独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年11月16日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

(お知らせ)海底堆積物中の放射性セシウム濃度の変動要因を解明
−茨城県北部沿岸での継続的な海洋調査で明らかに−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:鈴木篤之)原子力基礎工学研究部門 環境動態研究グループの乙坂重嘉研究副主幹らは、東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する放射性セシウムの海底堆積物中での分布に影響を与える主要な因子を明らかにするため、茨城県北部沿岸に、水深26mから95mの9つの定点を設け、2011年6月から2012年8月まで5回にわたって堆積物試料を採取し、堆積物の深さ、粒径、存在形態別の放射性セシウム濃度を分析しました。

堆積物の深さ10cmまで積算した放射性セシウムの蓄積量は、全体として水深の浅い観測点の方が大きく、2011年8月以降、目立った変動は見られませんでした。また、堆積物中の放射性セシウムの多くは鉱物粒子に強く沈着しており、再溶出しにくいことがわかりました。これらにより、調査海域の海底への放射性セシウムの主な沈着は、事故後半年以内に起こったと言えます。

水深50m未満の浅海域では、放射性セシウムは主に堆積物の下層(3cm以深)に沈着していました。砂や礫で構成される浅海域の堆積物では、その空隙を通って、放射性セシウムが堆積物の深部に運ばれ、沈着したと考えられます。また、浅海域の一部の観測点では、堆積物上層の放射性セシウム濃度が一時的に変動することもわかりました。この海域では、堆積物を構成する小径(75µm未満)の成分が、大径の成分に比べて数倍高い放射性セシウム濃度を持つことから、放射性セシウムが吸着した小径の堆積物が、海底付近での海水の流動に伴って移動と滞留を繰り返すことにより、濃度変動を生じたと推測されます。また、この小径の堆積物の一部は沖合海域へと運ばれ、流速の低下とともに堆積物の表層に滞留し、固定されると考えられます。

本研究で得られた知見は、現在開発中のシミュレーションモデルに適用し、放射性セシウム分布の将来予測にも役立たせる予定です。

なお、本調査で得られた放射性セシウム濃度及びその変化の傾向は、国のモニタリング調査による結果とも整合しています。

以上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門

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