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新型転換炉ふげん発電所の原子炉手動停止について
ヘリウム循環系戻り配管の調査状況)

新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)は、平成13年1月19日から本格運転中でしたが、 主排気筒トリチウム濃度(週1回測定)の分析値*1が、1月下旬以降、通常値より高い傾向を示していることがわかり、4月中旬以降、 トリチウムの放出源の調査を行ってまいりました。

この結果、アニュラス(原子炉格納容器と外周コンクリート壁の間の密閉空間)内のヘリウム循環系配管*2からの漏えいと判断し、 5月23日20時から出力降下を開始し、翌24日5時03分に原子炉を停止しました。

アニュラス内にあるヘリウム循環系配管について、発泡検査を実施した結果、原子炉補助建屋側から原子炉格納容器側への戻り配管の4箇所の溶接部近傍で漏えいが認められ、 これらの漏えい箇所について目視検査したところ、1箇所でひび割れ状の欠陥が確認されました。
ヘリウム循環系戻り配管は切断し、アニュラス外に搬出した上で詳細調査を行うこととしました。

なお、今回の事象による環境への放射能の影響はありません。

*1:トリチウム(三重水素)の排気筒からの放出量を管理するために、1週間に1度、排気中の水分を回収して、その中に含まれるトリチウムの量を分析している。
ヘリチウム放出濃度:従来値:2〜3×10-4 Bq/cm3
回値:約 5×10-4 Bq/cm3

*2:「ふげん」で減速材に用いられている重水のカバーガスであるヘリウムを循環させる系統。

[平成13年5月23日、5月28日記者発表済]

[アニュラス内ヘリウム循環系戻り配管の切断前・切断時の調査]

  • 配管切断前に、固有振動数の測定、配管支持状態の確認を行いましたが、共振の可能性や取付状態の不備等は認められませんでした。
  • 配管切断時において、歪測定、切断前後における変位方向計測を行いましたが、過大な応力は発生していませんでした。

[アニュラス内ヘリウム循環系戻り配管切断後の詳細点検結果]

アニュラス内ヘリウム循環系戻り配管を切断し発電所内で詳細調査を実施しました。
  • 目視点検の結果、外表面については、異常な変形や割れ等は認められませんでしたが、内表面については、溶接部近傍に周状の変色、直管部やエ ルボ部にも斑点状や円形状・帯状の変色が認められました。
  • 配管外表面について浸透探傷試験を実施した結果、これまで発泡検査により確認されていた溶接部近傍の4箇所の他に、新たに4箇所(いずれも溶接部近傍)の割れが確認され、 貫通割れ箇所は計8箇所となりました。
  • 配管内表面について浸透探傷試験を実施した結果、10箇所ある当該配管の全ての溶接部近傍の内面で割れが認められました。
  • また、3箇所ある配管の高周波曲げ部の内面においても微細な割れが多数認められました。
    このほか、一部のエルボ部、直管部においても割れが認められました。
  • 割れが認められた箇所について、断面観察を実施した結果、割れは配管内面を起点とした粒内割れ*1であり、 内面から外面へ進展していることが確認されました。
    また、破面観察を実施した結果、粒内応力腐食割れ*2の特徴である羽毛状の破面が見られ、 羽毛状の模様の向きから破面は内面から外面に向かって進展していることが確認されました。
  • 配管内表面の付着物や割れの先端部を元素分析したところ、塩素が検出されました。
  • 配管寸法、材料硬さ、材料成分分析の結果からは、異常は認められませんでした。
  • 残留応力の測定を行った結果、溶接部近傍および高周波曲げ部において、残留応力が認められました。

*1:ステンレスの結晶粒を貫通して割れる形態。

*2:応力腐食割れ(SCC)のうち、割れが結晶粒を貫通して進展する形態のもの。
塩素濃度が比較的高い環境下等において起こることが知られている。

[配管ヒータ部の調査結果]

割れの影響範囲を調査するため、アニュラス内ヘリウム循環系戻り配管の上流部の原子炉補助建屋の隔離弁を含む配管ヒータ部を切断し内部の点検を行いました。
  • 超音波探傷検査および浸透探傷検査を実施した結果、溶接部5箇所の近傍に配管内面で貫通に至らない割れが確認されました。
  • 配管内面の目視点検の結果、配管底面に筋状の変色がみられ、この部分の付着物から他と比べて高い塩素付着量が認められました。

〇これまでの調査結果のまとめ

  • アニュラス内ヘリウム循環系戻り配管の8箇所で貫通割れが確認されました。
  • 配管内面の溶接部近傍および高周波曲げ部を中心に多数の割れが確認されました。
  • 割れは配管内面を起点とした粒内割れであり、内面から外面に進展しています。
  • 破面や断面の状況は塩素による粒内応力腐食割れに酷似しており、塩素は配管内面や割れの先端部から検出されています。

〇今後の調査計画

今後、割れ等が認められた箇所について、破面観察など詳細な調査を行うとともに、既に切断調査を行った箇所以外のヘリウム循環系配管について、 超音波探傷検査を行い影響範囲の特定を行います。
また、割れの原因となった塩素が配管内面に運ばれた経路や、粒内応力腐食割れを引き起こしたメカニズムについて今後明らかにする予定です。
アニュラス内ヘリウム戻り配管の状況
ヘリウム循環系戻り配管A/B外隔離弁周辺の状況