階で得られたデータに基づいた地下水化学の予察的解釈について述べる。泥質岩中地下水の水質形成は、続成作用に伴う岩石水反応及び化石海水の希釈によるものと解釈される。また、多変量解析に基づく水質の統計学的解析の結果、地下水は3つのタイプに分類される。熱力学計算の結果、地下水採水時の擾乱による地下水水質への影響が示唆され、原位置における地下水の地球化学的条件を推定するため、鉱物-水反応の部分平衡を仮定した単純な補正手法を暫定的に適用した。

12th Int. Symp. Water Rock Interaction (WRI-12) Vol.1 pp.385-389 2007
H. Sato

Thermodynamic Data of Water on Smectite Surface and Those Applications to Swelling Pressure of Compacted Bentonite

本研究は、地層処分の人工バリア材の1つであるベントナイト緩衝材の重要粘土鉱物のスメクタイト表面の水の熱力学特性に着目し、ベントナイト緩衝材の力学特性の1つである膨潤圧について検討した。蒸気圧法により、含水比、温度、スメクタイトの乾燥密度をパラメータとしてスメクタイト表面の水の熱力学データを測定した。得られた活量と相対部分モルギブスの自由エネルギー(ΔG)は含水比の減少に伴い低下し、スメクタイト表面からおおよそ水分子2層までの水が束縛されていると解釈された。ΔGに基づいて膨潤圧を見積るとともに、実測値と比較したところ、計算値は実測値とよく一致した。さらに、膨潤圧に対する温度の影響についても検討する。

International Workshop on Mobile Fission and Activation Products in Nuclear Waste Disposal La Baule(France), OECD⁄NEA report pp.173-184 2007
H. Sato

Activation Energies of Diffusion for I and Cs in Interlayer Smectite

スメクタイト(モンモリロナイト)は、地層処分の人工バリア材の1つであるベントナイト緩衝材の重要粘土鉱物である。本研究は、スメクタイト層間中を陰イオンが拡散するのか調べること及び層間中をイオンが拡散する際の活性化エネルギー(ΔEa)を取得することを目的として実施した。2分子水和層のみに制御したスメクタイト層間中のIとCsの見掛けの拡散係数を温度をパラメータに取得するとともに、活性化エネルギーを求めた。また、X線回折法(XRD)により底面間隔を測定した。001面におけるすべてのXRDプロファイルから、2分子水和層を示す底面間隔のみが得られた。IのΔEaは35.24kJ⁄mol、CsのΔEaは46.27kJ⁄molと両イオンともそれぞれの自由水中の拡散係数のそれよりかなり高い値であった。モンモリロナイト表面の水の活量は自由水よりも低いことが報告されており、Iに対する高いΔEaは層間水の活量低下によると考えられる。一方、Csは層間中でイオン交換により収着することから、Csに対する高いΔEaは、層間水の活量低下に加えて層間中のNaとCsとのイオン交換エンタルピーの複合的影響によると考えられる。

International Workshop on Mobile Fission and Activation Products in Nuclear Waste Disposal La Baule(France), OECD⁄NEA report pp.157-171 2007
H. Yoshikawa, K. Ueno and M. Yui

APPLICATION OF ARCHAEOLOGICAL ANALOGUES FOR A REPOSITORY SAFETY CASE: ARGUMENTS SUPPORTING THE WASTE CONTAINER LIFETIME

日本における高レベル放射性廃棄物処分では、炭素鋼がオーバーパック材料の候補材として考えられており、約1000年間での腐食量を40mmと見積もられている。この処分場デザインの健全性を示す目的で考古学試料を用いたナチュラルアナログ研究を行った。約40の試料をX線CTを用いて非破壊で測定し、それらの腐食量を分析した。分析した結果、1000年間での40mmという設定値よりも1桁低い腐食量が見いだされ、設定値の保守性が検証された。

OECD/NEA Symposium Safety Cases for Deep Geological Disposal of Radioactive Waste: Where do we stand? Paris(France) OECD⁄NEA report No.6319 pp.365-371 (2008) 2007
A. Sato, D. Fukahori, K. Sugawara, A. Sawada and A. Takebe

Visualization of 2D diffusion Phenomena in Rock by Means of X–ray CT

単一の平行平板亀裂を含む岩石試料を対象とした二次元拡散実験を実施し、非収着性トレーサーが亀裂から岩石マトリクスへ拡散する様子についてX線CTを用いた可視化を行った。密度の高いトレーサーが亀裂から岩石マトリクスへ二次元的に拡散することによるCT値の増加を観察することができ、これに画像処理技術を適用することでより鮮明な画像を得るとともに、拡散現象の解析に有用なデータを得ることができた。二次元拡散試験の結果は数値解析結果とも比較可能で、適切な画像処理技術を用いることでX線CTを用いた岩石中の拡散現象の可視化手法の適用性を明示できた。

Advances in X-ray Tomography for Geomaterials, Desrues. J., Viggiani, G and Besuelle, P. ed., pp.315-321 2006
J. Xiao, H. Sato, A. Sawada and A. Takebe

Visualization and quantitative evaluation of aperture distribution, fluid flow and tracer transport in a variable aperture fracture

高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、地下深部の岩盤における水理及び物質移行特性を把握することが重要である。地下深部の岩盤では、亀裂などの不連続面が支配的な移行経路になる可能性があることから、岩盤内亀裂の幾何学的特性や水理・物質移行特性をより詳細に把握したうえで評価する必要がある。本研究では、単一亀裂モデルの信頼性向上に資するため、LED面光源を用いた画像可視化計測技術を開発し、単一岩体亀裂を模擬した透明試験体を用いた透水・トレーサー試験へ適用した。また、粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)を用いて、亀裂内の流速分布の推定を行った。その亀裂内の水理・物質移動の過程を直接観察することにより、亀裂内開口幅分布、亀裂内濃度分布変化や流れ速度ベクトル分布等の情報を収集し、それを画像分析することで、水理・物質移行挙動の詳細な検討を行った。以上のことから、LED面光源を用いた画像可視化計測技術と粒子画像流速測定法を組合せた手法が亀裂内の水理・物質移行の把握において有効であることを確認した。

ISRM International Symposium 2006 4th Asian Rock Mechanics Symposium, Rock Mechanics in Underground Construction, Leung, C. F. and Zhou, Y. X. ed. p.416 (Full Paper はCD-ROM内) 2006
M. Kawamura, T. Ohi, H. Makino, K. Umeda, T. Niizato, T. Ishimaru and T. Seo

Study on Evaluation Method for Potential Impact of“Natural Phenomena”on a HLW Disposal System

高レベル放射性廃棄物処分における天然現象影響評価技術の高度化として、事例研究成果を適切にシナリオに取り込み、そのうえで「影響のバリエーションを適切に整理したうえでシナリオを現実の特徴を失わない程度に適切に単純化すること」及び「影響の伝搬等の因果関係を明らかにすること」に着目した「作業フレーム」を構築した。本論で検討した「作業フレーム」により、シナリオの「現実性」のみならず「透明性」、「追跡性」、「整合性」を向上させることができた。また、シナリオ構築あるいは影響解析の作業向上の観点から必要となる、天然現象に関するデータ・知見の種類や量あるいは品質情報、及び現状におけるそれらの過不足などについて作業を通じて明らかにできると考えられる。このことは今後、天然現象の研究者が現象理解の研究フレームを効率的かつ適切に構築することにも役立ち、さらには将来の現実性や精度の高い評価の実施へつながっていくものと考えられる。

2006 East Asia Forum on Radioactive Waste Management Conference, Proceedings pp.350-367 2006
X. Xia, K. Iijima, G. Kamei and M. Shibata

Comparative study of cesium sorption on crushed and intact sedimentary rock

For establishing a reliable safety assessment methodology for high-level radioactive waste (HLW) geological disposal, it is essential to clarify the applicability of sorption data determined with a conventional batch sorption method to an actual repository environment. In the present study, sorption data represented as distribution coefficients (Kd) were compared experimentally by applying a batch method with crushed sedimentary rock samples and a dynamic circulation method with intact sedimentary rock samples. The Kd values for cesium (Cs) determined with the dynamic circulation method are around one order of magnitude lower than those obtained using the batch method, depending on Cs concentration at sorption equilibrium. This disagreement was discussed considering permeability, specific surface area, solid⁄liquid ratio (S⁄L) and solution chemistry. The Kd values determined with the dynamic circulation method were corrected for different specific surface areas. As a consequence, the Kd values determined with the two methods are then comparable within an order of magnitude. The Kd values become even more comparable when taking into account that they decrease with increasing the S⁄L ratio as it is the case when going from batch to column experiments. The results basically suggest that the Kd determined with the batch method are reasonably applicable to describe sorption in the actual environment in a given nuclear waste repository after appropriate corrections.

Radiochimica Acta Vol.94 No.9-11 pp.683-687 2006
D.H. Lim

Numerical Study of Nuclide Migration in a Nonuniform Horizontal Flow Field of a High–Level Radioactive Waste Repository with Multiple Canisters

 

Nuclear Technology Vol.156 No.2 pp.222-245 2006
A. Sawada, H. Saegusa and Y. Ijiri

Uncertainty in Groundwater Flow Simulations Caused by Multiple Modeling Approaches, at the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

複数の水理地質構造モデリング手法を比較することで花崗岩などの亀裂性媒体を対象とした地下水流動評価の不確実性を比較した。モデルの比較は水理地質構造モデルの概念化の違いや数値モデル化手法の違いに着目する。本研究では、岐阜県東濃地域における地下研究施設建設サイトの地上からの調査段階で取得されたデータを5つのモデリンググループが活用した。それぞれのモデル比較には特定の評価課題を用いた。その結果、本調査段階の水理地質構造モデリングにおける主要な不確実性を抽出した。

Dynamics of Fluids and Transport in Fractured Rock ed. B. Faybishenko, P.A. Witherspoon and J. Gale, AGU Geophysical monograph Series 162 pp.91-101 2005
K. Fujiwara, H. Yamana, T. Fujii, K. Kawamoto, T. Sasaki and H. Moriyama

Solubility of uranium (IV) hydrous oxide in high pH solution under reducing condition

The solubility of uranium(IV) hydrous oxide was measured at 25℃ in NaClO4 solution containing Na2S2O4 as a reducing agent in the pH range from 12 to 14. The experiment was carried out from oversaturation at I = 0.5, 1.0 and 2.0 mol⁄dm3 (M). The solubility data were analyzed to obtain the hydrolysis constants (βm) of U(OH)m(4-m). By taking the specific ion interaction theory (SIT) for ionic strength corrections and by using the solubility product log Ksp° = -53.93 ± 0.20, the hydrolysis constants at I = 0, log β5°< 48.10 and log β6° = 48.95 ± 1.01, were determined together with the ion interaction coefficients of U(OH)5- and U(OH)62-.

Radiochimica Acta Vol.93 No.6 pp.347-350 2005
H. Sato

Effects of the orientation of smectite particles and ionic strength on diffusion and activation enthalpies of I- and Cs+ ions in compacted smectite

The apparent diffusion coefficients (Da) for I- and Cs+ ions in compacted Na-smectite which is a major constituent clay mineral of bentonite were studied as a function of smectite's dry density (0.9-1.4 Mg⁄m3), ionic strength ([NaCl] = 0.01, 0.51 M), temperature (22-60℃) and diffusion direction to the orientated direction of smectite particles. The Na-smectite was prepared by ion-exchanging with Na+ ions a Na-bentonite, Kunipia-F®, of which smectite content is over 99 wt.%. The Da-values for both ions showed a tendency to be higher in the parallel direction than in the perpendicular direction to the orientated direction of smectite particles at a low-ionic strength of [NaCl] = 0.01 M. The Da-values for I- ions showed different trends depending on diffusion direction and dry density at a high-ionic strength of [NaCl] = 0.51 M. Namely, although the Da-values for I- ions showed a tendency to be higher in the parallel direction than in the perpendicular direction to the orientated direction of smectite particles at a high-dry density of 1.4 Mg/m3, these showed a reciprocal tendency at dry densities of 0.9-1.0 Mg/m3. The Da-values for Cs+ ions uniformly increased with an increase of ionic strength in both diffusion directions. Considering electrostatic effect from smectite surface and the change in tortuosity on dry density, ionic strength and diffusion direction to the orientated direction of smectite particles, I- ions are considered to mainly diffuse in interstitial pores. While, Cs+ ions can diffuse in both interlayer and interstitial pores, and the Da-values are considered to have elevated by competing with Na+ ions. The activation enthalpies (ΔEa) for I- ions, slightly higher (ΔEa = 19.8–20.0 kJ⁄mol) than that of the diffusion coefficient in free water (D°) for I- ions (ΔEa = 17.36 kJ⁄mol) at a low-ionic strength of [NaCl] = 0.01 M, decreased with an increase of ionic strength, became of similar level to that of the D° at a high-ionic strength of [NaCl] = 0.51 M, increased with an increase of dry density. On the contrary, the ΔEa-values for Cs+ ions, clearly higher (ΔEa = 25.6–28.4 kJ⁄mol) than that of the D° for Cs+ ions (ΔEa = 16.47 kJ⁄mol) even in low-dry density over the ionic strength, increased with an increase of dry density. The ΔEa-values for Cs+ ions are considered to be due to the decrease in the activity of porewater in addition to the effect of ion exchange enthalpy between Cs+ and Na+ ions in smectite.

Applied Clay Science Vol.29 No.3-4 pp.267-281 2005
H. Sato

Measurements on the thermodynamic properties of porewater in sandstone by vapor pressure method

The thermodynamic properties of porewater in sandstone were obtained as a function of water content and temperature by vapor pressure method. The activity, the relative partial molar Gibbs free energy (ΔGH2O), the relative partial molar enthalpy (ΔHH2O) and the relative partial molar entropy (ΔSH2O) of the porewater were determined at 298.15 K. The activity decreased with decreasing water content in the region where water content is about 1.5%, and drastically decreased in the region where water content is about 0.5%. No clear dependencies of ΔHH2O and ΔSH2O on water content were found. Synthesizing the correlations of the activity, ΔGH2O, ΔHH2O and ΔSH2O with water content and the enthalpy and entropy of fusion for ice, the porewater at the surface of the solid was found to have a low chemical potential compared with free water, and dissimilar with the structure of ice. Correlating the activity and ΔGH2O with water content, the specific surface area of sandstone and the porosity, the porewater is deduced to be weakly affected up to a distance of approximately 3 nm from the surface of the solid. However, as the porewater approaches a distance of approximately 1.1 nm from the solid surface, the effect from the solid surface abruptly becomes strong. This is deduced to be the effects of hydrogen bond at the solid surface and hydration to cations corresponding to the CEC.

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.42 No.4 pp.368-377 2005

ページトップへ


地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
操上広志、竹内竜史、藪内聡、瀬尾昭治、戸村豪治、柴野一則、原稔、國丸貴紀

幌延深地層研究計画の地上からの調査研究段階における地下水流動に関する調査研究

独立行政法人日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において地層処分研究の一環として幌延深地層研究計画を進めている。本論文では、地上からの調査研究段階のうち、地下水流動に関するおもな調査研究の成果について記述した。水文調査では、涵養量が流域によって異なり、これが植生や地形に依存する可能性を示した。ボーリング調査では、数10〜100mの水理試験区間の規模では透水係数にばらつきや深度依存性があること、室内試験規模では過去に受けた応力状態の影響も反映していること、深部に高い全水頭が保持されていることがわかった。地下水流動解析からは、調査地域の地下水が東側の山を涵養域として大局的に東から西に向かい、局所的には地形勾配や地質構造に支配されて流動していることがわかった。

土木学会論文集C Vol.64 No.3 pp.680-695 2008
延藤遵、西垣誠、見掛信一郎、小林伸司、佐藤稔紀

注入圧力によるグラウトの目詰まり現象抑制効果

本研究は、硬質な亀裂性岩盤を対象とした止水グラウト方法について検討したものである。まず、硬質な岩盤におけるグラウト注入実績として北欧のトンネルグラウト技術を取り上げ、その特徴を整理した。その結果、(1)高濃度のセメントグラウト配合、(2)高密度の注入孔配置、(3)複数孔の同時注入、を主な特徴とするプレグラウト工法により高い止水性と施工の合理化を同時に達成していることが判明した。しかし、高濃度配合は注入孔内の岩盤亀裂入り口においてグラウト材料が目詰まりし、不十分な注入となることが懸念される。そこで、高濃度配合の妥当性を検証するために、目詰まり試験を実施した。その結果、注入圧力を段階的に上昇させることである程度目詰まりを抑制し、水粉体比1.6という高濃度な配合のグラウト材料を十分に注入できることが判明した。

土木学会論文集C Vol.64 No.4 pp.813-832 2008
大津宏康、堀田洋平、三枝博光、井尻裕二、尾上博則

不連続性岩盤における突発湧水リスク評価手法の事後評価への適用

本研究においては、設計段階ですべてを予見することはできない岩盤の不連続性に起因する地質リスク要因として突発湧水による対策工変動リスクに着目し、結晶質岩が広く分布する岐阜県瑞浪市において日本原子力研究開発機構が建設を進めている瑞浪超深地層研究所の立坑を対象事例として取り上げる。この事例においては、これまでに段階的に地質調査が実施され、その段階ごとに不連続性岩盤に関する情報がデータセットとして蓄積されている。このため、この不連続性岩盤に関するデータセットを用いた解析結果から、突発湧水リスクが発生する可能性についてだけでなく、さらには地質調査に関する情報量の増加が地質リスクに起因する対策工変動リスクに及ぼす効果について、事後評価の観点から検討を加えるものとする。

土木学会論文集F Vol.64 No.4 pp.353-368 2008
石井英一、安江健一、大平寛人、古澤明、長谷川健、中川光弘

北海道北部、大曲断層近傍の背斜成長の開始時期

北海道北部、大曲断層近傍の背斜成長の開始時期を知るために、同背斜軸部周辺の新第三紀珪質岩を対象にボーリングコア観察、露頭観察及び室内分析(火山灰分析・FT年代測定)を行った。その結果、背斜軸部周辺の堆積速度の検討から、約2.2〜約1.0Maの間に大曲断層近傍の背斜成長が開始したことが示された。

地質学雑誌 Vol.114 No.6 pp.286-299 2008
尾留川剛、松井裕哉、操上広志、舟木泰智、森岡宏之

幌延深地層研究計画における地下研究施設建設時の課題と対応策 (<小特集>大型プロジェクトの地盤工学的な問題と対処法)

日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の一環として地下研究坑道の建設を行っている。建設地点の地質は、新第三紀の堆積岩に属し、地山強度比の低い中での掘削となるため、特に地山強度比が小さい範囲に対しては、二重支保構造を新たに構築し適用することで支保設計の合理化を図った。また、地下研究施設建設中に発生する地下水には国が定める特定有害物質が含まれていることから、排水処理設備によりこれを適切に除去したうえで放流することとしている。よって、本設備へのインパクトを低減させるためにも地下浅部を対象として立坑周囲に止水壁を構築し湧水量の低減を図った。またFEMによる浸透流解析により実際の湧水量との比較を行い、止水壁が有効に機能していることを確認した。

土と基礎 Vol.56 No.1 pp.32-35 2008
小出馨

植生フェノロジーの変化に着目した多時期衛星データによる林相区分の精度向上と森林の下層植生状態の推定

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、その安全性を評価するうえで、地下水流動を把握することが極めて重要な項目であるとされている。我が国においても、日本原子力研究開発機構東濃地科学センターにおいて、地下水流動を把握するための研究開発を実施しており、地下水調査機器・調査手法の開発、水文データの観測、地下水流動のモデル化技術の開発を実施している。筆者は、地下水流動解析における涵養量の設定に必要な水収支に関する地表の水文特性及び地下水の流出域並びに水理地質構造をリモートセンシングデータや地形図(DEM)などを利用して推定する手法の開発を行っており、本論では、林相区分の精度向上の一環として、林相区分における多時期衛星データの最適な観測時期の選定について検討を行った。その結果、研究対象領域においては、(1)常緑針葉樹林と落葉広葉樹林との区分には、観測時期が夏(6月)と広葉樹が紅葉する時期の11月とのNDVIの季節変化量が有効である、(2)観測時期が夏(6月)と広葉樹が落葉する冬(12月)とのNDVIの季節変化量は、常緑の林床植物の影響により、針葉樹林と広葉樹林との値の範囲が重なり、区分が困難となる、(3)森林と草地(芝地)との区分には、観測時期が夏(6月)と冬(12月)の衛星データによるNDVIの季節変化量が有効であることを明らかにした。

写真測量とリモートセンシング Vol.47 No.6 pp.4-12 2008
尾上博則、三枝博光、大山卓也、竹内真司

孔間水理試験による水圧応答に基づく地下深部の水理地質構造の解析的推定

断層などの不連続構造が複数存在する地下深部の地下水流動場を三次元的に把握するにあたっては、物理探査やボーリング調査などの原位置調査を実施するとともに、それらの結果に基づく水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析が有効と考えられる。このうち、複数のボーリング孔を用いた孔間水理試験は、ボーリング調査では把握することができていないボーリング孔間に分布している不連続構造の水理特性や水理学的な連続性を推定できる手法である。本研究では、日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている超深地層研究所計画における調査研究の一環として実施した孔間水理試験を事例として、地下深部の地下水流動に影響を与える重要因子である水理地質構造を推定するための地下水流動解析を実施した。その結果、研究所用地周辺における水理境界や主要な水みちとして機能する断層の特定、並びにそれらの断層の水理特性を推定することができた。また、地下深部の水理地質構造を推定するにあたっては、非定常データを用いた地下水流動解析が有効であることを示した。

地下水学会誌 Vol.50 No.4 pp.251-274 2008
羽柴公博、佐藤稔紀

大深度立坑の時間依存性挙動および破壊挙動の有限要素解析

本研究では、岩石の非線形粘弾性や破壊を表現できる構成方程式を用いて数値シミュレーションを行い、大深度立坑の時間依存性挙動や破壊挙動について検討した。その結果、時間依存性の程度が大きく破壊が延性的な岩盤では、半径方向変位がかなり大きくなっても、急激な破壊は生じにくいことがわかった。時間依存性の程度がより小さく、破壊がより脆性的な岩盤の場合は、坑壁近傍の岩盤が耐荷能力を失って急激な破壊が生じる可能性があることを指摘した。さらに、破壊モードを立坑最深部付近での破壊と立坑一般部での破壊に分け、破壊モードに及ぼす岩盤物性値や応力条件の影響を明らかにした。また、一般的な応力条件下では、破壊直前まで鉛直方向変位は半径方向変位に比べてかなり小さいことがわかった。しかし、鉛直方向応力が破壊挙動に及ぼす影響は比較的大きく、特に破壊が延性的な岩盤では、鉛直方向応力を考慮するかしないかで破壊までの時間が大きく変化することを示した。

Journal of MMIJ (旧 資源と素材) Vol.124 No.3 pp.205-212 2008
岩月輝希、天野由記、井岡聖一郎、三枝博光、竹内竜史

大規模地下施設の建設に伴う周辺地下水環境の変化

瑞浪超深地層研究所において、大規模な地下施設建設に伴う周辺地下水環境の変化にかかわる調査研究を行った。地下水の水圧と水質を連続的に観察した結果、低透水層が水理化学的擾乱を軽減するバリアとして、逆に高透水性層は優先的な地下水流動経路として機能することが明らかになった。地下水の水質変化は、異なる水質を持つ地下水の混合割合の変化により生じていた。地下水の水圧と水質を高透水性の岩層でモニタリングすることは、周辺環境の変化を評価するうえで非常に重要である。また、施設建設前に水理地質構造や水理化学的な初期状態を理解しておくことが不可欠である。本研究では、約4か月間にわたる、地下施設の冠水とその後の排水時の観測により、水理学的な応答速度や地球化学的な緩衝能力を評価することができた。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.6 No.1 pp.73-84 2007
佐藤治夫

ベントナイトおよび岩石中における拡散現象に関する情報交換会 —地層処分の安全評価を目指して—

2006年7月18日、北海道幌延町の日本原子力研究開発機構(JAEA)幌延深地層研究センターにおいて、標記情報交換会が開催された。この会議は、JAEAが主催し、北海道大学と原子力環境整備促進・資金管理センターの後援で行われたもので、緩衝材や岩石中における拡散現象の理解をスコープとして、地層処分の安全評価への適用性を意識しながら、工学的及び科学的側面から議論することを目的に行われた。フィンランドと日本から8機関、18人が参加し、6件の発表が行われた。なお、各発表論文は、論文集(JAEA-Conf、英文資料)として取りまとめられて公表される予定である。本報告では、6件のトピックスを紹介する。

日本原子力学会誌 Vol.49 No.1 pp.51-52 2007
天野由記、岩月輝希、井岡聖一郎、笹尾英嗣

微生物が地下の酸化還元環境形成に及ぼす影響

微生物は地下の酸化還元環境の形成及び維持にどのような影響を及ぼすのだろうか?日本原子力研究開発機構では、「水–岩石(有機物)–微生物」システムにおいて微生物を考慮に入れた岩盤の酸化還元緩衝能力の評価を試みている。本報告では、微生物影響の評価のために実施した天然環境調査の結果を紹介するとともに、今後の課題を示した。

原子力バックエンド研究 Vol.14 No.1 pp.61-67 2007
安原英明、木下尚樹、操上広志、中島伸一郎、岸田潔

温度・応力に依存する化学溶解・沈殿現象を考慮した珪質岩石の透水性経時評価

高レベル放射性廃棄物処分坑道近傍では、廃棄体からの発熱により化学作用が活発化し、岩盤の力学・水理学特性に大きな影響を及ぼすことが考えられる。本論文では、圧力溶解現象を考慮した概念モデルを用いて、熱・水・応力下における化学作用を定量化し、珪藻質岩石の透水性評価を行った。特に、珪藻質岩石の構成主鉱物である石英、クリストバライト、アモルファスシリカの溶解・沈殿特性に着目し、深地層下における圧力、廃棄体からの発熱作用を考慮し、透水特性の変化を定量的に評価した。その結果、90度の温度条件下で時間とともに透水性が低下する傾向が得られた。また、クリストバライト、アモルファスシリカを多く有する珪藻質岩石は、石英系岩石よりも透水性の変化がより顕著となることが確認された。

土木学会論文集C Vol.63 No.4 pp.1091-1100 2007
羽柴公博

岩石の時間依存性挙動と周圧の影響に関する最近の研究

地下の岩盤は三軸圧縮応力状態であり、地下構造物の長期的な挙動を評価するためには、岩石の周圧下での時間依存性挙動を調べることが重要であることは言うまでもない。例えば、高レベル放射性廃棄物地層処分施設は地下数百m以深に建設される予定であり、施設閉鎖後も数千年から数万年にわたる安定性が要求される。しかし、一軸圧縮応力下に比べると、周圧下での岩石の時間依存性挙動に関する研究は格段に少ないのが現状である。著者はこれまで、地下深部に設けられる構造物の長期安定性評価手法の確立を目指して、周圧下での岩石の時間依存性挙動に関する研究を行ってきた。そこで、研究を遂行するにあたって調査したこの分野の現状と課題を、レビュー論文としてまとめた。本報では、まず、比較的強固な岩石を対象とした、最近の実験的研究及び理論的研究の成果について述べた。その際、岩石の時間依存性挙動に及ぼす周圧の影響に着目した。次いで、周圧下での岩石の時間依存性挙動を調べるための実験装置と、実務に適した実験方法を紹介した。さらに、この分野の今後の課題については各章で取り上げた。

Journal of MMIJ Vol.123 No.1 pp.10-16 2007
三浦律彦、小西一寛、入矢桂史郎、中山雅、松井裕哉

ポゾランを高含有した吹付けコンクリート

半減期の長い核種を含む高レベル放射性廃棄物の処分施設は、地下深部に建設して多重バリアシステムにより、放射性核種を生物圏から隔離するコンセプトが採用されている。放射性廃棄物処分場は、地下数百mに建設されるが、日本の岩盤条件を考えると、特に堆積岩の場合、支保工なしに掘削することは困難と思われる。支保工としての吹付けコンクリートには普通ポルトランドセメントが広く用いられるが、高レベル放射性廃棄物処分場に要求される数千年を越える超長期の性能評価においては、セメント系材料からの浸出水が示す高アルカリ(pH12.5以上)の影響により、人工バリアや天然バリアを変質させる可能性が懸念されている。筆者らは、浸出水のpHを低下させる改善策としてポゾラン反応に着目し、シリカフュームやフライアッシュといったポゾラン材料をOPCに対して50%以上置換した低アルカリ性セメント(HFSC)の研究を行い、浸出水のpHを11程度とすることが可能との結論を得た。本報ではポゾランを高含有したHFSCを用いた低アルカリ性吹付けコンクリートの諸特性について紹介する。

セメント・コンクリート No.728 pp.63-67 2007
石井英一、濱克宏、國丸貴紀、佐藤治夫

海成堆積物の地下浅部における天水の浸透に伴う地下水のpH変化

北海道北部の幌延地域に分布する新第三紀の海成堆積物における地下水のpHに寄与する水-岩石反応を把握するために、本堆積物の岩石学的特徴と地下水の地球化学的特徴を検討した。その結果、(1)本堆積物中の地下浅部における天水の浸透領域ではNaの溶脱が生じており、この溶脱がおもに岩石中のスメクタイト中のNa+と地下水中のH+との陽イオン交換反応によること、(2)地下浅部における地下水のpHが、上記に代表される陽イオン交換反応により規制されており、天水が浸透するとpHが上昇し、再び塩水に浸されるとpHが低下することが示された。

地質学雑誌 Vol.113 No.2 pp.41-52 2007
持田裕之、天野健治、鶴田忠彦

3Dレーザースキャナーの受光強度画像を用いた画像処理による岩相区分の試み —瑞浪超深地層研究所に分布する瑞浪層群での適用事例—

トンネル等の坑壁地質調査では、短時間に効率的かつ良質な地質データを取得する必要があるが、坑内照明等のデジタルカメラ画質への影響、デジタルカメラ画像を合成する際の画像補正による画質低下、地質技術者の技量による地質スケッチの品質差など、さまざまな技術的課題が挙げられる。ここでは、瑞浪超深地層研究所の立坑に分布する新第三紀中新世の瑞浪層群を対象に、坑内照明の影響を受けない3Dレーザースキャナー計測の適用試験を行い、計測で得られた白黒の受光強度画像を用いて画像処理により岩相区分を試みた。その結果、受光強度画像は照明や画像加工のノイズの少ない客観的なデータであり、複数の画像処理手法を用いてスケッチと整合的に岩相区分を行えることが明らかになった。この手法により、今後の坑壁地質調査作業の効率化、高度化が図れる可能性がある。

応用地質 Vol.48 No.3 pp.126-131 2007
井岡聖一郎、岩月輝希、天野由記、古江良治

地下水の流動経路における原位置の酸化還元緩衝能力の評価 —特に硫酸還元緩衝能力について—

地層処分の安全評価の観点に立つと、地下水の流動により放射性核種が輸送される地下水の流動経路において酸化還元緩衝能力の評価を原位置で実施することが重要である。本研究では、地下水の主要な流動経路としての役割を果たしている基盤花崗岩の不整合面上部の礫岩層(土岐夾炭累層)を研究対象として、原位置における酸化還元緩衝能力(硫酸還元速度)の評価を実施した。本研究の結果、原位置における礫岩層の酸化還元緩衝能力は、評価開始初期の9か月は認められたが、その後の約15か月間は、ほとんど認められなかった。この理由として、微生物の代謝活性を持続させる有機物などの栄養源が消費され、特定の微生物にとって生育環境が適さなくなった可能性がある。したがって、有機物を豊富に含む岩相が地下水の流動経路近傍に存在していても地下水の流動経路における酸化還元緩衝能力は、長期間持続しない場合があると考えられる。

日本水文科学会誌 Vol.37 No.1 pp.3-8 2007
長尾誠也、岩月輝希

三次元蛍光分光光度法による深部地下水溶存腐植物質の簡易特性分析

三次元蛍光分光光度法を溶存有機物炭素濃度が1mg⁄l以下と低く、500ml程度の試料しか採取できない深部地下水に適用し、溶存腐植物質の簡易特性分析法としての有効性を検討した。岐阜県東濃地域の地下水からDEAE–セルロース樹脂などにより分離精製した腐植物質(フミン酸、フルボ酸)と地下水の三次元蛍光スペクトルを比較した結果、地下水試料で検出される励起波長300〜320nm⁄蛍光波長430nmの蛍光ピークはフルボ酸様有機物と考えられる。この方法をボーリング孔の4つの深度から採取した地下水に適用した結果、花崗岩の地下水の三次元蛍光スペクトルには堆積岩の地下水に比べて励起波長で25nm低波長側に蛍光ピークが検出された。また、堆積岩の種類により異なる相対蛍光強度、紫外吸収光度比を示した。これらの結果は、三次元蛍光分光光度法が深部地下水中の腐植物質の特徴と濃度に相当する相対蛍光強度を簡易に把握できる有効な分析法であることが示唆される。

分析化学 Vol.56 No.3 pp.143-150 2007
中島崇裕、長尾大道、佐柳敬造、野田洋一、長尾年恭、熊澤峰夫、羽佐田葉子

電磁アクロス長距離送受信実証実験

中部地域において、電磁アクロスの信号が数十kmの遠方でも観測できるかを確かめるために、試験観測を行った。遠方まで届くと予想される周波数帯域を選び、精密同期、常時送信をすることにより、伝播してきた信号を確認することができた。この信号レベルは、通常はノイズに埋もれている大きさしかないので、他の観測を妨害しない。今回は、送信電流ダイポール軸の方向により受信信号の振幅の違いが確認された。この原因は地下構造の異方性によると考えられるので、今回の結果だけでなく、近傍の観測と照らし合わせながら、明らかにしていく必要がある。この異方性の変動は地下応力の変動と対応することが予想される。本試験では、狭い周波数帯での信号のみを扱ったが、周波数によって電磁波伝播の影響する範囲が異なるので、その周波数依存性も地下の情報として重要である。

東海大学海洋研究所 研究報告 第28号 pp.21-28 2007
水野崇、R. Metcalfe、T. Iwatsuki and H. Mie

地下水の地球化学調査に関わるデータ品質評価手法の提案

地下水を取得する方法やその品質管理手法は統一されておらず、データの品質にも差が生じている。本稿では、調査時の品質管理や得られたデータを客観的に評価するための、国内におけるさまざまな調査研究機関が利用できる標準的な品質評価手法を確立することを目的とし、多様な環境で取得された地下水試料から得られる地下水データの品質評価手法を提案した。その結果、本研究で用いた品質評価手法は有効であり、品質評価を行ったデータを用いることで、より正確に地下深部の地球化学環境を議論できる可能性を示した。

地下水学会誌 Vol.49 No.2 pp.139-152 2007
郷家光男、多田浩幸、瀬野康弘、中間茂雄、佐藤稔紀

瑞浪超深地層研究所の研究坑道における掘削損傷領域を考慮した掘削影響解析

本研究では、不連続性岩盤を対象とした掘削損傷領域のモデル化について検討し、掘削損傷領域を考慮した掘削影響解析を行い、発破掘削時に形成される掘削損傷領域の影響について検討した。掘削損傷領域のモデル化に際しては、坑道周辺岩盤の変形挙動に対してはクラックテンソルモデルを、透水性変化に対しては仮想割れ目モデルを拡張し、これらのモデルを超深地層研究所計画の研究対象となっている土岐花崗岩に適用して、研究坑道の掘削影響解析を行った。研究の結果、不連続性岩盤の掘削損傷領域での剛性低下は、新規の割れ目が発生することにより生じるとの解釈のもと定式化が可能なこと、掘削損傷領域を考慮した解析の結果、坑道周辺岩盤の変位は増加するものの、局所安全率にはほとんど影響しないこと、水理学的影響は非常に大きく、坑道周辺岩盤の透水係数が著しく増加することがわかった。

トンネル工学論文集 第16巻 pp.35-45 2006
中間茂雄

賛助会員のページ 〜独立行政法人 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門〜

原子力機構は日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構とが統合し、新たに設立された独立行政法人である。原子力機構の研究開発部門である地層処分研究開発部門は、高レベル放射性廃棄物の地層処分の現実に向け、基盤的な研究開発を実施している。地層処分研究開発部門における岩盤力学研究は、おもに瑞浪超深地層研究所及び幌延深地層研究センターの2つの深地層の研究施設を活用して研究を進めており、本資料では、瑞浪超深地層研究所において、研究坑道群がおもに建設される土岐花崗岩を対象とした岩盤力学調査研究の結果を紹介している。

岩の力学ニュース No.79 pp.12-13 2006
櫻井春輔、清水則一、芥川真一、吉田秀典、佐藤稔紀、山地宏志

国内超大深度立坑工事の地山崩壊形態から見た崩壊発生機構に関する考察

超大深度地下開発のアプローチとなる超大深度立坑は、その重要性を再認識されつつある。しかし、国内石炭産業の縮小に伴い、深度1,000m級の立坑はほぼ20年以上施工されていない。筆者らは超大深度立坑技術の継承と、定量的な立坑設計技術の確立を目的として、過去に施工された超大深度立坑の技術文献調査、及びかつて施工に従事された技術者からの聞き取り調査を実施し、立坑工事において発生する蓋然性の高い崩壊形態を調査した。その結果、立坑における崩壊のほとんどは高抜けと異常地圧による覆工破損の二つに分類されることが明らかとなった。さらに、その発生状況を検証したところ、この二つの現象は同じ原因により発生するものと判断された。

土木学会論文集F Vol.62 No.4 pp.662-673 2006
森岡宏之、松井裕哉

幌延深地層研究計画における地下施設建設の概要

日本原子力研究開発機構は、北海道北部に位置する幌延町において、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として幌延深地層研究計画と呼ぶ地下施設の建設を伴う研究プロジェクトを進めている。地下施設の建設の目的は、構築した地質環境モデルや地下施設設計の妥当性検討のうえで必要なデータ取得のための空間の確保、実施工を通じた堆積岩を対象とした地下坑道の設計・施工計画技術などの高度化・体系化及び、地下研究施設として坑道が安全に建設・維持可能であることの実証である。地下施設の施工は、平成17年11月に開始し、第I期工事(平成20年度まで)では、東立坑約280m、換気立坑約400m、水平坑道約230mを掘削する予定である。第II期工事まで含めた全体の建設工事期間は平成25年度までを予定している。その設計にあたっては、地上からの調査結果より想定される地下深部でのさまざまな現象を考慮し、坑道の安全確保や坑内環境の維持のために必要となる対策工及び施工管理方法の検討も行った。本報告は、計画した地下施設建設に関する概要及び現況について述べたものである。

土木学会岩盤力学委員会ニューズレター No.11 2006
石井英一、安江健一、田中竹延、津久井朗太、松尾公一、杉山和稔、松尾重明

北海道北部、幌延地域における大曲断層の三次元分布と水理特性

北海道北部、幌延地域における新第三紀堆積岩分布域において、地表割れ目踏査、ボーリング調査(コア観察・EMI検層・比抵抗検層・水質分析)、反射法地震探査、およびAMT探査を実施し、当域に分布する大曲断層の位置、連続性、および水理特性について検討した。その結果、以下のことが示された。(1)大曲断層はダメージゾーンを主体とした幅120m程度の断層帯であり、その透水性は高い。(2)研究所設置地区近辺における大曲断層帯の三次元分布が明らかとなり、地表部ではover–stepし、地下では収斂する形態をなす。(3)「塩水系」と「淡水系」の2種類の地層水が存在し、顕著な岩相変化を示さない堆積岩においては、電磁探査を用いた調査が、断層帯の位置、連続性、および水理特性などを検討する際に有効である。

地質学雑誌 Vol.112 No.5 pp.301-314 2006
安江健一、秋葉文雄、大平寛人、石井英一

北海道北部、サロベツ背斜付近に分布する声問層上部の鮮新統上部珪藻化石帯とフィッション・トラック年代

北海道北部、幌延地域西部のサロベツ背斜西翼に分布する声問層上部から採取した試料を用いて、珪藻化石分析とFT年代測定を実施した。その結果、初生的に堆積した珪藻化石群集からなる明白なNeodenticula koizumii帯と初出現層準の年代が約2.4MaのN. seminaeを確認した。また、同地点から採取した火山灰のFT年代値は2.3±0.1Maであった。これらのことから、幌延地域西部における声問層上部の堆積年代は約2.3Maである。この成果と既存成果から、声問層・勇知層境界の形成時期は、幌延地域の東部より西部の方が少なくとも100万年程新しく、幌延地域の東西で声問層と勇知層が同時異相関係にあることがわかった。そして、その成果を用いると現行テクトニクスの開始時期は約2.3Maより新しい可能性がある。また、今回分析した火山灰中のジルコンは、U濃度が高く、地層対比に役立つと考えられる。

地質学雑誌 Vol.112 No.4 pp.284-293 2006
Sohail A., K. Watanabe and S. Takeuchi

Stream flow forecasting by artificial neural network (ANN) model trained by real coded genetic algorithm (GA) A Case study when role of groundwater flow component in surface runoff is small

流域の管理を行う上で重要な河川流出量の予測を行うための流出解析を3つの方法を用いて行った。その方法として、遺伝的アルゴリズムを組み込んだニューラルネットワークモデル(GAANN)、誤差伝播法を用いたニューラルネットワークモデル(BPANN)および多変量自己回帰モデル(MARMA)を用いた。これらのうち、後2者は前者のモデルの妥当性を検討するために実施した。その結果、小流域での流出特性には季節変化があること、夏季の強度の大きい降雨ではニューラルネットワークによる予測がMARMAよりも精度が高いことを明らかにした。また予測精度は予測時間が長いほど低下することなどが分かった。

地下水学会誌 Vol.48 No.4 pp.233-262 2006
柳澤孝一、武田精悦、茂田直孝、仙波毅、須山泰宏、戸井田克、高瀬博康、西垣誠

地質環境特性を対象とした不確実性解析の方法論 —東濃地域を対象とした適用性検討—

 

地下水学会誌 Vol48 No.3 pp.149-167 2006
進士喜英、西垣誠、竹内真司

揚水試験結果の解析手法の変遷と最近の技術

揚水試験は、地盤の浸透特性を原位置で評価する調査法であり、その試験結果の解析法は、Theis、 Jacob法(国際的にはCooper-Jacob法と呼ばれている)が用いられている。しかし、この解析法は理想的な条件に対する方法であり、実際の現場データを解析するには種々の限界がある。この観点から、本報文では新しい揚水試験の解析法に関する最近の研究をレビューし、これらを幾つかの世代に大きく分類し、各世代での代表的な成果を取りまとめる。また、最近の調査法として注目されている観測量の時間微分項を用いた手法を説明する。

土と基礎 Vol.54 No.5 pp.6-9 2006
石井英一、福島龍朗

新第三紀珪質岩における断層の解析事例

 

応用地質 Vol.47 No.5 pp.280-291 2006
尾留川剛、森岡宏之、山上光憲、村川史朗

幌延深地層研究計画における地下研究坑道の概要と支保設計

 

電力土木技術協会誌 324号 pp.82-86 2006
瀬谷正巳、畑中耕一郎、福島龍朗

幌延深地層研究計画の概要と現状について

原子力エネルギーは有効なエネルギー源であるが、高レベル放射性廃棄物の処理・処分という問題がある。我が国では高レベル放射性廃棄物は地層処分される予定であり、日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という)を中核として地層処分技術の信頼性向上を目的とした研究開発が進められている。幌延深地層研究計画は原子力機構が進めている地層処分にかかわる深地層の研究施設計画の一つであり、北海道幌延町に分布する堆積岩を調査・研究の対象としている。本報告は、幌延深地層研究計画の概要及び現状について紹介する。

佐藤工業技術研究所報 No.31 pp.49-56 2006
瀬谷正巳、森岡宏之、福島龍朗

幌延深地層研究センター地下施設の建設について

日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分のための研究施設として深度約500mの立坑及び水平坑道から成る大深度地下施設を建設中である。本報告では、その施工計画の概要と施工計画の中で特に環境対策として排水処理、掘削土(ズリ)処理について、そして安全にかかわる項目として防災対策、情報化施工について紹介する。

佐藤工業技術研究所報 No.31 pp.57-62 2006
尾留川剛、小島亘、白戸伸明、齋藤敏樹

石炭灰(フライアッシュ)の高強度吹付けコンクリートへの適用性

 

コンクリート工学年次大会2006 コンクリート工学年次論文集 第28巻 第1号 pp.1637-1642 2006
入矢桂史郎、中山雅、小西一寛、三原守弘

ポゾラン高含有低アルカリ性吹付けコンクリートの施工性

数千年以上の半減期の核種を持つ放射性廃棄物を処分する施設に適用するために、普通ポルトランドセメントよりも浸出水のpHが低い、フライアッシュを高含有したシリカフュームセメントを開発した。放射性廃棄物の処分施設の建設では吹付けコンクリートとして施工することが考えられているが、凝結時間や若材齢強度などに課題がある。本研究では、ポゾランの混合割合や水結合材比及び急結剤の種類を適切に選定することで、トンネル支保工としての適用が可能であることを示した。

コンクリート工学年次大会2006 コンクリート工学年次論文集 第28巻 第1号 pp.173-178 2006
井岡聖一郎、古江良治、岩月輝希

深層ボーリング孔を用いた岩盤中の地下水の採取方法 地下水の酸化還元状態の把握のために

地下深部環境の利用や水資源の需要増大に伴い岩盤中の地下水の水文学的、地球化学的挙動を解明することを目的とした研究の必要性が高まっている。本研究では、地球化学的観点から地下深部岩盤中における酸化還元状態を明らかにするために必要な地下水採取方法を提示することを目的として、ボーリング孔から調査までの手順について検討を行った。地下深部岩盤中における真の酸化還元状態に近い地下水を採取するためには、深層ボーリング孔掘削時にその掘削孔が鉛直下方の動水勾配を有し、さらに顕著な掘削水の逸水が認められる場合には、調査対象深度ごとに採水区間を他深度から隔離し地下水の採取を行いながら、最終的にボーリング孔の予定深度まで掘削を実施する必要がある。一方、鉛直下方の動水勾配を有しながら、掘削水の逸水がほとんど認められない深層ボーリング孔の場合には、裸孔状態が数十日間続いたとしても多区間パッカーを設置後、地下水を排水することにより地下深部岩盤中における酸化還元状態に近い地下水を採取することができることを示した。

日本水文科学会誌 Vol.36 No.4 pp.181-190 2006
井岡聖一郎、岩月輝希、加藤修、今北毅

電極表面連続研磨器具付き白金電極を用いる水溶液酸化還元電位の安定測定

不活性条件化において白金電極を連続的に研磨しながら溶液の酸化還元電位を測定する場合と、連続研磨無しで溶液の酸化還元電位を測定する場合に得られる酸化還元電位の差異について検討した。連続研磨を実施した測定条件下では、溶液の酸化還元電位は、すぐに安定状態に達した。その溶液の酸化還元電位は、HS-とS42-が酸化還元平衡にあるとの仮定に基づいて熱力学的に算出される酸化還元電位とほぼ一致していることから、HS-とS42-の酸化還元反応が酸化還元電位におもに寄与していると考えられた。一方、連続研磨を行わずに溶液の酸化還元電位を測定した場合、連続研磨を実施した場合の酸化還元電位より約0.2V高い値が得られた。この原因として、白金電極表面への硫酸アニオンの吸着などの、電極-溶液間の電気化学的環境の変化が考えられた。

分析化学 Vol.55 No.10 pp.793-797 2006
柳澤孝一、武田精悦、大澤英昭、須山泰宏、古市光昭、戸井田克、高瀬博康、青山裕司、若松尚則、西垣誠

空間的に不均一な地質環境特性の評価方法に関する基礎的検討

 

地下水学会誌 Vol.47 No.4 pp.451-470 2005
古江良治、岩月輝希、濱克宏

深層ボーリング孔を用いた地下水の地球化学調査の課題に対する試み

 

応用地質 Vol.46 No.4 pp.232-236 2005
安江健一、石井英一

北海道北部、幌延町における大曲−豊富断層の正確な位置の特定

This paper clarifies the accurate distribution of the Omagari-Toyotomi fault, one of the prominent geological faults in northern Hokkaido, using the high accuracy analyses and the specific characteristics of the geological environments in the Horonobe Town. In the Kamihoronobe area, the central Horonobe Town, the slight linear landform runs along the border of drainage patterns which reflected the lithology. In addition, the outcrop of fault, the boundary between the Wakkanai and Koetoi formations, situates along the linear landform. Judging from the above description, we conclude that the linear landform shows the Omagari-Toyotomi fault. In the Hokushin area, the northern Horonobe Town, where the fault doesn't form the lithology boundary and the fault isn't reflected topography, it was found that the result of investigations using the drainage pattern, slight linear landform, the subsurface geological structure, and the number of diatom valves clarify the detailed distribution of the fault. We will have to clarify the accurate distribution of the fault such as the branch fault and the secondary fault, and in a wide area, with same methods as this study.

活断層研究 第25号 pp.39-46 2005

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
M. Kuji, T. Sato, S. Mikake, N. Hara, M. Minamide and K. Sugihara

Countermeasures Planned for Reducing Water Inflow into Deep Shafts at the Mizunami Underground Research Laboratory

瑞浪超深地層研究所(MIU)が岐阜県瑞浪市に建設中である。MIUは深さ1,000mの2本の立坑と水平坑道群から構成される。MIUプロジェクトの目標は、深い地質環境での調査技術、解析技術、評価技術の確立、及び花崗岩のような結晶質岩における大深度での工学技術の適用範囲の拡大を図ることである。主立坑の直径は6.5m、換気立坑の直径は4.5mである。2本の立坑を接続する水平トンネルが100m間隔で掘削される。科学的研究のため深度約500mに中間ステージ、及び深度約1,000mに最深ステージが設置される予定である。主立坑、換気立坑の2006年11月時点の深度はそれぞれ180mと191mである。掘削を進めるにつれ、立坑への湧水量が増加し、プロジェクト進行に支障が生じている。湧水量を低減するために、ポストグラウトとプレグラウトが計画されている。換気立坑においてポストグラウト試験施工を実施され、その適用性が評価された。

Journal of Power and Energy Systems (Internet) Vol.2 No.1 pp.153-163 2008
H. Kurikami, R. Takeuchi and S. Yabuuchi

Scale effect and heterogeneity of hydraulic conductivity of sedimentary rocks at horonobe URL site

本論文は、幌延深地層研究計画において対象としている堆積岩の透水係数のスケール効果及び不均質性について検討したものである。深層ボーリング孔を利用した水理試験及びビルドアップ試験により、10mから350m程度の規模の領域の透水係数には大きな不均質性があり、この不均質は小断層帯の分布と相関があることがわかった。また、稚内層においては試験区間長が長くなるにつれて、不均質性は小さくなることがわかった。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.37-44 2008
S. Tanaka, T. Higashihara, N. Noda, S. Sato, T. Kozaki, H. Sato and K. Hatanaka

Kinetic behavior of water as migration media in compacted montmorillonite using H218O and applying electric potential gradient

圧縮ベントナイト中の物質移行経路について検討するため、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイト中の水の移行挙動について調べた。18Oを水のトレーサとし、モンモリロナイトの乾燥密度1.0、 1.2、 1.4Mg⁄m3に対して拡散実験と電気浸透実験を行った。拡散実験からは見掛けの拡散係数を、電気浸透実験からは移流速度と水理学的分散係数を決定するとともに、これまでに報告されているHe、Na、Clのデータと比較することにより移行経路について検討した。各イオンの濃度分布とピーク位置の比較から、分散係数はHe、H2O、Cl、Naの順に減少し、この違いは化学種によって移行経路が異なるとともに、移行経路の違いによって分散係数が異なったことによると考えられた。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.163-168 2008
H. Sato

Thermodynamic model on swelling of bentonite buffer and backfill materials

地層処分において使用される人工バリア材及び埋め戻し材を構成する主要構成粘土鉱物であるスメクタイトに着目し、その表面での水の熱力学データに基づいてベントナイトの膨潤圧を求めた。スメクタイト密度0.6–0.9Mg⁄mの範囲において、含水比(0–83%)をパラメータにスメクタイト表面の水の活量と相対部分モルギブスの自由エネルギー(dG)を測定した。スメクタイトは、あらかじめ、層間イオンをNaに置換させるとともに、可溶性塩を除去し、精製したものを用いた。活量とdGは含水比の減少に伴い低下し、過去に報告されたクニピアF(ほぼ100%がスメクタイト)と同様な傾向であった。自由水と含水したスメクタイト間での平衡状態における水の化学ポテンシャルバランスの差(dG)に基づいて膨潤圧を計算し、さまざまな種類のベントナイトや種々の条件で取得された実測値と比較した結果、計算値は実測値と一致した。このことは、ベントナイト中のスメクタイト含有率や珪砂混合率が既知の場合、スメクタイト表面での水の熱力学データに基づいて、任意のベントナイトや乾燥密度に対する膨潤圧を定量的に求めることができることを示している。

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol. 33[supplement1] pp.538-543 2008
H. Yoshida, K. Yamamoto, Y. Amano, N. Katsuta, T. Hayashi and T. Naganuma

The development of Fe-nodules surrounding biological material mediated by microorganisms

高師小僧は日本において第四紀の堆積岩に生じる現象である。それらは、植物の根の周囲に形成された円筒状の鉄酸化物の塊である。構造的な特徴から、植物の根が分解された後、中央の空洞に酸化性の水が流れることによって、鉄酸化物が濃集されると考えられている。鉄酸化物から採取した微生物の遺伝子解析を行った結果、鉄酸化反応を行う微生物に近縁な種が検出されており、団塊の形成に関与した可能性が示唆された。顕微鏡観察の結果からも、空隙を満たしている鉄酸化物には微生物のコロニーが付着していることが明らかになっている。地質史及びナノ化石から、これらの鉄団塊は少なくとも10万年間もの間深度数十メートルの還元的な第四紀の堆積物中に埋蔵されていたと考えられており、水-岩石-微生物の相互作用によって形成された鉄酸化物の団塊は、還元環境下で持続しうることが示された。このような現象は、核種の移行に影響を及ぼす可能性が考えられるため、放射性廃棄物を地層処分した後のアナログとして重要である。

Environmental Geology Vol.55 No.6 pp.1363-1374 2008
Y. Ijiri, H. Saegusa, A. Sawada, M. Ono, K. Watanabe, K. Karasaki, C. Doughty, M. Shimo and K. Fumimura

Evaluation of uncertainties originating from the different modeling approaches applied to analyze regional groundwater flow in the Tono area of Japan

高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価においては、シナリオ、概念モデル及び入力パラメータ値の不確実性が計算結果に及ぼす影響を定量的に評価することが重要な課題の1つとなっている。本研究では、複数の不均質連続体モデルを用いて東濃地域周辺を対象とした広域地下水流動解析を実施し、概念モデルに起因した不確実性について検討を行った。その結果、概念モデルの不確実性は、解析技術者が設定する境界条件及びモデル化する水理地質構造などに大きく依存し、確率論的モデルにおけるモンテカルロシミュレーションのばらつきに起因した不確実性よりも大きいことが明らかとなった。

Journal of Contaminant Hydrology Vol.103 No.3-4 pp.168-181 2008
A. Moeri, P. Soler, K. Ota and V. Havlova

Grimsel Test Site Phase VI, LTD WP 1: Predictive Modelling for LTD Monopole Experiment

グリムゼル原位置試験フェーズ6・LTD(放射性核種のマトリクス拡散)プロジェクトは、原位置におけるマトリクス拡散の評価を目的として、HYRL(フィンランド)、JAEA及びAIST(日本)、NRI⁄RAWRA(チェコ)、Nagra(スイス)によって進めている国際共同研究プロジェクトである。LTDプロジェクトはWP1–WP4の四つのタスクに分かれており、WP1では、単孔式の原位置拡散試験の実施に先立ち予測解析を実施した。この解析結果は、原位置試験のレイアウトや計画の検討にフィードバックされるだけでなく、試験結果との比較を通じて、長期に渡る拡散現象にかかわるモデル化の信頼性の確認に寄与するものである。この報告書は、予測解析で用いた概念モデルや解析コードの概要、及びマトリクス中のトレーサー濃度プロファイルと溶液中のトレーサー濃度の変化に関する予測結果をまとめたものである。

Nagra Arbeitsbericht NAB 07-42 2007
H. Saegusa, H. Onoe, S. Takeuchi, R. Takeuchi and T. Ohyama

Hydrogeological characterization on surface-based investigation phase in the Mizunami Underground Research Laboratory Project, in Japan

超深地層研究所は、結晶質岩(花崗岩)を主な対象とした深地層の研究施設の一つであり、この計画では、地層処分研究開発の基盤となる深地層の科学的研究の一環として、深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を全体目標の一つとした調査研究が進められている。超深地層研究所計画の地表からの調査予測研究段階における地下水流動特性評価においては、水理調査と水理地質構造モデルの構築、地下水流動解析を繰り返し実施してきた。その結果、調査の進展に伴い水理地質構造モデルの不確実性が低減したことが確認でき、効率的に地下水流動特性を把握するためには、調査とモデル化・解析を繰り返し実施するといったアプローチが有効であることが示された。

Proceedings of the 11th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2007-7117) 2007
S. Takeuchi, R. Takeuchi, W. Salden, H. Saegusa, T. Arai and K. Matsuki

Hydrogeological conceptual model determined from baseline and construction phase groundwater pressure and surface tiltmeter data at the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

A hydrogeological conceptual model has been developed based on pressure responses observed at multilevel pressure moni-toring zones in seven boreholes and surface tilt data in and around the Mizunami Underground Research Laboratory site. Pressure changes caused by some earthquakes, cross-hole hydraulic testing, and shaft excavation activities are considered. Surface tilt has been measured from the half way of the shaft excavation phase. The shaft excavation has been commenced from July 2003 with two shafts (Main shaft and Ventilation shaft). By the end of October 2005, discharging of water in the shafts has been halted at the depths of 172m and 191m respectively to allow modifications to be made to the water treatment facility due to an excess of F and B concentration in the water. This results in the recovery of the groundwater levels and filling of the underground workings. Begin-ning in February 2006 pumping has been resumed and the underground workings have been reoccupied. Continuous groundwater pressure and surface tilt measurements with some numerical analysis during the shaft excavation phase show the existence of the flow barrier fault predicted from the surface-based investigation phase and hydraulic parameter around the shafts.

Proceedings of the 11th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2007-7141) 2007
J. Guimerà, E. Ruiz, M. Luna, D. Arcos, C. Domenech, S. Jordana, H. Saegusa and T. Iwatsuki

Numerical assessment of the origin of deep salinity in a low permeability fractured medium

東濃地域で観測されている塩分濃度の高い地下水について、その起源に関する複数の仮説及び概念モデルを構築した。それらの妥当性を確認することを目的とした数値解析を実施した。この数値解析においては、密度流を考慮した解析及び反応輸送解析を実施した。複数のモデルを統合することによって、ボーリング孔で観察された塩分濃度の高い地下水分布を定性的に説明できることが示された。

Proceedings of the 11th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM2007-7363) 2007
H. Saegusa, K. Yasue, H. Onoe, T. Moriya and K. Nakano

Numerical Assessment of the Influence of Topographic and Climatic Perturbations on Groundwater Flow Conditions

東濃地域を事例として、地形変化及び気候変動が地下水流動特性に与える影響を評価することを目的とした地形変化シミュレーション及び地下水流動解析を実施した。その結果、これらは地下水流動特性に影響を与えているとともに、その影響の大きさは、断層などの周辺岩盤と透水性のコントラストを有する地質構造と地下水の主流動方向の位置関係によっても異なることが明らかとなった。また、本研究を通じて、地形変化及び気候変動が地下水流動特性に与える影響を評価するうえで、地形変化シミュレーションと地下水流動解析を組合せた手法が有効であることが明らかとなった。

Proceeding of Workshop on Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long-Term Isolation of Radioactive Waste: Application to Crystalline rock pp.257-267 2007
M. Amo, N. Suzuki, T. Shinoda, N.P. Ratnayake and K. Takahashi

Diagenesis and distribution of sterenes in Late Miocene to Pliocene marine siliceous rocks from Horonobe (Hokkaido, Japan)

北海道幌延の後期中新世から更新世の海成の珪質岩はステレンとステラジアンを多く含む。JAEAによって掘削されたHDB-3孔とHDB-4孔の岩芯試料を用いて、有機物が未熟成な稚内層と声問層の海成の珪質岩に含まれるステレンとステラジアンの続成作用による分解と変質についての研究を行った。幌延地域の現在の地温勾配と続成作用(オパールAからオパールCTへのシリカ鉱物の相変化)を考慮すると、埋没続成作用によって影響を受けた最大温度条件を示す海成の珪質岩の古温度は30〜60度の範囲となる。ステラジアンとステレンの濃度は、45〜60度の範囲で、急激に減少する。また、同じ45〜60度の範囲でのステランの濃度は著しい増加を示し、ステランの一部分がステレン及びステラジアンから供給されていることを示唆している。稚内層と声問層中のC27、C28、C29のステラン⁄ステレン比は熟成度が進むことに伴い、その比が増加する。したがって、幌延の海成の珪質岩のステラン/ステレン比は埋没続成作用によって影響を受けた最大温度条件を示す古温度の指標として用いることが可能である。ステレンとステランのC27、C28、C29の相対的な量比については、幌延の試錐の岩芯分析の結果によると、ほぼ同様な量比を示す。つまり、有機物が未熟成度な堆積物中の有機物起源を特定するために、ステレンのC27、C28、C29の相対的な量比は、十分に有効な指標であることを示唆している。

Organic Geochemistry Vol.38 No.7 pp.1132-1145 2007
K. Hama, T. Kunimaru, R. Metcalfe and A.J. Martin

The hydrogeochemistry of argillaceous rock formations at the Horonobe URL site, Japan

formations being characterized are the marine Wakkanai and Koetoi Formations (Miocene to Pliocene), consisting dominantly of siliceous shales (porcelanites) and diatomaceous shales respectively. These formations are located within the Tempoku Basin, within a back-arc tectonic setting. Rock sequences of this kind occur widely in Japan and throughout the northern Pacific region. However, prior to the present study, there was relatively little information concerning the processes controlling in situ chemical conditions and groundwater flow in such settings. Chemical data was obtained for both pumped waters and squeezed porewaters in order to characterize the hydrogeochemistry of these argillaceous rock formations. The in situ chemical conditions, residence time of the groundwaters and the evolution processes of the groundwaters were investigated. Generally, at each locality studied, shallower groundwaters are fresh and have Na–HCO3 dominated chemistry. Deeper groundwaters are saline (TDS up to about 22,000 mg⁄l) and have Na–Cl dominated chemistry. However, lateral gradients in salinity are also recognized, with salinity contours in the Na–Cl dominated saline water (having TDS > 10,000 mg⁄l) probably varying in elevation by at least 250 m. Further investigations are required to confirm the origins of the groundwater salinity, but the Na–Cl dominated groundwater chemistry is provisionally explained as a consequence of the dilution of fossil seawater, accompanied by diagenetic water–rock reactions. The vertical and lateral salinity gradients can potentially be used to test the validity of coupled groundwater flow models. A conceptual model is tentatively suggested in which the spatial distribution and frequency of fractures helps to control the spatial distribution of groundwater salinity. Future investigations will clarify the timing of flow, the flow directions and the characteristics of the flow paths.

Physics and Chemistry of the Earth, Parts A⁄B⁄C Vol.32 No.1-7 pp.170-180 2007
T. Iwatsuki and R.C. Arthur

An evaluation of solubility limits on maximum uranium concentrations in groundwater

岐阜県東濃地域において、地下水中におけるウラン溶解度を観察、熱力学解析等に基づいて推測した。その結果、地下水中のウランの溶解度を支配する固相としてアモルファスUO2が挙げられた。また、その溶解度は地下水のpH、Eh、炭酸ガス分圧により大きく異なることが確認された。

Thermodynamics, solubility and environmental issues Eds. Trevor M. Letcher Chapter 8, pp.153-168 2007
K. Shiraishi, T. Matsuoka, T. Matsuoka, M. Tanoue and S. yamaguchi

SEISMIC INTERFEROMETRIC IMAGING FROM A POINT SOURCE IN THE GROUND

地震波干渉法は、地中からの伝播波を地表の受振点群で観測し、その観測記録の相互相関を取ることにより、地表に震源を設置した場合と同等の反射記録を合成できるものである。この手法の利点は、1つの観測記録から受振点の数と同じ数の観測記録を合成できることである。筆者らは、本手法を瑞浪超深地層研究所における立坑掘削時に実施している逆VSP探査で取得されたデータに対してこの手法を適用した。合成された反射記録を反射法処理した結果、地下の地質構造を評価可能な明瞭な2次元反射断面を得ることができた。

Journal of Seismic Exploration Vol.15 pp.323-332 2007
Y. Itoh, K. Amano and N. Kumazaki

Integrated description of deformation modes in a sedimentary basin: A case study around a shallow drilling site in the Mizunami area, eastern part of southwest Japan

反射法地震探査とボーリング調査に古地磁気学的手法を組合せた統合的な研究により、瑞浪地域に分布する堆積盆地が被った変動作用の変遷が明らかにされた。ボーリング孔は、反射法地震探査や地表地質調査によって推定されていた断層を貫通するように浅い深度を対象とした傾斜孔として掘削された。また、古地磁気測定は、孔壁画像上の構造姿勢を用いて方位付けした岩芯試料を用いて実施された。古地磁気測定においては、段階熱消磁・交流消磁実験により、計6深度で安定かつ特徴的な残留磁化が得られるとともに、段階等温実験により磁性鉱物が磁鉄鉱であることが明らかになった。本結果をボーリングデータの構造解析から推定される多段階の変形作用を基準に補正し、既存データを組合せて評価した結果、残留磁化方位は中期中新世以前の時計回りの島弧回転を反映した東偏であることが確認された。信頼性の高い古地磁気情報のデータセットから、中期中新世以降の西南日本東部の相対的回転は伊豆-ボニン弧の衝突によってもたらされており、われわれの研究結果は以下2点の新しい地質学的知見を示唆する。(1)瑞浪地域は赤石列線に接する強変形帯に隣り合う、(2)西南日本前弧側の変形作用は赤石列線周辺に限られ、衝突に関連する顕著な地殻の破断作用がない背弧側の漸移的な屈曲作用と大きく異なる。

Island arc Vol.15 No.1 pp.165-177 2006
Y. Suyama, M. Toida, K. Masumoto and S. Takeuchi

Investigation of the EDZ using high-resolution GPR with modulating frequency

放射性廃棄物の性能評価では、原位置における坑道掘削影響領域(EDZ)の把握が必要である。EDZを把握する手法の開発として、可変周波数による高精度地中レーダーの現場適用性を東濃鉱山坑道内で実施した。その結果、本手法はEDZの構造を高精度で把握する手法であることがわかった。

Proceedings of 12th European Meeting of Environmental and Engineering Geophysics (Near Surface 2006) (CD-ROM), P052 2006
C. Doughty, S. Takeuchi, K. Amano, M. Shimo and C.F. Tsang

Application of multirate flowing fluid electric conductivity logging method to well DH-2, Tono Site, Japan

In the flowing fluid electric conductivity (FEC) logging method, well bore fluid is replaced with deionized water, following which FEC profiles in the well bore are measured at a series of times while the well is pumped at a constant rate. Locations where fluid enters the well bore show peaks in the FEC logs, which are analyzed to infer inflow strengths and salinities of permeable features intersected by the borehole. In multirate flowing FEC logging, the flowing FEC logging method is repeated using two or more pumping rates. The results, coupled with those of a conventional well test over the entire borehole, enable the transmissivities and inherent pressure heads of permeable features to be determined. Multirate FEC logging is carried out on a deep borehole in fractured granitic rock using three different pumping rates. Results identify 19 hydraulically conducting fractures and indicate that transmissivity, pressure head, and salinity vary significantly among them. Using three pumping rates rather than the minimum number of two permits an internal consistency check on the analysis that provides a measure of the uncertainty of the results. Good comparisons against static FEC profiles and against independent chemical, geological, and hydrogeological data have further enhanced confidence in the results of the multirate flowing FEC logging method.

Water Resources Research Vol.41 No.10 W10401 2005
T. Iwatsuki, R. Furue, H. Mie, S. Ioka and T. Mizuno

Hydrochemical baseline condition of groundwater at the Mizunami underground research laboratory (MIU)

Hydrochemical conditions up to depths of 1000 m below ground level around the Mizunami Underground Research Laboratory were investigated to construct a “baseline condition model” describing the undisturbed hydrochemical environment prior to excavation of the underground facilities at Mizunami, Gifu, Japan. Groundwater chemistry in this area was classified into a Na–Ca–HCO3 type of groundwater in the upper part of sedimentary rock sequence and a Na–(Ca)–Cl type of groundwater in the deeper part of the sedimentary rock sequence and basement granite. The residence time of the groundwaters was estimated from their 14C contents to be approximately 9.3 ka in the middle part of the sedimentary rock and older than 50 ka in the deep part of the granite. The evolution processes of these groundwaters were inferred to be water–rock interactions such as weathering of plagioclase, dissolution of marine sulphate⁄sulphide minerals and carbonate minerals in the Na–Ca–HCO3 type of groundwater, and mixing between “low-salinity water” in the shallow part and “higher-salinity water” in the deeper part of the granite in the Na–(Ca)–Cl type of groundwater. The source of salinity in the deeper part of the granite was possibly a palaeo-hydrothermal water or a fossil seawater that recharged in the Miocene, subsequently being modified by long-term water–rock interaction. The Cl–depth trend in granitic groundwater changes at a depth of −400 m below sea level. The hydrogeological properties controlling the groundwater flow and⁄or mixing processes such as advection and diffusion were inferred to be different at this depth in the granite. This hydrochemical conceptual model is indispensable not only when constructing the numerical model for evaluating the hydrochemical disturbance during construction and operation of the MIU facility, but also when confirming a hydrogeological model.

Applied Geochemistry Vol.20 No.12 pp.2283-2302 2005
T. Miyoshi, T. Iwatsuki and T. Naganuma

Phylogenetic Characterization of 16S rRNA Gene Clones from Deep-Groundwater Microorganisms That Pass through 0.2-Micrometer-Pore-Size Filters

A total of 247 clones of 16S rRNA genes from microorganisms captured by 0.2- and 0.1-μm-pore-size filters from sedimentary and granite rock aquifers were amplified and yielded 37 operational taxonomic units (OTUs). Fifteen OTUs captured by 0.1-μm-pore-size filters were affiliated with the candidate divisions OD1 and OP11, representing novel lineages. On the other hand, OTUs captured by 0.2-μm-pore-size filters were largely affiliated with Betaproteobacteria.

Applied and Environmental Microbiology Vol.71 No.2 pp.1084-1088 2005

ページトップへ


地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
花室孝広、梅田浩司、高島勲、根岸義光

紀伊半島南部、本宮および十津川地域の温泉周辺の熱水活動史

紀伊半島南部地域には、第四紀火山が存在しないものの、湯の峰温泉や湯泉地温泉などの高温泉や、本宮地域の熱水変質帯などが分布している。本研究では、高温泉や変質帯の分布する本宮地域と十津川地域を対象として、複数の年代測定手法により岩石の被った熱履歴を把握することを目的としている。TL年代、FT年代及びK–Ar年代測定の結果、本宮地域・十津川地域では、千数百万年前までの高温の活動の後、少なくとも数十〜数万年前から低温の活動が見られる。これらは、複数の放射年代測定手法を組合せることで把握することが可能である。

岩石鉱物科学 Vol.37 No.2 pp.27-38 2008
三箇智二、安江健一

河床縦断形のシミュレーション

地下水などの地質環境の長期的な安定性を評価するためには、地形勾配や土被りが将来的にどの程度まで変化するのかを予測することが重要な課題となる。このアプローチとしては、地形変化のプロセスを明らかにし、一連のプロセスの中で現在がどういう段階にあるかを把握し、これから地形がどのように変化していくかを予測することが必要となる。このような地形変化のうち、河床低下は比較的変動が大きいため地下水流動に影響すると考えられ、この変化を予測することは安定性評価の重要な1項目となる。この観点から、本論文では地質分布を考慮した河床縦断面形のシミュレーションを行った。その結果、侵食形態の違いは地質分布で説明可能であり、シミュレーションを用いることで現在の地形特徴が復元できることを示した。

地形 Vol.29 No.1 pp.27-49 2008
富山眞吾、梅田浩司、花室孝広、高島勲、林信太郎、根岸義光、増留由起子

下北半島、むつ燧岳火山地域の変質帯と変質岩の熱ルミネッセンス年代

第四紀火山活動に伴う熱水活動の履歴を明らかにするため、むつ燧岳火山地域における変質帯の分布と性状及び変質年代に関する研究を実施した。変質分帯及び変質年代の検討の結果、むつ燧岳火山の活動に伴う熱水活動により形成された変質帯は、断裂発達箇所を中心として分布し、当時の火山体内及び基盤の断裂ないしは高透水性の岩相を通路として側方に広がっていたものと考えられる。また、流体包有物の均質化温度測定の結果から、熱水活動による変質は最も高温部で200〜250℃程度に達したと考えられる。

岩石鉱物科学 Vol.36 No.4 pp.111-121 2007
新里忠史、舟木泰智、安江健一

北海道北部、幌延地域における後期鮮新世以降の古地理と地質構造発達史

北海道北部地域の西部には、新第三紀以降の堆積物の全層厚が約6,000mに及ぶ天北(第三紀)堆積盆が分布する。同堆積盆の後期鮮新世以降におけるテクトニクスは、アムールプレートとオホーツクプレートとの相互作用により基本的な枠組みが形作られており、その枠組みのもと、西フェルゲンツをなすfold–and–thrust帯の地質構造の形成や、堆積中心の西方への移動が進行したと考えられる。また、最終氷期最寒冷期において不連続的永久凍土帯にあったと考えられる幌延地域では、下刻作用に加えて周氷河作用が合わさり、現在の地形と表層地質が形成されたと考えられる。見学旅行では、天北堆積盆の南東部に位置する幌延地域西部において、新第三系及び第四系に発達する割れ目群と堆積相、それら地層を覆う風成堆積物、周氷河成と考えられる堆積物、及びそれら地層のボーリングコアを観察する。また、日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターにおいて、周氷河地形の観察と地下施設の見学を行う。

地質学雑誌 Vol.113[Supplement] pp.119-135 2007
廣内大助、安江健一、内田主税、平松孝晋、谷口薫、杉戸信彦、金田平太郎

完新世における阿寺断層帯湯ヶ峰断層の活動

阿寺断層帯を構成する活断層の一つである湯ヶ峰断層において、完新世の活動履歴を明らかにするためにトレンチ掘削調査を実施した。その結果、腐植土や礫層を変位させる断層を確認し、傾斜不整合などの証拠から少なくとも4回の地震活動が明らかになった。

活断層研究 No.27 pp.201-209 2007
今井久、塩崎功、山下亮、操上広志、新里忠史、安江健一、前川恵輔

気候・海水準変動が地下水流動に与える影響に関する解析的検討 —北海道 幌延地域を例として—

地質環境の長期的な変動が地下水流動に与える影響の理解の一環として、海水準及び涵養量の変動に着目して、北海道幌延地域を対象に、同地域の地下水流動特性や地下水に含まれる塩分濃度分布に関する解析的検討を実施した。この結果、海水準変動の影響としては、海水準が低下した場合には、陸部の地下水位も低下し、塩分濃度の洗い出し範囲が拡大することなどが確認された。涵養量の変動による地下水流動への影響については、氷期における涵養量の減少を考慮した地下水流動解析を実施し、氷期においては地下水位が低下するとともに、塩分濃度の変化も比較的小さいことが推定された。

ハザマ研究年報 Vol.39 pp.1-7 2007
棚瀬充史、及川輝樹、二ノ宮淳、林信太郎、梅田浩司

K–Ar年代測定に基づく両白山地の鮮新 —更新世火山活動の時空分布

中部日本、両白山地の鮮新-更新世火山は、東南東-西北西方向の九頭竜火山列と南北方向の白山火山列をなす。両白山地における鮮新-更新世火山活動の時空分布を石基試料のK-Ar年代に基づいて検討した。初期(3.5〜1.5Ma)には、二つの火山列の交点付近での火山活動が見られる。1.2〜0.7Maには、九頭竜火山列で東南東端の烏帽子・鷲ヶ岳火山から西北西端の法恩寺火山へ火山活動が移動する。その後、白山火山列の活動が0.4Maに始まり、現在まで継続している。

火山 Vol.52 No.1 pp.39-61 2007
楮原京子、今泉俊文、宮内崇裕、佐藤比呂志、内田拓馬、越後智雄、石山達也、松多信尚、岡田真介、池田安隆、戸田茂、越谷信、野田賢、加藤一、野田克也、三輪敦志、黒澤英樹、小坂英輝、野原壯

横手盆地東縁断層帯・千屋断層の形成過程と千屋丘陵の活構造

過去数万年〜数百万年の逆断層の活動性を明らかにするため、横手盆地東縁活断層帯が分布する千屋丘陵と地質構造の発達過程の研究を実施した。浅層反射法地震探査、詳細な地形調査、地質調査及び総括的なバランス断面法の解析により、千屋丘陵とそれを形成した断層の構造及びそれらの発達過程が明らかになった。地質調査では、継続的な断層活動の開始時期が2.7Maより後と推定され、総合的なバランス断面解析の結果は、前縁断層の形成開始時期が千屋丘陵北部より中部のほうが早いことを示唆した。また、地形調査の結果、千屋丘陵の形成時期はその中央部で最も早く(0.35Ma以降)、その後丘陵は断層活動に伴って隆起し、東に傾動しながら拡大したと推定される。

地学雑誌 Vol.115 No.6 pp.691-714 2006
新里忠史、重野聖之、高清水康博

北海道における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録

北海道とその周辺海域における地震の地域性を把握するために、アイヌ文化期における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録の文献調査を行うとともに、それら史料が過去に地震に襲われた可能性を示すものかどうかの検討を行った。その結果、28の口碑伝説と歴史記録を収集できた。個々の史料を検討した結果、24の史料が地震に関するものと解釈された。アイヌ文化期とそれ以前の時期において地震に襲われたことが推定される地域は、おもに北海道の太平洋沿岸に分布する。それら地域は、北海道とその周辺において地震活動が活発な地域に隣接する。過去から現在までの地震の分布傾向に基づくと、将来の地震の分布は、アイヌ文化期とほぼ同期間の将来において、現在の地震分布とほぼ同一であると推測できるであろう。

歴史地震 No.21 pp.121-136 2006
守田益宗、神谷千穂、佐々木俊法、宮城豊彦、須貝俊彦、柳田誠、古澤明、藤原治、守屋俊文

東海地方の中間温帯における中期更新世以降の植生変遷 —内陸小盆地堆積物の花粉分析から—

長期間に渡る植生変遷を明らかにするため、本州中部の瑞浪市大湫の小盆地で掘削された長さ25.3m、過去30万年以上に及ぶボーリングコアの花粉分析を行った。分析の結果、下位より上位へと15の花粉帯を区分した。それらは周期的な植生変遷を示し、そこからは5つの温暖期と4つの寒冷期が示された。それぞれの温暖期及び寒冷期は、MIS9からMIS1に対比できた。その結果、MIS5はMIS7、MIS9の温暖期よりも気温が高く、MIS9の気温はそれほど高くなかったことが明らかになった。

季刊地理学 Vol.58 pp.123-139 2006
今泉俊文、楮原京子、大槻憲四郎、三輪敦志、小坂英輝、野原壯

秋田県・千屋断層の陸羽地震断層露頭

2005年夏に千屋丘陵の西麓(花岡地区)・大道川の河岸で、陸羽地震時に形成されたと考えられる断層露頭を発見した。この露頭によって、千屋断層の(陸羽地震時)地表トレースが地形境界に沿って大きく湾曲することが明確になった。このような逆断層のトレースの湾曲がどのように形成されたのか、逆断層の先端(地表)から地下の断層形状・構造を解明するうえでも重要な露頭と考えられる。

活断層研究 No.26 pp.71-77 2006
笹尾英嗣、岩野英樹、檀原徹

岐阜県東濃地方に分布する瑞浪層群土岐夾炭層の凝灰質砂岩のフィッション・トラック年代

岐阜県南東部に分布する中新統瑞浪層群土岐夾炭層について、本層中部の凝灰質砂岩のフィッション・トラック年代測定と記載岩石学的性質に基づいて、その堆積年代を検討した。凝灰質砂岩および土岐花崗岩中の斜長石の屈折率分布から、凝灰質砂岩は安山岩質の火山灰と花崗岩起源の砕屑物の混在物であることが明らかになった。また、凝灰質砂岩中のジルコンの粒子年代分布を統計的に解析し、同一年代と見なされる粒子集団を分類した結果、17〜21Maおよび56〜67MaのFT年代が識別された、古い方の年代は土岐花崗岩のFT年代(59〜61Ma)と一致しており、基盤から供給されたジルコンの年代を示し、若い方の年代は安山岩質火山灰の形成年代、すなわち瑞浪層群土岐夾炭層中部の堆積年代を示す。これまでに報告された本層上部のFT年代(約18Ma)を考慮すると、基底礫岩を除く土岐夾炭層は約18〜20Maに堆積したと推定される。

地質学雑誌 Vol.112 No.7 pp.459-468 2006
佐々木俊法、須貝俊彦、柳田誠、守田益宗、古澤明、藤原治、守屋俊文、中川毅、宮城豊彦

東濃地方内陸小盆地埋積物の分析による過去30万年間の古気候変動

土岐面頂部付近の閉塞された小盆地で掘削されたボーリングコア (OK1コア:深度25.3m) は、おもに泥炭層と無機質粘土〜シルト層のリズミカルな互層からなり、コア下部から約30万年前に堆積した高山Ng1テフラが検出された。 この約30万年前以降の連続試料について、テフラ分析、帯磁率測定、粒度分析、色相計測、花粉分析を実施した。花粉分析のデータを基に、モダンアナログ法を適用し、古気温の変動を復元した結果、海洋酸素同位体の変動と同調していることが明らかになった。さらに、暗色の泥炭層と明色の無機質粘土〜シルト層の堆積環境がリズミカルに振幅し、それを数値化したL*値の変動が日射量変動に対応している可能性が示された。これらのことから、OK1コアは盆地内のローカルな環境変動のみならず、過去30万年間以上にわたって汎地球的な変動をも連続的に記録していると推察される。

第四紀研究 Vol.45 No.4 pp.275-286 2006
坂川幸洋、梅田浩司、浅森浩一

熱移流を考慮した日本列島の熱流束分布

 

日本地熱学会誌 Vol.28 No.2 pp.211-221 2006
笹尾英嗣、岩月輝希、天野由記

東濃ウラン鉱床でのナチュラルアナログ研究からみた古水理地質研究の役割

東濃ウラン鉱床は1千万年前と考えられるその形成以降、隆起・侵食などの影響を受けてきたにもかかわらず、ほとんどのウランは保存されてきた。これはウランの保存に適した地質環境が維持されてきたことによる。日本列島のような変動帯において、高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの長期的な安全性に対する信頼性を向上させるためには、隆起・侵食などの地質事象が地質環境にどのような影響を及ぼすのかについて理解する必要がある。東濃ウラン鉱床を対象とした研究からこのような点に貢献するためには、地質環境の長期的な変化やその安定性を評価していく必要がある。地下の地質環境は、地下水流動系、微生物、水-岩石反応などの多くの要因に影響されるため、過去の地質環境を知るためには、古水理地質学的なアプローチが必要である。

資源地質 Vol.56 No.2 pp.125-132 2006
梅田浩司、大澤英昭、野原壯、笹尾英嗣、藤原治、浅森浩一、中司昇

サイクル機構における「地質環境の長期安定性に関する研究」の概要 —日本列島のネオテクトニクスと地質環境の長期安定性—

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.97-112 2005
藤原治、柳田誠、三箇智二、守屋俊文

地層処分からみた日本列島の隆起・侵食に関する研究

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.113-124 2005
新里忠史、安江健一

幌延地域における地質環境の長期安定性に関する研究 —長期安定性の評価・予測における地域特性の考慮—

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.125-138 2005
藤原治、柳田誠、三箇智二、守屋俊文

地層処分から見た侵食作用の重要性 —海成段丘を対象とした侵食速度の推定を例に—

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.139-146 2005
浅森浩一、梅田浩司

地下深部のマグマ・高温流体等の地球物理学的調査技術 —鬼首・鳴子火山地域および紀伊半島南部地域への適用—

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.147-156 2005
坂川幸洋、梅田浩司、浅森浩一

熱移流を考慮した日本列島の熱流束分布と雲仙火山を対象とした熱・水連成シミュレーション

 

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.157-166 2005
笹尾英嗣、天野健治、太田久仁雄

東濃ウラン鉱床におけるナチュラルアナログ研究 —ウラン鉱床での隆起・沈降の変遷と隆起速度の見積もり—

東濃ウラン鉱床はその形成時(約1 千万年前)から隆起・侵食の影響を受けてきたにもかかわらず、大部分のウラン系列核種は移行せずに安定に保持されている。隆起・侵食によって生じる地質環境の水理学的・地球化学的な変化によって、放射性核種の化学的挙動が変化する可能性があるため、東濃ウラン鉱床が被った隆起・侵食に伴う地質環境の変化とその変化がウランの移行・保持に及ぼした影響を示すことにより、隆起・侵食を考慮した地層処分システムの信頼性の向上に資することができる。そこで、隆起・侵食が地質環境にどのような影響を及ぼすかを評価する研究の一環として、現在認められる地層の厚さから、海水準変動と不整合期の侵食量を考慮して、東濃ウラン鉱床の隆起・沈降量と過去約150万年間の隆起速度を見積もった。
見積もりの結果、隆起量としては約150 万年前と考えられる瀬戸層群の堆積後、現在までの期間が約340mと最も大きく、この間の平均隆起速度は約0.2〜0.3mm⁄年と見積もられた。ただし、隆起・沈降量の見積もりには、海水準変動と侵食量の見積もりが影響するため、これらを精度よく復元する必要がある。また、隆起速度の見積もりには隆起に要した期間の決定精度が大きく影響し、瑞浪層群と瀬戸層群の不整合期を例とすると、現在得られている放射年代値を用いると、見積もり結果に最大で10 倍程度の差が生じることが明らかになった。

原子力バックエンド研究 Vol.11 No.2 pp.167-179 2005
木下博久、野原壯、中田高、池田安隆、伊藤潔、大槻憲四郎、鷺谷威、高田圭太、遠田晋次

比較的規模の大きな地下活断層の特徴とその調査手法の検討

Results of numerical analyses and field studies in the epicenter area of the 2000 Tottoriken-seibu earthquake suggest that several research techniques are effective for identifying subsurface active faults unaccompanied with remarkable surface earthquake faults. Field observation of the lineaments found in the area by detailed air-photo interpretation revealed that most of them are accompanied by faults and/or dikes, and some of them show minor slips at the time of the earthquake. Crustal deformation caused by the activity of the subsurface seismogenic faults is deduced by numerical analyses based on seismic and geodetic data. The vertical deformation assumed from the height changes of the terraces along the river across the epicenter area suggests that cumulative uplift and subsidence associated with left-lateral strike-slip has been continuing. Offsets rate of the streams and uplift rate of the river terraces surfaces show good agreement with the estimate from the parameter of the earthquake faults model. Identification of active faults without clear surface evidence before occurrence of earthquakes is a difficult issue, and the techniques adopted in this study will probably provide relevant information effective to locate subsurface active faults.

活断層研究 No.25 pp.27-37 2005
上原大二郎、角田地文、工藤健、梅田浩司、小川康雄、棚瀬充史、武田祐啓、千葉昭彦、菊池晃、鍵山恒臣

紀伊半島南部地域の重力異常と深部比抵抗構造から推定される地熱構造

紀伊半島南部地域には第四紀の火山活動はないが、和歌山県には高温の自噴温泉が分布する。これらの温泉では、ヘリウム同位体比が高いことが特徴である。筆者らは半島南部地域で、重力異常の解析とMT法による深部比抵抗構造調査を行った。その結果、半島中央部-東部の地表から深さ20km付近に、西に急傾斜する高密度・高比抵抗の大規模な岩体や、半島西側の深さ5-15km付近に西に緩く傾斜する低比抵抗層を検出した。また、深さ20km以深は、広範囲にわたって低比抵抗であることが分かった。これらの結果から、高温・高ヘリウム同位体比の温泉湧出のモデルを提案した。

地震第2輯 Vol.57 No.3 pp.245-255 2005
山口正秋、須貝俊彦、藤原治、大森博雄、鎌滝孝信、杉山雄一

ボーリングコアの粒度組成と堆積速度からみた木曽川デルタの微地形と堆積過程

木曽川デルタで掘削された2本のボーリングコア(海津コアと大山田コア)の粒度組成から、デルタの微地形を復元した。さらに、堆積速度との関係を検討した。両コアは、プロデルタ、デルタフロントスロープ、デルタフロントプラットフォームを構成する典型的なデルタのサクセッションを示す。しかし、粒度組成と堆積速度は両地点の微地形の違いを反映して異なっている。プロデルタ堆積物は、浮流物質のみからなる海津コアに対して、養老山地に近い大山田コアは支流からの土砂供給を示す二峰性の粒度分布をもった堆積物を挾在する。堆積速度は、前者では小さく(1.4〜3.7mm⁄yr)、後者で大きい(1.9〜4.6mm⁄yr)。デルタフロントスロープ堆積物は、海津コアで典型的な上方粗粒化傾向を示す一方、大山田コアでは粗粒で淘汰がよい堆積物や、二峰性の粒度分布を示す堆積物を挾在する。これは、海津コアが河川からの土砂が集中するローブの中心付近に位置していたのに対して、大山田コアは河川フラックスの小さいローブの外縁付近に位置し、相対的に波浪や沿岸流などで再配置された淘汰のよい堆積物が堆積する割合が高かったためと推定される。堆積速度は前者で大きく(〜55.8mm⁄yr)、後者で小さい(〜12.6mm⁄yr)。

第四紀研究 Vol.44 No.1 pp.37-44 2005
柳田誠、藤原治、久保田義博、三箇智二、清水長正、佐々木俊法

日本列島の地すべり地形 —分布図からの考察—

 

駒沢地理 No.41 pp.61-77, 2 sheets 2005

ページトップへ

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Yamada and T. Tagami

Postcollisional exhumation history of the Tanzawa Tonalite Complex, inferred from (U–Th)⁄He thermochronology and fission track analysis

新たな熱年代学的手法により島弧島弧衝突による丹沢トーナル岩複合岩体の削剥史を調査した。(U–Th)⁄He年代はアパタイトで2.0±0.2Ma、ジルコンで3.3±0.2Ma、ジルコンのフィッショントラック年代は4.5-6.9Maで、地温勾配を40℃⁄kmとすると削剥史は〜7-3.3Ma: 0.5-1.5mm⁄yr; 3.3-2.0Ma: 〜2mm⁄yr; 2.0-0Ma: 〜0.8mm⁄yrであった。7Maごろ以降、丹沢山地周辺のテクトニクス条件の変化にもかかわらず、削剥速度は大きな変化を受けていないことが明らかになった。

Journal of Geophysical Research(Solid Earth) Vol.113 B03402 doi:10.1029⁄2007JB005368 2008
K. Umeda, Y. Sakagawa, A. Ninomiya and K. Asamori

Relationship between helium isotopes and heat flux from hot springs in a non-volcanic region, Kii Peninsula, Southwest Japan

紀伊半島は、非火山地帯に位置するにもかかわらず、高いヘリウム同位体比を有する高温の温泉が多く分布する。これらの温泉の熱源については、沈み込むフィリピン海スラブに含まれる含水鉱物が高温・高圧下で脱水し、それが地殻浅所にもたらされたといったモデルが提唱されている。今回、物質科学的な側面からそのモデルを検証するため、紀伊半島の温泉ガスのヘリウム同位体比のデータを蓄積するとともに、ボーリングの温度プロファイルを収集し、ペクレ数解析によりそれぞれのボーリング地点の熱流束を計算した。その結果、ヘリウム同位体比と熱流束、ペクレ数には明瞭な相関が認められることから、温泉の温度や同位体比は、地下深部から上昇する流体のフラックスの大きさに起因していることが明らかになった。

Geophysical Research Letters, 34, pp.L05310_1-L05310_5 2007
K. Umeda, K. Asamori, A. Ninomiya, S. Kanazawa and T. Oikawa

Multiple lines of evidence for crustal magma storage beneath the Mesozoic crystalline Iide Mountains, northeast Japan

東北日本の飯豊山地は、非火山地帯にもかかわらず高温の温泉が分布し、温泉放熱量も火山地帯のそれに匹敵する。本研究では、これらの高温の温泉の熱源を明らかにするため、飯豊山地周辺の温泉ガスのヘリウム同位体比の測定を行った。その結果、温泉ガスのヘリウム同位体比は、MORB-typeのヘリウム同位体比と同程度の値を示すことから、温泉ガスのヘリウムはマントルヘリウムを主体としている。この山地の周辺には、中新世の貫入岩が分布する。温泉ガスの高いヘリウム同位体比は、これらの貫入岩を起源とするマントルヘリウムの量からは説明できないことから、飯豊山地の下には、最近になって貫入したマグマが存在することを示唆する。また、この結果は他の地球物理データとも整合的である。

Journal of Geophysical Research(Solid Earth) Vol.112 B05207 doi:10.1029⁄2006JB004590 2007
K. Umeda, G.F. McCrank and A. Ninomiya

Helium isotopes as geochemical indicators of a serpentinized fore-arc mantle wedge

西南日本の前弧域(非火山地帯)におけるヘリウム同位体比の空間分布を把握するため、九州東部の温泉ガスのヘリウム同位体比を測定するとともに、ほかの地域の温泉ガスのデータを含めて同位体比のデータのコンパイルを行った。その結果、九州、四国及び紀伊半島では、ヘリウム同位体比に系統的な違いが認められた。また、高いヘリウム同位体比の分布域には、非火山性の低周波微動が発生している。これらのことから、ヘリウム同位体比の分布は、地殻及びマントルの構造及びスラブ起源の流体のフラックスに起因していることが示唆される。

Journal of Geophysical Research(Solid Earth) Vol.112 B10206, doi:10.1029⁄2007JB005031 2007
K. Umeda, T. Hanamuro, K. Yamada, Y. Negishi, H. Iwano and T. Danhara

Thermochronology of non–volcanic hydrothermal activity in the Kii Peninsula, Southwest Japan: evidence from fission track dating and helium isotopes in paleo–hydrothermal fluids

非火山地帯の熱水変質帯の一つである紀伊半島南部を事例に、変質した砂岩・泥岩に含まれるジルコン、アパタイトのフィッション・トラック年代測定を行うとともに、熱水鉱脈中の石英の流体包有物の希ガス同位体の分析を行った。アパタイトのフィッション・トラック年代は、非変質の四万十累層群の年代(約12Ma)に比べて著しく若い年代(2.7〜5.6Ma)を示す。また、流体包有物のヘリウム同位体比は、現在、湧出している温泉ガスの値と整合的であることから、現在の熱水活動は、鮮新世まで遡る可能性がある。

Radiation Measurements Vol.42 No.10 pp.1647-1654 doi:10.1016⁄j.radmeas.2007.09.013. 2007
K. Umeda

An Integrated approach for detecting latent magmatic activity beneath non-volcanic regions: An Example from the crystalline Iide Mountains, northeast Japan

将来の火山・地熱活動の発生に伴う地層処分システムへの影響を回避するためには、概要調査等によって対象となる地域にマグマや高温流体等の存在の有無をあらかじめ確認することが不可欠である。本講演では、地下深部のマグマの存在を示すための調査技術として、地震波速度構造、深部比抵抗構造、温泉ガスのヘリウム同位体等の地球物理及び地球化学データによる総合的なアプローチを提案するとともに、この手法を用いた研究事例を紹介する。

Proceeding of an IGSC “Geosphere Stability” Workshop on Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long–Term Isolation of Radioactive Waste: Application to Crystalline rock pp.289-301 2007
T. Niizato, K. Yasue and H. Kurikami

Impacts of natural events and processes on groundwater flow conditions; A Case study in the Horonobe area, Hokkaido, northern Japan

数万年以上の長期に渡る地質環境の長期安定性を評価するうえでは、隆起・沈降⁄侵食・堆積、及び気候変動などの天然現象を考慮することが重要である。本研究では、日本列島北部の北海道、幌延地域を事例として、同地域の地史に基づいて描いた将来の天然現象にかかわる概念モデルを示す。本研究により、将来生じる可能性の高い地質環境の変遷を描くうえでは、天然現象の相互作用が重要であると結論することができる。

Proceeding of an IGSC “Geosphere Stability” Workshop on Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long–Term Isolation of Radioactive Waste: Application to Crystalline rock 2007
T. Nohara

Hydraulic and Hydrochemical Response to Seismic Events

これまでの研究により、断層活動に伴う地下水流動の変化は小さく、また、比較的大きな変化は局所的に繰り返し生じていることから、地質環境に与える影響は限定的と考えられている。しかしながら、地層処分システムの信頼性向上のためには、地域性を考慮した地下水変化の要因を明らかにし、継続時間を考慮した影響の大きさの検討が重要といえる。そこで、日本における事例研究の結果をもとに、断層活動による地下水変化の特徴を検討した。また、花崗岩類地域である淡路島北部や鳥取県西部地震震源域及び東濃地域での事例研究の結果をもとに、地下水位変化の要因を推定した。

Proceeding of an IGSC “Geosphere Stability” Workshop on Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long–Term Isolation of Radioactive Waste: Application to Crystalline rock 2007
T. Oikawa, K. Umeda, S. Kanazawa and T. Matsuzaki

Unusual cooling of Middle Miocene Ichifusayama Granodiorite, Kyushu, Japan

K–Ar and FT analyses were carried out on biotite, zircon and apatite from the Middle Miocene Ichifusayama Granodiorite pluton in Kyushu, Japan in order to reveal the cooling history. The core and rim of the pluton revealed K–Ar biotite ages of 13.39–13.36 and 13.31–13.54 Ma, FT zircon ages of 13.3–13.1 and 12.7–12.3 Ma, and FT apatite ages of 13.1–13.7 and 10.6–10.8 Ma respectively, suggesting that the core cooled, to 100℃ from 300℃, faster than the rim, of which the cooling rate is 〜100℃⁄Ma. The track–length analyses also suggest extremely rapid cooling without a late stage annealing process. The faster cooling of the core in comparison with the rim is unusual. The difference in cooling velocity between the core and rim was possibly caused by an influence of paleotopography.

Journal of Mineralogical and Petrological Sciences Vol.101 No.1 pp.23-28 2006
K. Umeda, K. Asamori, T. Negi and Y. Ogawa

Magnetotelluric imaging of crustal magma storage beneath the Mesozoic crystalline mountains in a nonvolcanic region, northeast Japan

飯豊山地は、東北地方の福島と山形の県境に位置し、ジュラ紀の足尾帯と白亜紀〜古第三紀の花崗岩類からなる。当該地域は、第四紀火山から50km以上も離れているにもかかわらず、飯豊温泉や泡の湯温泉等の高温泉が分布し、温泉放熱量も1000μW⁄m2を超える非火山地帯の高温異常域である。本研究では、飯豊山地を横断する測線において地磁気・地電流観測を実施するとともに、地下40kmまでの二次元比抵抗構造解析を行った。その結果、山体の地下10km以深には10Ωm以下の極めて低い比抵抗体が存在し、上部マントルまで連続していることが明らかになった。また、この低比抵抗体の上面の形状は、地殻内地震のcut-off depthと調和的であることから、山体の地下10km以深には、約400℃以上の高温の物質が広く(>数百km3)存在すると考えられる。また、この地域の下部地殻には、地震波の低速度域が存在すること、温泉ガスのヘリウム同位体比(3He⁄4He比)が東北日本の火山ガスの値に匹敵すること等から、飯豊山地の地下にはマグマあるいはそれに関連する高温の流体が存在することが示唆される。

Geochemistry, Geophysics, Geosystems (G3) Vol.7 No.8 Q08005, doi:10.1029⁄2006GC001247 2006
K. Umeda, S. Kanazawa, C. Kakuta, K. Asamori and T. Oikawa

Variations in the 3He⁄4He ratios of hot springs on Shikoku Island, southwest Japan

西南日本の前弧域における温泉ガスのヘリウム同位体比の分布を明らかにするため、これまでデータが得られていない四国地方を対象に温泉ガスの採取、分析を行った。その結果、東北日本の前弧域の温泉に比べて高いヘリウム同位体比が四国全域で認められた。沈み込み帯の前弧域におけるヘリウム同位体比の異常については、スラブから脱水した流体によって運ばれるマントル起源の3Heの影響が指摘されている。しかしながら、四国下の地殻内地震の活動が極めて乏しいこと、震源メカニズムが圧縮応力場を示すこと等を考慮すると、深部流体による3Heの寄与は小さいと考えられ、ヘリウム同位体比の分布は、中新世の火成岩体、地殻及び大気起源のヘリウムの混合によって説明できる。

Geochemistry, Geophysics, Geosystems (G3) Vol.7 No.4 Q04009, doi:10.1029⁄2005GC001210 2006
K. Umeda, Y. Ogawa, K. Asamori and T. Oikawa

Aqueous fluids derived from a subducting slab: observed high 3He emanation and conductive anomaly in a non-volcanic region, Kii Peninsula southwest Japan

 

ournal of Volcanology and Geothermal Research Vol.149 No.1-2 pp.47-61 2006
K. Umeda

Deep structure of the Miocene igneous complex in the Kii peninsula, Southwest Japan, inferred from wideband magnetotelluric soundings

 

Advances in Geosciences-Vol.1: Solid Earth (SE), pp.207-213 2006
T. Nohara, H. Tanaka, K. Watanabe, N. Furukawa and A. Takami

In situ hydraulic tests in the active fault survey tunnel, Kamioka Mine, excavated through the active Mozumi-Sukenobu Fault zone and their hydrogeological significance

 

Island Arc Vol.15 No.4 pp.537-545 2006
E. Sasao, K. Ota, T. Iwatsuki, T. Niizato, R.C. Arthur, M.J. Stenhouse, W. Zhou, R. Metcalfe, H. Takase and A.B. Mackenzie

An overview of a natural analogue study of the Tono Uranium Deposit, central Japan

The basic concept of deep geological disposal of high-level radioactive waste is to isolate the waste from the human environment for the long term. Because the Japanese islands are located in a geologically active area, geological phenomena such as exhumation and fault activity must be considered by any safety assessment connected with deep geological disposal. The Tono Uranium Deposit, central Japan, has been affected by such geological phenomena during the interval since its formation, and so it is a suitable analogue for evaluating how this might be done.
The present natural analogue study of the Tono Uranium Deposit (Tono Natural Analogue Project) was started in 2001 with the main aim of studying a so-called ’worst-case scenario’ for performance assessment (PA). The project involved characterizing the geology, hydrogeology, geochemistry and microbiology of the deposit and obtaining quantitative information about specific times in the past, as a means for developing, and building confidence in, conceptual and numerical models.
This project applied systems analysis, which has been widely undertaken in PAs of deep geological isolation. Systems analysis involves a systematic identification, classification and screening of features, events and process (FEPs) that occur or have occurred in and around the deposit. Based on the site data, important FEPs were identified.

Geochemistry: Exploration, Environment, Analysis Vol.6 No.1 pp.5-12 2006
R. Metcalfe, H. Takase, E. Sasao, K. Ota, T. Iwatsuki, R.C. Arthur, M.J. Stenhouse, W. Zhou and A.B. Mackenzie

A system model for the origin and evolution of the Tono uranium deposit, Japan

Data from the Tono Uranium Deposit of central Japan were used to develop an improved approach for simulating uranium migration and retardation, while taking into account both long-term environmental changes and uncertainties in data. Based upon extensive field and laboratory investigations, conceptual and numerical models for environmental perturbations, including uplift, subsidence and faulting, were constructed. Model development was based on a novel adaptation of a safety assessment methodology that previously has been applied to radioactive waste repositories. A ‘reference scenario’ was developed using a systems analysis approach. This scenario is a best estimate of how the geological system and the uranium deposit reached their present states and includes descriptions of all major environmental perturbations. Uranium is mobilized from the uppermost Toki granite under relatively oxidizing conditions, and is then transported by groundwater into overlying sedimentary rocks. There, reducing conditions promote uranium deposition. A specially designed numerical model simulated the main features of this scenario. Many simulations were performed to identify key uncertainties to which the timing of ore deposition and uranium distribution are sensitive. A key finding is that retardation of U by processes other than precipitation of discrete U minerals, most probably sorption on solid phases, contributes significantly to the stability of the ore deposit. Sorption could potentially be important for confining the U within the sedimentary rocks in spite of environmental changes such as exhumation and seismic pumping. The approach could be used elsewhere, to assess the safety of deep geological high-level radioactive waste (HLW) disposal. A related application would be at potential future waste disposal sites, to prioritize site characterization so that the most safety-relevant uncertainties are reduced. There are also possible applications in other fields, most notably to assess the implications of alternative ore genetic models.

Geochemistry: Exploration, Environment, Analysis Vol.6 No.1 pp.13-31 2006
R.C. Arthur, T. Iwatsuki, E. Sasao, R. Metcalfe, K. Amano and K. Ota

Geochemical constraints on the origin and stability of the Tono uranium deposit, Japan

Data characterizing the mineralogy, hydrochemistry and geomicrobiology of the Tono region of central Japan were used to interpret geochemical constraints on the origin and stability of the Tono Uranium Deposit. The derived constraints are compatible with models of deposit formation, which call for leaching of uranium from the upper weathered zone of the Toki Granite by relatively oxidizing groundwaters that are near-neutral to moderately alkaline and carboniferous. The oxidizing groundwaters then migrate into mudstones and sandstones of the overlying Toki Formation, where the uranyl species is reduced by water?rock-microbe interactions to uranous species, sorbed by various detrital and authigenic phases and eventually precipitated as uraninite, coffinite and the metastable, amorphous hydrous oxide, UO2(am).
Formation of the Tono deposit may have been more or less continuous up to the present time. The modern hydrochemical system, upon which the genetic model is based, began to evolve about 15 Ma when seawater was flushed out of the sedimentary cover and basement granite by fresh, meteoric waters during a period of uplift and erosion preceding Pliocene to Pleistocene sedimentation. Recharge with meteoric water continued to the present, which suggests that palaeohydrochemical conditions were probably similar to those observed in the region today when the Tono deposit began to form about 10 Ma.
Redox environments in the Tono region inferred from in-situ Eh measurements in deep boreholes and calculated potentials for the SO42-/HS- redox couple appear to be controlled by heterogeneous reactions involving Fe(III)-oxyhydroxides. Metastable equilibria and particle-size effects associated with these reactions produce a range of possible redox environments that are equally compatible with both the relatively oxidizing and reducing groundwaters of the Toki Granite. This compatibility extends to sedimentary porewaters, where the redox environment is also controlled by microbially mediated sulphate reduction, oxidation of organic matter and precipitation of sulphide minerals. Redox conditions have been stable during at least the past several tens of thousands of years based on palaeoredox indicators interpreted from the trace element contents of fracture calcites. The pH and carbonate contents of palaeogroundwaters and modern groundwaters of the Tono region were, and are, controlled mainly by calcite equilibrium.

Geochemistry: Exploration, Environment, Analysis Vol.6 No.1 pp.33-48 2006

ページトップへ