独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年6月26日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

原子力新興国での利用に適した小型高温ガス炉の炉心の高度化に係る成果をカザフスタンにおける国際会議で発表(お知らせ)

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 鈴木篤之。以下「原子力機構」という。】は、耐熱性に優れたセラミック被覆粒子燃料および熱容量の大きい黒鉛構造物の使用と、長尺形状および低出力密度を採用した炉心設計により、高温ガス炉が有する固有の安全性を最大限に活かし、外部電源が喪失し、かつ、冷却材が喪失するような事故においても、環境や人に有害な影響を及ぼさない、安全性に優れた小型高温ガス炉の概念検討を2010年より行っています。小型高温ガス炉の熱出力は50MW(5万kW)程度であり、送電網が発達していない新興国の地方都市における分散型の電力供給と熱供給を念頭に置いています。検討に際しては、国内企業((株)東芝、富士電機(株)、川崎重工業(株)、原子燃料工業(株)、清水建設(株)、丸紅ユティリティ・サービス(株))の協力を得ながら進めています。

この度、小型高温ガス炉の炉心の高度化に関する成果を、今月カザフスタン共和国アルマティ市で開催された「原子力の平和利用の課題に関する若手科学者・専門家国際会議」で、上記6社との共著で発表しました。会議では、小型高温ガス炉の基本仕様および系統構成、ならびに炉心核熱流動設計などを報告しました。従来設計に対して、炉心核熱流動設計を改良し、コスト低減を可能とする高性能な炉心を可能とさせたことなどが評価され、本発表は、外国人による約20件の発表の中から、3件選出されたベストレポート賞を受賞しました。

原子力機構が所有する高温ガス炉HTTRの炉心出入口の温度差は、約550℃と大きく、燃料最高温度を制限値以下に維持するためには、3%〜10%の12種類の濃縮度の異なるウラン燃料を用いて出力分布を最適化する必要がありました。今回、3種類の濃縮度により、出力分布を最適化し、その状態を維持することに成功しました。具体的には、ウラン濃縮度および反応度調整材を調整することで、出力分布の最適化を図り、これにより炉心下部の燃料温度を低くし、鉛直方向の燃料温度分布を平坦化することができました。その結果、HTTRの約1.4倍の出力密度が実現できる見込みです。これは、単位出力あたりの建設コストおよび燃料コストの低減につながる成果です。

以上

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

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