【用語説明】

※1 ミュオニウム : 電子とミュオンの束縛状態。水素原子の陽子が、ミュオンに置き換わった粒子。超低速ミュオンの生成には熱速度程度のミュオニウムが用いられる。

※2 ミュオン : 素粒子の1つ。レプトン第二世代の粒子。

※3 異常磁気能率(g-2) : 磁気能率は素粒子の持つ固有の性質の一つでスピンに伴う物理量。ボーア磁子と無次元量g因子との積で表される。仮想光子の量子効果を含めない場合、g=2。仮想光子の量子効果によって、一般には磁気能率はg=2からずれる値をもつことが分かっている。これを「異常磁気能率」と呼ぶ。未知の新粒子もこの値のずれを引き起こす。

※4 電気双極子能率 : 大きさが等しい正負の電荷が空間的に離れて存在することによって生じる電荷分布の偏りを表す物理量。空間反転および時間反転対称性を破ることが知られている。CPT定理を用いると、CP対称性を破ることを意味するため、新しいCP対称性の破れの起源を探索する方法として期待されている。素粒子の電気双極子能率は標準模型で極めて小さい値が予想されており、現在までに有限の値は測定されていない。

※5 ミュオン顕微鏡 : ミュオンビームを用いた顕微鏡のこと。ミュオンを用いることで電子顕微鏡などでは得られない物質の磁気的性質に関する微細イメージを取得することができる。現在J-PARC物質・生命科学実験施設で建設が進められており、極微試料、微細構造研究や表面・界面研究の可能性を飛躍的に広げると期待されている。

※6 時間反転対称性 : 物理的対象に対して時間の向きを反転したときの対称性のこと。多くの物理現象は時間反転対称性を有する。CPT対称性を仮定すると、時間反転対称性を破る現象は、CP対称性も破れている必要がある。

図1 J-PARCでの異常磁気能率(g-2)、電気双極子能率(EDM)の精密測定概念図

図2 レーザー加工されたシリカエアロゲル。左:表面付近の様子。  400μm間隔で穴が空けられている。右:全体形状

図3 ミュオニウムが陽電子・ニュートリノ・反ニュートリノと電子に崩壊した際に放出された陽電子の時間分布。標的からの距離によって分けた4つの領域について調べた結果を示す。◯が無加工のシリカエアロゲル、●が加工したシリカエアロゲルを使った場合を表す。標的から離れた位置(Region1、2、3)で、放出された陽電子の数(=生成されたミュオニウムの数)が、加工後の方が大幅に増加していることが分かる(赤い矢印)。


戻る