プルトニウム利用技術の確立と実証(4)



MOX燃料の開発と製造

  「ふげん」(ATR)は、中性子の減速を主として重水によって行う点が軽水炉と異なりますが、燃料の冷却を軽水によって行う等、燃料の使用条件は沸騰水型軽水炉(BWR)に類似しています。このため、被覆管材にジルカロイ-2を使用するなど実績のある軽水炉燃料技術基盤を踏まえ、MOX燃料を使用すること、圧力管に装荷するため円筒型の燃料集合体構造とすること等、ATR特有の技術課題の解決に重点を置いて、28本のMOX燃料棒からなる「ふげん」MOX燃料集合体を開発しました。
  また、ATR実証炉に向けては、一層の経済性向上を図るため、燃料棒を細径化・多数本化した36本型、54本型のMOX燃料集合体の開発に取り組みました。36本型燃料については、開発をほぼ完了し、「ふげん」において集合体平均燃焼度38GWd/tまで照射して、燃料の健全性を実証しました。さらに55GWd/tまでの高燃焼度化を目指した54本型燃料についても燃料集合体の基本設計まで開発を終了しています。
  これらのATR用MOX燃料の開発では、国内外の試験研究炉や「ふげん」を用いてMOX燃料に関する

様々な照射試験を実施し、通常の運転時や万一の事故時における原子炉内でのMOX燃料のふるまいに関する知見やデータを蓄積してきました。これらの試験を通じて、ATR用MOX燃料の性能や安全性が確認された他、得られた成果は、類似の条件で使用される軽水炉MOX燃料に対する安全審査にも活用されました。軽水炉燃料に比べて高い線出力、大きい燃料棒径までの多様性を有するATR燃料のデータは軽水炉でのMOX燃料の挙動をより深く理解する上で貴重なものであり、系統的なデータベースとして整備・公開すると共に今後ともプルサーマルへの貢献を図って行きます。
  「ふげん」MOX燃料製造は、プルトニウム燃料第二開発室のATRラインにおいて、昭和50年から平成13年まで行い、この間における製造量は、累計約129トンMOX、燃料集合体数773体です。ペレット製造収率は約90%を維持し、量産規模で安定してMOX燃料が製造できることを実証しました。これら製造経験を通じて、プルトニウム取扱い技術、MOXペレット製造技術、加工組立・検査技術と品質保証技術などが蓄積され、今後、軽水炉用のMOX 燃料製造に活かされることが期待されます。

新型転換炉用MOX燃料の主要仕様の比較