
令和7年11月7日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
図 幌延国際共同プロジェクトのイメージ
高レベル放射性廃棄物の地層処分の着実な実施は、原子力を利用するすべての国の共通課題です。地層処分事業を進めていくためには、それに取り組む国々との国際協力が重要となります。特に、研究開発の観点では、各国が有する地下施設等、研究施設の共同利用が、リソースの有効活用や研究成果の最大化にとって効率的で有意義であり、地下施設を持たない国にとっては、地下施設を有している国のプロジェクトに参加することで、先行する国の技術や経験の継承が可能となります。
こうした背景の下、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は幌延深地層研究センターを地層処分に関わる国際研究開発拠点として位置づけ、同施設を活用した幌延国際共同プロジェクト(HIP)を2023年2月に立ち上げました。
国際的に重要度の高い以下の3つの研究開発タスクを設定し、フェーズ1として国際共同研究を実施しました。
タスクA:物質移行試験
割れ目を有する堆積岩における物質移行モデルを実際の地下深部での物質移行試験により開発・評価
タスクB:処分技術の実証と体系化
廃棄体設置や坑道・処分孔の配置の設定に必要となる情報を整理して処分技術を体系的に実証
タスクC:実規模の人工バリアシステムの解体試験
人工バリア周辺の熱や地下水の流れ、緩衝材の膨潤による周辺の応力場の変化といった複合的かつ複雑な現象を人工バリア性能確認試験の解体によって理解
今般、2024年度末までのフェーズ1で得られた成果を報告書として取りまとめ、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のホームページで11月4日に公表しました。
NEA Horonobe International Project – HIP Interim report for Phase 1 (February 2023 – March 2025), NEA/NE(2025)20, 2025.
今後は、2025年3月から開始したフェーズ2の研究として、各タスクで現場での試験や解析を通じて、各国の処分事業の信頼性向上に資する成果をとりまとめるとともに、参加機関と連携して世界初の成果を多く創出することで、成果の最大化を目指します。
| 参加機関(アルファベット順) | 役割 |
| 連邦放射性廃棄物機関(BGE、ドイツ) | 各タスクの試験計画の検討 |
| 英国地質調査所(BGS、英国) | 各タスクの試験計画の検討、タスクBの室内試験の実施 |
| 電力中央研究所(CRIEPI、日本) | タスクAの室内試験と物質移行試験、タスクCの計画検討と解析検証 |
| オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO、オーストラリア) | 各タスクの試験計画の検討、タスクAの解析検証 |
| 工業技術研究院(ITRI、台湾) | タスクAの試験計画の検討と解析検証 |
| 日本原子力研究開発機構(JAEA、日本) | プロジェクトの運営、研究の総括、各タスクの試験計画の検討と試験の実施、解析検証 |
| 韓国原子力研究所(KAERI、韓国) | 各タスクの試験計画の検討と解析検証、タスクBの室内試験 |
| 原子力発電環境整備機構(NUMO、日本) | 各タスクの試験計画の検討と解析検証 |
| 原子力テクノロジー国営会社(RATEN、ルーマニア) | タスクAの試験計画の検討と室内試験 |
| 原子力環境整備促進・資金管理センター(RWMC、日本) | タスクB、Cの試験計画検討、タスクBの試験の実施 |
| 国営放射性廃棄物会社(SERAW、ブルガリア) | 各タスクの試験計画の検討 |