【用語説明】

1)「先端研究施設共用促進事業」等

大学などの研究機関等が保有する先端研究施設の共用を促進し、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般の高度化を図るとともに国の研究開発投資の効率化を図ることを目的とした一連の文部科学省の事業です。平成19年度に委託事業「先端研究施設共用イノベーション創出事業」として創設され、平成21年度に、各研究機関の主体的取組及び弾力的運用を推進するため補助事業「先端研究施設共用促進事業」に移行されました。そして平成25年度からは補助事業「先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業」として進められています。

2)「明日を創り、暮らしを守る量子ビーム利用支援事業」

高崎研では、イオン照射研究施設(TIARA)、電子線照射施設及びガンマ線照射施設の共用施設群をもって当初から「先端研究施設共用促進事業」等に参画し、「明日を創り、暮らしを守る量子ビーム利用支援事業」として実施しています。今回のイオンビーム育種の成果は本事業の戦略分野の一つである有用遺伝子源創成研究の中で得られたものです。
参考URL:http://www.taka.jaea.go.jp/innovation/index.html

3)イオン照射研究施設(TIARA)

高崎研で保有するイオンビーム利用のための研究施設です。宇宙材料、新機能材料、バイオ技術などの研究に広く利用されており、様々な利用ニーズに対応するための4台の特徴の異なるイオン加速器(サイクロトロン、タンデム加速器、シングルエンド加速器、イオン注入装置)と多様なビームライン及び関連する実験装置からなります。TIARAは、Takasaki Ion Accelerators for Advanced Radiation Applicationsの頭文字から名付けられました。

図6

イオン照射研究施設(TIARA)

4)イオンビーム育種

図7

原子力機構が開発した世界を先導する量子ビームテクノロジーの1つ。サイクロトロンなどの大型の加速器で光の速度の数十%に加速させたイオン粒子を真空中から取出して、大気中で植物の種子、培養した葉等の切片や微生物の細胞などを試料として照射し、突然変異を誘発して有望な変異系統を選抜することで新品種を生み出す品種改良手法です。イオンビームがガンマ線などの他の変異誘発原より効率よく突然変異を起こすことから、今までに得られていないような形質を持つ植物を幅広いバリエーションで作出することが可能です。TIARAではサイクロトロンからの特に生物効果が高いとされるエネルギーの炭素イオンを主に照射に利用しています。試料の上方から垂直に照射するため、培養物などの崩れやすい試料でもそのまま水平に置いた状態で照射できます。また、生物試料照射装置には自動送り機構を備えていて、遠隔操作により各試料の照射量を最適化でき、かつ多くの試料を短時間で照射できます。

5)変異系統

突然変異によって変化した花色や栽培特性などの形質が、増殖した後にも安定して維持されている植物の集団を変異系統といいます。実用的に価値のある変異系統が新品種として利用されます。


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