独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年7月20日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

海外若手研究者・技術者のためのJMTRオンサイト研修を本格的に開始
−原子力人材の育成を推進し、国際的な頭脳循環を加速−
(お知らせ)

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長:鈴木篤之 以下、「原子力機構」という。】では、今年度から海外の若手研究者・技術者を対象として、原子力機構が有する材料試験炉JMTRの照射利用を題材としたオンサイト研修を茨城県大洗町にある大洗研究開発センターで開始します。研修は7月23日から8月10日にかけて行い、アジア諸国等5カ国から選抜された総数16名が参加します。

JMTRでは、軽水炉の安全対策高度化や科学技術の向上等、世界の共通的課題の解決に活用される国際的な研究開発基盤の構築を進めており、日本の最先端の中性子照射技術を世界に広めることにより、それらを基にした技術開発を促進し、その技術を波及させることにより新たな研究者・技術者の来日を促す国際的な頭脳循環(注)を目指しています。

一方、アジア諸国などでは、材料試験炉がないため、照射技術やその活用方法について十分な知識や経験がなく、将来の発電用軽水炉の導入を視野に入れた原子力人材の育成が急務となっています。

本研修のカリキュラムは原子力の基礎理論やJMTRにおける照射利用、安全管理に関する座学のほか、JMTRの照射利用のための核・熱設計などの実務や新たに整備した材料試験炉のシミュレータを用いた原子炉や照射設備の模擬運転等により構成されており、基礎から応用まで効率よく学習できる内容としております。

本研修を通じて、“原子炉内で中性子が発生してから消滅するまでのふるまいをイメージできる原子力人材”を育成し、アジア諸国等の原子力技術レベルの向上に貢献するとともに、国際的な頭脳循環を加速してまいります。

注)頭脳循環
研究者・技術者が、研究・開発を行うために国や地域を超えて移動し成長・活躍すること。

【研修開始の背景】

文部科学省の最先端研究開発戦略的強化費補助金を用いた最先端研究基盤事業において、14の補助対象事業の中で原子炉施設として唯一、原子力機構の材料試験炉JMTRが平成22年6月に最先端研究基盤として選定されました。本事業では、アジアの中核試験炉として国際的研究開発の拠点化を目指し、国際的な頭脳循環を加速するためJMTRに最先端照射設備を整備しています。

国の施策では、アジアを始めとする世界の中で日本がリーダーシップを発揮する求心力のある科学技術国際戦略を立案・推進し、国際社会の中で頼れる存在を目指すことが示されていることから、この一環として、発電用軽水炉の導入を計画しているアジア諸国をはじめとした海外の原子力人材を育成することを目的として、JMTRの照射利用を題材とした「アジア若手研究者・技術者の実務研修」を平成23年度に2週間にわたって試行的に開催しました。本研修には、カザフスタンから5名、タイから5名の計10名が参加し、研修生からも好評を得ました。

本研修実績を踏まえ、アジア諸国以外にも枠を拡げるとともに、研修内容を見直した結果、期間を3週間に拡張した「海外若手研究者・技術者のためのJMTRオンサイト研修」を本格的に開始することとしました。

【海外若手研究者・技術者のためのJMTRオンサイト研修】

(1)研修の概要

本研修では、まず、原子力の基礎理論や照射試験の一連の流れを理解してもらうため、JMTRの概要や照射試験について講義します。次に、現場で実務を担当している職員の指導の下で、JMTRの照射試験に用いるキャプセルの核設計や熱設計など一連の実務や、新たに整備した材料試験炉のシミュレータを用いた通常運転時や事故時における原子炉や照射設備の模擬運転の実習を行います。

さらに、派遣機関からの要望に応え、日本原子力発電株式会社に依頼し、教育訓練用小型シミュレータを用いたBWRの模擬運転実習を行います。その他、JMTRの運転管理、RI製造等の利用管理、照射試験に関わる技術開発、福島第一原子力発電所事故の状況などの講義を実施します。

(2)主な研修項目とそのねらい

主な研修項目とそのねらい

(3)受講者

本研修には、マレーシアから3名、タイから3名、インドネシアから3名、カザフスタンから5名、ポーランドから2名の総数16名が参加する予定です。

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

以上


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