令和7年9月26日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
大洗原子力工学研究所
図 HTTR-熱利用試験施設における適用法規の分界点
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製鉄、化学工業等の脱炭素が難しい分野における脱炭素化のためには、水素の利活用が不可欠とされています。高温ガス炉は優れた安全性を有し、二酸化炭素を排出することなく高温熱を供給可能であることから、安定的に大量の水素を製造することが期待できます。このような背景を踏まえ「GX実現に向けた基本方針」(令和5年2月10日閣議決定)の参考資料において、2030年代の運転開始を目標とする高温ガス炉実証炉開発工程が示されるとともに、経済産業省の革新炉ワーキンググループは実証炉建設に向けた技術ロードマップにおいて、世界最高の原子炉出口冷却材温度950℃を記録したHTTRを活用し、2030年までに高温ガス炉を用いた水素製造を行う計画を示しました。
国の方針に基づき、日本原子力研究開発機構(JAEA)は経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「高温ガス炉実証炉開発事業(超高温を利用した水素大量製造技術実証事業)」において、JAEAが有するHTTRに水素製造施設を新たに設置・接続し、原子炉の熱を直接利用して水素を製造する技術を確証するための研究開発を進めてきました。また、水素製造施設の原子炉への接続に向け、設置許可の基準への適合性に係わる技術評価等を行ってきました。
JAEAは、HTTRと水素製造施設の接続に必要な許可を得るため、令和7年3月27日に原子炉設置変更許可申請を原子力規制委員会に対して行いました。これまでの設置変更許可に係る審査会合(令和7年5月12日、7月1日)では、原子炉等規制法の適用範囲に関する議論が行われました。その結果、同法の適用範囲は原子炉建家隔離弁まで、水素製造施設は範囲外とし、今後の審査を進めることに合意しました。この適用範囲の考え方は、実証炉における適用法規の範囲を検討する際の基礎となります。また、一般産業法規の適用範囲が広がることで、設計・調達の柔軟性が高まり、産業界の参入が促進されることが期待できます。
これらを踏まえ、本日、水素製造施設に対する原子炉等規制法の適用範囲の見直しを反映するため、原子炉設置変更許可申請書の補正書を原子力規制委員会へ提出いたしました。
JAEAは、原子力規制委員会による審査に真摯に対応し、製鉄や化学工業等の産業分野のカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年までにHTTRの熱により水素を製造し、脱炭素社会における水素供給源としての高温ガス炉の有用性を示すことを目指します。
別紙
以上