プラント運転管理技術の開発成果(1)



  安定運転の継続に努める一方、自主開発の理念は進取のチャレンジ精神としてプラント運転管理技術の高度化においても受け継がれ、超音波やテレビカメラを駆使した圧力管検査装置の開発、減速材である重水の精製装置開発による重水リサイクル技術とトリチウム被ばく対策の確立など、「ふげん」に続く実証炉さらには実用炉も念頭においたATR固有の技術開発に発揮されました。
  さらに、ステンレス鋼の応力腐食割れ対策として取り組んだ水素注入技術、被ばく低減対策の最終解決としての系統化学除染と亜鉛注入技術など、原子力プラント共通の課題に対しても、自ら試験しデータを採り、自ら評価、検証しながらひとつ一つ、問題を克服し技術を確立してきました。これらの開発は、大型試験施設の活用や国内メーカーと一体となって取

り組み、得られた成果は実証的かつ信頼度の高い技術として高い評価を受け、商用軽水炉の適用へも波及しています。
  また「ふげん」では、現在では当たり前となっている計算機の活用においても、運転開始より取り組んできており、近年のハードおよびソフトウェアの技術進展もあいまって、高度な計算機システムの開発、導入を積極的に図ってきました。これらは、従来困難とされていた運転員や保守員のノウハウをシステム化することを可能とし、熟練運転員に匹敵する原子炉給水系のファジイ制御、保守の省力化や信頼性向上を図る運転保守管理システム、プラントの異常早期発見やプラント挙動の解析に威力を発揮するプラントデータ収集システムなどとして結実しています。

ATR特有技術の開発

(1) 圧力管検査装置
  「ふげん」では軽水炉の原子炉圧力容器に相当する圧力管に、材料としてはわが国初めてのジルコニウム・ニオブ合金を採用したため、供用中検査として圧力管内径の寸法計測や超音波探傷、TVによる内表面観察を行い健全性を確認するとともに、設計の妥当性を評価する必要がありました。このため燃料交換装置を利用して圧力管に取り付け、遠隔で自動検査を行う特殊な検査装置を開発しました。開発に当たっては、圧力管内の高放射線量に対する十分な耐放射線性や圧力管内に収まる小型化と高い検査精度など相反する要求があり、大洗工学センターでの試験と「ふげん」での検査を繰り返し、改良を加えながら現在の装置に至っています。本装置による検査により、圧力管の健全性が確認されるとともに、圧力管クリープ歪み量の測定結果も予測値と非常に良く一致し、設計の妥当性も確認されました。


圧力管検査装置の概略