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国際会議で常陽を用いたAc225製造に係る研究成果発表を行い佐々木悠人が優秀演題賞を受賞

7月23日~27日にかけてカナダのサスカトゥーンで開催された国際会議「The 11th International Conference on Isotopes」で「Evaluation of 225Ac production rate and its uncertainty in the experimental fast reactor Joyo(高速実験炉「常陽」によるAc-225生成とその不確かさ評価)」という成果を発表しBEST ABSTRACT AWARDを受賞しました。(高速実験炉部高速炉照射課、佐々木悠人)

常陽でどのような仕事を担っていますか?

Ac-225をはじめ、様々な医療・工業用のラジオアイソトープ製造に関する研究や、運転再開後の様々な照射試験に向けた、照射条件評価などの業務をしています。

佐々木 悠人の写真

佐々木 悠人

(高速実験炉部高速炉照射課)

BEST ABSTRACT AWARDの表彰状

今回、国際会議での成果発表で受賞されたようですが、どのような成果ですか?

ICIは、核医学、核工学に関するWorld Council on Isotopes (WCI)が主催する国際会議です。今回の発表では、高速実験炉「常陽」を活用した標的α線治療という癌治療向けのAc-225製造技術について報告しました。このAc-225は約10日の半減期でα線を放出する核種であり、消滅系列のNp系列に属する核種なため、自然界に存在しません。現在流通しているAc-225の多くは、U-233の崩壊によって生成されるTh-229から分離抽出されたものであるため、供給量に限りがあります。世界各国の機関では主に加速器を用いた製造法が検討されており、加速器を用いた方法が主流です。そのため、我々の原子炉を用いた方法への関心がとても高く、製造プロセスに関する質問などの多くのコメントを頂きました。

成果としてまとめるまでにどのような苦労がありましたか?

原子力は総合工学とよく言いますが、本研究も原子炉物理、放射化学、機械工学など幅広い分野の知識が必要でした。そのため、他分野の知識の習得や各専門家の方々とのコネクション作りに苦労しました。

受賞された感想を聞かせて下さい。

学生時代から進めていた研究が、初の国際会議で、このような賞を受賞することができ大変光栄に思います。この成果は、指導教員である東京都市大学の高木直行教授や「常陽」での学生実習生時に指導して頂いた高速実験炉部の方々からの貢献があって初めて成し遂げられたものです。

私自身、英語はあまり得意な方ではありませんが、入念な準備の成果がBest Abstract Award受賞という形で表彰されたことは今後の業務の励みになります。

今回の成果を今後どのように発展させるかを聞かせて下さい。

本研究は現段階では、解析に基づくAc-225の製造量の予測になります。そのため「常陽」の運転再開後に、実際にターゲット(Ra-226)を照射し、Ac-225の製造実証を目指します。製造実証後は、解析との整合を確認し、Ac-225製剤の創薬研究開発に向け、医薬品メーカー等への定期的なAc-225供給を目指します。さらに実験データを核データへフィードバックすることで核医学の分野だけではなく核工学へ貢献することもできます。

「常陽」運転再開に向けての抱負を聞かせて下さい。

「常陽」は本研究の医療用ラジオアイソトープの製造の他にも、実証炉の開発、燃料、材料の開発、放射性廃棄物の有害度低減、プルトニウム燃焼など、幅広い分野への活用が期待されています。原子力科学技術を通じて、人類社会の福祉に貢献するためにも一日も早い運転再開に向け業務に取り組んでいきたいと思います。