独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年5月17日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

世界最高のスピン偏極率をもった陽電子ビームの開発に成功
−電子スピンの新たな検出法の開発に道筋−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターのスピン偏極陽電子ビーム研究グループは、陽電子線源にゲルマニウム-68を用いて世界最高のスピン偏極率1)(47%)をもつ陽電子ビーム2)の開発に成功しました。

近年のナノテクノロジーの急速な進展にともない、電子の磁気的性質である「スピン」を使い、従来の電子回路にはない新たな原理で動作する電子デバイス研究(スピントロニクス3))が注目を集めています。この分野のデバイス開発等の研究には、材料となる薄膜物質や、その界面・表面に存在する電子スピンの挙動を知ることが不可欠で、その検出法の開発が極めて重要な研究課題となっています。

当研究グループでは陽電子消滅法4)と言われる方法に着目し、照射する陽電子ビームのスピンの向きを揃える(偏極させる)ことで、従来の陽電子ビームでは難しかった電子スピンの検出を目指して研究を進めてきました。今回、加速器を使って高強度の陽電子線源(ゲルマニウム-68)を生成し、この線源を用いたものとしては世界最高のスピン偏極率 を持つ陽電子ビームの開発に成功しました。この高スピン偏極陽電子ビームを、電子スピンを一方向に揃えた純鉄に打ち込み、電子と陽電子が結合消滅するときに発生するガンマ線を観測したところ、電子スピンの検出が可能であることが実証されました。本成果により、スピン偏極陽電子ビームを用いた陽電子消滅法が、スピントロニクス開発に必要な電子スピンの新たな評価手法となることが期待されます。

本研究成果は、放射線研究に関する学術誌『Nuclear Instruments and Methods』に5月17日付でオンライン掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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