【用語説明】

[1] 超格子薄膜技術、超格子構造

異種の物質をナノスケールで交互に積層すると、元の物質では得られない特性や、効果が得られ、これを超格子と呼ぶ。

[2] トポロジカル絶縁体

近年発見された物質で、物質内部が絶縁体である一方、物質表面だけは金属であるという性質を持つ。散逸の少ないデバイスの材料として注目されている。これまでに発見されたトポロジカル絶縁体は、電子相関の関与しないものだけである。

[3] スピン

粒子の持つ量子力学的な内部自由度(粒子を区別する性質)の1つ。しばしば、粒子の自転として解釈される。電子のスピンは磁性の根源である。

[4] スピン‐軌道相互作用

電子の自転運動によって生じる「スピン角運動量」と電子が原子核の周りを周回運動すること(軌道運動)によって生じる「軌道角運動量」との間に働く相対論的相互作用。原子番号が大きい(重い)元素ではより大きくなる。

[5] 電子相関

通常の半導体や金属では、電子はほぼ自由に振る舞うのに対し、遷移金属の酸化物では電子同士がお互いに強く作用し合いかろうじて動く状態となる。このような相互作用を電子相関と呼ぶ。

[6] ペロブスカイト構造

遷移金属酸化物の代表的な結晶構造の1つ。酸化物の場合、ATO3やA2TO4 (Aはランタノイドあるいはアルカリ土類金属、Tは遷移金属)の組成式で表される。電子機器に用いるチップコンデンサではTにチタンが入った酸化物が用いられ、高温超伝導はTに銅が入った酸化物で出現する。

[7] 大型放射光施設「SPring-8」

兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高エネルギーの放射光を生み出す理研の施設で、その運転管理と利用者支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(ギガ電子ボルト)に由来している。放射光とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する強力な電磁波のことである。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

[8] 「フォトンファクトリー」

光(Photon)の工場(Factory)の愛称で親しまれているPFは日本初のX線を利用出来る放射光専用光源として、1982年に完成した。数度の大改修を経て輝度を高めるとともに、最新技術の実験装置の整備により、世界最先端の研究成果を創出している。このような大型施設は、大学などが単独で維持管理することが難しいため、大学や研究機関が共同で利用実験するための施設(大学共同利用機関)としてつくば市の高エネルギー加速器研究機構で運用している。


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