平成28年1月22日
J-PARCセンター

J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の利用運転再開見込みについて
(お知らせ)

昨年11月24日にお知らせしましたとおり、J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)では、中性子標的容器(以下、標的容器)の不具合により利用運転を休止しています。

この間、不具合を起こした標的容器につきまして原因の調査を行ってまいりました。外観調査では異常が無く、昨年4月の不具合事象に対応した補修箇所には問題が無いことを確認しました。また、音響調査等により原因を絞り込みつつ解析を進めており、次の段階として標的容器を取り外した上で内部を含めた詳細な調査を行ってまいります。

次に使用する標的容器に関しましては、過去に安定した運用実績のある標的容器の予備機であり同等の性能を有するものを使用しますが、設計上の受け入れビーム出力が低く設定されているため、利用運転は、低出力(200kW程度)で行う予定です。当該標的容器の使用にあたっては、改めて各種試験(寸法検査、耐圧試験、気密試験、超音波探傷試験)を実施し、その健全性が確認されましたので、標的容器の交換作業を行い、利用運転再開に向けた準備を行ってまいります。

運転再開時期につきましては、現在のところ、2月中旬の利用運転再開を目指しております。当初の見込みより再開時期が遅れ、皆様に更なるご不便・ご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げますとともに、安全を最優先に早期の利用運転再開に向けて取り組んでまいりますので、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。

【用語説明】

「中性子標的」

ステンレス鋼製の容器内に水銀を流動させ、陽子ビームを照射して水銀との核破砕反応で中性子を発生させる装置です。図1に示すように、中性子標的は密閉容器に装着され、陽子ビームで照射されます。

図1

図1 中性子標的の概要について

「中性子標的容器」

中性子標的容器はステンレス(SUS316L)製で、溶接により組み立てられた構造であり、全長は2m、重量は約1.6tです。図2に示すように、中性子標的容器は、内部に水銀を流動させる水銀容器と、それを内包する保護容器から構成されます。保護容器は陽子ビームの入射により発熱するため水で冷却されています。

中性子標的容器は、構造材料が使用につれて劣化し強度が低下するため、定期的に交換することとしています。

図2

図2 中性子標的容器の外観と内部構造

【参考】平成27年4月と11月に発生した中性子標的容器の不具合の内容

図3

【補足説明】

次に使用する標的容器は、予備機として準備してあるもので、過去の低出力運転時の標的容器と同等の性能を有しております。すなわち、陽子ビーム入射時に発生する強力な圧力波の衝撃を数分の1に低減する機能を付加する前の構造ですが、不具合を生じた容器とは製作方法が異なり、安定した運用実績のある方法を主体として製作されたものです。


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