埋設処分業務の実施に関する計画

認可:平成21年11月13日

はじめに

独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)は、平成20年6月の「独立行政法人日本原子力研究開発機構法」(平成16年法律第155号。以下「原子力機構法」という。)の改正により、原子力機構を含め、全国各地の研究機関、大学、民間企業、医療機関等で発生する多種多様な 低レベル放射性廃棄物 放射性廃棄物のうち、高レベル放射性廃棄物(使用済の核燃料の再処理工程において発生する放射能レベルの高い廃液、またはそれをガラス固化したもの)以外のものを総称して低レベル放射性廃棄物と呼んでいます。このうち原子力機構が埋設処分する低レベル放射性廃棄物は、全国の研究機関や医療機関で発生する放射能レベルの低い廃棄物です。閉じる (以下「研究施設等廃棄物」という。)の埋設処分の実施主体に明確に位置付けられた。

原子力機構は、原子力機構法第17条第1項第5号に掲げられた業務(以下「埋設処分業務」という。)を進めるに当たり、原子力機構法第19条第1項の規定に基づき、埋設処分業務の実施に関する基本方針(平成20年12月25日文部科学大臣・経済産業大臣決定)に即して、ここに埋設処分業務の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を定める。

本実施計画では、第1章で埋設処分業務の実施に関する全体の計画を定め、第2章で本実施計画認可後、当面実施する業務について定める。 なお、実施計画は、今後の事業の進ちょく、技術開発の進展、安全規制の整備等を踏まえ、必要に応じて所要の見直しを行い、国の認可を得た後、遅滞なく公表する。

第1章 埋設処分業務の実施に関する全体の計画

1. 埋設事業を進める際の基本的考え方

原子力の利用は、原子力発電やそれを支える核燃料サイクルのみならず、研究開発や教育、産業、医療等の幅広い範囲で行われており、科学技術・学術の発展のみならず、我々の日常生活の質の向上に貢献している。これらの分野においては、 研究用原子炉 研究所、大学等において、試験研究のために設置された原子炉です。例えば、日本原子力研究開発機構の「JMTR」、「常陽」や東京大学の「弥生」などがこれに該当します。 閉じる 核燃料物質 ウラン、トリウムなどで、原子が核分裂する過程において高エネルギーを放出する物質のことをいいます。閉じる 放射線発生装置 電子や陽子、イオンなど電荷をもった粒子を加速することにより放射線を発生させる装置のことで、加速器とも呼ばれることもあります。放射線発生装置には、サイクロトロン 、シンクロトロン、直線加速装置などがあります。閉じる 放射性同位元素 元素には、原子核内の陽子の数が同じで中性子の数が異なるものがあります。このとき、これらの元素は相互に同位元素であるといいます。これらの中で放射性のものを「放射性同位元素」といいます。また、元素の種類の観点から「放射性核種」という場合もあります。
例えば、天然のカリウム(元素記号:K)には、カリウム39(39K)、カリウム40(40K)、 カリウム41(41K)の三つの同位元素があります。この中で、「カリウム40は、放射性同位元素である。または、カリウム40は、放射性核種である。」といいます。閉じる
等の使用に伴い、全国各地の数多くの研究機関、大学、民間企業、医療機関等で、研究施設等廃棄物が発生し、それぞれの事業所において保管管理されている。将来にわたり円滑な原子力の利用や研究開発を確保するためには、研究施設等廃棄物を責任ある体制の下で、安全かつ確実な方法で処分することが不可欠である。

そのため、原子力機構は、埋設処分の実施主体として、研究施設等廃棄物を埋設する事業 (以下「埋設事業」という。)を国や原子力機構以外の発生者の協力を得つつ、以下の基本的考え方の下に実施する。

  • 安全の確保
    原子力機構は、研究施設等廃棄物の取扱いや埋設事業の実施に係る規制等の法令の遵守を徹底し、従業員に対して十分な教育・訓練を行い、事故の未然防止など、事業の安全確保や周辺の環境保全に万全を期する。
  • 事業の透明性及び信頼の確保
    原子力機構は、埋設事業の実施に当たって、事業の進ちょく状況、 埋設施設 放射性廃棄物を実際に埋設するための施設です。研究施設等廃棄物の場合には、コンクリートピット型埋設施設やトレンチ型埋設施設があります。閉じる 周辺の 環境モニタリング 埋設施設などでは、施設周辺の放射線量や、土壌、植物、地下水、河川水などに含まれる放射性物質の分析・測定を定期的に行い、放射線や放射能が施設周辺に影響をあたえていないことを評価・確認します。これを環境モニタリングと呼んでいます。環境モニタリングは、埋設施設の建設前から開始され、操業中はもちろん管理期間終了まで、その段階に応じた内容で継続して行なわれ、環境への影響がないことを確認します。閉じる 結果、事故等の発生状況及びその対応等について積極的な情報発信や情報公開を行うなど、事業の透明性及び信頼の確保に努める。
  • 国民の理解と地域との共生
    原子力機構は、埋設事業の意義・目的や、安全確保のための取組について、国民の理解の増進を図るとともに、埋設施設の立地が、立地地域の活性化につながるよう、立地地域との共生に努める。
  • 発生者による応分の負担と協力
    原子力機構は、 原子力政策大綱 原子力委員会が、2005年10月に、その後10年程度の期間を目安として原子力の研究、開発及び利用に関する基本的な考え方を明らかにしたものです。2005年以前は、「原子力長期計画」といっていたものです。閉じる (平成17年10月11日 原子力委員会 原子力委員会は、原子力基本法に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって内閣府に設置され、原子力の研究、開発及び利用に関する政策等の重要事項について企画・審議し、決定する権限を有しています。閉じる 決定)に示された「発生者責任の原則」に基づき、研究施設等廃棄物を発生させる事業者(集荷や保管を行う事業者を含む。以下「発生者」という。)より廃棄物の量や性状等に応じた支払いを受けるとともに、原子力機構以外の発生者の協力を得て、埋設事業を円滑に進める。
  • 合理的な処分の実施
    原子力機構は、安全確保を大前提に、効率的な処分を行うための研究開発を進め、経済性を考慮した合理的な処分の実施に努める。

2. 埋設処分業務の対象とする放射性廃棄物の種類及びその量の見込み

2.1 埋設処分業務の対象とする放射性廃棄物の種類

原子力機構が埋設処分業務の対象とする放射性廃棄物(以下「対象廃棄物」という。)は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成12年法律第117号)に基づき認可法人原子力発電環境整備機構の業務に属する 地層処分 高レベル放射性廃棄物(使用済の核燃料の再処理工程において発生する放射能レベルの高い廃液、またはそれをガラス固化したもの)などを、人間の生活環境から十分離れた地下三百メートル以深の安定した地層中に処分することです。人工バリア及び天然バリアにより、処分の長期的な安全性を確保することができます。閉じる が必要な高レベル放射性廃棄物等を除いた 低レベル放射性廃棄物 のうち、以下に掲げるものとする。なお、これらの放射性廃棄物は、5.1に掲げる方法( ピット処分 地面に掘った穴や落とし穴のことを「ピット」といいます。また、コンクリート製の穴状の構築物を「コンリートピット」といいます。
ピット処分とは、低レベル放射性廃棄物のうち、放射能レベルの低い放射性廃棄物を浅い地中に処分する方法の一つで、地表を掘削したのち、コンクリート製の構造体(ピット)を設置して、その中に廃棄体を定置し、充填材で固めて一体化したあと、覆土する処分方法のことです。閉じる
及び トレンチ処分 地面に掘った壕(ごう)のことを「トレンチ」といいます。トレンチ処分とは、低レベル放射性廃棄物のうち、放射能レベルの極めて低い廃棄物を浅地中処分する方法の一つで、人工構築物を設けないトレンチに廃棄体を定置し、充填材を充填したあと、覆土する処分方法です。
原子炉施設の解体などで発生するコンクリートや金属などの化学的、物理的に安定な廃棄物が処分の対象になります。閉じる
)又は一般的な地下利用に対して十分に余裕を持った深度(地表から50メートル以深)に処分する方法(以下「余裕深度処分」という。)によって処分されるものである。

  1. 原子力機構の業務に伴い発生した放射性廃棄物(日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構から承継した放射性廃棄物を含む。以下「機構廃棄物」という。)
  2. 原子力機構以外の研究機関、大学、民間企業、医療機関等の原子力利用( 核燃料物質 放射性同位元素 及び 放射線発生装置 等を用いた研究開発やそれらの産業、医療などの幅広い分野での利用をいう。)により発生した低レベル放射性廃棄物であって、これらの発生者から原子力機構が埋設処分の委託を受けた放射性廃棄物(以下「受託廃棄物」という。)

実用発電用原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物については、現在、日本原燃(株)が埋設処分を行っている。このような他の事業者によって埋設処分が行われる放射性廃棄物については、原子力機構の埋設処分業務の対象とはしていないが、我が国全体として抜け落ちがなく、合理的・網羅的な埋設処分を可能とするため、原子力機構は関係機関と密接に連携し、柔軟に対応する。

2.2 第一期事業において埋設処分業務の対象とする放射性廃棄物

最初の事業として原子力機構が行う埋設事業(以下「第一期事業」という。)においては、対象廃棄物のうち、平成60年度までに発生が見込まれる放射性廃棄物であって、5.1に掲げる方法( ピット処分 及び トレンチ処分 )による埋設処分が可能なものを対象とする。

また、対象廃棄物のうち、 余裕深度処分 一般的な地下利用に対して十分に余裕を持った深度(地表から50メートル以深)に処分する方法。閉じる が必要となる放射性廃棄物については、合理的かつ効率的な処分が可能となるよう、国及び関係機関と連携協力して、処分のあり方について調整を進め、その結果を踏まえ具体化を図る。

2.3 対象廃棄物のうち第一期事業において埋設処分を行う量の見込み

第一期事業において埋設処分を行う量の見込みは、埋設処分するため必要に応じて焼却、圧縮、溶融等の処理を施し、関係法令等に定める技術基準に適合する放射性廃棄物(容器に封入・固型化しないコンクリート等廃棄物を含め、以下「 廃棄体 発生したままの放射性廃棄物ではなく、法令に定められた技術上の基準に従って処理され、埋設処分ができる状態になったものを「廃棄体」といいます。
多く場合は、モルタルなどの充填材により容器内の廃棄物は固型化されます。また、一部の極低レベルのコンクリート、金属などは容器内に収納、固型化しない場合もあります。閉じる
」という。)に換算した量(200リットルドラム缶本数換算。以下同じ。)として、廃棄体約528,500本(うち、機構廃棄物は約433,100本)である。埋設処分の方法ごとによる内訳は、 ピット処分 で約201,500本(うち、機構廃棄物は約188,700本)、 トレンチ処分 で約327,000本(うち、機構廃棄物は約244,400本)である。この見込みは、埋設処分の方法ごとに「 核原料物質 ウラン鉱、トリウム鉱など核燃料物質の原料となる物質のことをいいます。閉じる 核燃料物質 及び原子炉の規制に関する法律施行令」(昭和32年政令第324号)、「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」(昭和63年総理府令第1号)(以下「第2種埋設規則」という。)等に定められる 放射能濃度 放射能とは、放射線を出す能力のことです。放射能の強さを表す単位は「ベクレル」で、「Bq」と表します。また、「放射能濃度」とは、単位重量当たり放射能の量または単位容量当たりの放射能の量のことです。
たとえば、この放射性廃棄物は、50ベクレル/トンの放射能濃度であるといえば、1トン当たりに50ベクレルの放射能を有することをいいます。または、この放射性の廃液は10ベクレル/リットルの放射能濃度であるといえば、1リットル当たりに10ベクレルの放射能を有することをいいます。閉じる
に関する基準等に基づいて、原子力機構が平成20年度に調査した結果によるものである。

埋設処分を行う量の見込みは、放射性廃棄物を廃棄体にするための処理(以下「廃棄体化処理」という。)の実績、関係法令の整備の進ちょく等今後の原子力利用の進展により変動が予想される。さらに受託廃棄物について、調査の実施時点で、原子力機構への埋設処分に係る委託意思等を確認できていない発生者の廃棄物及び新規事業者における廃棄物の発生も予想される。これらを踏まえ、埋設処分を行う対象廃棄物量の見込みについては、原則、「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)第29条第2項第1号の規定に基づき、文部科学大臣及び経済産業大臣が定めて原子力機構に指示する中期目標の期間の開始時期に合わせて定期的に調査を実施し、見直しを行う。

なお、余裕深度処分相当の廃棄物量の見込み調査の結果は、約60,700本である。

3. 第一期事業として放射性廃棄物の埋設処分を行う時期及びその量並びにこれに必要な埋設施設の規模及び能力に関する事項

原子力機構は、 埋設施設 の設置に関して、立地する地点の属する地方自治体の了解を得た後、埋設事業の進ちょくに応じて、環境調査、 安全審査 原子力施設に関する安全審査とは、事業者から原子力施設の設置や変更を行う申請等がなされた時、国が、法令や指針などに照らして、その安全性を審査するものです。この安全審査で、安全性の確保が十分であることが確認されて初めて施設の設置や変更が許可されます。閉じる 、建設、操業、閉鎖及び 閉鎖後管理 放射性廃棄物の埋設処分では、埋設施設の最終の覆土が終了した後にも、放射線防護に必要な種々の管理を行うことになります。この管理を「閉鎖後管理」と呼び、段階的に管理の方法を簡素化して行きます。閉じる の各段階にわたって事業を進める。

第一期事業においては、環境調査段階、安全審査段階、施設の一部建設段階を含む約8年間の初期建設期間を経て、操業を開始する。操業期間は約50年間とする。この操業段階では、施設の増設・更新を行う。操業終了後、閉鎖段階として最終覆土期間は約3年間とする。その後の閉鎖後管理段階における管理期間は、「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(昭和63年3月17日 原子力安全委員会 原子力安全委員会は、原子力基本法に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって内閣府に設置され、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画・審議し、決定する権限を有しています。閉じる 決定)(以下「安全審査指針」という。)に基づき、 ピット処分 については覆土後約300年間を、 トレンチ処分 については覆土後約50年間を目安とする。

当該埋設施設の規模は、2.3に掲げる埋設処分を行う量の見込みに加え、将来的な物量変動への対応を考慮し、廃棄体約60万本(ピット処分約22万本、トレンチ処分約38万本)に相当する規模とする。

埋設施設の能力は、全操業期間で平均して、ピット処分については年間約4千本、トレンチ処分については年間約8千本を埋設処分することができる能力とする。

4. 埋設施設の設置に関する事項

原子力機構は、埋設事業を円滑かつ確実に推進するため、国と一体となって、原子力機構以外の発生者の協力も得つつ、 埋設施設 の立地のために必要な活動に取り組む。

4.1 立地基準と立地手順の策定

埋設施設を立地する地点の選定については、手続の透明性を確保し、公正な選定を行うことを基本とする。そのため、原子力機構は、埋設施設に係る概念設計を実施し、その結果等に基づいて得られる技術的及び経済的な根拠等を踏まえ、立地基準及び立地手順を策定し、実施計画の変更の認可を受けて、これを公表する。概念設計や立地基準及び立地手順の策定の具体的な実施方法については、第2章に示す。

なお、個別の地点を対象にした活動については、公正な立地選定を行う観点から、立地基準及び立地手順を明確に定めた実施計画の変更の認可を受けた後に着手する。

4.2 国民の理解

原子力機構は、国民全般に対し、事業の必要性や安全確保のための取組等埋設事業に関する情報発信に取り組む。
また、原子力機構は、埋設事業に関する国民の懸念や不安に対して的確に応じるため、一元的な相談・情報発信を行う窓口を設置し、対応する。

4.3 地域との共生

原子力機構は、埋設事業を円滑に実施するため、埋設施設が地域と共生し、立地地域の持続的な活性化等につながるための方策を講じる。その際、原子力機構は、国及び埋設事業の便益を享受する原子力機構以外の発生者の協力を得つつ、原子力機構の研究開発機関としての特徴を活かした方策についても検討する。

5. 埋設処分の実施の方法に関する事項

5.1 埋設処分の方法

第一期事業における埋設処分は、 原子力委員会 原子力安全委員会 及び安全規制当局における研究施設等廃棄物の埋設処分に係るこれまでの検討結果を踏まえ、 廃棄体 に含まれる 放射性核種 同位元素の種類を単に「核種」ともいいます。「放射性核種」とは、放射性の同位元素のことです。同じ元素に複数の同位元素がある場合に、元素の種類を正確にいう場合には、「核種」まで区分する必要があります。
例えば、「カリウム40は放射性の核種であるが、カリウム39とカリウム41は、非放射性の核種である。」というように用います。閉じる
の種類や 放射能濃度 、廃棄体の性状等に応じ、次に掲げる方法により行う。

  • 「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」(昭和60年10月24日原子力安全委員会決定)に示された放射能濃度が低い廃棄体を、第2種埋設規則第1条の2第2項第4号に示された方法と同様の方法であって、鉄筋コンクリート製の人工構築物(以下「コンクリートピット」という。)を設置して処分する方法(以下「ピット処分」という。)
  • 原子力安全委員会の上記報告書に示された放射能濃度が極めて低い廃棄体を、第2種埋設規則第1条の2第2項第5号に示された方法と同様の方法であって、コンクリートピット等の人工構築物を設置しない方法により処分する方法(以下「トレンチ処分」という。)

5.2 埋設施設の構成

埋設施設 は、ピット処分及びトレンチ処分の埋設設備を設置する廃棄物埋設地(廃棄体を埋設するため又は人工構築物を設置するために土地を掘削した場所、又は廃棄体を埋設し、埋め戻した場所をいう。以下同じ。)並びに主に廃棄体の受入、一時保管、安全規制当局の定める廃棄体の技術基準に適合していることの確認(以下「廃棄体確認」という。)等を行うための廃棄体受入・検査施設並びに埋設施設の運営管理に供する一般管理棟等のその他附属施設から構成する。

5.3 埋設処分の手順

ピット処分及びトレンチ処分の基本的な手順を以下に示す。
  1. ピット処分及びトレンチ処分に共通的な事項
    1. 埋設施設に受け入れた廃棄体を廃棄体受入・検査施設に搬入する。
    2. 搬入した廃棄体について、廃棄体確認の申請がなされた廃棄体であることを整理番号により確認する。また、輸送中の変形や損傷等の有無について目視検査を行う。
  2. ピット処分の方法
    1. ピット処分を行う廃棄物埋設地の地上又は地表から適切な深度に、コンクリートピットを設置する。
    2. 廃棄体をコンクリートピット内に定置する。定められた数量の廃棄体を定置したコンクリートピットについて、廃棄体間に空隙が残らないようにセメント等で充填した後、コンクリート製の覆いを施工する。
    3. 覆いの施工が終了した廃棄物埋設地について、その表面を土砂等で覆う。
  3. トレンチ処分の方法
    1. トレンチ処分を行う廃棄物埋設地の地上又は地表から適切な深度にトレンチ(壕)を設置する。
    2. 廃棄体をトレンチ内に定置する。定められた数量の廃棄体を定置したトレンチについて、廃棄体間に空隙が残らないように土砂等で充填する。
    3. 充填が終了した廃棄物埋設地について、その表面を土砂等で覆う。

なお、ピット処分及びトレンチ処分の廃棄物埋設地並びに埋設設備については、埋設処分の進ちょくに応じて順次設置するものとする。

5.4 事業運営

原子力機構においては、埋設事業を推進する部署が中心となって、原子力機構内の関係部署と連携・協力し、埋設事業を進める。特に同部署は、施設の 廃止措置 原子炉施設の運転等を終了した後、法令に基づく規制を終了するまでの間に行う核燃料物質による汚染の除去、原子炉等の施設の解体・撤去、放射性廃棄物の処理・処分等の一連の措置をいいます。閉じる 、廃棄物の処理、輸送を実際に担当する各部署並びに施設の廃止措置及び 低レベル放射性廃棄物 の処理処分の計画、技術開発を実施している部署と連携して、以下の事項に特段の配慮を行い、埋設事業の円滑かつ着実な運営に努める。

  1. 原子力機構は、埋設事業を安全かつ効率的に実施していくために必要な人員を確保する。本事業には、さまざまな職種の者が従事することになるため、原子力機構は、これら埋設事業に従事する者に対し、十分な教育・訓練を行う。
    また、原子力機構は、社会の信頼を得て事業が進められるよう、コンプライアンス(法令遵守)の徹底に努める。
  2. 埋設事業の独立性、透明性を確保するため、埋設事業に係る経理については、一般勘定又は 電源利用勘定 原子力機構では、業務に応じて一般勘定、電源利用勘定、埋設処分業務勘定というように経理区分をしています。
    電源利用勘定では、国のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定電源利用対策費に基づく、発電用施設の利用の促進及び安全の確保並びに発電用施設による電気の供給の円滑化を図るための業務(例えば、原子力の応用研究や核燃料サイクルを技術的に確立するために必要な研究)に関するものを対象としています。閉じる
    において行う原子力機構の業務と厳正に区分して、適切に管理を行う。
  3. 原子力機構は、機構廃棄物を埋設処分するために必要な額を、毎事業年度、一般勘定及び電源利用勘定から 埋設処分業務勘定 埋設処分業務の独立性、透明性を担保するため、埋設処分業務については、他の研究開発業務と区分して経理するため、原子力機構にあらたに設けた勘定です。
    原子力機構の研究開発に伴って発生した放射性廃棄物を埋設処分するため必要な費用を、毎事業年度、当該研究開発業務に係る勘定から埋設処分業務に係る勘定に繰り入れることにしています。閉じる
    に繰り入れる。また、原子力機構以外の発生者から埋設処分の受託に伴って受け取った資金は、直接、埋設処分業務勘定の収入とする。これら埋設処分業務勘定の資金は、確実に埋設事業に充てる。
  4. 原子力機構は、埋設事業を確実に実施していくため、安全規制当局が進める クリアランス 原子力施設の解体や運転に伴って発生する廃棄物等の中には、放射能濃度が極めて低く人の健康への影響が無視できることから、法令上放射性廃棄物として扱わなくてもよい物も含まれています。このように、法令上放射性物質として扱わなくてよいことをクリアランス、その基準をクリアランスレベルといいます。閉じる 制度や ウラン廃棄物 核燃料を製造するためのウランの濃縮、再転換、成型加工等の事業や研究開発に伴って発生するウランとその子孫核種を含む放射性廃棄物を「ウラン廃棄物」といいます。閉じる に係る安全規制の整備の進ちょくに適切に対応する。原子力機構は、7.4に示す低レベル放射性廃棄物の処理処分に係る技術開発の成果を適宜、適切に埋設事業に反映する。また、原子力機構は、安全を十分に確保した上で、最新の技術的知見を最大限に活用して合理的な方法により埋設事業を展開できるよう、埋設事業の計画について必要な見直しを行う。
  5. 原子力機構は、埋設事業を円滑に進めるため、原子力機構以外の発生者に対し、説明会等を通じて、埋設事業の進ちょく状況を周知・説明するとともに、発生者のニーズの把握に努める。また、原子力機構は、原子力機構以外の発生者に対して、実施計画等の計画策定及び廃棄物埋設事業許可申請等の安全規制対応に必要な情報の提供・協力を適宜要請する。
    原子力機構は、 廃棄体 確認の際に必要となる廃棄体の内容に関する情報を発生者と共有する。
    また、原子力機構は、発生者等からの問い合わせに対して、適宜技術的助言、協力等を行う。

6. 埋設処分業務の実施に関する収支計画及び資金計画

6.1 埋設処分業務の総費用

埋設処分業務に要する費用の総額(以下「総費用」という。)は、3.に示した放射性廃棄物の埋設処分を行う時期及びその量並びにこれに必要な 埋設施設 の規模及び能力に基づき、埋設施設の建設費、操業費、人件費、一般管理費を見積もることにより算定する。

また、総費用は、将来の物価変動、埋設事業の進ちょく状況等を反映するため、2.3の埋設処分を行う対象廃棄物の量の見込みの見直し時期に合わせて定期的かつ必要に応じて見直しを行う。

なお、総費用は、 低レベル放射性廃棄物 の埋設処分に係る先行事例等を参考に暫定的に約2千億円と設定し、今後、概念設計の結果に基づき見直しを行う。総費用の内訳を表6-1に示す。

表6-1 総費用の内訳
項目 費用(単位:億円)
建設費 約760
操業費 約1,070
人件費 約160
一般管理費 約10
合計 約2,000

6.2 収支計画及び資金計画

概念設計の結果に基づき総費用の見直しを行うまでの間(平成23年度まで)の収支計画及び資金計画を表6-2、表6-3に示す。

表6-2 埋設処分業務の収支計画(平成21年度から平成23年度まで)
区分 埋設処分業務勘定(単位:億円)
費用の部 14
経常費用 13
 事業費 0
 一般管理費 0
 減価償却費 0
財務費用 0
臨時損失 0
純利益 170
総利益 170
収益の部 184
他勘定より受入 178
研究施設等廃棄物処分収入 0
資産見返負債戻入 0
臨時利益 6

[注]

  • 各欄積算と合計数字は四捨五入の関係で一致しないことがある。
  • 本収支計画は、総事業費のうち収入予算185億円、支出予算15億円の見積で作成している。
  • 総利益は、平成24年度以降の埋設処分業務に要する事業費用に充当する積立金として計上する。

表6-3 埋設処分業務の資金計画(平成21年度から平成23年度まで)
区分 埋設処分業務勘定(単位:億円)
資金支出 185
業務活動による支出 14
投資活動による支出 171
財務活動による支出 0
資金収入 185
業務活動による収入 179
 他勘定より受入 179
 研究施設等廃棄物処分収入 0
投資活動による収入 6
財務活動による収入 0

[注]

  • 各欄積算と合計数字は四捨五入の関係で一致しないことがある。
  • 本資金計画は、総事業費のうち収入予算185億円、支出予算15億円の見積で作成している。

6.3 埋設処分業務勘定への繰入金額

「独立行政法人日本原子力研究開発機構の会計の原則、短期借入金の認可の申請手続並びに埋設処分業務に係る財務及び会計等に関する省令」(平成17年文部科学省令第44号)及び「独立行政法人日本原子力研究開発機構が処分する放射性廃棄物の量に相当するものの算定方法を定める告示」(平成20年文部科学省告示第177号)に基づき、原子力機構は、毎事業年度、 電源利用勘定 及び一般勘定から 埋設処分業務勘定 への繰入金額をそれぞれ算定し、同勘定へ繰り入れる。

各事業年度における埋設処分業務勘定への繰入金額は、毎事業年度に実施する埋設処分業務に関する計画(以下「年度計画」という。)において示す。

6.4 受託処分

原子力機構は、原子力機構以外の発生者から処分の委託を受ける際、当該発生者と受託契約を締結し、「発生者責任の原則」に基づき、受託料金の支払いを受ける。

なお、受託料金を算定する際に用いる処分単価は、 廃棄体 の処分に要する実費相当額とし、埋設処分の方法ごとに、透明性を確保しながら公正かつ合理的に設定する。

処分単価は、毎事業年度に策定する年度計画において示す。

6.5 資金の適正な管理

原子力機構は、電源利用勘定及び一般勘定から繰り入れた資金並びに受託料金収入を、埋設処分業務勘定において適切に管理する。

埋設処分業務勘定の決算は、独立行政法人会計基準や原子力機構が定める規程等に基づき、毎年度独立して行う。

7. その他埋設処分業務の実施に関する重要事項

7.1 安全の確保

埋設事業の遂行に当たり、原子力機構は、関係法令を遵守し、安全の確保を最優先で進める。その際、 埋設施設 に起因する放射線等から、一般公衆及び埋設事業に従事する者が十分安全に防護されるように 放射線防護 放射線防護とは、放射線による人体への影響を容認される範囲内になるように人体を防護すること、また防護するための措置をいいます。閉じる を講ずる。埋設施設の建設、操業に当たっては、埋設施設及びその周辺に十分配慮した環境保全のための適切な措置を講ずる。

原子力機構は、埋設事業に従事する者に対し、埋設施設における安全管理に関する十分な教育・訓練を施す。

原子力機構は、多種多様な研究施設等廃棄物の埋設処分が、合理的で適切な安全対策の下に実施されるよう、安全規制当局に対して適切に情報を提供する。

7.2 廃棄物の発生段階での対応

原子力機構は、「放射性廃棄物最小化の原則」( 原子力政策大綱 (平成17年10月11日 原子力委員会 決定))に基づき、放射性廃棄物の発生量を可能な限り低減するように努めるとともに、適切な区分の下で廃棄物を分類し、効果的で効率的な処理を行い、適切に管理する。

7.3 輸送、処理の体系的な対応

機構廃棄物については、原子力機構が、必要に応じて 廃棄体 化処理を行い、廃棄体確認を受けた上で、陸上輸送、海上輸送又はこれらを組み合わせた方法により 埋設施設 まで輸送する。

受託廃棄物については、発生者が、必要に応じて廃棄体化処理を行い、廃棄体確認を受けた上で、埋設施設まで輸送するものとする。

原子力機構は、国の指導の下、これらの輸送、処理等が合理的かつ体系的に行われるよう、関係機関と協力する。

輸送、処理に係る当面の対応については、第2章に示す。

7.4 放射性廃棄物の低減や安全性向上のための研究開発の推進

原子力機構は、埋設処分の安全性、経済性及び効率性の向上等を目的として、継続的に技術開発・研究開発を行う。

7.5 年度計画の作成と実施状況の評価

原子力機構は、毎事業年度、年度計画を作成し、公表する。
年度計画に記載する事項は、当該事業年度の実施業務内容、予算、収支計画、資金計画等とする。また、原子力機構は、各事業年度終了後速やかに、年度計画の評価を行い、その結果を公表する。

第2章 当面実施する事項

埋設事業について、原子力機構は、当面以下に記載する事項を集中的に実施する。その結果を実施計画に反映する。

1. 概念設計の実施

1.1 概念設計

原子力機構は、第1章3.において定めた 埋設施設 の規模約60万本、能力約1.2万本/年等を前提条件とし、環境保全に配慮しつつ、 線量評価 実験等で安全性を直接証明することができない場合に、想定したシナリオにより安全性について解析する手法を「安全評価」といいます。
線量評価は、放射線の人に対する被ばく線量を指標として、安全評価をする手法であり、このような評価方法は、長期の安全性が定量的に判断できるため、ICRP(国際放射線防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)が推奨し、多くの国で採用されています。閉じる
、費用試算等に基づいて、合理的な埋設施設の設備仕様、レイアウト等の概念設計を行う。この際、第一期事業において対象とする具体の研究施設等廃棄物の 廃棄体 性状、含有 核種 同位元素の種類を「核種」ともいいます。閉じる 放射能濃度 及び廃棄体の発生予測、我が国における一般的な立地条件、「 核原料物質 核燃料物質 及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)、「 放射性同位元素 等による放射線障害の防止に関する法律」(昭和32年法律第167号)等に定められる埋設施設に関する技術基準等を考慮する。

1.2 立地環境条件に関する技術的検討

原子力機構は、概念設計により得られる設備仕様等に基づき、 安全審査 指針において示されている埋設施設の敷地及びその周辺における 基本的立地条件 原子力安全委員会「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」において示されている埋設施設を設置する際に考慮するべき敷地及びその周辺における自然環境と社会環境の基本的条件のことをいいます。閉じる 等を踏まえ、我が国において想定されうる種々の自然環境及び社会環境条件下において線量評価、費用試算等を行い、合理性の観点から埋設施設の安全性及び経済性に関する評価・検討を行う。

2. 立地基準及び立地手順の策定

原子力機構は、1.の概念設計に基づく評価・検討結果等を踏まえ、立地基準及び立地手順を策定する。

なお、個別の地点を対象にした活動については、公正な立地選定を行う観点から、立地基準及び立地手順を策定し、実施計画の変更の認可を受けた後に着手する。立地基準及び立地手順の検討においては、外部有識者の意見を聴取するなど十分な客観性を確保する。

2.1 立地基準

立地する地点において安全性を確保した上で経済的合理性を持った 埋設施設 の設置ができるよう、原子力機構は、概念設計の結果等に基づき、安全審査指針の 基本的立地条件 等を踏まえ、立地選定に当たり考慮すべき項目とその重要性の程度や項目ごとの評価に用いる指標を定めた立地基準を策定する。

また、概念設計等の結果に基づいて、地形を踏まえた事業用地の面積等の具体的な基準の策定を行うとともに、埋設事業を円滑に実施する観点から、 廃棄体 の輸送の利便性等に係る具体的な基準も策定する。

2.2 立地手順

立地手順については、手続の透明性の確保と公正な選定の実施を大原則として、埋設事業の特徴や類似施設の先行事例等を踏まえながら、立地の検討対象とする地点を具体化するための手法、立地基準に基づく評価の方法や手順について検討を行い、これを策定する。

3. 埋設処分業務の総費用、収支計画及び資金計画

原子力機構は、概念設計によって得られる 埋設施設 の設備仕様やレイアウト等に基づき、建設工事等に係る諸量を設定し、一般公共工事等の材料費、単価等を用いて、埋設施設に係る建設費、操業費、人件費、一般管理費を改めて精緻に見積り、これを総費用に反映させるとともに、埋設施設の建設や操業、 閉鎖後管理 等の工程を検討し、合理的な事業スケジュールを設定することによって、閉鎖後管理段階を含めた第一期事業の全期間にわたる収支計画及び資金計画を策定する。

4. 処分単価及び受託契約

原子力機構は、処分単価の透明性を確保した公正かつ合理的な設定方法や、原子力機構以外の発生者から処分の委託を受ける際に締結する受託契約に当たり必要となる事項、内容、条件等について検討を行う。なお、処分単価は、3.に定める、第一期事業の全期間にわたる収支計画及び資金計画を策定した後、上記検討結果を踏まえて速やかに設定する。

5. 輸送、処理に関する計画

埋設事業の円滑な実施のためには、研究施設等廃棄物の輸送及び処理も円滑に行われることが必要である。したがって、原子力機構は、埋設事業の進ちょくを踏まえつつ、原子力機構が所有する原子力施設の解体や原子力機構における研究施設等廃棄物の処理施設の整備の見通し、 廃棄体 化処理に係る計画を精査するとともに、その結果を踏まえ、国の指導の下、大学、民間企業等から発生した研究施設等廃棄物の集荷や輸送、廃棄体化処理等が全体として合理的かつ体系的に行われるよう、関係機関と協力する。輸送、処理に関して具体的な計画が得られれば、適宜、実施計画に反映する。

6. その他の業務

原子力機構は、埋設事業の実施に当たり、ホームページ等を通じた事業に関する情報の発信、一元的な相談・情報発信を行う窓口の設置、広報素材の作成、原子力機構以外の発生者に対するガイドラインやマニュアル等の作成、各勘定から繰り入れる額と受託料金を適切に算定するための資金を管理するシステムの整備等、事業を円滑に推進するために必要な準備活動を行う。