燃料安全研究グループ

冷却材喪失事故時の燃料挙動に関する研究

原子炉の冷却材喪失事故(LOCA: Loss-of-Coolant Accident)とは炉心で発生した熱を除去する役目をもつ冷却材が配管の破断等によって炉心から流出する事故です(図7)。冷却材が流出すると、水位の低下に伴い炉心の冷却能力が低下する結果、燃料棒温度が上昇し、高温になった金属製の被覆管は冷却材や水蒸気と反応し、酸化します。このような場合でも、非常用炉心冷却系(ECCS)の作動により原子炉内の水位はやがて回復し、高温になった燃料棒は冷却されます。ところが、このECCSが作動し炉心の水位が回復するまでの間に被覆管が著しく酸化し、脆くなった場合には、ECCSによって注入された冷却材で急冷された際に生じる熱衝撃により、燃料棒は破断し、炉心の冷却可能な形状を喪失する可能性があります。

図7
図7:冷却材喪失事故時の燃料被覆管温度変化と燃料挙動

ECCSがLOCA時の燃料棒の破断を防止し、炉心の冷却可能な形状を維持しつつ、事故を収束させる機能及び性能を有していることを確認するため、以下の規制基準が定められています:

  • 被覆管の最高温度が1200℃以下であること。
  • 被覆管酸化量(酸化によって減少した被覆管金属層厚さの酸化前の被覆管金属層厚さに対する割合)が15%以下であること。
これらの基準値は、ECCSの作動で燃料棒が急冷された場合でも破断しない条件を酸化温度及び酸化量で表したものです。本研究グループでは、LOCA条件を模擬した実験を行い燃料棒の破断が起こる条件を調べることで、燃料の設計及び運用の変更、新たな科学的知見、等を考慮してもなお、これらの基準値が妥当性を有することを確認するとともに、新たに得られた知見の規制基準への反映を支援しています。

上記の基準制定以降、燃料の炉内滞在期間の延伸(高燃焼度化)に伴う被覆管の腐食量や水素吸収量の増大、耐食性を高めた改良型燃料被覆管の開発に代表されるように、燃料の使用環境は大きく変化してきました。しかし、これらの変化がLOCA時の被覆管の破断条件に及ぼす影響については明らかになっていませんでした。そこで高燃焼度改良型燃料被覆管を用いたLOCA模擬実験を実施し、高燃焼度化及び被覆管材質の変更が被覆管の破断条件に及ぼす影響を調べました(図8)。図中の白抜きのプロットは高燃焼度改良型燃料被覆管及び高燃焼度燃料被覆管を用いて実施したLOCA模擬実験のうち被覆管が破断しなかった結果を、灰色のプロットは破断した結果を示しています。高燃焼度改良型燃料被覆管は従来材である未照射ジルカロイ?4被覆管の破断限界に近い酸化条件においても破断しませんでした。このことから、被覆管の破断限界は通常運転中の水素吸収量の増大に伴い若干低下するものの、高燃焼度化及び被覆管材質の変更によっても被覆管の破断限界が著しく低下することはなく、また高燃焼度改良型燃料被覆管に対しても現在の規制基準を適用できることが分かりました。
(この結果は、原子力規制庁からの委託事業「原子力施設等防災対策等委託費(燃料等安全高度化対策及び燃料設計審査分野の規制研究)事業」において得られたものです。)

図8
図8:被覆管酸化量とLOCA模擬実験前の被覆管内の水素濃度に関する破断マップ
(LOCA模擬実験時の酸化温度条件:1200°C)

ページTOP