用語説明

1) 希土類金属(レアアースメタル)
周期律表で原子番号57番のランタンLaから71番のルテチウムLuまでのランタノイド族と呼ばれる15元素と21番のスカンジウムSc、39番のイットリウムYを合わせた計17元素からなるグループを希土類金属と呼びます。水素吸蔵合金の他にも磁性材料として利用されており工業的にも重要な金属です。
2) 大強度陽子加速器施設J-PARC
茨城県東海村に原子力機構とKEKが建設した世界最大規模の陽子加速器群と実験施設群の呼称です。J-PARCはJapan Proton Accelerator Research Complexに由来しています。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子等を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用を行っています。中性子を利用した研究はJ-PARC内にある物質・生命科学実験施設で行われており、この施設では世界最高性能のパルス中性子を利用することが可能です。
3) 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す独立行政法人理化学研究所の施設で、その管理運営は高輝度光科学研究センターが行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来しています。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、強力な電磁波のことです。SPring-8では、この放射光を用いて、基礎研究から産業利用まで幅広い研究が行われています。
4) 遷移金属
周期律表の第3族から第11族の間に存在する元素の総称です。
5) 第一原理計算
経験的パラメータや実験データを用いずに行う理論計算で、原子核と電子それぞれの間で働く相互作用から量子力学に基づいて物質の性質(結晶構造や電子状態など)を計算します。
6) アルカリ金属
周期律表の第1族のうち水素を除いた6元素(リチウムLi、ナトリウムNa、カリウムK、ルビジウムRb、セシウムCs、フランシウムFr)のこと。
7) 重水素化物
水素化物の水素(H)の部分が重水素(D)で構成された化合物。一般に水素を含む物質の中性子回折実験では水素を重水素で置き換えた重水素化物が用いられます。中性子は原子核で散乱されますが、干渉性散乱と非干渉性散乱という2つの性質があり、非干渉性散乱は無秩序さを反映して回折を生じない性質で、回折パターンのバックグラウンドが増大する原因となります。水素は非干渉性散乱の影響が強いため、干渉性散乱の方が支配的な重水素に置換した試料を用いることで、構造解析に適した回折パターンの取得が可能になります。
8) ダイヤモンドアンビルセル
ダイヤモンド用いた小型の高圧発生装置。ダイヤモンドは圧力を発生させる部品(アンビル)として用いられます。ガスケットと呼ばれる金属の板に小さな穴をあけ、その穴に試料と圧力媒体を入れて対向する2つのダイヤモンドアンビルで挟み荷重を加えることで高圧を発生します。ダイヤモンドの先端のサイズによって発生できる圧力が異なりますが、試料の量が微量であるため、SPring-8のような放射光を利用することで高圧力下においても高精度の測定が可能となります。
9) パリ・エディンバラ・プレス
パリ大学とエディンバラ大学で開発された対向アンビル型の高圧発生装置。広い開口角を持っており、またトロイダルアンビルと呼ばれる先端に半球状のくぼみと環状の溝があるアンビルを使用することで試料の体積を稼ぐことができるため、ヨーロッパを中心に中性子回折実験で多く利用されています。アンビルの材質は超鋼(タングステンカーバイト WC)や焼結ダイヤモンドが使用されます。リング状、またはカプセル状の金属ガスケットに試料と圧力媒体を入れて対向する2つアンビルで挟み荷重を加えることで高圧を発生します。

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