【用語説明】

(1) 植物ポジトロンイメージング技術

positron-emitting tracer imaging system (PETIS)という計測装置等を利用して、植物の根や葉に投与した放射性同位体(次項で説明)の動きを、植物体を傷つけることなく、ビデオカメラのように画像化することにより、植物の生理機能を解析する技術です。PETISは1990年代に日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)と浜松ホトニクス株式会社が共同開発したものが原型となっており、がん検診に広く用いられるポジトロン断層撮影法(positron emission tomography: PET)と計測原理は同じですが、植物研究用に特化したデザインになっています。これまでに、この技術を用いて、作物の体内での養分や環境汚染物質の動きを解明する多くの研究がなされてきました。

(2) 放射性同位体

同じ元素ではあるが、放射線を出す性質を持つものを言います。たとえば、ナトリウムのうち、通常身の周りにあるナトリウム23は放射線を出しませんが、放射性同位体であるナトリウム22は放射線を出します。放射性同位体は、放射線を出すこと以外は同じ性質を持っているので、たとえば通常のナトリウムの中に極微量のナトリウム22を混ぜることにより、ナトリウムに「目印」をつけることができます。この放射線を計測すれば、植物体に取り込まれた後もナトリウムの動きを体外から追跡することができます。

(3) 導管

植物が根から吸収した水と養分を地上部に送るための管で、葉で水分が蒸発すること(蒸散)によって、内部の液体(導管液)が上方に引っぱり上げられていきます。

(4) 篩管(しかん)

植物が葉での光合成により生産した糖などの栄養を、根や芽、子実などに送るための管です。

(5) 放射性ナトリウム

放射性ナトリウムにはいくつもの種類がありますが、本研究で利用したものはナトリウム22です。ナトリウム22は陽電子(ポジトロンとも言う)を放射線として放出します。その放射能が半分に減衰する期間(半減期)は2.6年です。


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