平成14年11月28日
核燃料サイクル開発機構
敦  賀  本  部

新型転換炉ふげん発電所の起動用真空ポンプドレンセパレータの損傷について
(原因と対策)

新型転換炉ふげん発電所(定格出力16.5万kW)は、平成14年度計画停止作業のため、11月5日18時34分に原子炉を停止しました。
その後、復水器の真空を維持するため、18時37分に起動用真空ポンプ*1を起動したところ、同ポンプ出口に設置されているドレンセパレータ*2の溶接部に割れが発生し、割れ部分から漏水していることを確認しました。
このため、直ちにポンプを停止しました。ポンプの停止により、同ポンプは隔離され、水の漏えいは止まっております。
漏えいした水を測定したところ、放射性物質は含まれておらず、汚染のないことを確認しています。
なお、本件による環境への影響はありません。

*1 起動用真空ポンプ: プラント起動時及び停止時に使用するもので、タービンの復水器内の真空度を保持するためのポンプ。

*2 ドレンセパレータ: 真空ポンプから排気されるガスと水分のうち水分を除去する装置。

[平成14年11月5日発表済]

1. 調査結果

(1)外観及び破面観察

ドレンセパレータは円筒形の胴板(厚み約3mm)を突き合わせ、その表面を長手方向に溶接(長さ1060mm)した構造であり、この溶接部が長さ820mmにわたり均等に開口する状態で破損していました。
破面観察から、内側から外側に破損した特徴が見られ、破損中央部では脆性破壊の特徴である「リバーパターン」*3が、その外側部では延性破壊の特徴である「ディンプル」*4が確認されました。
以上の結果から、今回の破損はドレンセパレータの溶接部が強い力により一瞬に破損(開口)したものであり、その要因としてドレンセパレータ内の圧力が何らかの原因で瞬間的に高圧になったものと推測されました。

*3 脆性破壊とリバーパターン:脆性破壊とは、金属が外力によりガラスのように脆く割れる破壊形態を言い、リバーパターンは、金属が脆性的に破断した場合に特徴的に見られる川のような筋状の模様のことを言う。

*4 延性破壊とディンプル:延性破壊とは、金属が外力により引き伸ばされて千切れるを言い、ディンプルは、金属が延性的に破断した場合に特徴的に見られる多数の微細な穴を有する模様のことを言う。

(2)プラント状態からの検討

通常の運転操作においては、原子炉停止後、復水器空気抽出器の運転が停止することから復水器の真空度は徐々に低下するため、真空度が700mmHgに低下した時(原子炉停止後約半日)に起動用真空ポンプの運転を開始します。
今回のプラント状態を調査したところ、復水器真空度の低下度合いがこれまでの実績と比べて早く、配管内に滞留した蒸気温度が高い状態で、通常より約6時間早く同ポンプの運転を開始していました。
また、現場にいた運転員は、ポンプ運転開始後、数回にわたってドレンセパレータ近傍からの衝撃音を聞いていることから、ドレンセパレータ内で水撃現象*5が発生した可能性があると推測されました。

*5 水撃現象:
高温の蒸気とドレンが混在した流体が急速に冷やされると、蒸気が水に戻され、急激な体積収縮が生じ、これにより、ドレンが加速され、大きなエネルギーを持つ。

(3)水撃現象についての詳細検討

タービン停止後、空気抽出器の停止に伴い出口側の弁を閉止します。
これにより、起動用真空ポンプからの排出系配管と気体廃棄物処理系につながる配管内(MV1からMV2の間)に高温の蒸気が滞留します。
その後、同ポンプ運転開始のため、排出系配管にある弁(MV1とMV2)を開にした際、配管内にあった高温の蒸気や冷やされたドレン水が水平配管部に移動したと推定されました。
この状態で同ポンプの運転を開始しましたが、運転直後は、ドレンセパレータ内がポンプからの排出水により満水状態であったと推測されました。
また、ポンプ運転に伴い排出される気体は、気体廃棄物処理系へ排気されるが、同処理系への排気流量を制御するため、復水器側へ戻る弁の開度調整を行っていました。
以上の状況から、ポンプ運転開始後、排出系配管にある弁の開度調整を行ったことにより、ドレンセパレータ上部の水平配管内に滞留していた蒸気とドレン水の流れに急激な変動が生じ、ドレン水の一部が蒸気を包み込む形でドレンセパレータ側に落ちる状態が生じていたと推測されました。

 このように配管部にある蒸気を包み込むような形でドレン水がドレンセパレータ側に落ちると、高温の蒸気はドレンセパレータ内の水(常温)で急激に冷やされ体積収縮し、水撃現象が発生しうるものと考えられました。

(4)復水器の真空低下について

今回の原子炉停止後、復水器の真空度低下が早かった原因について検討したところ、11月7に発生した2B給水加熱器ドレン配管からの漏えいが影響していたものと推定されました。
今回の漏えいでは、ドレン配管に貫通孔が生じており、復水器の真空度が維持された状態では、給水加熱器内も真空に保たれていることから、貫通孔から外部の空気が吸い込まれ、これにより真空度低下が早かったものと推測されました。

2.推定原因

2B給水加熱器ドレン配管に貫通孔が生じており、空気が吸い込まれていたことから、原子炉停止後の復水器真空度の低下が早く、配管内に滞留した蒸気温度が高い状態で起動用真空ポンプの運転を開始しました。
ポンプ運転開始直後に、ポンプからの排出配管内に滞留していた高温の蒸気とドレン水が満水状態のドレンセパレータ側に落ち込み、水撃現象が発生し、これによる瞬間的な衝撃圧でドレンセパレータが破損したものと推定されました。

3.対策

破損したドレンセパレータについては、胴部に溶接部のない新しいものに取り替えます。
また、水撃現象の発生防止のため、起動用真空ポンプ運転開始前に、排出系配管に滞留した高温の蒸気とドレンを復水器側に排水するよう運転操作の改善を行います。

添付図1:
起動用真空ポンプとドレンセパレータ概要図及び破損部概要図

以 上