① 燃料デブリ

原子炉冷却剤の喪失等により核燃料が過熱し、炉内構造物の一部とともに溶融した後、冷えて再度凝固したもの。遠隔操作によりこれらを取り出し可能な大きさに加工し、回収する必要がある。金属酸化物の部分は硬度が高くまた融点が高い等難加工性脆性(一定以上の力が加わると割れやすい)材料となっており従来の機械的取り出し工法の適用には多くの課題があるとされている。一方、燃料デブリの周辺には金属部分も残っており、この部分は靭性(力を加えると物体が延びることにより壊れない性質)が高く、やはり従来の機械加工法の適用には多くの課題がある。これらのことにより、燃料デブリの取り出しには新たな取り出し法の開発が求められている。

② 遠隔操作機器・装置

陸走型ロボットによる調査や建設機械の無人化施工などのように、有線又は無線通信などにより、遠隔地から操作される機器・装置。遠隔操作により、人が容易に立ち入ることができない場所の調査、作業などに用いる。廃炉の現場では制御機構等、通常の性能に加え、高い放射線強度に耐えて動作する性能も要求される。

③ ファイバーレーザー

増幅媒質にレーザー動作を引き起こす物質を添加した光ファイバーを使用し、ブラッグ回折を利用した共振器をファイバー中に埋め込んだレーザーであり、精密な光路調整が不要で振動等に強い特徴を有する。また励起源に電気入力からレーザー出力への変換効率の高い(約70%)半導体レーザーを用いており、電気入力からレーザー出力への変換効率が約30%と高い。同じレーザー出力を得るのに小型化が可能で、レーザービームの引き回しにおいてフレキシビリティが高い。以上より、廃炉現場での利用に適している。

④ レーザー切断

レーザー光を熱源として用いることにより、対象物表面を局所的に溶融させ、それを照射面の反対側に排出させることで対象物を切断する加工方法。通常、レ―ザー光により溶融した部分の排出に大量のガス(圧縮空気、希ガスなど)を用いるため、廃炉に使う場合は、大気中に粉塵が飛散することを抑止することが技術的な課題である。

⑤ レーザーはつり

レーザー光を熱源として材料表面を溶融させ、その部分をガスや水のジェットによって排出させることで表面を削る方法。対象物の厚みに依存しない除去加工が可能であり、また発生した粉塵の回収も容易であるため、燃料デブリの取り出しにおける有用な加工方法の一つと考えられる。

⑥ レーザーセラミックス破砕

レーザー光を対象物に集光させてセラミックス材料を破砕させる方法。局所的な急加熱に起因する材料内部の部分的膨張によって、脆性の高いセラミックスは破砕されやすいことが知られている(あたかもレーザーがハンマーのように振舞う破砕現象)。デブリを構成する種々のサイズ、種々の物質により構成されるセラミックス材料に対し、破砕されやすいレーザー照射条件を選定することで、時間あたりの処理量が大きく、粉塵の発生の少ない燃料デブリ取り出しができるため、技術の発展が期待される。

⑦ ウォータージェット切断

ノズルから噴射する超高圧水(吐出圧力2000気圧以上)を対象物に衝突させることで切断を行う方法。水流による冷却性により対象物への熱影響が小さく、また水の濡れ性により大気中への加工粉塵の拡散が少ないといった特長がある。強度部材に対しては、加工能力を上げるために水と研磨材を混合させる。廃炉作業に用いると使用した研磨材が二次廃棄物となる問題がある。

⑧ パルスウォータージェット

時間的に連続して噴射されるウォータージェットとは異なり、周期的に断続噴射するウォータージェットのこと。本共同研究ではこれをレーザー光と組み合わせることにより、連続のものと比較してはつり性能の向上が確認された。

⑨ ハイスピードカメラ

高速現象を捉えることを目的として使用されている計測用カメラ。一般のビデオカメラよりも短い時間間隔(60分の1秒間隔以下)での撮影が可能であり、本共同研究ではレーザー光により溶融した部位がウォータージェットにより除かれてゆく様子を1万分の1秒の時間間隔で観察した。

⑩ 負圧管理

廃炉現場のように放射性物質を取扱う場所では、放射性物質の漏出や拡散を防止するため、施設内が負圧(常に外より低い圧力)になるように空気圧力を管理し、常に外から内部に空気の流れが起こるようにすること。


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