用語説明

(注1)高温ガス炉

高温ガス炉では900℃を超える高温の熱を原子炉から取り出せることから、熱効率に優れるとともに、水素製造等の発電以外での利用など原子力の利用分野の拡大に役立つ原子炉である。

高温ガス炉は、冷却能力の喪失、冷却材の喪失のような事故時においても、人の手を介さずとも、自然現象だけで止める、冷やすことができる設計が可能な原子炉である。このような優れた固有安全性を生み出す理由は以下による。

このような高温ガス炉の優れた固有の安全性は、我が国初の高温ガス炉HTTRを用いて実証中である(図2)。HTTRは、熱出力30MW(3万kW)、原子炉出口冷却材最高温度は950℃、1998年(平成10年)11月に初臨界、2001年(平成13年)12月に熱出力30MW及び原子炉出口冷却材温度850℃、2004年(平成16年)4月に原子炉出口冷却材温度950℃、2010年(平成22年)3月に 950℃、50日間高温連続運転を達成した。

図2 HTTRを用いて、高温ガス炉の固有の安全性を実証中

(注2)等方性黒鉛

等方性黒鉛は、製造時において粉砕した原料(コークス、コールタールピッチ等)を冷間静水圧プレス法(CIP:Cold Isostatic Pressing)により3次元的に等方に成型を行うことで、黒鉛ブロック全方向に等方的な特性を持たせた黒鉛である。等方性黒鉛は、高密度・高強度であり、3次元的に均一な特性を有しているため、太陽電池、LED等の製造装置の一般工業用部材として広く使用されており、特に半導体用ではシリコン引上装置の主たる部材であるルツボ、ヒーター、熱シールド等に使用されている。また、原子力分野では高温ガス炉の炉心構成材(図3)等に用いられる。このような等方性黒鉛は、高密度、高純度であり、燃料として用いられる石炭や木炭とは全く異なる難燃性の材料である。世界の等方性黒鉛については、東洋炭素株式会社、イビデン株式会社、東海カーボン株式会社、新日本テクノカーボン株式会社の国内4社が世界の約65%のシェアを有している。

図3 高温工学試験研究炉(HTTR)の炉心に用いられている等方性黒鉛IG−110(東洋炭素株式会社製)の黒鉛ブロック

(注3)空気等の侵入に対する安全性

高温ガス炉の炉心構成材に用いられる等方性黒鉛は、高密度、高純度であり、難燃性の材料であるが、空気等が侵入するような瞬時配管破断事故時においても、将来の高温ガス炉の材料として究極的に安全性を高めることを追求するための研究を進めている。

(注4)国際科学技術センター(International Science and Technology Center:ISTC)

旧ソ連において大量破壊兵器及びその運搬手段の研究開発に従事していた研究者・技術者が参画する平和目的の研究開発プロジェクトを支援するために設立された国際機関。事務局本部はモスクワ。

パートナープロジェクトは、民間企業等が「パートナー」として直接、資金的貢献を伴う参画を行うもの。パートナーとなることにより、企業等はロシア・NISの優れた研究者と比較的安価な研究経費で共同プロジェクトが実施でき、かつ、課税免除、通関の容易さ等の面でも優遇される。現在登録されているパートナーは約450団体で、そのうち、日本のパートナーは80団体。

(外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/technology/istc_1.html より抜粋。平成24年2月。)

(注5)照射試験プロジェクトの体制

照射試験プロジェクトの体制

(注6)WWR−K炉

(注7)カザフスタン高温ガス炉(KHTR)計画

資源大国である一方、技術立国を掲げるカザフスタン共和国では、クルチャトフ市に、発電および地域暖房を目的とし、将来的には水素製造を視野に入れた、原子炉熱出力50MW(5万kW)規模の小型高温ガス炉を建設する、カザフスタン高温ガス炉(KHTR)計画検討中であり、2008年(平成20年)にカザフスタン国立原子力センター(NNC: National Nuclear Center)が、予備概念検討を完了した。

2011年(平成23年)5月6日に「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカザフスタン共和国政府との間の協定」(日・カザフスタン原子力協定:www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_55.html)が発効。本協定には、軽水炉とともに、高温ガス炉の設計/建設/運転及び安全性に関する協力について記載されている。また、2011年(平成23年)6月にカザフスタン共和国において政府布告された原子力部門発展プログラムにおいては、高温ガス炉の建設とそれを用いた発電と地域暖房等が記載されている。

原子力機構は、2007年(平成19年)4月の日本−カザフスタンのハイレベル官民合同ミッションでの「原子力研究開発に関する覚書」の調印以降、カザフスタンの要請に基づきKHTRに関する技術協力を実施してきた。研究協力の枠組みとして、設計、安全研究、人材育成、基礎研究、産業創生に関する覚書を締結し、さらに、設計、安全研究、基礎研究においては、実施取決めを締結し、研究開発等の協力を進めている(図4)。具体的な技術協力として、KHTRの概念検討、高燃焼度燃料の開発、耐酸化黒鉛の研究、人材育成のための講義を行っている。

図4 高温ガス炉分野における原子力機構とカザフスタン共和国関係機関との協力の枠組み


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