平成29年12月26日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

米国原子力規制委員会との間で原子力安全研究分野における協力覚書に署名
-過酷事故及びその防止・影響低減対策や原子力防災に関する研究の進展に向けて-

発表のポイント

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)は、米国原子力規制委員会(以下「NRC」という。)と「原子力安全研究分野における協力覚書」を平成29年12月26日に署名しました。

平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、軽水炉の過酷事故(シビアアクシデント、SA)やその防止・影響低減対策(AM)、原子力防災に関する研究ニーズが世界的に高まっている中、スリーマイル島事故を経験した米国の知見は重要であり、特に多くのSA・AM研究知見を有するNRCとの協力は今後の安全研究を進める上で不可欠です。

原子力機構とNRCは、これまでも前身法人(旧日本原子力研究所)とNRCとの間で署名された「原子炉安全研究の分野における日本原子力研究所とNRCの間の実施取決め」に基づき協力を進めてきた実績を有しています。今般、「原子力規制委員会とNRCとの間の技術情報交換及び原子力規制における協力のための実施取決め」の下で、原子力規制委員会への技術的支援を行う機能を担う安全研究センターがNRCとの間で世界的な安全研究ニーズの変遷や日本の原子力規制体系の変更を踏まえた新たな協力枠組みを構築すべく、協力覚書の署名に至りました。

今回の覚書により、原子力機構はNRCからSA・AMに関する解析コードの導入が可能となる一方、NRCは原子力機構が実施する原子炉安全性研究炉(NSRR)大型非定常試験装置(LSTF)等を活用した実験データの利用が可能となり、双方にとり極めて価値の高い協力が可能となります。

【研究協力の背景と目的】

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故(東電福島第一事故)以降、軽水炉の過酷事故(SA)やその防止・影響低減対策(AM)、原子力防災に関する研究ニーズが高まっています。今回の事故と同じく炉心溶融を生じた1979年のスリーマイル島(TMI)事故を経験した米国の知見は重要であり、特に多くのSA、AMに関する研究知見を有するNRCとの協力は今後の安全研究に不可欠です。

旧日本原子力研究所は、1974年に署名された科学技術庁(当時)・資源エネルギー庁とNRC(当時は原子力委員会)との間の取決めの下でNRCとの研究協力を進め、2003年に「原子炉安全研究の分野における日本原子力研究所とNRCの間の実施取決め」に署名し、2005年10月以降原子力機構に継承されました(2008年に期間が満了)。

その後、東電福島第一事故を受けた世界的な安全研究ニーズの変遷や日本の原子力規制体系の変更を踏まえた新たな協力枠組みの構築が必要とされていました。今般、2012年に署名された「原子力規制委員会とNRCとの間の技術情報交換及び原子力規制における協力のための実施取決め」(2015年更新)の下、安全研究センターが担当する軽水炉を中心とした安全研究に係る協力に関して原子力機構-NRC間の覚書に署名することで関係者の合意が得られ、署名の運びとなりました。

本覚書により、原子力機構にとってはNRCが開発を進めるシビアアクシデント総合解析コード(MELCOR)等最新の解析コードの導入が可能となる一方、NRCにとっては原子力機構が実施するNSRR、LSTF等を活用したSA、AMに係る実験により得られるデータの利用が可能となり、双方にとり極めて価値の高い協力が可能となります。また、相互の駐在員派遣や研究施設利用が可能になり、さらなる成果創出が期待できます。

【研究の内容】

以下の分野に関して、情報交換、人員派遣、共同プロジェクトの実施、施設相互利用等の協力を進めます。

  1. 軽水炉の熱水力安全
  2. 水炉のシビアアクシデント
  3. 燃料安全
  4. 構造健全性評価と材料劣化
  5. オフサイト影響評価及び緊急時計画への応用
  6. 臨界安全/事故評価

【用語解説】

1)原子炉安全性研究炉(NSRR)

NSRRは、原子力機構原子力科学研究所内にある研究用原子炉である。主に反応度事故(例えば制御棒が炉心から急速に引き抜かれるなど、何らかの原因によって原子炉出力が短時間に上昇する事故)の条件下における原子炉燃料の安全性を研究するために使用される。

2)大型非定常試験装置(LSTF)

LSTFは、1100MW級の加圧水型軽水炉(PWR)を、体積比1/48、同一機器高さで模擬した世界最大規模の熱水力総合効果実験装置で、原子力機構原子力科学研究所内にある。配管破断等の事故時熱水力挙動を実炉と同じ圧力・温度・時間経過で模擬可能である。

3)シビアアクシデント総合解析コード(MELCOR)

米国原子力規制委員会(NRC)/サンディア国立研究所において開発されているシビアアクシデント総合解析コードであり、原子力施設の主要な機器や系統を考慮可能で、原子炉熱流動に加えて炉心溶融進展や放射性物質放出に係わる主要な現象のモデルを備える。

参考部門・拠点: 安全研究センター

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