【用語説明】

1)崩壊半減期

放射性同位体は同じ種類でも別の核種に変化する時間はさまざまです。そこで放射性同位体を多数用意し、その放射性崩壊で同位体が半分の個数となるまでの時間をとり、これをその放射性同位体の半減期と呼びます。この半減期は放射性同位体の種類ごとに固有の値を取ります。崩壊半減期は放射性同位体の代表的な性質の一つです。

2)崩壊様式

原子核はα崩壊(アルファ粒子を放出する)、β崩壊(電子を放出し、自身の陽子数を増やし、中性子数を減らす。または陽電子を放出し、自身の中性子数を増やし、陽子数を減らす)、自発核分裂(ほぼ真二つ(非対称の場合も多い)に分かれる)など様々な崩壊様式が存在します。さらにこれらが一つの原子核で共存することもあり得ます。近年、さまざまな崩壊様式の種類が測定発見されたことに伴い、今回の核図表では全部で23種類(前回までは12種類)の区分を用いました。

3)原子核崩壊の理論計算法

原子核の崩壊計算、特に未知核種の予言計算には崩壊エネルギーを与える原子核の質量計算が不可欠です。今回の核図表の用いた質量計算として球形基底法によるKTUY(小浦—橘—宇野−山田)原子核質量を用いました。原子核質量を核図表上の広範囲にわたり精度よく計算できる理論模型計算は世界的にもわずかで、日本では(現時点では)この手法が唯一といえます。崩壊過程そのものの計算も原子力機構先端基礎研究センターおよび早稲田大学で開発した計算法をもとに計算しました。

4)陽子過剰、中性子過剰の極限原子核の研究

安定核に比べて中性子過剰核では特異な性質があることが知られています。中性子の閉殻魔法数(用語解説5を参照)は2、8、20、28、50、82、126が知られていますが、中性子が過剰な原子核になると中性子数20の閉殻性が消失し16が閉殻に、また新たに32、34が閉殻になるなどの変化があることが最近の研究でわかってきました。また、陽子過剰核は原子核の核力の対称性を調べるのに重要な領域となっています。

5)閉殻魔法数

原子・原子核が関わる極めて小さい世界では量子力学という法則が支配します。そこでは電子、陽子、中性子と言った粒子が原子や原子核内にとどまる状況を考えた場合、そのエネルギーはとびとびの値しか許されません。これにより原子や原子核に電子や陽子・中性子を1個、2個、3個…と加えていった場合、その加えるのに必要なエネルギーもとびとびとなります。そしてとびとびの程度がある個数のところで顕著に大きくなる場合があり、その個数の前後では反応のしやすさが急に変化します。このふるまいは例えばタマネギの皮のような階層構造に見立てて説明することもあります。その境のところでは他の個数の場合と比べて著しく反応がしにくくなります。原子の世界でヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンが不活性(他の原子とほとんど反応しません。これらは希ガスとして知られています)であるのはその表れで、それぞれ電子数が2、10、18、36、54、86に対応します。これらの数を閉殻数または閉殻魔法数と呼びます。原子核ではその不活性を示す個数は、安定核近辺では陽子の数、中性子の数とも2、8、20、28、50、82、126(中性子のみ)となっています。これらの数字が原子核における閉殻魔法数(または単に魔法数)です。原子と原子核で閉殻数が異なるのは、その支配している相互作用(つなぎ止める力)が電磁気力なのか、核力なのかという違いからきています。

6)核図表を用いたアウトリーチ活動

原子力機構ではここ数年の間「宇宙の錬金術」のタイトルで10以上のサイエンスカフェ(一般)、科学授業(高等学校)を行い、核図表(旧版)の配布、説明を行ってきました。この核図表は宇宙の元素の起源と原子核の性質との関係、または福島でのセシウム、ストロンチウムの発生の説明、医療分野での放射性同位体の説明、原子炉における高レベル放射性廃棄物の発生の仕組みなどといったさまざまな放射線関連の講演、セミナー、授業に利用することが可能です。本核図表の発展した形態として原子力機構が作製した、高さ軸を原子核の半減期などとした「3次元核図表」は上記の講演・授業で好評を得ています。

これまでに実施した最近の主な講演・授業は以下の通りです。

サイエンスカフェ・講演会
●平成25年科学技術週間サイエンスカフェ(2013年4月16日、文部科学省 情報ひろば)
●第38回高等学校総合文化祭自然科学部門プレ大会(2013年11月3日、つくば国際会議場)
●第21回サイエンスカフェinリコッティ(2013年11月30日、日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター)
●日本物理学会四国支部学術講演会(2014年6月18日、高知大学)

特別授業
●福島県立福島高等学校(2013年8月23日、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)プログラムの一環として)
●福島県立磐城高等学校(2013年11月30日、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)プログラムの一環として)

科学イベント
●サイエンスアゴラ(2013年11月9、10日、日本科学未来館)

など。


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