【用語説明】

1) 原子核の振動と回転

原子核は陽子と中性子から構成されますが、これら陽子、中性子が集団的にふるまうことで、原子核に回転や振動が生じます。正の電荷を持つ陽子と電気的に中性な中性子が、それぞれ塊となって振動する場合には、原子核の振動にともなって電磁波(ガンマ線)の吸収、放出がおこります。

陽子と中性子がハサミ状に動くシザース・モード、陽子と中性子が互いに反対方向に振動する巨大双極子振動などの他、ラグビーボール型に変形した原子核全体が回転することもあります。

図8

図8:原子核の振動と回転

2) 変形核

球対称と異なる形をもつ原子核。ラグビーボールやパンケーキなどの形をした原子核が知られています。ラグビーボール型の変形核は、Ta-181など質量数が150から190の領域やウランなど質量数が約224以上の領域で発見されています。

3) 磁気双極子モーメント

1対の磁極の強さと磁極間距離との積で表されるベクトル量のこと。原子核の磁気モーメントは、陽子および中性子のスピンによって生じます。シザース・モードによる磁気双極子モーメントは、陽子の軌道スピンによるものです。

4) レーザー・コンプトン散乱

X線やガンマ線が物質に入射するとき、物質を構成する原子に含まれる電子で散乱され、進行方向とエネルギーを変える現象をコンプトン散乱といいます。コンプトン散乱を受けたX線、ガンマ線は、電子にエネルギーの一部を与えるので、散乱にともなってエネルギーが小さくなります(波長の長い光に変わる)。光速近くまで加速した電子とレーザー光が衝突する場合にも同様の散乱現象が起こりますが、このとき、レーザー光は電子からエネルギーを受け取り、大きなエネルギーを持った光、すなわち、X線やガンマ線に変わります。これをレーザー・コンプトン散乱(または、逆コンプトン散乱)といいます。


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