独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成23年6月13日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

東京電力福島第一原子力発電所事故によるプラント北西地域の線量上昇プロセスを解析(お知らせ)

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(本部:茨城県那珂郡東海村 理事長:鈴木篤之)原子力基礎工学研究部門の永井晴康 環境動態研究グループリーダーらは、福島第一原発から特に大量の放射性物質の放出があったと推定される3月15日〜16日にかけての大気拡散、降雨、地表沈着の計算シミュレーションを行い、プラント北西地域や福島県中通りで空間線量が上昇したプロセスを解析しました。

それによれば、15日に放出された放射性雲(プルーム)は、午前中は南から南西方向に流れていたが、昼近くから徐々に西に流れ、14〜15時ごろ福島県中通りで初めて降雨帯に重なっています。観測されている白河や郡山での線量上昇はこれが原因と考えられます。また、午後になると、プルームは西から北西部に流れ、夕方以降、北西部から南下した降雨帯と重なり、16日未明にかけて地表沈着域を北西部に形成したと考えられます。本解析では、中通りの地表沈着は北西部より先に始まっており、福島県のモニタリングデータもそれを裏付けています。シミュレーションによれば、16日に放出されたプルームは午前中から海上に出ますが、それ以降もシミュレーションとモニタリングともに北西地域や中通りで高い空間線量率が継続しており、現在、測定されている空間線量のほとんどが、降雨による沈着放射性核種からの寄与であることを示しています。

放出については、環境モニタリングデータを再現するため、午前と午後に3時間の放出量増加を仮定しています。東京電力のサイト関連情報では、朝7時頃から10時半頃まで2号機の風下に位置した南西の正門付近で空間線量率の上昇があり、2号機内の圧力変動においても午前と午後に圧力低下が認められることから、この期間の放出量増加の可能性を示唆しています。

この計算には、緊急時環境線量情報予測システム世界版“WSPEEDI: Worldwide version of SPEEDI”を用いています。あくまでも計算シミュレーションであるため、個々の地点では、福島市の北部や郡山の南東部での過大評価など、測定値との相違は見られますが、空間線量率分布パターン及び時間変化は、地上及び航空機モニタリングと概ね一致する結果となっています。

本件に関する技術的詳細は、7月12-14日に米国バージニア州フェアファックス(ワシントンDC郊外)で開催されるジョージメイソン大学、国土安全保障省DHS他主催の大気輸送・拡散モデルに関する国際会議(15th Annual George Mason University Conference on Atmospheric Transport and Dispersion Modeling)の特別セッション「フクシマ危機:大気/海洋輸送モデル(Fukushima Crisis: Air/Sea Transport Modeling)」で発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門

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