独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年6月18日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

ウラン化合物の超伝導前駆状態における電子ひずみの原子レベルでの測定に成功
−磁気に誘発される新しい超伝導機構の可能性−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎)先端基礎研究センター重元素系固体物理研究グループの神戸振作グループリーダーらは、ミシガン大学のRussell Walstedt教授と共同で、ウラン化合物超伝導体において極低温で現れる電子状態のひずみを原子レベルで精密に測定することに成功しました。

ウラン化合物超伝導体URu2Si2には、極低温(17.5K(約-256℃)以下)のある領域で現れる、25年来解明されていない未知の状態があります。超伝導転移はさらに低温(2K(約-271℃)以下)で起きるため、この状態は超伝導前駆状態と考えられます。この化合物の電子状態は通常の状態では4回対称です。しかし、未知の状態への転移に伴い4回対称から2回対称1)にひずむことが報告されており、この2回対称状態を詳細に知ることが未知の状態解明への一つの鍵となっていました。従来、2回対称状態の探索には、試料全体に特定方向の磁場をかけてその応答から磁気異方性2)を見積もる、という方法がとられていました。しかし、この方法では測定の精度が試料のサイズに依存するという難点がありました。

これに対して、核磁気共鳴(NMR)法という、原子一つ一つを区別して測定できる手法を用いることで、試料サイズに関係なく精密な磁気異方性の測定を行うことに成功しました。得られた結果は、この未知の超伝導前駆状態が磁気状態としてもこれまで観測されたことのない全く新しい電子状態であることを示唆しており、磁気に誘発される超伝導の起源の理解を大きく推進すると考えられます。

なお、本研究成果は、近日中に米国物理学会誌「Physical Review Letters」電子版に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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