【用語解説】

※1 陽電子

素粒子の1種。電子の反粒子で、電荷が正であること以外は電子と同じ性質をもっている。電子と出会って対消滅しγ線に変わる。本研究では、対消滅は利用せず、消滅しないで結晶表面からブラッグ反射(回折)する陽電子を利用した。

※2 低速陽電子ビーム

加速器から得られる高エネルギー電子ビームを金属タンタルの板(コンバータ)に入射すると、高エネルギーの制動放射X線(荷電粒子が物質中を通過する際、原子核により進行方向を曲げられて放出されるX線)が生じ、その一部がコンバータ内で電子・陽電子対に転換、陽電子が生じる。 その陽電子を、コンバータの下流に置いたタングステン薄膜(モデレータ)に入射すると、陽電子の一部がその中で熱化し、表面に戻ってきて勝手に飛び出してくる。 これを任意のエネルギーに加速したものが低速陽電子ビームである。

※3 臨界視射角

陽電子の全反射はある大きさの視射角(陽電子の入射方向と結晶面との間の角)を境に起きたり起きなかったりする。 全反射が起きる最も大きな視射角のことを指す。

※4 Si(111)-(7×7) DAS 構造

結晶の表面は、原子配列がそこで終わる面であるが、内部の原子配列のままでは不安定なことが多く、内部とは異なる配置になって安定化する。 その例としてシリコン(111)表面は、1959年に、結晶内部の周期に対して7倍×7倍の(7×7)超周期対称性をもった面になることが発見された。 しかし、実際にどのような原子配置になっているかは長い間わからず、1985年になってようやく、東京工業大学教授の高柳邦夫氏らにより、DAS構造が正しいことが明らかになった。 吸着原子(Adatom)、積層欠陥層(Stacking-fault layer)、ダイマー層(Dimer layer)からなるので、それぞれの頭文字をとって発音しやすいように並び替えて、DAS構造と呼ばれる。


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