国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
高温ガス炉水素・熱利用研究センター

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ISプロセス信頼性確証試験グループ

ISプロセス信頼性確証試験グループでは、次世代エネルギーソースの有力候補である高温ガス炉を用いた水素製造技術として、ヨウ素(I)と硫黄(S)の化合物を用いて水を熱分解する熱化学水素製造法ISプロセスの研究開発を行っています。

ISプロセス信頼性確証試験グループ
熱化学水素製造法ISプロセス

世界のエネルギーシステムは、地上に偏在し、しかも、有限な化石燃料資源に著しく依存しています。燃料電池自動車のような水素エネルギーの利用は、この問題を解決する方法の候補となりえます。水素エネルギーを利用する社会を実現するには、一次エネルギー/原料を含めて、環境保全性と経済性が高く、しかも、大量水素製造に適した技術が必須です。これら全ての要件を満たす方法として、近年、原子力や自然エネルギー(一次エネルギー)を用い、水(原料)を分解して水素を製造する技術である熱化学水素製造法に注目が集まるようになってきました。

水の分解といえば、電気分解が思い浮かびます。このように、水から水素を得るには、エネルギー(この場合は電気エネルギー)が必要です。熱化学水素製造法は、水の電気分解とは異なり、複数の化学反応を組み合わせることによって、熱エネルギーを用いて水を分解する方法で、例えば水の電気分解で熱、電気、水素と2段のエネルギー変換だったものが、熱化学水素製造法では熱、水素と1段変換で済むので、高い熱効率で水素を製造できる可能性を秘めています。そのような熱化学水素製造法のうち、現在最も活発に研究開発が行われているのが「ISプロセス」という方法です( I(ヨウ素の元素記号)とS(硫黄の元素記号)を用いた化学反応で構成

当グループはISプロセスの研究開発に取り組んでいます。

ISプロセスの研究開発
ISプロセスの研究開発の経緯

まず、原理検証試験段階において、反応阻害要因(副反応等)の摘出及び適切な反応条件(温度、組成)を解明し、1997年、実験室規模試験段階において1L/hの水素を24時間にわたり連続製造することに成功しました。次の工学基礎試験段階において、プラント制御技術の開発を行い、この技術によりガラス製電気ヒーター加熱による水素製造装置の運転をほぼ自動化し、 約30L/hの水素を1週間にわたって安定製造することに成功しました。ここでは、水素と酸素の発生量を量論比(2対1)に保ちつつ, ほぼ一定の速度で水素を発生させることができました。

ISプロセスは、熱エネルギーを水素の化学エネルギーに変換するので、変換効率すなわち水素製造熱効率の向上が重要課題です。ブンゼン反応溶液からヨウ化水素を分離する際の過大な熱量を削減するため、陽イオン透過膜を用いた電気透析装置によって溶液中のHI濃度を予備濃縮する方法を考案しました。本方法での濃縮性能を実験で確認するとともに、放射線グラフト重合技術により、選択性、プロトン伝導率を大幅に高めた陽イオン透過膜を開発中です。

基盤的な要素技術開発段階においては、 熱効率向上に関する研究開発や耐食耐熱機器の開発を進めました。ISプロセスは、極めて腐食性の強いプロセス流体(硫酸とヨウ素などのハロゲン)を取り扱うため、耐食装置開発が重要な課題です。健全性確証段階である2010〜2014年度には、ISプロセスの実用装置材料を用いた反応器について、実環境(腐食性環境、高圧環境)に耐える機器・設備を開発し、健全性を確証し、また、水素製造効率40%を可能とするプロセスデータを充足しました。

ISプロセスは3つの化学反応(ブンゼン反応: 水から硫酸とヨウ化水素を生成、硫酸分解反応: 硫酸から酸素を生成、ヨウ化水素分解反応: ヨウ化水素から水素を生成)で構成されます。これら3つの化学反応毎の環境について、耐食被覆(フッ素樹脂)を用いたブンゼン反応器、高温用SiCセラミックス製硫酸分解反応器、および高温用ニッケル基合金製ヨウ化水素分解反応器に、実際に硫酸やヨウ化水素を流通させて、 それらの健全性を示す試験の実施を完了しました。また、これら個別の反応器試験を発展させるプログラムとして、3つの化学反応工程の機器を接続した 工業材料製の連続水素製造試験装置(水素製造規模:毎時水素100リットル)の整備を進めました。

工業材料製連続水素製造試験装置と3つの反応工程を連結した水素製造試験工業材料製連続水素製造試験装置と
3つの反応工程を連結した水素製造試験

現在、この試験装置を用いて、プラント全系機器健全性の確証、水素製造性能の検証などに取り組んでおり、平成26年度には、機器動作、気密機能及びガス流通機能、並びに液流動及び加熱・冷却などの基本機能を確認しました。その後、各反応器での処理速度調整(HI分解による水素製造等)や、ガス化機能(HIガス蒸留分離等)の確認後、3つの工程を連結したプロセス全体の運転を行い、平成28年2月に水素製造量10L/hでの8時間連続運転に成功し、同10月には、2倍の水素製造速度(20L/h)で、連続水素製造時間31時間まで延伸させました。

これらの運転を通じて、より長期間の運転には、閉塞の防止や、ブンゼン反応工程溶液組成の安定制御が重要であるとの知見を得ることができました。現在、より長期間の運転を達成するために、設備の改良を行い、連結結状態の安定的維持や起動停止を含む運転手順を確証する水素製造試験を実施していく予定です。また、原子炉施設と水素製造施設の接続時の安全基準策定、並びに安全基準に適合する設計対策を確立するためHTTR熱利用試験(HTTR-GT/H2試験)を計画中です。

グループリーダー:久保 真治

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