水素注入による応力腐食割れ予防対策

「ふげん」では、原子炉冷却系を構成するステンレス鋼(SUS304)配管の応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)発生防止対策の一環として、国内の原子力発電所で初めて水素注入法を採用しました。
SCCは一般に下の図に示すように「材料」・「応力」・「水質環境」の3条件が揃った時に発生するとされています。
したがって、SCCの発生を防止するためには、配管をSCCに対する感受性の低いものと交換する、配管溶接時に溶接部分に発生する応力を取り除く、配管の接する原子炉冷却水の水質を改善する等、先の3条件のいずれかを取り除く必要があります。
水素注入法は、「水質環境」を改善することによってSCCの発生を防止するもので、「ふげん」での水素注入法による技術成果は世界的にも利用される貴重なデータとなっています。

水素注入による応力腐食割れ予防対策

「水素注入による応力腐食割れ発生抑制効果」

「ふげん」の水素注入は、国内では初めての採用であったため、詳細な調査や材料試験、短期注入試験の後、昭和60年12月から連続注入を行っています。
水素注入法の効果確認のため、種々の材料試験を「ふげん」内に設置したインプラント試験装置を用いて評価を行い、得られたデータは国際的にも注目されています。

水素注入による応力腐食割れ発生抑制効果

水素は原子炉給水ポンプの上流から注入され、炉心の溶存酸素濃度を低下させ、ステンレス 鋼の応力腐食割れを防止します。

「水素注入による原子炉冷却水中溶存酸素濃度低下効果」

原子炉冷却水中の溶存酸素濃度は、水素注入量を増やすと低下します。

水素注入による応力腐食割れ発生抑制効果

「水素注入による応力腐食割れ感受性低減効果」

水素注入による応力腐食割れ感受性低減効果

上の図は、水素注入によって原子炉冷却水中の溶存酸素濃度を変化させた条件下で行われた低歪率引張試験の結果を示したものです。
図の縦軸は、試験片破断面に発生した応力腐食割れによる破断面積と試験前の試験片断面積との比を示し、応力腐食割れに対する感受性を表します。
水素を注入して原子炉冷却水中の溶存酸素濃度を下げることにより、応力腐食割れに対する感受性が低減することがわかります。