用語説明

1)バーミキュライト

図3

バーミキュライトは福島県内に偏在する粘土鉱物の一つで、セシウムイオンに対して非常に高い親和性を示します。国外では、過去の核実験等で汚染させた地域において放射性セシウムとの関連で精力的な研究が実施されてきました。国内でも、東京電力株式会社福島第一原子力発電所での事故以来、頻繁に研究対象として取り上げられています。その構造は、ケイ素やアルミニウムの酸化物からできた薄いシート状の無機結晶が何層にも積み重なって形成されており、その層間に陽イオンを取り込むことが可能です。セシウムイオンもこの層間に取り込まれ吸着します。

バーミキュライトの産地は、南アフリカなど外国産が大部分をしめていますが、国産バーミキュライトは、福島県産が有名で、焼成加工されたバーミキュライトは、園芸用の土壌改良材として広く一般販売されています。

2)中間貯蔵施設

福島県において、除染で取り除いた土や放射性物質に汚染された廃棄物を、最終処分をするまでの間、安全に管理・保管するための施設です。詳細は環境省HP(http://www.env.go.jp)を参照のこと。

3)メゾスコピックレベル

物質科学の研究分野ではミクロとマクロの中間領域の空間スケールを指します。ここでいうミクロとは、原子・分子レベルのサイズを指し、一般的には0.1−1 nmの空間スケールを意味します。マクロとは1 mm(= 1000 nm)以上の空間スケールを指すことが一般的です。つまり、1−1000 nmの空間スケールが本文中のメゾスコピックレベルに対応します。

4)X線小角散乱法

X線を試料に照射すると試料内部の構造に依存して、X線が様々な角度に、様々な強度で散乱されます。この散乱されたX線のうち、散乱角が小さいものを観測する測定方法をX線小角散乱法と言います。散乱角が小さなX線には、上記のメゾスコピックレベルの構造情報が含まれるため、これを分析することで定量的な構造情報を得ることができます。

5)中性子線

上記のX線小角散乱法に加えて、中性子小角散乱法という分析手法が存在します。X線は試料中の電子と相互作用して散乱されるため、重い(原子番号の大きな)元素からの構造情報を抽出することに長けています。一方、中性子線は試料中の原子核と相互作用して散乱されるため、その散乱能は原子番号に比例せずに、それぞれの元素が固有の散乱能を示します。この場合、X線では検出が難しい水素からの構造情報を抽出することが可能となり、粘土鉱物中の水分子の挙動を調べることができます。従って、X線と中性子線の双方を相補的に用いることが、より詳細な試料の状態を明らかにすることに繋がります。中性子線の利用は、茨城県東海村にKEKとJAEAが共同で建設・運営している加速器施設(J-PARC)やJAEAの研究用原子炉(JRR-3)において実施することが可能です。


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