平成26年11月10日
国立大学法人東京大学
独立行政法人日本原子力研究開発機構
小暮敏博(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授)
矢板 毅(日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究センター 量子ビーム反応制御・解析技術研究ユニット・ユニット長)
◆福島県の放射能汚染された土壌において、放射性セシウムを吸着している微粒子の正体とその微粒子中における放射性セシウムの分布を明らかにした
◆これまでの研究では、放射性セシウムがどのような物質に吸着しているかを主に室内実験から推定するだけであったが、今回は実際の汚染土壌を使ってその物質や吸着状態を初めて決定した
◆福島地方の放射性セシウムの今後の動態(移動や拡散)や、土壌からの除去方法の研究、除染作業で発生した汚染土壌の容積の減少化方法の開発などに大きく貢献するものである
福島第一原子力発電所事故によってもたらされた土壌の放射能汚染は今日でも大きな社会問題である。しかし、放射能の主体である放射性セシウム(注1)が土壌中にどのように存在するかは未だ明確ではなく、このため除染のための研究・開発等もなかなか進んでいない。
東京大学大学院理学系研究科の小暮敏博准教授の研究グループは、(独)日本原子力研究開発機構、(独)物質・材料研究機構、(独)国際農林水産業研究センターとの共同研究によって、福島県飯舘村から採取した土壌中で放射性セシウムを固定している多くの微粒子を、さまざまな電子顕微鏡技術等を駆使することによって特定・解析し、さらにそのような微粒子中で放射性セシウムがどのように分布しているかを今回初めて明らかにした。
これらの成果は、福島地方の今後の長期的な放射性物質の拡散・移動等の動態予測、化学的な処理による土壌中の放射性セシウムの除去方法の開発、除染作業によって膨大に発生しつつある汚染土壌の容積の減少化方法や貯蔵方法の提案などに大きく貢献することが期待される。
参考部門・拠点: | 量子ビーム応用研究センター 福島環境安全センター |