独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年4月20日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

高強度レーザーを用いた超高出力ガンマ線の発生機構を発見
−新しい超高出力・超短パルスガンマ線源の提案−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 鈴木篤之】量子ビーム応用研究部門の中村龍史研究副主幹らによる研究チームは、チェコ科学アカデミー物理研究所、ドイツマックス・プランク研究所、ロシア科学アカデミープロホロフ研究所の協力のもと、高出力レーザーと固体ターゲットを利用した新しい超高出力・超短パルスのガンマ線の発生機構を発見しました。

荷電粒子が円運動のように加速度運動をする場合には、電磁波を放出するとともにその反作用(放射反作用)を受けて減速することが分かっています。強いレーザー光を小さく絞って強い電磁場を作り、その中に電子をさらせば、電磁場による加速度運動をしますが、これまでは、レーザー光の強度が高くないために、放射反作用の効果は無視されてきました。しかし、近い将来に、10ペタワット(10の16乗ワット)という高出力のレーザーが利用できるようになると、光の電磁場から電子が受ける加速度は飛躍的に大きくなるので、放射反作用の効果も大きくなり、減速時に放出される電磁波が強くなって、レーザー光による電磁場の強さに迫るような現象が起こることが予想されます。このような高強度レーザーを物質に照射した際に、物質中で複雑な運動をする電子の放射反作用の効果が、マクロな意味でどのような影響を及ぼすのか、またどの程度重要になるのか、などはこれまでに解明されていませんでした。今回、放射反作用の効果を取り入れた理論計算とシミュレーションにより、高強度レーザーと固体プラズマとの相互作用について調べたところ、放射反作用の効果が無視できないほどに大きくなることを見いだしました。更に、その際に放出される電磁波に着目したところ、レーザー及びターゲットを適切に選ぶことで、レーザーエネルギーの30%以上が放射反作用で発生する電磁波に変わり、電磁波はガンマ線パルスとして放出されることを発見しました。このときのガンマ線パルスの持続時間は、レーザー照射時間程度(数10フェムト秒 (フェムト秒=1千兆分の1秒))になるので、今回の研究成果は、ペタワットを超える、これまでにない超高出力のガンマ線発生の可能性を示しています。

今回の発見されたガンマ線の発生機構は、これまでにない高出力で超短パルスのガンマ線源を実現する可能性を持っており、将来的には、宇宙物理や原子核物理の解明やガンマ線イメージング等への応用が期待されます。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」( 4月27日号)の掲載に先立ち、同誌の電子版に近日中に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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