令和4年9月5日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

英国との協力で日本の高温ガス炉技術の実証へ
―英国の高温ガス炉実証計画に採択―

【発表のポイント】

  • 英国国立原子力研究所(NNL)と原子力機構(JAEA)が参加するチームが、英国の新型炉開発プログラムの予備調査を行う実施事業者として採択されました。
  • JAEAはNNLと協力して、我が国の高温ガス炉技術の高度化と英国での実証を進め、国際競争力の強化を目指します。

英国政府は脱炭素化に向けた原子力利用の最有力候補として高温ガス炉に着目しており、「新型モジュール炉(AMR)※1研究開発・実証プログラム※2(以下「AMR RD&Dプログラム」という。)を進め、2030年代初頭までに高温ガス炉の実証につなげる予定です。本年4月、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(以下「BEIS」という。)は、AMR RD&DプログラムPhase A(プレ概念設計)を実施する事業者の公募を開始し、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「JAEA」という。)は、高温ガス炉技術分野において協力関係にある英国国立原子力研究所(以下「NNL」という。)からの要請を受け、NNLチームの一員として(NNLチームは、NNL、JAEA及び英国企業(ロット1:Jacobs、ロット2:Urenco)の3社で構成される。)AMR RD&Dプログラムへ応募しました。BEISは、本年9月2日付け(現地時間)でNNLチームがフェーズA(予備調査)を行う実施事業者として採択されたことを公表しました。今後は、各事業の進捗に応じて、英国政府によるフェーズB(概念設計)以降の支援継続が検討される予定です。

二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを削減する脱炭素の動きは、世界規模で高まっており、多くの国で脱炭素エネルギーとしての原子力に注目が集まっています。その中でも高温ガス炉は、優れた安全性と水素製造をはじめとする高温熱の活用及び発電など多岐にわたる分野の脱炭素に貢献できる次世代原子炉として、世界各国で実用化に向けた研究開発が活発化しています。我が国では、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、政府が2050年カーボンニュートラルに向け、高温ガス炉を活用した水素製造の技術開発に注力するとしています。

英国では、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることが法制化されており、二酸化炭素を排出しない原子力(大型軽水炉、小型軽水炉(SMR)、AMR)の導入/開発を重点化しています。2020年12月には、BEISが「グリーン産業革命のための10項目計画」に基づく「エネルギー白書」を発表し、SMR及びAMR導入の支援策を打ち出しました。JAEAはNNLと協力し、AMR RD&Dプログラムへの参画を通して、高温工学試験研究炉(HTTR)の建設及び運転を通じて培った我が国の高温ガス炉技術の高度化と英国での実証を進め、国際標準化を図り、国際競争力の強化を目指します。

用語解説

※1:英国では、小型モジュール炉(SMR; Small Modular Reactor)は軽水冷却によるもののみを意味します。他方、高温ヘリウムガス、ナトリウム、溶融塩等、軽水以外を冷却材として利用するものは新型モジュール炉(AMR)として分類し、SMRとAMRを明確に区別しています。

※2:AMR研究開発実証計画(AMR RD&Dプログラム)は、3段階のアプローチ(Phase A:基本設計(FEED)関係の予備調査(ロット1:原子炉実証、ロット2:燃料実証)、Phase B:詳細設計の基礎となるFEED調査、Phase C:サイトや建設、運転の許認可活動)となることが示されています。
Phase A:現在~2022年12月
Phase B:2023年初頭~2025年半ば
Phase C:2025年半ば~2030年代初頭
URL:https://www.gov.uk/government/publications/advanced-modular-reactor-amr-research-development-and-demonstration-programme

資料:「英国AMR研究開発・実証プログラムの概要」等[PDF:711KB]
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