高速炉とは
高速炉は、原子力発電所の運転に伴い生じる使用済燃料をリサイクルすることができる新しい原子炉であり、限りある資源を大切に使いながら、将来社会においても安定的に電力供給がなされるよう、現在運転している原子力発電プラント(軽水炉)の後継炉型として開発されています。
福島第一原子力発電所の事故の教訓や、国際的な安全設計基準を踏まえ、より高い安全性を確保することを最重要課題としつつ、電気料金の高騰につながらないよう高い経済性を持つことや、高レベル放射性廃棄物を量的・質的に減らし、資源をより有効に使うことなどを開発目標として、社会に高く貢献する原子炉とするべく、検討を進めています。
ナトリウム冷却タンク型高速炉とは
高速炉では、現在運転している原子力発電プラント(軽水炉)よりも高いエネルギーを持つ中性子を用いて燃料の核分裂反応を起こし、熱を発生させます。炉心から熱を取り出すための伝熱材(冷却材)としてナトリウムを用いることから「ナトリウム冷却」、原子炉容器の中にポンプ、熱交換器などの大型機器を納めることから「タンク型」(「プール型」と称する場合もあります)と称されています。
現在検討している高速炉実証炉の型式には、この「ナトリウム冷却タンク型高速炉」が選定されています。
社会に高く貢献する原子炉とするために
実証炉では、将来の社会に必要な性能を達成できる見通しを得ることを目指しています。
国の戦略ロードマップでは、高速炉の開発目標として以下の6項目を定めています。
→ 高速炉の開発目標
(原子力関係閣僚会議 令和4年12月23日 戦略ロードマップ改訂)
安全性・信頼性
福島第一原子力発電所の事故の教訓や、国際的な安全設計基準を踏まえ、新規制基準に基づく軽水炉と同等以上の安全性を達成し、より高い安全性を追求します。次世代炉に期待される、より高い安全性・信頼性を実現する工夫(受動安全)を設計に取り込みます。
経済性
福島第一原子力発電所の事故を踏まえた安全性の強化等を踏まえた上で、基幹電源として利用するため、他の基幹電源と競合しうる経済性を目指します。
環境負荷低減性
高レベル放射性廃棄物を量的・質的に減らすため、マイナーアクチノイド(MA)を分離・回収し、燃料として利用します。また、ライフサイクルにおける環境影響を他電源と比べて少なくします。
資源有効利用性
原子力発電所の運転から生じる使用済燃料から高速炉の燃料となる物質を取り出しリサイクルします。
核拡散抵抗性
核物質が軍事目的に転用されることを防止・阻止し、かつ、核物質や施設を守ることができるシステムを構築します。
柔軟性
太陽光や風力発電といった変動性のある再生可能エネルギーとの共存を視野に入れ、出力規模や負荷追従運転等、必要な柔軟性に適切に対応できるようにします。
燃料技術の具体的な検討
燃料には酸化物燃料と金属燃料があり、2026年度の具体的検討を目指し、それぞれの技術を検討しています。
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燃料タイプ
炉システム分野では、炉心の安全性やプラントとしての経済性の観点から比較・検討を進めています。
サイクルシステム分野の検討を含め、より社会に適合できる燃料を総合的に判断します。
酸化物燃料
二酸化ウランと二酸化プルトニウムを混ぜた酸化物燃料の検討を進めています。
金属燃料
ウラン、プルトニウム等の合金燃料を検討しています。
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開発のあゆみ
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2023
- 7月12日
- 経済産業省が設置した高速炉技術評価委員会により、2023年度から開始する委託事業「高速炉実証炉開発事業」において、概念設計対象となる炉概念仕様と将来的にはその製造・建設を担う事業者(中核企業)として三菱重工業株式会社が選定されました。
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2024
- 6月19日
- 経済産業省に設置した高速炉開発会議 戦略ワーキンググループにより、高速炉実証炉の開発体制が決定されました。
- 7月 1日
- 高速炉サイクルプロジェクト推進室、発足。高速炉実証炉サイクルプロジェクトが始動しました。
高速炉実証炉サイクル検討プロジェクトの体制
プラントの概要
- スケール効果により高い経済性が期待できる大型炉への拡張が容易であり小型炉への展開も可能な中型ナトリウム冷却タンク型高速炉
- 国内先行炉(設計、建設、運転知見)・既往プロジェクトの技術蓄積並びに国際協力(日仏、日米)での知見取得による高い技術成熟度を実現
- 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓や国際的な安全設計基準構築を通して安全性を向上
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