独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年3月25日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

放射性セシウムのガンマ線に対する各種建物内の線量低減を評価

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下、「原子力機構」という。)原子力基礎工学研究部門放射線防護研究グループの古田琢哉研究員らは、環境中に沈着した放射性セシウム1)から放出されるガンマ線に対する各種建物内の線量低減を評価する技術を開発しました。東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)からの復興対策で、住民帰還へ向けた被ばく線量レベルの予測、被ばく低減対策等に活用することが期待できます。

平成23年3月に発生した福島第一原発事故により、大量の放射性核種が発電所のサイト外へ放出され、現在の環境中の線量へは放射性セシウムが寄与しています。これまで、放射線モニタリングの測定値から推計した被ばく線量を参考にして、様々な被ばく低減対策が立案されてきました。一方、今後の復興で重要な住民帰還へ向けて、帰還後に想定される被ばく線量レベルの予測等が必要となりますが、その中でも日常生活で滞在する各種建物内の線量低減の正確な推定は重要となります。

そこで、福島県内の建物を調査し、滞在時間、用途や規模等を考慮して、線量低減を評価する対象として、代表的な27種類の建物を選定しました。各建物のモデルを用いた最新の計算シミュレーション手法2)で、土壌中に広く一様に沈着した放射性セシウムからのガンマ線が建物内に入射する様子を模擬し、屋外と屋内の線量比(線量低減係数)の傾向を解析しました。解析結果の妥当性については、実測値と比較して検証しました。

本手法により、建物内の線量分布を詳細に計算し、その結果を二次元の画面上に図示することで、各建物の構造等が内部の線量低減効果に与える影響を分析しました。その結果、木造家屋では建物の大きさ等が、コンクリート造の建物では遮蔽効果の小さい窓の配置が内部の線量低減に影響を与える等の傾向を解明しました。今後は、数戸の家屋が隣接する住宅等、実際の生活環境により近い状況を考慮した解析を進める予定です。本手法を利用し得られるデータは、住民帰還へ向けて国から示されている方針の中で、帰還後の被ばく線量レベルの予測、被ばく低減対策等へ活用が期待できるものです。

なお、本研究成果を取りまとめた「JAEA-Research 2014-003」は、平成26年3月に刊行されました。

以上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門

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