【用語説明】

[1] 田中貴金属工業株式会社

TANAKAホールディングス株式会社を持株会社とする田中貴金属グループにおいて、製造事業を展開するグループの中核企業。

[2] トリチウム

水素の放射性同位体。三重水素。

[3] 疎水性

水に対する親和性が低く、水に溶解しにくい性質。

[4] トリチウム回収システムの必要性

核融合炉の炉心で生成された不純物を未燃焼の燃料とともに排気し、これを処理して燃料成分を再利用のため抽出し、再び炉心のプラズマへ供給するシステムを燃料循環システムと呼びます。燃料循環システムは、1)炉心からプラズマ排ガスを排出する真空排気システム、2)プラズマ排ガスから水素同位体成分を分離・回収する燃料精製システム、3)水素を同位体別に分離することで燃料成分を分離回収する同位体分離システム、4)燃料成分を貯蔵する燃料貯蔵システム、5)炉心のプラズマへ燃料を供給する燃料供給システム、に大別されます。また核融合では燃料として消費した量のトリチウムは炉内のブランケットで生産・増殖することで補います。その際、長期運転に起因して、トリチウムが金属を介して冷却水に混入するため、大型のトリチウム水からのトリチウム回収システムが必要です。よってこのトリチウム水からのトリチウム回収システムの高濃度対応および小型効率化に向けた触媒開発が課題でした。

[5] 新型転換炉ふげん

熱中性子炉として世界で最大のMOX(混合酸化物)燃料集合体の利用を通じて、日本のプルトニウムリサイクル技術を確立。現在は廃止措置中。

[6] 重水精製

軽水が混入し濃度が低下した劣化重水を、原子炉の減速材として使用できる濃度の原子炉級重水に再濃縮することです。

[7] 液相化学交換プロセス

トリチウム水からのトリチウム回収システムは水素から水蒸気を介して水にトリチウムを移行させることでトリチウム水を濃縮する液相化学交換塔と濃縮したトリチウム水を電気分解し濃縮トリチウムガスとする電解槽から構成されます。液相化学交換塔内には反応部と吸収部(充填層)がセットとなったユニットを塔内に積み重ね、反応部ではトリチウムを水素から水蒸気に移行させ、吸収部ではトリチウムを水蒸気から水に移行させます。この反応を連続させることで塔の下部に向けて徐々にトリチウム水を濃縮させます。今回開発した触媒は、本プロセスの触媒部に使用します。触媒プロセスを長時間にわたり行うためには、触媒の高い安定性が必要になります。今回開発した触媒は、トリチウムを取り扱う設備が有すべき難燃性の確保とトリチウム水の高濃縮時に問題となる耐放射線性の向上にあわせて、高い反応率を実現しており、トリチウムの濃度に関わらず、トリチウム水の濃度を高めることができます。

[8] 水素酸化触媒

疎水性能を付した触媒は水蒸気による反応抑制効果を受けることなく、室温近傍温度での使用においても水素の効率的な酸化が可能です。酸化効率が悪い極低濃度水素においても室温酸化ができます。

[9] 白金の担持量

触媒は多くの白金の微細な粒子が無機材料の表面に散らばってできています。表面に乗せる白金の量が担持量です。無機材料の容積あたりの白金の重さで表わします。

[10] 細孔径

触媒となっている無機材料には多くの細かな孔があいています。その孔の平均径のことです。多くの孔があいていることで、容積当たりの白金が担持できる表面積を増やすことができます。


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