平成26年5月21日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
約100年前、アインシュタインは鉄の棒に帯びさせた磁気の量を変化させることで回転運動が誘起される現象を発見しました。これは物質の持つ磁気的性質と回転運動の間に密接な関係があることを示唆しており、その後の量子力学の発展によって、素粒子の「スピン」と呼ばれる性質を通じて、磁性と回転運動とが結び付くことが分かりました。
ミクロの世界を精密に記述するための基礎理論である量子力学を基盤として、機械工学をナノ領域に発展させたナノメカニクスの世界では、現在、個々の素粒子のスピンを制御することによって物体を回転させるといった、既存のモーターとは全く異なる原理で作動するナノサイズのモーターの実現が期待されています。
また、一方では、磁場中に置かれた原子核スピンの様子から、原子の化学結合状態を分析する手法として核磁気共鳴法4が確立され、これを応用した核磁気共鳴画像法(MRI)が現在、医療分野で広く利用されています。
今回、当研究グループは、この核磁気共鳴法を独自に発展させ、1秒間に1万回転する物質中の原子核スピンを分析する手法を開発しました。これにより、高速回転運動が素粒子のスピンへ与える効果を直接測定することに成功しました。
本成果は、かつてアインシュタインらが見出した磁性と回転運動の関係を、量子力学的な観点から様々な種類の原子核の回転運動に対する応答を本格的に分析することが可能となり、今後、物体の回転運動を用いてスピンを制御するナノメカニクス研究の加速が期待されます。
本研究成果は、日本応用物理学会誌「Applied Physics Express(アプライド•フィジクス•エクスプレス)」のオンライン版に5月21日に掲載される予定です。参考部門・拠点: | 先端基礎研究センター |