令和2年6月3日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

HTTR(高温工学試験研究炉)の
新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可の取得について

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という)は、本日、大洗研究所の研究用原子炉HTTR(高温工学試験研究炉 最大熱出力:30MW)の新規制基準への適合性確認審査において、原子炉設置変更許可を取得しました。これは、ガスを冷却材とする原子炉としては、新規制基準の下で初めての許可取得となります。

ヘリウムガスを冷却材として採用する高温ガス炉は、炉心に高温に耐える黒鉛を使用していることから炉心の熱容量(熱を貯めこむ能力)が大きく、万一の事故に際しても炉心温度の変化が緩やかで、燃料破損(炉心溶融)に至らないという固有の安全性を有しています。

今回の原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査を通じて、高温ガス炉であるHTTRは、設計基準事故(設計時に想定した事故)を超えるような事故を想定した場合(設計基準事故に原子炉停止機能の喪失が重なった場合等)においても、事故の進展に伴う燃料破損が生じないことが認められました。

今般の許可取得は、現在原子力機構が取り組んでいる、高温ガス炉の実用化に重要な、高温ガス炉の安全上の特徴を反映した安全基準の国際標準化や、我が国の高温ガス炉技術の国際競争力強化に大きく貢献するものです。

運転再開後、HTTRでは、高温ガス炉の安全性実証試験の実施、熱利用(ヘリウムガスタービン発電・水素製造)システム接続技術の確立のための試験検討、高温ガス炉燃料の性能検証のためのデータ取得、HTTRを活用した高温ガス炉技術分野における国際協力・人材育成などを計画しています。これらに加え、現在、高温ガス炉開発を推進しているポーランドとの研究協力については、HTTRの運転再開により、さらに深化することが期待できます。

今後は、早期の運転再開を目指して新型コロナウイルス感染症対応に万全を期しつつ、設置変更許可取得に係る審査において措置することとした安全対策工事(内部火災対策、外部火災対策としての防火帯の設置、モニタリングポストの伝送系の多様化など)を着実に進めてまいります。

図1 HTTR(高温工学試験研究炉)

【用語解説】

1)高温ガス炉

  1. ① 化学的に不活性なヘリウムガスを冷却材として用いており、冷却材が燃料や構造材と化学反応を起こさないこと、
  2. ② 耐熱性に優れたセラミック被覆粒子燃料を用いており、1600℃の高温まで核分裂生成物(FP)を保持する能力に優れていること、
  3. ③ 出力密度が低く(軽水炉に比べ1桁程度低い)、炉心に熱容量の大きい黒鉛等を大量に用いているため、万一の事故に際しても炉心温度の変化が緩やかで、燃料の健全性が損なわれる温度に至らないこと、
  4. ④ 黒鉛構造物の高い熱伝導、原子炉圧力容器内の冷却材ヘリウムガス及び原子炉圧力容器外の空気による自然対流、さらに外表面からの熱放射によって、炉心の崩壊熱を除去することが可能なこと、

等の特徴を持つ安全性に優れた原子炉です。

このため、仮に冷却材流量を喪失し、さらに原子炉スクラムに失敗した場合でも、固有の安全性を持つ高温ガス炉は、自然に止まり、冷やされます。

また、900℃を超える高温の熱を原子炉から取り出せることから、熱効率に優れると共に、水素製造等の発電以外の利用も可能な原子炉です。

2)HTTR

HTTRは、我が国初の黒鉛減速、ヘリウムガス冷却のブロック型の高温ガス炉であり、熱出力30 MW、原子炉出口冷却材最高温度は950℃です。平成10年11月10日に初臨界、平成13年12月7日に熱出力30 MWにおいて原子炉出口冷却材温度850℃、平成16年4月19日に原子炉出口冷却材温度950℃、平成22年3月13日に50日間の高温(950℃)連続運転を達成しました。また、平成22年12月に、冷却材流量を喪失させ、さらに原子炉スクラムに失敗した場合でも、固有の安全性を持つ高温ガス炉が自然に止まり、冷やされることを実証する国際共同試験に成功しました。

参考部門・拠点: 高速炉・新型炉研究開発部門 高温ガス炉研究開発センター

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