科学技術振興機構(JST)/東北大学/日本原子力研究開発機構

平成27年1月8日
科学技術振興機構(JST)
東北大学
日本原子力研究開発機構

絶縁体に光を照射してスピン流を創り出す新しい原理を発見
~新原理・新機能のエネルギー変換技術開発に道~

【ポイント】

JST 戦略的創造研究推進事業において、東北大学 金属材料研究所の内田 健一 准教授らは、特定の金属微粒子を含む磁石に可視光を照射することで、スピン注1(磁気)の流れを生成できる新しい原理を実証しました。

近年、持続可能な社会に向けた環境、エネルギー問題への取り組みが活性化する中、身近に存在する光、熱、振動、電磁波などをエネルギー源として利用するような、新しいエネルギー変換原理の創出が期待されています。例えば、クリーンで信頼性の高いエネルギー変換技術の候補として、太陽電池や熱電素子、圧電素子などを用いた発電技術が盛んに研究されています。

今回、内田准教授らは、特定の金属微粒子への光照射で誘起される「表面プラズモン注2)」と呼ばれる電子の集団運動を磁石の中で励起することで、光のエネルギーをスピン流に変換することに世界で初めて成功しました。また、これまでにスピン流を電流に変換する技術も確立しており、光のエネルギーから電流を生成する新たなエネルギー変換原理が創出されたことになります。

これまでに確立されてきた熱や音波、電磁波によるスピン流生成と同様の材料で、今回実証した光-スピン流生成も発現することが分かりました。このことから、電流やスピン流の駆動力として同時に利用可能なエネルギー源の選択肢をさらに広げられることが明らかになりました。今後の研究の進展により、表面プラズモンとスピン流を融合した新しい研究分野の形成や、外部電源を必要としない電気、磁気デバイスの研究開発に貢献することが期待されます。

本研究は、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構および金属材料研究所の齊藤 英治 教授(日本原子力研究開発機構 先端基礎センター 客員グループリーダー兼任)、日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センターの前川 禎通 センター長、安立 裕人 副主任研究員らと共同で行ったものです。

本研究成果は、2015年1月8日(英国時間)発行の英国科学誌「Nature Communications」においてオンライン公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
  研究領域 :「エネルギー高効率利用と相界面」
  研究総括 :笠木 伸英(JST 研究開発戦略センター 副センター長・上席フェロー/東京大学 名誉教授)
  研究課題名:「スピン流を用いた革新的エネルギーデバイス技術の創出」
  研究代表者:内田 健一(東北大学 金属材料研究所 准教授)
  研究期間 :平成24年10月~平成30年3月

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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