独立行政法人日本原子力研究開発機構/太陽鉱工株式会社

平成23年6月17日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
太陽鉱工株式会社

医療診断用ラジオアイソトープの国産化に係る遠隔操作型Moリサイクル手法開発に成功

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。) 及び太陽鉱工株式会社(社長 鈴木一誠:以下、「太陽鉱工(株)」)は、脳血流、心機能、がん等の核医学診断において必要不可欠な医療診断用ラジオアイソトープ(RI)のテクネチウム-99(99mTc)の原料であるモリブデン-99(99Mo)の一部国産化の一環として、ホットセル内で遠隔操作可能なMoリサイクル手法の開発に成功しました。

現在、国内で使用されている99Moは、ウランの核分裂生成物から分離・精製する「核分裂法」で製造されたものです。我が国の99Mo需要は、米国に次ぎ、世界第2位ですが、全量を海外からの輸入に頼っています。最近では、製造用原子炉のトラブル等に伴う停止、アイスランドの火山噴火による空路障害などにより、99Moの国内への供給停止が生じました。

原子力機構では、平成23年度からのJMTR再稼働に合わせて、天然Moに含まれるモリブデン-98(98Mo)を原料とし、それを中性子照射して99Moを製造する「放射化法」による99Mo国産化技術の開発を進めています。一方、原料である天然Moも100%輸入であり、原料が輸入できないと99Moが安定に製造できない状況にありました。今般、ホットラボにあるホットセル内において遠隔で容易に操作できる2つの方法、すなわち99Moを吸着剤に吸着させ、99mTcを抽出した後の吸着剤中に含まれている98Moを化学的溶離によって回収する方法と、約800℃で昇華する三酸化モリブデン(MoO3)の特性を生かして吸着剤に吸着した98Moを回収する方法の開発に成功し、原料の98Moを98%以上リサイクルでき、原料を無駄なく利用し、ひいては、その安定確保の見通しを得ました。

今後は、JMTRホットラボにあるホットセル内にリサイクル装置を設置し、JMTRで照射した98Mo原料を用いて実証試験を行う予定であり、JMTR再稼働に合わせて99Mo製造国産化の実現に向けた取組みを進めていきます。

以上

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

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