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- 2025年11月
2025年11月
欧州SMR(高速炉)、原子力熱利用
「HEXANA社とトラクテベル社が欧州産業分野の脱炭素化に向けて原子力コージェネレーションの推進で協力」 熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせた小型モジュール式ナトリウム冷却高速炉(SFR)を開発するフランスのスタートアップ企業HEXANA社とベルギーに拠点を置く大手エンジニアリング企業トラクテベル(Tractebel)社は、原子力ベースのコージェネレーション(熱電併給)推進における協力を強化するため、覚書(MOU)を締結した。両社は、欧州におけるコージェネレーションの主要な推進団体であるCOGEN Europe内に新たにSMR(小型モジュール炉)およびAMR(先進モジュール炉)に特化したタスクフォースを立ち上げ、関係者へ参加を呼びかけている。
HEXANA、トラクテベル、World Nuclear News
米国新型炉燃料
「フラマトム社とテラパワー社がウラン金属化プロセスにおける成果を発表」 フラマトム社とテラパワー社は、ワシントン州リッチランドのフラマトム核燃料工場において、ウラン金属要素の製造に成功したと発表した。「パック(pucks)」と呼ばれるこの円盤状の金属要素は、テラパワー社が開発中のナトリウム冷却高速炉(SFR)Natriumの燃料の重要な構成要素となる。この成果は、同工場においてHALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)燃料の金属化工程を行えることを実証するもので、先進炉燃料の商業化に向けた重要なマイルストーンであるとしている。
フラマトム、テラパワー、World Nuclear News
仏国新型炉燃料
「フラマトム社、TRISO燃料をフランスで生産へ、Blue Capsule Technology社とも協力」 フラマトム社は、フランス南東部のロマン=シュル=イゼール工場における新たなTRISO燃料開発体制の立ち上げを発表した。これは同社が米国で進めている活動を補完し、フランス国内におけるリソースと技術基盤を大幅に拡充するものであり、先進炉プロジェクト向けに、さまざまなタイプのTRISO燃料を製造する専用パイロットラインの設置が含まれているとしている。これに合わせ、同社とTRISO燃料を使用するナトリウム冷却高温炉(HTR)を開発しているBlue Capsule Technology社は、TRISO燃料の製造に向けて協力していくことで合意したことを発表した。
フラマトム、Blue Capsule Technology、World Nuclear News
オランダSMR(高速炉)、原子力熱利用
「HEXANA社のSMR、オランダでの導入が検討される」 フランスのHEXANA社は、オランダにおける同社の原子力プラットフォームの開発の可能性について協力を模索するために、オランダの協同組合Atoomcoöperatieと覚書(MOU)に署名した。この提携を通じ、自らを「世界初の市民主導型原子力エネルギー協同組合」と称するAtoomcoöperatieは、オランダにおけるHEXANA社が開発する、熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせた小型モジュール式ナトリウム冷却高速炉(SFR)導入に向けた調整と推進を担う。
HEXANA、World Nuclear News
米国新型炉燃料
「X-エナジー社、INLにてTRISO-X燃料の商業利用適格性の確認試験を開始」 X-エナジー社は、アイダホ国立研究所(INL)において、同社の独自技術であるTRISO-X燃料ペブル(pebbles)の小型モジュール炉(SMR)Xe-100における商業利用適格性を確認するため、先進試験炉(ATR)で照射試験を開始したことを発表した。米国エネルギー省(DOE)および国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)との共同で実施される13か月の試験プログラムでは、想定されるほぼ全ての運転シナリオにおける燃料性能を評価する。TRISO-X燃料ペブルはTRISO燃料粒子の集合からなるビリヤードの球ほどの大きさであり、ペブルベッド型高温ガス炉であるXe-100の燃料として使用される。
X-エナジー、米国エネルギー省原子力局(DOE NE)、World Nuclear News
米国SMR(高温ガス炉)
「X-エナジー社と東洋炭素、Xe-100の初期導入に向けた黒鉛供給契約を発表」
東洋炭素USA社(日本の東洋炭素株式会社の子会社)は、テキサス州シードリフトで計画されているテキサス州シードリフトサイト内ロング・モット発電所向けにダウ社へ納入される予定のX-エナジー社の小型モジュール炉(SMR)Xe-100の4基に関し、約4000万米ドルの契約の下で黒鉛を供給する予定である。この契約は、東洋炭素製のIG-110微粒等方性黒鉛*)を用いた炉心構造物の製造に関するもので、最終設計は2026年、黒鉛構造物の納入は2028年を予定している。また、東洋炭素は、Energy Northwest社がワシントン州リッチランド近郊でAmazon社の資金提供を受けて進めているXe-100の4基の黒鉛構造物についても、供給に向けた前受金契約を締結している。
*)JAEAのHTTR、中国の高温ガス炉で使用実績あり
東洋炭素、X-エナジー、World Nuclear News
米国SMR(高速炉)、新型炉燃料
「オクロ社、Aurora燃料施設の設計承認を取得」 オクロ社は、米国エネルギー省(DOE)Idaho Operations Officeが、アイダホ国立研究所(INL)内のAurora燃料製造施設(A3F)に関する原子力安全設計協定(NSDA:Nuclear Safety Design Agreement)を承認したと発表した。同社は、9月末にDOEの燃料製造パイロットプログラムで選定されていたが、同プログラムの下での初のNSDA承認となった。同施設では、ナトリウム冷却高速炉(SFR)「Aurora-INL」の初期炉心用の金属燃料を製造する。
オクロ、World Nuclear News
米国SMR(高速炉)、新型炉燃料
「オクロ社、先進燃料・材料分野でINLとの協力拡大」 オクロ社は、アイダホ国立研究所(INL)の管理・運営請負業者であるBattelle Energy Alliance(BEA)社と、先進的な燃料および材料などの研究開発協力を拡大することを目的とした覚書(MOU)を締結した。本MOUに基づき、オクロ社とINLは、Aurora-INLを用いて先進燃料・材料の高速中性子による照射試験を共同実施する。これにより、INLで高速炉環境下での燃料・材料の挙動を詳細に解析可能となり、米国の高速炉技術および核燃料製造能力の発展に寄与することになる。なお、Aurora-INLは9/22に着工した。
オクロ
IEA(国際エネルギー機関)エネルギー政策
「IEA、WEO2025にて3種類のエネルギー導入シナリオの分析結果を発表」 国際エネルギー機関(IEA)は11月12日、本年度のエネルギー展望分析報告書「World Energy Outlook(WEO)2025」を公表した。「現行政策シナリオ(CPS)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」、「2050年ネットゼロ排出(NZE)シナリオ」の3種類のシナリオを用い、2050年までの展望を分析した。長年停滞していた原子力発電が再び勢いを取り戻しており、2024年の世界の原子力発電容量(420 GWe)が、CPSシナリオでは2050年には728 GWeに、NZEシナリオでは1079 GWeに増加すると予測した(原子力3倍宣言が実現した場合は1240 GWe)。原子力エネルギーへの投資も、過去5年間で70%以上増加しているが、容量を3倍にするためには、年間投資支出は現在700億米ドル超から、約1600~2100億米ドルに増加する必要があると報告した。
国際エネルギー機関(IEA)、World Nuclear News、原子力産業新聞
英国SMR、原子力政策
英国政府、北ウェールズ・アングルシー島WylfaをSMR建設地に決定
英国政府は、北ウェールズのアングルシー島のウィルファ(Wylfa*))にロールス・ロイスSMR社製小型モジュール炉(SMR)3基(最大1.5GWe)を設置すると発表した。同社は2025年6月、英国初のSMR建設に向け、政府の原子力プロジェクト実施機関であるGreat British Energy-Nuclear(GBE-N)に優先入札者に選ばれていた。これは最終的な政府承認と契約締結が条件となっており、いずれも年内の実施が見込まれている。GBE-Nは、2026年に現地での活動を開始し、同SMRが2030年代半ばから送電網へ電力を供給することを目標としている。
*)過去にマグノックス炉(GCR)2基が稼働
英国政府、ロールス・ロイスSMR、World Nuclear News
WNA(世界原子力協会)エネルギー政策
「原子力3倍宣言の勢い(COP30に関連する動向)」 世界原子力協会(WNA)事務局長のサマ・ビルバオ・イ・レオン博士は、COP30における英国政府とウレンコ社共催のイベント「Fission Forward」にて、COP28から現在までの原子力3倍宣言に関連する動きを振り返り、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍に増やすという野心が、理想から実現可能な現実へと決定的に移行したことを強調した。同事務局長は、2023年以降30ヶ国以上が3倍宣言に署名し、130以上の原子力産業会の企業、ゴールドマンサックスをはじめとする10以上のグローバルバンク、Amazon、Google、Dow、Allseasなど大規模ユーザーからの支持へと広がったことは、2024年に過去最高の2667TWhに達し、21億トンのCO₂(世界の航空排出量の2倍)を回避した原子力発電の重要性の高まりを示すものであると述べた。また、3倍宣言は素晴らしいが、その目標達成には、現実的な国家政策と産業行動計画、手頃な資金調達の枠組み、合理化されたライセンスと許可、サプライチェーンや人的資本への投資が必要で、目標達成は現実的だが、大胆で実利的かつ先見の明のあるリーダーシップが求められると訴えた。なお、本イベントのライブ配信、同時にプレビューリリースされた「World Nuclear Outlook Report 2025」は、WNAのホームページにて閲覧可能である。
World Nuclear Association、World Nuclear News
南アフリカ原子力政策、高温ガス炉
「南アフリカ、高温ガス炉PBMRの技術開発再開へ 」 南アフリカ政府は、高温ガス炉であるペブルベッド型モジュール炉(PBMR)のさらなる技術開発を決定し、その管理を国営電力会社Eskomから南アフリカ原子力公社(NECSA)に移管し、PBMRを保守・管理の対象外とすることを承認した。これにより、TRISO燃料や高温ガス炉技術の開発再開が見込まれる。南アフリカは1990年代にPBMRの開発を開始したが、2010年に政府は顧客や投資家の不足を理由にプロジェクトへの資金提供を停止、これにより開発停止となり、PBMRは保守・管理状態に移行していた。
World Nuclear News
米国新型炉燃料、SMR(高温ガス炉)
「X-エナジー社、全米初のTRISO-X燃料製造施設の建設を開始 」 X-エナジー社およびその完全子会社であるTRISO-X社は、テネシー州オークリッジに全米初の先進原子力燃料製造施設「TX-1」の地上構造物建設を開始したと発表した。TX-1は、HALEUを用いる先進的な小型モジュール炉(SMR)専用の燃料を商業規模で製造する全米初の施設となる見込みである。ダウ社と提携し、テキサス湾岸のダウ社シードリフトサイトにおける小型高温ガス炉(HTGR)Xe-100の最初の導入計画および将来のXe-100導入のために、X-エナジー社独自のTRISO燃料を製造する。
X-エナジー、World Nuclear News
米国マイクロリアクター、SMR(高温ガス炉)
「Valar Atomics社、LANLでゼロ出力臨界を達成」 Valar Atomics社は、同社のNOVA(Nuclear Observations of Valar Atomics)炉心が11月17日、ネバダ国家安全保障サイト内のロスアラモス国立研究所(LANL)国立臨界実験研究センター(NCERC)において、ゼロ出力臨界を達成したと発表した。この成果は、原子力イノベーションの加速を目的とした米国エネルギー省(DOE)の原子炉パイロットプログラムの一環で、同社の燃料形状に基づく炉心の核設計を検証するものである。NOVA炉心は、黒鉛減速材、TRISO燃料を採用しており、同社がユタ州サン・ラファエル・エネルギー研究所(USREL)で建設中の原子炉「Ward250」を厳密にモデル化した設計となっている。
Valar Atomics、Nuclear Newswire
英国原子力規制
「英国の原子力規制タスクフォース、規制改革に係る最終報告書を公表」 英国原子力規制タスクフォース(TF)が最終報告書を発表した。本TFは、今年4月スターマー首相の委託を受け設置された独立専門家パネルであり、原子力規制枠組みの構造的機能不全の要因を分析し、包括的改革の青写真を提示するために設置された。原子力技術を安全かつ効率的に提供することは、国家安全保障、エネルギー安全保障、そしてネットゼロ目標の達成に不可欠という判断のもと、英国の原子力産業を再活性化することを目的としている。本TFは、規制上の問題を5種類に分類し、そのうえで構造的なリスク回避文化が醸成されたことにより、非効率の連鎖を固定化し、進展と実行の障害となっていることが機能不全の要因と分析し、規制改革が必要と主張した。規制改革の内容に関しては、首相が政府省庁、規制当局、義務保持者に対し、即時の政府優先事項と、セクターがどのようにして実行スピードを加速すべきかを示す「戦略的指針」を発出すること、また、一元的裁定機関として機能する、単一の統合された意思決定機関「原子力規制委員会」を創設すること等を提案した(5種類の問題のうち、規制監督の分断に関するもの)。過剰に官僚的でコストのかかるプロセスを簡素化し、規制の合理化や、許容できるリスクの範囲・妥当性を明確にすることで、セクターは変革され、将来に不可欠な原子力プログラムを、安全かつ迅速、そして費用対効果高く実現できるようになると訴えた。なお、英原子力規制庁は、TFの作業は来月公開される英規制庁の新戦略の策定に反映されるとしている。
英国政府、World Nuclear News、原子力産業新聞
米国SMR(高速炉)
「GA社、新型ヘリウムガス冷却高速炉の概念設計を完了」 General Atomics Electromagnetic Systems社は、新型ヘリウムガス冷却高速炉の概念設計を成功裏に完了した。これには、燃料棒の試作も含まれる。この高速モジュール炉(FMR)は同社が開発したSiC被覆管HALEU燃料棒を採用することとしており、今回の概念設計作業は、米国エネルギー省(DOE)の先進炉実証プログラム(ARDP)における先進炉コンセプト2020(ARC-20)助成金を通じて支援された。
米国エネルギー省原子力局(DOE NE)